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第21話  コソコソ・レッツ・ストーキング②の②

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誰かの後をツケていると、自分がツケられている事には気が付かないものである。

馬車の速度は言うほどに速くない。下手をすれば歩いた方が速い時もある。
シルヴァモンドの乗る馬車は公爵家を出た時から2人の男にツケられていた。
歩きだからこそ気付かれる事もない。

「なんと間抜けな事だ。あれが従弟…いや義弟とはな」
「こっちの義弟は役に立ってるのにねぇ。でもご褒美がないなー。詰まんない」


おどけた声を出したのはフェルディナンド。
ギロっとフェルディナンドを睨みつけたのは第1王子ステファンである。


幼少期から長くとこに臥せっているとされているが、本人はぴんぴんしていて咳一つすら最近では何時だった?と考えねばならないほどの健康体。

確かに寝込んだ事はある。王族ともなれば命を狙われる事もあるあるだ。
何度も食事に毒を盛られ、何人の毒味役の顔を見る事もなくなった事か。


病弱を装うようになったのは神経毒をもつヒカゲシビレタケを混入されたスープを飲んで死にかけたことがきっかけである。当時7歳だった。

誰が仕込んだのか。調べてみれば母親の王妃である事が判明し身を守るために病弱を装った。とこに臥せれば持ち込まれる食事は限定されるし、食事に毒を仕込むのは困難になる。

食事に仕込まなくても薬に混ぜればいいのだが、気分が優れない、激しく咳き込むなどすれば「後で飲む」と捨てて飲んだことにする事も出来る。

何故王妃が?と言えば簡単だ。
見えているだけが事実や真実ではない。ステファンは王妃が国王の目を盗んで間男と楽しんでいる姿を見てしまったのだ。

愛人を抱えるのは公にはよしとはされていないが、そこまで責められるものでもない。不貞行為を楽しむのは王妃に限った事ではなく国王も、そして高位貴族も同じで暴露すれば芋づる式に広く醜聞が暴かれていくので口にする者がいないだけだ。

しかし相手が問題だった。母親の王妃と愛を交わしていたのはステファンの叔父でもあり、王妃の実弟だった。愛人だとか言う以前の問題がそこにあったのだ。

2人の関係が何時からなのかはステファンには判らない。
ただ、1つ言える事は第2王子は国王に全く似ていなかった。王妃の産んだ子である事が間違いないだけ。それが何を意味するのか。2人の関係を知っている者は口を貝にする。

母親とて人間であり1人の女。
政略で結婚をせざるを得なかった男の子供より、愛する男との子供の方が可愛いもの。

ステファンは王妃にとって不要な子だったのだ。

散々に考えた挙句ステファンが出した答えは「国を捨てる」事に行きついた。
捨てると言っても単に国を出ただけでは追っ手を出されて捕まれば連れ戻される。なので国に滅んでもらおうと考えた。

国を滅ぼすのは心さえ捨てれば造作もない。
内側から腐らせれば正義感の強い民衆が後始末をしてくれる。

横暴な父の国王、叔父相手に嬌声を上げる母の王妃、声の大きな貴族に持ち上げられて鼻高々の第2王子。権力に目の色を変える高位貴族。ステファンには全て不要だった。

王家の腐敗を散財で世に知らしめるために目をつけたのが隣国メレ・グレン王国のミネルヴァーナ。一晩で数億を平気で散財しメレ・グレン王国の厄介者と呼ばれる第11王女。

丁度戦も始まり泥沼化。正教会に寄付をするついでに停戦案を持ち込んだ。
交換のように送り込まれるとすれば嫌われ者をメレ・グレン王国が送り込むのは解っていた。

計画の為には王子がもう1人必要だった。
ステファンは母親の情事を目にして女性は嫌悪していたし、病弱設定なので妃は望めない。
第2王子には既に婚約者がいるのでミネルヴァーナを娶る王子がどうしても必要だった。

幸いにもル・サブレン王国にミネルヴァーナの悪評は広まっていて、これで計画通り…だったのに!

「あの、悪い子じゃないよ。だから僕に頂戴♡」
「見てれば判る。案外可愛いよな」
「えぇーっ!?後出しはズルいじゃないか!」

女性には興味以前に嫌悪感を感じていたが、王女らしさもなく人に媚びる事もない。
公爵家に監視されている事も知らない訳ではないのに取り繕う事もしない。

ステファンは時間の許す限りミネルヴァーナを監視する公爵家を監視していた。
回数が増えるごとにミネルヴァーナを見る目に熱がこもるのを感じていた。

「はいはい。もう帰るよ!影武者だって何時までも寝台で寝てられないからねっ!」

フェルディナンドに腕を掴まれて引くように歩き始めたステファン。

「判ったよ。痛いから離せ」
「嫌だね。もう見るな!僕のモンなんだから!」

口を尖らせるフェルディナンドを見て「そろそろこいつも要らないな」と心で呟いた。
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