25 / 43
第21話 コソコソ・レッツ・ストーキング②の②
しおりを挟む
誰かの後をツケていると、自分がツケられている事には気が付かないものである。
馬車の速度は言うほどに速くない。下手をすれば歩いた方が速い時もある。
シルヴァモンドの乗る馬車は公爵家を出た時から2人の男にツケられていた。
歩きだからこそ気付かれる事もない。
「なんと間抜けな事だ。あれが従弟…いや義弟とはな」
「こっちの義弟は役に立ってるのにねぇ。でもご褒美がないなー。詰まんない」
おどけた声を出したのはフェルディナンド。
ギロっとフェルディナンドを睨みつけたのは第1王子ステファンである。
幼少期から長く床に臥せっているとされているが、本人はぴんぴんしていて咳一つすら最近では何時だった?と考えねばならないほどの健康体。
確かに寝込んだ事はある。王族ともなれば命を狙われる事もあるあるだ。
何度も食事に毒を盛られ、何人の毒味役の顔を見る事もなくなった事か。
病弱を装うようになったのは神経毒をもつヒカゲシビレタケを混入されたスープを飲んで死にかけたことがきっかけである。当時7歳だった。
誰が仕込んだのか。調べてみれば母親の王妃である事が判明し身を守るために病弱を装った。床に臥せれば持ち込まれる食事は限定されるし、食事に毒を仕込むのは困難になる。
食事に仕込まなくても薬に混ぜればいいのだが、気分が優れない、激しく咳き込むなどすれば「後で飲む」と捨てて飲んだことにする事も出来る。
何故王妃が?と言えば簡単だ。
見えているだけが事実や真実ではない。ステファンは王妃が国王の目を盗んで間男と楽しんでいる姿を見てしまったのだ。
愛人を抱えるのは公にはよしとはされていないが、そこまで責められるものでもない。不貞行為を楽しむのは王妃に限った事ではなく国王も、そして高位貴族も同じで暴露すれば芋づる式に広く醜聞が暴かれていくので口にする者がいないだけだ。
しかし相手が問題だった。母親の王妃と愛を交わしていたのはステファンの叔父でもあり、王妃の実弟だった。愛人だとか言う以前の問題がそこにあったのだ。
2人の関係が何時からなのかはステファンには判らない。
ただ、1つ言える事は第2王子は国王に全く似ていなかった。王妃の産んだ子である事が間違いないだけ。それが何を意味するのか。2人の関係を知っている者は口を貝にする。
母親とて人間であり1人の女。
政略で結婚をせざるを得なかった男の子供より、愛する男との子供の方が可愛いもの。
ステファンは王妃にとって不要な子だったのだ。
散々に考えた挙句ステファンが出した答えは「国を捨てる」事に行きついた。
捨てると言っても単に国を出ただけでは追っ手を出されて捕まれば連れ戻される。なので国に滅んでもらおうと考えた。
国を滅ぼすのは心さえ捨てれば造作もない。
内側から腐らせれば正義感の強い民衆が後始末をしてくれる。
横暴な父の国王、叔父相手に嬌声を上げる母の王妃、声の大きな貴族に持ち上げられて鼻高々の第2王子。権力に目の色を変える高位貴族。ステファンには全て不要だった。
王家の腐敗を散財で世に知らしめるために目をつけたのが隣国メレ・グレン王国のミネルヴァーナ。一晩で数億を平気で散財しメレ・グレン王国の厄介者と呼ばれる第11王女。
丁度戦も始まり泥沼化。正教会に寄付をするついでに停戦案を持ち込んだ。
交換のように送り込まれるとすれば嫌われ者をメレ・グレン王国が送り込むのは解っていた。
計画の為には王子がもう1人必要だった。
ステファンは母親の情事を目にして女性は嫌悪していたし、病弱設定なので妃は望めない。
第2王子には既に婚約者がいるのでミネルヴァーナを娶る王子がどうしても必要だった。
幸いにもル・サブレン王国にミネルヴァーナの悪評は広まっていて、これで計画通り…だったのに!
「あの娘、悪い子じゃないよ。だから僕に頂戴♡」
「見てれば判る。案外可愛いよな」
「えぇーっ!?後出しはズルいじゃないか!」
女性には興味以前に嫌悪感を感じていたが、王女らしさもなく人に媚びる事もない。
公爵家に監視されている事も知らない訳ではないのに取り繕う事もしない。
ステファンは時間の許す限りミネルヴァーナを監視する公爵家を監視していた。
回数が増えるごとにミネルヴァーナを見る目に熱がこもるのを感じていた。
「はいはい。もう帰るよ!影武者だって何時までも寝台で寝てられないからねっ!」
フェルディナンドに腕を掴まれて引くように歩き始めたステファン。
「判ったよ。痛いから離せ」
「嫌だね。もう見るな!僕のモンなんだから!」
口を尖らせるフェルディナンドを見て「そろそろこいつも要らないな」と心で呟いた。
馬車の速度は言うほどに速くない。下手をすれば歩いた方が速い時もある。
シルヴァモンドの乗る馬車は公爵家を出た時から2人の男にツケられていた。
歩きだからこそ気付かれる事もない。
「なんと間抜けな事だ。あれが従弟…いや義弟とはな」
「こっちの義弟は役に立ってるのにねぇ。でもご褒美がないなー。詰まんない」
おどけた声を出したのはフェルディナンド。
ギロっとフェルディナンドを睨みつけたのは第1王子ステファンである。
幼少期から長く床に臥せっているとされているが、本人はぴんぴんしていて咳一つすら最近では何時だった?と考えねばならないほどの健康体。
確かに寝込んだ事はある。王族ともなれば命を狙われる事もあるあるだ。
何度も食事に毒を盛られ、何人の毒味役の顔を見る事もなくなった事か。
病弱を装うようになったのは神経毒をもつヒカゲシビレタケを混入されたスープを飲んで死にかけたことがきっかけである。当時7歳だった。
誰が仕込んだのか。調べてみれば母親の王妃である事が判明し身を守るために病弱を装った。床に臥せれば持ち込まれる食事は限定されるし、食事に毒を仕込むのは困難になる。
食事に仕込まなくても薬に混ぜればいいのだが、気分が優れない、激しく咳き込むなどすれば「後で飲む」と捨てて飲んだことにする事も出来る。
何故王妃が?と言えば簡単だ。
見えているだけが事実や真実ではない。ステファンは王妃が国王の目を盗んで間男と楽しんでいる姿を見てしまったのだ。
愛人を抱えるのは公にはよしとはされていないが、そこまで責められるものでもない。不貞行為を楽しむのは王妃に限った事ではなく国王も、そして高位貴族も同じで暴露すれば芋づる式に広く醜聞が暴かれていくので口にする者がいないだけだ。
しかし相手が問題だった。母親の王妃と愛を交わしていたのはステファンの叔父でもあり、王妃の実弟だった。愛人だとか言う以前の問題がそこにあったのだ。
2人の関係が何時からなのかはステファンには判らない。
ただ、1つ言える事は第2王子は国王に全く似ていなかった。王妃の産んだ子である事が間違いないだけ。それが何を意味するのか。2人の関係を知っている者は口を貝にする。
母親とて人間であり1人の女。
政略で結婚をせざるを得なかった男の子供より、愛する男との子供の方が可愛いもの。
ステファンは王妃にとって不要な子だったのだ。
散々に考えた挙句ステファンが出した答えは「国を捨てる」事に行きついた。
捨てると言っても単に国を出ただけでは追っ手を出されて捕まれば連れ戻される。なので国に滅んでもらおうと考えた。
国を滅ぼすのは心さえ捨てれば造作もない。
内側から腐らせれば正義感の強い民衆が後始末をしてくれる。
横暴な父の国王、叔父相手に嬌声を上げる母の王妃、声の大きな貴族に持ち上げられて鼻高々の第2王子。権力に目の色を変える高位貴族。ステファンには全て不要だった。
王家の腐敗を散財で世に知らしめるために目をつけたのが隣国メレ・グレン王国のミネルヴァーナ。一晩で数億を平気で散財しメレ・グレン王国の厄介者と呼ばれる第11王女。
丁度戦も始まり泥沼化。正教会に寄付をするついでに停戦案を持ち込んだ。
交換のように送り込まれるとすれば嫌われ者をメレ・グレン王国が送り込むのは解っていた。
計画の為には王子がもう1人必要だった。
ステファンは母親の情事を目にして女性は嫌悪していたし、病弱設定なので妃は望めない。
第2王子には既に婚約者がいるのでミネルヴァーナを娶る王子がどうしても必要だった。
幸いにもル・サブレン王国にミネルヴァーナの悪評は広まっていて、これで計画通り…だったのに!
「あの娘、悪い子じゃないよ。だから僕に頂戴♡」
「見てれば判る。案外可愛いよな」
「えぇーっ!?後出しはズルいじゃないか!」
女性には興味以前に嫌悪感を感じていたが、王女らしさもなく人に媚びる事もない。
公爵家に監視されている事も知らない訳ではないのに取り繕う事もしない。
ステファンは時間の許す限りミネルヴァーナを監視する公爵家を監視していた。
回数が増えるごとにミネルヴァーナを見る目に熱がこもるのを感じていた。
「はいはい。もう帰るよ!影武者だって何時までも寝台で寝てられないからねっ!」
フェルディナンドに腕を掴まれて引くように歩き始めたステファン。
「判ったよ。痛いから離せ」
「嫌だね。もう見るな!僕のモンなんだから!」
口を尖らせるフェルディナンドを見て「そろそろこいつも要らないな」と心で呟いた。
2,056
お気に入りに追加
2,754
あなたにおすすめの小説
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
正当な権利ですので。
しゃーりん
恋愛
歳の差43歳。
18歳の伯爵令嬢セレーネは老公爵オズワルドと結婚した。
2年半後、オズワルドは亡くなり、セレーネとセレーネが産んだ子供が爵位も財産も全て手に入れた。
遠い親戚は反発するが、セレーネは妻であっただけではなく公爵家の籍にも入っていたため正当な権利があった。
再婚したセレーネは穏やかな幸せを手に入れていたが、10年後に子供の出生とオズワルドとの本当の関係が噂になるというお話です。
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる