22 / 36
第22話 ここっ!私の部屋!
しおりを挟む
朝早くから孤児院に行き、子供たちを決まった時間に起床させる。
洗顔もだが、毎日洗濯をした綺麗な服に着替えさせて食事をさせる。
その後で仕立て屋に行き、進捗を確かめると次は武具屋。
メイリーンの他に後方に配属を変えたオルソン(45歳)とビスクマル(23)の武具もあつらえて、試着させ、感想を聞く。
王都の周辺にも行き、小作ではない農家と直接契約し食料を確保する。
小作人は土地を借りていたり、貴族に属しているので農作物を回してもらう事が出来ないからである。
2か月もそんな生活を続けていると屋敷に帰ってくるともうクタクタ。
セレナはマーガとリーンと一緒に使用人が利用する食事室で簡単な夕食を済ませ、湯でも浴びて寝ようと部屋に向かった。
「あれ?誰だろう?」
薄い月明りが廊下の窓から差し込んでいる。
セレナの部屋の前で、扉に背を預けて立っている人がいた。
――おかしいわね。金貨1000枚をもう使い切ったとも思えないんだけど――
ピエロトロ侯爵家で出される食事はここ最近、使用人と同じ賄いになっている。余り物で良いとシェフ長に頼んだので、メニューとしてはおそらくフェルナンドと同じだが、肉料理などフェルナンドの分と一緒に調理をすれば冷えて美味しくなくなるし、わざわざもう一度調理をしてもらうのも悪いなと思ったのでスープは温めればいいだけにしてもらい、メイン料理などは野菜炒め風にアレンジして貰っているのだ。
なので夕食ですらワンプレートに近い。
執事が金が足らなくなったと言うために待っているのかと思えば違った。
「やっと帰ってきた。毎日、毎日何処をほっつき歩いているんだ」
――げぇぇ。こいつかよぅ――
セレナはマーガとリーン、そして市井の者と一緒に居るのですっかり言葉使いも感化されてしまっていた。
扉の前で待っていたのはフェルナンド。
手には何やら手紙らしきものをひらひらさせている。
――お父様が金の無心でもしてきたのかしら――
全くあり得ない訳ではない。
セレナの慰謝料は真面目に働いて1代で手に出来る金額ではなかった。
また気が大きくなって事業内容もよく判らないままに投資し、全てを溶かしてしまっていても不思議ではない。
現在のセレナは所有物を売った金を持ってはいるが、まだ収入はなく支出だけが続いている。何事も足元を盤石にしないと見切り発車で本番に突入すると躓いてしまうので、セレナが試算するに本格的に推し活仲介業を開業するのはまだ半年ほど時間がかかる。
ある程度形にはなってきたアーシャたちのコーディネートと武具屋の武具。
お披露目をするためには、賛同してくれそうな低位貴族を引き込むための活動もしなくてはならない。
まだまだ出費が続く状況で父親の面倒までは見られない。
「フェルナンド・ピエロトロ様。こんな時間に何の御用ですの?まさか文句を言うためだけに待たれていたわけでは御座いませんわよね?」
「文句っ!?いや、違うんだ。2か月前にも言ったと思うが話がしたい。この時間なら早い日は帰ってくると聞いたから待っていたんだ。聞きたいこともある」
「待たせてしまい申し訳ございませんが、私にはお話しすることも聞かれても答えられるような事も何も御座いませんので」
「すまなかった!」
退け!と扉の前に立つとフェルナンドが少し横に寄ってくれたのでドアノブに手を置いたら、フェルナンドがガバっと謝罪の言葉を口にしながら頭を下げた。
「謝罪されるようなことは御座いません。今夜は冷えるそうですよ。早く部屋に戻られては?」
そう言いながらドアノブを回し、扉を開けると今度はフェルナンドの手が少し開いた扉をガっと掴んだ。
――何の真似よ――
イラっとしてしまう。まさか今更「侯爵夫人の仕事をしろ」と言い出すんじゃないか。
セレナは思ったが、そんな事は頼まれても即でお断り案件。
そんな時間はないのだ。
寝る間も惜しんでやれと言われてもたった2か月前の発言だ。
セレナにすれば「舌の根の乾かぬ内に!」としか思えない。
フェルナンドは掴んだ扉を開けると「どうぞ」セレナを部屋に入れと言い出した。
――ここっ!私の部屋なんですけど?!――
何故に自分の部屋に入るのに「どうぞ」と言われねばならないのか理解に苦しむ。今度は「侯爵家の屋敷を使用している」とでも言うのだろうか。
――そんな事言うなら、出て行ってやるわよ?――
セレナは頭の中で市井で部屋を借りた時の金額を計算した。
無駄な出費は押さえたいのだが必要経費と割り切ればいいだけだ。
こんなことなら金貨1000枚渡さずに、市井なら金貨50枚で一軒家が買えるんだから買っておけばよかったと後悔する。
離縁は出来ないけれど、幸いにもフェルナンドが墓すら別だと宣言してくれているので存命中も出来るだけ関りを持たないようにと動いてきたが…。
――たった2か月でいったい何なの?――
セレナが部屋に入ると図々しくもフェルナンドまで入ってくる。
しかし、フェルナンドは月明りが差し込む部屋の壁を見て硬直した。
――この部屋に彫像は要らないのよ!埃も溜まるし!――
動きを止めたフェルナンドにセレナは更に苛ついた。
洗顔もだが、毎日洗濯をした綺麗な服に着替えさせて食事をさせる。
その後で仕立て屋に行き、進捗を確かめると次は武具屋。
メイリーンの他に後方に配属を変えたオルソン(45歳)とビスクマル(23)の武具もあつらえて、試着させ、感想を聞く。
王都の周辺にも行き、小作ではない農家と直接契約し食料を確保する。
小作人は土地を借りていたり、貴族に属しているので農作物を回してもらう事が出来ないからである。
2か月もそんな生活を続けていると屋敷に帰ってくるともうクタクタ。
セレナはマーガとリーンと一緒に使用人が利用する食事室で簡単な夕食を済ませ、湯でも浴びて寝ようと部屋に向かった。
「あれ?誰だろう?」
薄い月明りが廊下の窓から差し込んでいる。
セレナの部屋の前で、扉に背を預けて立っている人がいた。
――おかしいわね。金貨1000枚をもう使い切ったとも思えないんだけど――
ピエロトロ侯爵家で出される食事はここ最近、使用人と同じ賄いになっている。余り物で良いとシェフ長に頼んだので、メニューとしてはおそらくフェルナンドと同じだが、肉料理などフェルナンドの分と一緒に調理をすれば冷えて美味しくなくなるし、わざわざもう一度調理をしてもらうのも悪いなと思ったのでスープは温めればいいだけにしてもらい、メイン料理などは野菜炒め風にアレンジして貰っているのだ。
なので夕食ですらワンプレートに近い。
執事が金が足らなくなったと言うために待っているのかと思えば違った。
「やっと帰ってきた。毎日、毎日何処をほっつき歩いているんだ」
――げぇぇ。こいつかよぅ――
セレナはマーガとリーン、そして市井の者と一緒に居るのですっかり言葉使いも感化されてしまっていた。
扉の前で待っていたのはフェルナンド。
手には何やら手紙らしきものをひらひらさせている。
――お父様が金の無心でもしてきたのかしら――
全くあり得ない訳ではない。
セレナの慰謝料は真面目に働いて1代で手に出来る金額ではなかった。
また気が大きくなって事業内容もよく判らないままに投資し、全てを溶かしてしまっていても不思議ではない。
現在のセレナは所有物を売った金を持ってはいるが、まだ収入はなく支出だけが続いている。何事も足元を盤石にしないと見切り発車で本番に突入すると躓いてしまうので、セレナが試算するに本格的に推し活仲介業を開業するのはまだ半年ほど時間がかかる。
ある程度形にはなってきたアーシャたちのコーディネートと武具屋の武具。
お披露目をするためには、賛同してくれそうな低位貴族を引き込むための活動もしなくてはならない。
まだまだ出費が続く状況で父親の面倒までは見られない。
「フェルナンド・ピエロトロ様。こんな時間に何の御用ですの?まさか文句を言うためだけに待たれていたわけでは御座いませんわよね?」
「文句っ!?いや、違うんだ。2か月前にも言ったと思うが話がしたい。この時間なら早い日は帰ってくると聞いたから待っていたんだ。聞きたいこともある」
「待たせてしまい申し訳ございませんが、私にはお話しすることも聞かれても答えられるような事も何も御座いませんので」
「すまなかった!」
退け!と扉の前に立つとフェルナンドが少し横に寄ってくれたのでドアノブに手を置いたら、フェルナンドがガバっと謝罪の言葉を口にしながら頭を下げた。
「謝罪されるようなことは御座いません。今夜は冷えるそうですよ。早く部屋に戻られては?」
そう言いながらドアノブを回し、扉を開けると今度はフェルナンドの手が少し開いた扉をガっと掴んだ。
――何の真似よ――
イラっとしてしまう。まさか今更「侯爵夫人の仕事をしろ」と言い出すんじゃないか。
セレナは思ったが、そんな事は頼まれても即でお断り案件。
そんな時間はないのだ。
寝る間も惜しんでやれと言われてもたった2か月前の発言だ。
セレナにすれば「舌の根の乾かぬ内に!」としか思えない。
フェルナンドは掴んだ扉を開けると「どうぞ」セレナを部屋に入れと言い出した。
――ここっ!私の部屋なんですけど?!――
何故に自分の部屋に入るのに「どうぞ」と言われねばならないのか理解に苦しむ。今度は「侯爵家の屋敷を使用している」とでも言うのだろうか。
――そんな事言うなら、出て行ってやるわよ?――
セレナは頭の中で市井で部屋を借りた時の金額を計算した。
無駄な出費は押さえたいのだが必要経費と割り切ればいいだけだ。
こんなことなら金貨1000枚渡さずに、市井なら金貨50枚で一軒家が買えるんだから買っておけばよかったと後悔する。
離縁は出来ないけれど、幸いにもフェルナンドが墓すら別だと宣言してくれているので存命中も出来るだけ関りを持たないようにと動いてきたが…。
――たった2か月でいったい何なの?――
セレナが部屋に入ると図々しくもフェルナンドまで入ってくる。
しかし、フェルナンドは月明りが差し込む部屋の壁を見て硬直した。
――この部屋に彫像は要らないのよ!埃も溜まるし!――
動きを止めたフェルナンドにセレナは更に苛ついた。
1,707
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「君は大丈夫だろ?」と可哀想な元恋人を選択した夫。~今さら復縁を迫っても、愛は既に錆び付いています~
水上
恋愛
夫と白い結婚をして、傾いた領地を努力と苦労の末に立て直した伯爵令嬢ヴィクトリア。
夫との関係も良好……、のように見えていた。
だが夫は「君は強いから」と、めそめそ泣く元恋人を優先し、ヴィクトリアの献身を踏みにじった。
その瞬間、彼女の恋心は錆び付き始めた。
「私が去ったら、この領地は終わりですが?」
愛想を尽かした彼女は、完璧な微笑みの裏で淡々と離縁の準備を始める。
これは、有能な妻が去り、無能な夫が泥沼に沈むまでを描く、冷徹な断罪劇。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲
恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。
完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。
婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。
家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、
家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。
理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇!
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる