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襲われた馬車
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「来るぞ」
ロレンツィオは一層強くなる気配に御者と馬に結界魔法を纏わせる。
刹那、馬車の後部にタンっと矢が刺さる音がすると間、髪を入れずにタンタンと矢が刺さる音がする。
同時に焦げ臭い事から火矢を放たれた事が判る。
水魔法で消火をするがどうやら単なる矢ではなく鏃(やじり)に油をしみこませた布でも巻いているのか見る間に水の表面を這うように火が広がっていく。
馬車の中から御者に馬を外し、片方の馬は尻を叩き、もう片方の馬に乗って逃げろと伝えると御者は緊結された金具を外し、「行けます」と声を返す。
魔法の同時展開は複数でも問題がないロレンツィオは結界魔法を施したまま馬と御者を逃がす。
逃げ出す馬と御者に向けて火矢が飛んでくるが結界により跳ね返され、火矢は地面に落ちる。
初夏とはいえ、馬車や御者に放たれ、外れた火矢は草木に燃え移りじわじわと枯草や枯れ木を伝って白い煙が一帯にたちこめ始める。
ロザリアとジャスミンに防御魔法を施して視界と呼吸をするための空気を確保すると「行くぞ」と声をかけて馬車の扉を足で蹴破り3人は森の中におり立った。
白く煙が立ち込めるが実際のところロザリアもジャスミンも視界はさほど必要ではない。
【動くものを殺る】だけなのである。視界は味方を識別するためだけだが、判断が遅れれば味方を傷つけてしまう。
その為にロレンツィオは防御魔法を展開させた。
ヒュンっと風を斬るような音がすると同時に数人の声にならない声がする。
ロザリアの銀の鞭は木陰に隠れている男数人を木ごと首を飛ばす。倒れてきた木を避けるのか何人かが草を踏む音がするとその方向にロザリアはまた鞭をふる。今度は下向きの方向だが、先程と違って「ギャァァ」という声が幾つも聞こえだす。
「お話してもらうのに、足はいりませんから」とウィンクするロザリア。
「ハッ」っと声をあげ、そんなものを何処に持っていたのか斧を真上に振り上げたジャスミンは「3です!」と声をかけると3人は2,3メートルその場から離れる。
すると真上から頭部が斧に割られ絶命した刺客が落ちてズシャリと地面に衝突する。
何食わぬ顔で頭を割った斧を手にしたジャスミンは踊る様に斧を4時の方向に横投げすると回転しながら数柄(すうへい)のナイフを立て続けに煙の中に打ち込んでいく。
投げた数だけ「グッ」「ガッ」っと声がして何かが倒れた音がする。
その間もロレンツィオは剣を構えて、周りを探知魔法で見回していく。
おそらく今、ロザリアとジャスミンが駆除しているのは雑魚である。
敵を取るに一番ケリを早く付けるには【頭】を取る事である。指揮している者、若しくは呪術師に狙いを定め探知をしていく。
「11時の方向。距離15」
「合点承知!」
指示を出した後、ロレンツィオは上空一帯に蜘蛛の巣の魔法網を張り巡らせる
これで転移魔法をかけると同時に網が呪術師を絡め、詠唱が出来ないように口の中に更に巣を作る。
棘の鎖に似た魔法蜘蛛は詠唱が大好物で唱え始めると同時に食い荒らす。
ジャスミンは指示された方向に投擲を開始し、ロザリアは背後に回りこむように森の中に突っ込んでいく。
白い煙が風でゆっくりと離れていくと、ロザリアの鞭で伐採された木と刺客が交互に倒れ、その外側にはジャスミンの投擲で喉仏にナイフが刺さり絶命した刺客がゴロゴロと転がっている。
まるで円の中心のように2人の男を3人で囲う。
1人は貴族風の男でロレンツィオはその男には見覚えがあった。メデレーエフ王弟殿下の側近である。
もう1人は深くローブを被りその顔は伺い知れないが、煮え立った蒸気が風に関係なく靡くような禍々しいオーラを出しているのが見える。
ロレンツィオは剣に炎を纏わせ一振りすると側近の男はローブの男の背に隠れるように動くが、その場に腰を抜かしへたり込んでしまった。
ロザリアが這って逃げようとする側近の目の前に鞭を振り下ろすと30センチほどの溝が出来る。
「ヒャァァ」と今度は失禁した側近にはもう逃げる気力がないと判断する。
残っているのは呪術師である。
「何が目的だ」
剣先を向けてロレンツィオが問うが回答はない。
呪術師は魔法も使える事から迂闊に近寄る事は出来ない。そして今回は生きたまま捕縛せねばならない。
国王の許可なく禁呪を使用した者の末路は哀れなものである。
特殊な結界を張られた中で魔力が枯渇するまで魔水晶に魔力を吸い取られ虫の息となれば血液を抜かれ、臓器は研究機関に送られて器となった肉体は王家に飼われている魔獣の餌になる。
それを知って尚、禁呪に手を出すのである。それなりに腹は括っているのだろう。
若しくは捕らえられるはずがないと高を括っているのかも知れない。
御者を逃がしてもう半刻ほど。今頃は王宮にたどり着き騎士団を編成しているだろう。
騎士団が到着する前に目の前の呪術師を生け捕りにせねばならない。
ロレンツィオと侍女2人は半歩よりも少なくじりじりと間合いを詰めていく。
左右のどちらに動いてもロザリアとジャスミンが対応をする。それは上に飛んでも同じである。
こちらを試すかのように手元に火魔法の発動を感知するとジャスミンが投擲をする。
「グッ」
右手の甲を貫いたナイフを引き抜いて投げ捨てると噴き出した血を左手で押さえ、後ろに半歩下がった。
しかし、下がった先をロザリアの鞭が地面を叩き、溝を作ると動きを止める。
(こいつ、魔法には詠唱が必要なのか…)
ロレンツィオは目の前の呪術師は無詠唱では唱えられないのだと知る。
と、言う事は魔法学校などで専門の教育は受けてはいないと言う事である。
ポタポタと滴り落ちる血を止める事も出来ないとなれば国王フィオランツのような聖属性の治癒魔法も使えないという事である。
呪術師は木々がロザリアの鞭によりなぎ倒され日当たりのよくなった上空を見上げると魔法蜘蛛が中心に目を光らせるのを見て両手をあげた。
「ローブを取れ」
ロレンツィオの言葉にまた口を開こうとはしないが、呪術師はそのローブを取った。
「まさか…そんなはずは‥‥」
瞬時に混乱し、思わず呟いたロレンツィオに呪術師の口元がニヤリと口角をあげた。
ロレンツィオは一層強くなる気配に御者と馬に結界魔法を纏わせる。
刹那、馬車の後部にタンっと矢が刺さる音がすると間、髪を入れずにタンタンと矢が刺さる音がする。
同時に焦げ臭い事から火矢を放たれた事が判る。
水魔法で消火をするがどうやら単なる矢ではなく鏃(やじり)に油をしみこませた布でも巻いているのか見る間に水の表面を這うように火が広がっていく。
馬車の中から御者に馬を外し、片方の馬は尻を叩き、もう片方の馬に乗って逃げろと伝えると御者は緊結された金具を外し、「行けます」と声を返す。
魔法の同時展開は複数でも問題がないロレンツィオは結界魔法を施したまま馬と御者を逃がす。
逃げ出す馬と御者に向けて火矢が飛んでくるが結界により跳ね返され、火矢は地面に落ちる。
初夏とはいえ、馬車や御者に放たれ、外れた火矢は草木に燃え移りじわじわと枯草や枯れ木を伝って白い煙が一帯にたちこめ始める。
ロザリアとジャスミンに防御魔法を施して視界と呼吸をするための空気を確保すると「行くぞ」と声をかけて馬車の扉を足で蹴破り3人は森の中におり立った。
白く煙が立ち込めるが実際のところロザリアもジャスミンも視界はさほど必要ではない。
【動くものを殺る】だけなのである。視界は味方を識別するためだけだが、判断が遅れれば味方を傷つけてしまう。
その為にロレンツィオは防御魔法を展開させた。
ヒュンっと風を斬るような音がすると同時に数人の声にならない声がする。
ロザリアの銀の鞭は木陰に隠れている男数人を木ごと首を飛ばす。倒れてきた木を避けるのか何人かが草を踏む音がするとその方向にロザリアはまた鞭をふる。今度は下向きの方向だが、先程と違って「ギャァァ」という声が幾つも聞こえだす。
「お話してもらうのに、足はいりませんから」とウィンクするロザリア。
「ハッ」っと声をあげ、そんなものを何処に持っていたのか斧を真上に振り上げたジャスミンは「3です!」と声をかけると3人は2,3メートルその場から離れる。
すると真上から頭部が斧に割られ絶命した刺客が落ちてズシャリと地面に衝突する。
何食わぬ顔で頭を割った斧を手にしたジャスミンは踊る様に斧を4時の方向に横投げすると回転しながら数柄(すうへい)のナイフを立て続けに煙の中に打ち込んでいく。
投げた数だけ「グッ」「ガッ」っと声がして何かが倒れた音がする。
その間もロレンツィオは剣を構えて、周りを探知魔法で見回していく。
おそらく今、ロザリアとジャスミンが駆除しているのは雑魚である。
敵を取るに一番ケリを早く付けるには【頭】を取る事である。指揮している者、若しくは呪術師に狙いを定め探知をしていく。
「11時の方向。距離15」
「合点承知!」
指示を出した後、ロレンツィオは上空一帯に蜘蛛の巣の魔法網を張り巡らせる
これで転移魔法をかけると同時に網が呪術師を絡め、詠唱が出来ないように口の中に更に巣を作る。
棘の鎖に似た魔法蜘蛛は詠唱が大好物で唱え始めると同時に食い荒らす。
ジャスミンは指示された方向に投擲を開始し、ロザリアは背後に回りこむように森の中に突っ込んでいく。
白い煙が風でゆっくりと離れていくと、ロザリアの鞭で伐採された木と刺客が交互に倒れ、その外側にはジャスミンの投擲で喉仏にナイフが刺さり絶命した刺客がゴロゴロと転がっている。
まるで円の中心のように2人の男を3人で囲う。
1人は貴族風の男でロレンツィオはその男には見覚えがあった。メデレーエフ王弟殿下の側近である。
もう1人は深くローブを被りその顔は伺い知れないが、煮え立った蒸気が風に関係なく靡くような禍々しいオーラを出しているのが見える。
ロレンツィオは剣に炎を纏わせ一振りすると側近の男はローブの男の背に隠れるように動くが、その場に腰を抜かしへたり込んでしまった。
ロザリアが這って逃げようとする側近の目の前に鞭を振り下ろすと30センチほどの溝が出来る。
「ヒャァァ」と今度は失禁した側近にはもう逃げる気力がないと判断する。
残っているのは呪術師である。
「何が目的だ」
剣先を向けてロレンツィオが問うが回答はない。
呪術師は魔法も使える事から迂闊に近寄る事は出来ない。そして今回は生きたまま捕縛せねばならない。
国王の許可なく禁呪を使用した者の末路は哀れなものである。
特殊な結界を張られた中で魔力が枯渇するまで魔水晶に魔力を吸い取られ虫の息となれば血液を抜かれ、臓器は研究機関に送られて器となった肉体は王家に飼われている魔獣の餌になる。
それを知って尚、禁呪に手を出すのである。それなりに腹は括っているのだろう。
若しくは捕らえられるはずがないと高を括っているのかも知れない。
御者を逃がしてもう半刻ほど。今頃は王宮にたどり着き騎士団を編成しているだろう。
騎士団が到着する前に目の前の呪術師を生け捕りにせねばならない。
ロレンツィオと侍女2人は半歩よりも少なくじりじりと間合いを詰めていく。
左右のどちらに動いてもロザリアとジャスミンが対応をする。それは上に飛んでも同じである。
こちらを試すかのように手元に火魔法の発動を感知するとジャスミンが投擲をする。
「グッ」
右手の甲を貫いたナイフを引き抜いて投げ捨てると噴き出した血を左手で押さえ、後ろに半歩下がった。
しかし、下がった先をロザリアの鞭が地面を叩き、溝を作ると動きを止める。
(こいつ、魔法には詠唱が必要なのか…)
ロレンツィオは目の前の呪術師は無詠唱では唱えられないのだと知る。
と、言う事は魔法学校などで専門の教育は受けてはいないと言う事である。
ポタポタと滴り落ちる血を止める事も出来ないとなれば国王フィオランツのような聖属性の治癒魔法も使えないという事である。
呪術師は木々がロザリアの鞭によりなぎ倒され日当たりのよくなった上空を見上げると魔法蜘蛛が中心に目を光らせるのを見て両手をあげた。
「ローブを取れ」
ロレンツィオの言葉にまた口を開こうとはしないが、呪術師はそのローブを取った。
「まさか…そんなはずは‥‥」
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