どうせ離縁できないしとキレた奥様は推し活をすることにした

cyaru

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第22話  ここっ!私の部屋!

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朝早くから孤児院に行き、子供たちを決まった時間に起床させる。
洗顔もだが、毎日洗濯をした綺麗な服に着替えさせて食事をさせる。

その後で仕立て屋に行き、進捗を確かめると次は武具屋。
メイリーンの他に後方に配属を変えたオルソン(45歳)とビスクマル(23)の武具もあつらえて、試着させ、感想を聞く。

王都の周辺にも行き、小作ではない農家と直接契約し食料を確保する。
小作人は土地を借りていたり、貴族に属しているので農作物を回してもらう事が出来ないからである。

2か月もそんな生活を続けていると屋敷に帰ってくるともうクタクタ。
セレナはマーガとリーンと一緒に使用人が利用する食事室で簡単な夕食を済ませ、湯でも浴びて寝ようと部屋に向かった。

「あれ?誰だろう?」

薄い月明りが廊下の窓から差し込んでいる。
セレナの部屋の前で、扉に背を預けて立っている人がいた。

――おかしいわね。金貨1000枚をもう使い切ったとも思えないんだけど――

ピエロトロ侯爵家で出される食事はここ最近、使用人と同じ賄いまかないになっている。余り物で良いとシェフ長に頼んだので、メニューとしてはおそらくフェルナンドと同じだが、肉料理などフェルナンドの分と一緒に調理をすれば冷えて美味しくなくなるし、わざわざもう一度調理をしてもらうのも悪いなと思ったのでスープは温めればいいだけにしてもらい、メイン料理などは野菜炒め風にアレンジして貰っているのだ。

なので夕食ですらワンプレートに近い。

執事が金が足らなくなったと言うために待っているのかと思えば違った。


「やっと帰ってきた。毎日、毎日何処をほっつき歩いているんだ」

――げぇぇ。こいつかよぅ――

セレナはマーガとリーン、そして市井の者と一緒に居るのですっかり言葉使いも感化されてしまっていた。

扉の前で待っていたのはフェルナンド。
手には何やら手紙らしきものをひらひらさせている。

――お父様が金の無心でもしてきたのかしら――

全くあり得ない訳ではない。
セレナの慰謝料は真面目に働いて1代で手に出来る金額ではなかった。
また気が大きくなって事業内容もよく判らないままに投資し、全てを溶かしてしまっていても不思議ではない。

現在のセレナは所有物を売った金を持ってはいるが、まだ収入はなく支出だけが続いている。何事も足元を盤石にしないと見切り発車で本番に突入すると躓いてしまうので、セレナが試算するに本格的に推し活仲介業を開業するのはまだ半年ほど時間がかかる。

ある程度形にはなってきたアーシャたちのコーディネートと武具屋の武具。
お披露目をするためには、賛同してくれそうな低位貴族を引き込むための活動もしなくてはならない。

まだまだ出費が続く状況で父親の面倒までは見られない。


「フェルナンド・ピエロトロ様。こんな時間に何の御用ですの?まさか文句を言うためだけに待たれていたわけでは御座いませんわよね?」

「文句っ!?いや、違うんだ。2か月前にも言ったと思うが話がしたい。この時間なら早い日は帰ってくると聞いたから待っていたんだ。聞きたいこともある」

「待たせてしまい申し訳ございませんが、私にはお話しすることも聞かれても答えられるような事も何も御座いませんので」

「すまなかった!」

退け!と扉の前に立つとフェルナンドが少し横に寄ってくれたのでドアノブに手を置いたら、フェルナンドがガバっと謝罪の言葉を口にしながら頭を下げた。

「謝罪されるようなことは御座いません。今夜は冷えるそうですよ。早く部屋に戻られては?」

そう言いながらドアノブを回し、扉を開けると今度はフェルナンドの手が少し開いた扉をガっと掴んだ。

――何の真似よ――

イラっとしてしまう。まさか今更「侯爵夫人の仕事をしろ」と言い出すんじゃないか。
セレナは思ったが、そんな事は頼まれても即でお断り案件。

そんな時間はないのだ。
寝る間も惜しんでやれと言われてもたった2か月前の発言だ。

セレナにすれば「舌の根の乾かぬ内に!」としか思えない。

フェルナンドは掴んだ扉を開けると「どうぞ」セレナを部屋に入れと言い出した。


――ここっ!私の部屋なんですけど?!――

何故に自分の部屋に入るのに「どうぞ」と言われねばならないのか理解に苦しむ。今度は「侯爵家の屋敷を使用している」とでも言うのだろうか。


――そんな事言うなら、出て行ってやるわよ?――

セレナは頭の中で市井で部屋を借りた時の金額を計算した。
無駄な出費は押さえたいのだが必要経費と割り切ればいいだけだ。

こんなことなら金貨1000枚渡さずに、市井なら金貨50枚で一軒家が買えるんだから買っておけばよかったと後悔する。

離縁は出来ないけれど、幸いにもフェルナンドが墓すら別だと宣言してくれているので存命中も出来るだけ関りを持たないようにと動いてきたが…。

――たった2か月でいったい何なの?――

セレナが部屋に入ると図々しくもフェルナンドまで入ってくる。
しかし、フェルナンドは月明りが差し込む部屋の壁を見て硬直した。

――この部屋に彫像は要らないのよ!埃も溜まるし!――

動きを止めたフェルナンドにセレナは更に苛ついた。
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