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第05話 ◆不幸吹聴人
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静まり返る室内に1人だけパンジーに泣きながら縋りつく者がいた。
妹のカトレアだった。
パンジーの胸に顔を埋めながら「お姉様、ごめんなさい!」何度も叫んだ。
一番辛いのはパンジーの筈なのに、カトレアの気持ちが落ち着くまで話もままならない。
パンジーは内心、ウンザリしていた。
アランの心がカトレアにあるなら仕方がない。この2年で気持ちには見切りはもうつけていた。視線を動かさずに大人たちを見る。その中にアランもいるが誰一人気が付いていない事がある。
グスグスと泣くカトレア。
「不幸吹聴人」だと言うことにパンジー以外は気が付いていなかった。
「わたくしがっ!アランを愛してしまったばかりにお姉様を悲しませてしまったの!わたくしが!わたくしが全部悪いんですのぉ~」
「そうね、ただ、いけないと判っていながら靡いたアランも同罪だわ」
アランの母ジュベル夫人が冷静に言葉を発すれば、カトレアが過剰に反応する。
「お義母様っ!違うんです。アランは何も悪くないんです。わたくしが!わたくしという存在が・・・いけなかったのです。クレマン様という婚約者がいながらも・・・アランに魅かれていく気持ちが抑えられなかったわたくしがっ!1番悪いのですっ。だからアランを悪く言わないでくださいませぇ」
ピクリとジュベル夫人のこめかみが動く。
「貴女に義母と呼ぶ権利は与えてないわ」
「そうでしゅよねっ!ぐすっ。わたくし、こんな簡単な事も間違えてしまうなんてっ。みんなを悲しませてしまうはずだわ…なんて愚かなわたくしなの・・・ぐすっぐすっ」
パンジーは「夫人はこういうタイプが一番嫌いなのよね」と心で毒吐く。
予想通り、カトレアの言葉に気分を害したジュベル夫人はあっさりとアランとカトレアを結婚させる事に同意をした。
「母さん、いいのかい?」
「良いも何も。婿入り後、貴方はルド家の一員です。ジュベル家に戻れるとは思わないで頂戴」
「そんな…結婚したって実家は実家じゃないか!」
「アラン。きいた風な口を叩くな。パンジーさんを蔑ろにした事を先ず考えて口を開け」
「は、はい…」
「お義父様っ!アランを責めないでくださいませ!全てはわたくしのっ!わたくしの溢れんばかりの思いを封じ込める事が出来なかった愚かさが原因なのですっ」
カトレアの表情を言葉にするなら「うるるん♪」だろうか。
手を軽く握り、顎の下に添えるのも忘れない。目を見開いてジュベル男爵を仰ぎ見るカトレア。15歳だからギリギリ許してくれる人もいるかも?な離れ業。パンジーには逆立ちしても真似できない芸当。
少しカトレアを見たジュベル男爵は呆れ顔。
直ぐに顔を背け、ルド子爵に「婚姻の届けはここに?」と問う。
元々はパンジーとアランの為に用意をしていた婚姻届けを従者がルド子爵に差し出すと、「ペンは?」と短く発し、従者の差し出したペンで署名。直ぐにルド子爵に向けてペンを差し出した。
「アランの私財は全てパンジーさんへの慰謝料に当てる。勿論ジュベル家からも出す。家を救う手段はそれ以外にはないだろう。ルド子爵。もしもに備え当家とアランからの金はパンジーさんに直接渡す。ルド子爵家は通さない。いいですね?」
「あ、あぁ‥‥では…ウチからは・・・」
「お父様!カトレアがダメな子でごめんなさい!なのに許してくださるのね?これ以上お父様やお母様を悲しませる事はしないわ!約束するっ!ごめんなさい。お父様ぁ!お母様ぁ!!うわぁぁぁん」
ルド子爵の言葉を遮ったのはルド家から幾ら出すと言う言質を取られないため。
パンジーは言葉を言い終えたカトレアの口角が小さく上がるのを見過ごさなかった。
美しく可憐なカトレアには昔からデレた父。縋るカトレアの頭を撫でながら署名を済ませると書面をジュベル男爵がサッと手に取り、従者に手渡した。
「アランはもうこちらに置いていきます。荷物は後日運ばせますので」
「待ってくれよ!父さん!そんないきなり今日だなんて・・・」
「お前のような恥知らず・・・育てたのが間違いだった。なに、今までの家族とは綺麗さっぱり縁が切れても新しい家族がいる。損切は早いうちに決断せねばならないのは貴族の鉄則だ」
損切とまで言われたアランは口をはくはくと動かし、それ以上何も言えなくなった。
怒りをそのままに部屋を出て行ったジュベル夫妻。
パンジーは父の前に立った。
「では、明日には発つようにいたします」
「お前もっ?!いや、まだユゴース家に・・・」
「いいえ。ジュベル様も納得です。もう道は御座いませんので。後の事は当主のお父様がよしなに」
父に挨拶をした後、退室するパンジーをカトレアが呼んだがパンジーは振り返らなかった。
しかし、いざ出立と言う翌朝。
ルド子爵家で一家が揃う最後の朝食を準備している時間に来訪者があった。
妹のカトレアだった。
パンジーの胸に顔を埋めながら「お姉様、ごめんなさい!」何度も叫んだ。
一番辛いのはパンジーの筈なのに、カトレアの気持ちが落ち着くまで話もままならない。
パンジーは内心、ウンザリしていた。
アランの心がカトレアにあるなら仕方がない。この2年で気持ちには見切りはもうつけていた。視線を動かさずに大人たちを見る。その中にアランもいるが誰一人気が付いていない事がある。
グスグスと泣くカトレア。
「不幸吹聴人」だと言うことにパンジー以外は気が付いていなかった。
「わたくしがっ!アランを愛してしまったばかりにお姉様を悲しませてしまったの!わたくしが!わたくしが全部悪いんですのぉ~」
「そうね、ただ、いけないと判っていながら靡いたアランも同罪だわ」
アランの母ジュベル夫人が冷静に言葉を発すれば、カトレアが過剰に反応する。
「お義母様っ!違うんです。アランは何も悪くないんです。わたくしが!わたくしという存在が・・・いけなかったのです。クレマン様という婚約者がいながらも・・・アランに魅かれていく気持ちが抑えられなかったわたくしがっ!1番悪いのですっ。だからアランを悪く言わないでくださいませぇ」
ピクリとジュベル夫人のこめかみが動く。
「貴女に義母と呼ぶ権利は与えてないわ」
「そうでしゅよねっ!ぐすっ。わたくし、こんな簡単な事も間違えてしまうなんてっ。みんなを悲しませてしまうはずだわ…なんて愚かなわたくしなの・・・ぐすっぐすっ」
パンジーは「夫人はこういうタイプが一番嫌いなのよね」と心で毒吐く。
予想通り、カトレアの言葉に気分を害したジュベル夫人はあっさりとアランとカトレアを結婚させる事に同意をした。
「母さん、いいのかい?」
「良いも何も。婿入り後、貴方はルド家の一員です。ジュベル家に戻れるとは思わないで頂戴」
「そんな…結婚したって実家は実家じゃないか!」
「アラン。きいた風な口を叩くな。パンジーさんを蔑ろにした事を先ず考えて口を開け」
「は、はい…」
「お義父様っ!アランを責めないでくださいませ!全てはわたくしのっ!わたくしの溢れんばかりの思いを封じ込める事が出来なかった愚かさが原因なのですっ」
カトレアの表情を言葉にするなら「うるるん♪」だろうか。
手を軽く握り、顎の下に添えるのも忘れない。目を見開いてジュベル男爵を仰ぎ見るカトレア。15歳だからギリギリ許してくれる人もいるかも?な離れ業。パンジーには逆立ちしても真似できない芸当。
少しカトレアを見たジュベル男爵は呆れ顔。
直ぐに顔を背け、ルド子爵に「婚姻の届けはここに?」と問う。
元々はパンジーとアランの為に用意をしていた婚姻届けを従者がルド子爵に差し出すと、「ペンは?」と短く発し、従者の差し出したペンで署名。直ぐにルド子爵に向けてペンを差し出した。
「アランの私財は全てパンジーさんへの慰謝料に当てる。勿論ジュベル家からも出す。家を救う手段はそれ以外にはないだろう。ルド子爵。もしもに備え当家とアランからの金はパンジーさんに直接渡す。ルド子爵家は通さない。いいですね?」
「あ、あぁ‥‥では…ウチからは・・・」
「お父様!カトレアがダメな子でごめんなさい!なのに許してくださるのね?これ以上お父様やお母様を悲しませる事はしないわ!約束するっ!ごめんなさい。お父様ぁ!お母様ぁ!!うわぁぁぁん」
ルド子爵の言葉を遮ったのはルド家から幾ら出すと言う言質を取られないため。
パンジーは言葉を言い終えたカトレアの口角が小さく上がるのを見過ごさなかった。
美しく可憐なカトレアには昔からデレた父。縋るカトレアの頭を撫でながら署名を済ませると書面をジュベル男爵がサッと手に取り、従者に手渡した。
「アランはもうこちらに置いていきます。荷物は後日運ばせますので」
「待ってくれよ!父さん!そんないきなり今日だなんて・・・」
「お前のような恥知らず・・・育てたのが間違いだった。なに、今までの家族とは綺麗さっぱり縁が切れても新しい家族がいる。損切は早いうちに決断せねばならないのは貴族の鉄則だ」
損切とまで言われたアランは口をはくはくと動かし、それ以上何も言えなくなった。
怒りをそのままに部屋を出て行ったジュベル夫妻。
パンジーは父の前に立った。
「では、明日には発つようにいたします」
「お前もっ?!いや、まだユゴース家に・・・」
「いいえ。ジュベル様も納得です。もう道は御座いませんので。後の事は当主のお父様がよしなに」
父に挨拶をした後、退室するパンジーをカトレアが呼んだがパンジーは振り返らなかった。
しかし、いざ出立と言う翌朝。
ルド子爵家で一家が揃う最後の朝食を準備している時間に来訪者があった。
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