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第00話 プロローグ
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ガラガラ、ガタン。
小石を跳ねるたびに揺れて体が座面から浮いてしまう馬車の庫内。
そろそろ王都を出立して70日。
2か月以上もかけてやっと目的の地に到着をした隊列はお世辞にも豪華とは言えない。
貴族の中でも中堅の伯爵家クラスが中古で購入する馬車に揺られてやってきたのはマジョリカ・エフクール。
ノースレスト王国のエフクール侯爵家の娘だが実母はメイド。
侯爵である父親が使用人に手を付けて…というアレだ。
異母兄が1人、異母姉が2人いるが、この度めでたく下の異母姉エミリアの代わりに隣国ウェストレスト王国の第3王子ルシファーに嫁ぐことになった。
エフクール侯爵夫人は現国王の実妹。異母兄姉は王家の血も引いているので順番としてはなかり後ろになるが王位継承権も持っている。
エフクール侯爵家の子であっても元王女である夫人の産んだ子ではないマジョリカには継承権はない。
元王女の娘だからこそ選ばれていたエミリア。
ウェストレスト王国の第3王子ルシファーと婚約をしていたのだが、交代せざるを得ない理由が出来てしまった。
両国の国益を考えての婚約、そして結婚は敢行されたのだった。
ウェストレスト王国に到着をしても土壇場になって嫁ぐことになったマジョリカに出迎えてくれる人たちはいない。
女嫌いでもあるルシファーもこの結婚には納得をしておらず、教会で結婚式を挙げてしまうと司祭の前で出家を言い出し兼ねない事態に結婚式も行わない。
ルシファーの宮に到着をしたマジョリカに手渡されたのはルシファーからの手紙のみ。
会おうともしないルシファーにマジョリカは微笑んだ。
「ま、いっか」
気にしても仕方がないし、捨て置かれる妃として嫁ぐのも解っていた事だ。
屋根も壁もツタでビッシリと覆われた宮の敷地内にある離れでマジョリカはのんびりと暮らす事に決めた。
絵姿すら見たことのない夫のルシファーからの手紙を手にマジョリカは「ふふふ」と笑う。
何故か。
ウェストレスト王国の公用語は嫁ぐ事が決まって出立まで3日。学ぶ機会もなかったので辛うじて道中で日常に必要な挨拶に付随する会話は教えてもらったが、文字は読めるに至っていないのだ。
何を書いているかさっぱり解らないので額に入れて飾ることにした。
ちなみにその手紙には…。
1つ。3年経てば離縁する
1つ。お互いの生活には干渉しない
1つ。王子妃としての仕事をする必要はない
と、この3点が書かれているのだが、額に入れて玄関ホールに飾ったばかりに離れを訪れる執事の心を凍らせる事になる。
これは制限のある自由であっても満喫する捨て置かれた王子妃マジョリカと、初手を間違ったばかりに信頼回復に奔走する第3王子ルシファーの物語である。
小石を跳ねるたびに揺れて体が座面から浮いてしまう馬車の庫内。
そろそろ王都を出立して70日。
2か月以上もかけてやっと目的の地に到着をした隊列はお世辞にも豪華とは言えない。
貴族の中でも中堅の伯爵家クラスが中古で購入する馬車に揺られてやってきたのはマジョリカ・エフクール。
ノースレスト王国のエフクール侯爵家の娘だが実母はメイド。
侯爵である父親が使用人に手を付けて…というアレだ。
異母兄が1人、異母姉が2人いるが、この度めでたく下の異母姉エミリアの代わりに隣国ウェストレスト王国の第3王子ルシファーに嫁ぐことになった。
エフクール侯爵夫人は現国王の実妹。異母兄姉は王家の血も引いているので順番としてはなかり後ろになるが王位継承権も持っている。
エフクール侯爵家の子であっても元王女である夫人の産んだ子ではないマジョリカには継承権はない。
元王女の娘だからこそ選ばれていたエミリア。
ウェストレスト王国の第3王子ルシファーと婚約をしていたのだが、交代せざるを得ない理由が出来てしまった。
両国の国益を考えての婚約、そして結婚は敢行されたのだった。
ウェストレスト王国に到着をしても土壇場になって嫁ぐことになったマジョリカに出迎えてくれる人たちはいない。
女嫌いでもあるルシファーもこの結婚には納得をしておらず、教会で結婚式を挙げてしまうと司祭の前で出家を言い出し兼ねない事態に結婚式も行わない。
ルシファーの宮に到着をしたマジョリカに手渡されたのはルシファーからの手紙のみ。
会おうともしないルシファーにマジョリカは微笑んだ。
「ま、いっか」
気にしても仕方がないし、捨て置かれる妃として嫁ぐのも解っていた事だ。
屋根も壁もツタでビッシリと覆われた宮の敷地内にある離れでマジョリカはのんびりと暮らす事に決めた。
絵姿すら見たことのない夫のルシファーからの手紙を手にマジョリカは「ふふふ」と笑う。
何故か。
ウェストレスト王国の公用語は嫁ぐ事が決まって出立まで3日。学ぶ機会もなかったので辛うじて道中で日常に必要な挨拶に付随する会話は教えてもらったが、文字は読めるに至っていないのだ。
何を書いているかさっぱり解らないので額に入れて飾ることにした。
ちなみにその手紙には…。
1つ。3年経てば離縁する
1つ。お互いの生活には干渉しない
1つ。王子妃としての仕事をする必要はない
と、この3点が書かれているのだが、額に入れて玄関ホールに飾ったばかりに離れを訪れる執事の心を凍らせる事になる。
これは制限のある自由であっても満喫する捨て置かれた王子妃マジョリカと、初手を間違ったばかりに信頼回復に奔走する第3王子ルシファーの物語である。
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