51 / 52
最終話♡ 見上げてごらん~
しおりを挟む
あれから3日。
ジェシカに王宮に引き留められて苦しいドレス生活。
やっと今日、解き放たれるときが来ましたの。
着替えが終わり、事業所を回ろうと部屋を出ますとアミナリンさんが待ってくれておりました。
「あの…返事なんですけども…」
「いつでもいいっス。俺もこんなに早く離縁と思わなかったんで」
「で、ですよねー」
えぇ。私も離縁のために呼び出されたとは思いもよらず。
意識をしてしまうとアミナリンさんの顔を見る事も出来ませんわ。
「この後はどうされるんスか?」
「そうですね。各事業があるので…回ろうかと」
「そっか。じゃぁ俺は先にパロンシン領に戻ります。いつでも…待ってるんで」
アミナリンさんは先に戻られたのですが…。
翌日もそのまた翌日も私は何も手につかないのです。
こんな事はなかったのに。
「お嬢様ァァァ」
「どうしたの?ルル?」
「体が…体がぁ」
「痛いの?何処が痛い?」
「あら汁が欠乏してルルはもうダメかも知れません」
「全然大丈夫そうね。はい、仕事して」
そうは言っても、私の仕事も全然捗っておらず山積み。
気が付けばパロンシン領で走り回っていた半年間を思い出してしまうのです。
「思うんですけど、事業の本拠地。移転しちゃえばいいと思うんですよ」
「何を言ってるの。移転ってどこに移転するのよ」
「パロンシン領です」
「あのね。ルル…」
ふと周囲を見ると事務所にいる全員がこちらをみて「うんうん」と頷いているのです。
だけど、現実的な事を考えると問題が御座います。
事業する上で連絡網が発達していない今は、時間のロスが致命的な失敗を生んでしまうこと。
そして、ホートベル侯爵家はもう私しかいないのです。
アミナリンさんの気持ちに応えてしまうとアミナリンさんはバリファン伯爵家を継がれます。
休眠中の爵位を持つ夫婦はいますが、夫婦で違う爵位の当主は成立しませんし、個人で爵位を捨てるのは簡単でも、お互いの肩には何十万という領民の生活があるのです。
「お嬢様」
「何?」
「あなたな~らどぉするぅ~」
「どうもしないわよ!早く仕事しなさい!」
予定していた滞在日数も過ぎ、必ずしも私が常駐しなければならない事もない。
既に赴任している担当も居て、事業には影響がないのです。
そう。誰か一人いなくなって停滞するような事業にはしていません。
それがこんなに心にぽっかりと穴をあけるような気持ちになるなんて。
答えが出ないまま、日常に忙殺され3か月の月日が経ったのです。
★~★
「お嬢様、お届け物ですよ」
「何かしら」
「じゃーん!!干物セットぉ~」
ルルが箱の蓋を開けた瞬間に部屋の中にぱぁっと磯の香が広がったのです。
聞けば加工場が完成し、第一便を送ってくれたのだとか。
「事務所を移転とか、爵位とかそういうの抜きにして行ってみたらどうです?」
かの日、パロンシン領に一緒に行った事業長。
到着して直ぐに隣の領に荷馬車などの手配に行ってくれた方です。
「何にも考えないで、ルルさんと観光。行ってみたらどうです?」
「そうね…気晴らしに行ってみようかしら」
「どうせなら慰安旅行ってどうです?」
「それは無理。宿屋がないもの」
「そっかぁ。一般の家に泊めてもらうってのもお互いに抵抗ありますしね」
「隣国じゃ民間宿泊ってのも出来たそうですけど、大変らしいですよ」
「民間宿泊事業やってみたらどうです?この前国から依頼の河川事業も終わって人、余ってますし」
なんだか無理やり行かせようとしてる気がしてならないわ。
そんな事を言われながら、ルルが早速手配をしてくれて出向くことになったのです。
貨物と一緒に馬車に揺られて、パロンシン領に到着をすると以前とはまるきり違っておりました。
「わぁ!!お嬢様。海側が全部畑になってますよ!」
「本当ね。たった3、4か月見なかっただけなのに」
「あれ?ナティさんじゃないか!ひっさしぶりぃ!!ルルたんもひっさしぶりぃ!どう?今夜。俺ん家であら汁食ってく?」
「行きます!行きます!茎ワカメもありますよね?!」
「おぉ~あるあるぅ!!もう山盛り入れちゃうよ?」
「やったぁ!!お嬢様、荷物お願いしますね!!」
「あっ!!ルル!!どこに行くの!!」
「あら汁祭りですぅ~」
領民の方と手を繋いでスキップしながら去っていくルル。
ルルの茎ワカメ推しは有名で御座いました。
あれ?確かあの領民さんは奥様を亡くされてたんじゃないかしら?
不貞じゃないならいいかな。
「もぅ。ルルの分も運ばなきゃいけないじゃない」
1人1つのトランクで御座いますが、両手となると足が地面にメリメリと埋もれそうですわ。
はぁはぁ息を切らせて歩くこと15分。
やっとバリファン伯爵家の屋根が見えて参りました。
バリファン伯爵家は少し内側になるので、ぎりぎり移転をしなかったのです。
――わぁ。相変わらず~直さないんだわ――
コッタンク様は自分よりもまず領民なので、家を修復するとすれば一番最後かも?
「こんにちは~」
あれ?留守?誰もいないのかしら。
でも背後に気配がある?そう思って振り返ると。
「わぁぁーっ!!!」
「そんなに驚かなくてもいいっしょ。どした?」
以前よりも日に焼けたアミナリンさんが立っておりました。
こんなに背が高かったかしら?
年齢が年齢ですし、3、4か月ですごく背が伸びる事はないと思うのですけど。
あったら知りたいわ。あと3cmでいいから足を伸ばしたいわ。
「アミナリンさん…ちょっと観光に」
「観光?見るような場所あったっけな?」
そう。パロンシン領は特にこれ!と言った観光スポットがないのです。
だから民間宿泊と言っても観光客がこなければ成り立たないのです。
「今じゃないけど、時間を置いたらいい場所知ってるッスよ」
「あら?そうなの?」
「取り敢えず荷物。運ぶ?俺、持つけど?」
「ありがとう~助かるぅ。出来ればもっと早く来てくれたらもっと助かった~」
「ハハハ。ごめんな」
夜になっても帰ってこないルル。
コッタンク様とカロルーナ様は「放っておいても大丈夫」と申しますけれどルルは食いしん坊でもありますから無理をいってあれこれ飲み食いをしているかと思うとドキドキします。
しかし、時間を置いたらいい場所がある。
そう言われたので、明日かな?と思っていたら「よし、寝るぞ」となった時にご指名で御座います。
しかも…
「しぃぃー。親父たち寝てっから」
と泥棒のように抜き足差し足でそっと玄関から出て、どこに行くのかと思えば港です。
「乗って。暗いから足元気ぃつけてな。ほら。手。足を付けたら船だから揺れっから」
「はい…おっとっと…どこに行くんです?」
「言ったろ?時間を置いたらいい場所があるって」
何処だろうと思いつつ、櫓をこぐアミナリンさんを見て、海に目をやると夜なので真っ黒な海。
少し怖い気も致しましたが、風が顔にかなり当たります。
かなりスピードがあるのは引き潮なので湾の外に流れる潮流に乗っているからでございました。
「よし。着いた。えぇーっと…ちょっと待ってな?」
「はい?」
ごそごそと何故か毛布を敷き始めたアミナリンさん。
何があるのかなと思えば…。
「寝っ転がって上、見てみな」
「え?寝るんですの?ここに?」
「そうそう。びっくりすっから。騙されたと思って寝てみ?」
まぁここまでくればアミナリンさんなので襲われはしないでしょうけども覚悟を決めます。
コロンと横になり上を見ると。
「わぁぁー。すごい!星だらけ!!」
「だろ?騙されて良かっただろ?」
「騙されてはないんだけど…こんな綺麗な夜空って初めて」
満天の星。空は夜で暗いのに星が無数に煌めいて、こんなに綺麗な空を見たのは本当に初めてで御座いました。
「そのままでいいからさ。聞いてよ」
「なんでしょう」
「帰ってきて考えた。俺は伯爵家を継がなきゃなんねぇし、ナティさんは侯爵家を継がなきゃなんねぇ。どっちもっていう両立はまず無理だ。それにここは国土の端っこ。事業をするにも色々手掛けているナティさんには不便の方が多い。だからさ…結婚って言っちまったけど…無理に考えなくていいかなって」
「そうなの…そうよねぇ。私も事業とかあってやーめたって放り投げる事は出来ないの」
「でも考えなくていいって思っても考えちまうんだよ。だからさ…3年は待つ気でいたし、そう考えるとあと2年?いきなり恋人とかは無理だけど…友達っていうか…あ~ダメだ。友達って言っといてナティさんが他の男と手ぇ繋いでたら絶対殴るわ。俺。どうしよう」
「どうしようって…フフっ。私、ここが好きなのかも。ずっと考えてて仕事も手に付かなかったの。それに来た時アミナリンさんを見てこんなに背が高かったかなとか。ほぼ一緒に居たのに。良かったら2年待ってくれると嬉しいかな。その間に私、アミナリンさんをよく見てみたいわ」
「よし!俺も男だ。3年は待つって決めてたんだから待つよ。その間に俺の事をじっくり見てくれ」
「こちらこそ。嫌なところも全部…きっと呆れちゃうかも?」
「俺が呆れることはないよ。逆かもな。会えない時は手紙を書くさ。2年経ったら今、空にある星より手紙の数が多いくらいに。字ィ…下手だけど」
「期待してるわ。私、綺麗な字より個性のある字の方が好きよ?」
2年後、アミナリンさんは婿養子に来てくださいました。
バリファン伯爵家は妹のビオヘルミさんが継ぎます。
手紙のやり取りで一向に進展しない事に業を煮やし、「私、家を継ぐ」とアミナリンさんが漁に出ている時に、2度目の王都訪問になるコッタンク様を連れてさっさと爵位譲渡を済ませてしまったのです。
入れ違うようにルルが「あら汁の君」の元に嫁いで行きました。
初夜、アミナリンさんが私に相談があると言います。
「相談?何の相談?」
「俺と結婚してくれてありがとう。一生、愛してもいいかな?」
「勿論よ。私もありがとう」
Fin
★~★
長い話にお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>
今回もコメント沢山いただきありがとうございます♡
遅い返信で御座いますけども、待って頂けると嬉しいです。
ふと見てみるとΣ( ̄□ ̄|||)
え?ランキングがやばい事になってました…
いつからなのか‥お礼が遅くなり申し訳ないっ!!
応援頂いたおかげです。ありがとうございます<(_ _)>
そして!!悲報!!
完結後なのに、気が付いたら「どS」じゃない「S」なアナタにアレがあります。
予定は多分金曜日あたり??
では、読んで頂きありがとうございました(=・ω・=)にゃ~♥
ジェシカに王宮に引き留められて苦しいドレス生活。
やっと今日、解き放たれるときが来ましたの。
着替えが終わり、事業所を回ろうと部屋を出ますとアミナリンさんが待ってくれておりました。
「あの…返事なんですけども…」
「いつでもいいっス。俺もこんなに早く離縁と思わなかったんで」
「で、ですよねー」
えぇ。私も離縁のために呼び出されたとは思いもよらず。
意識をしてしまうとアミナリンさんの顔を見る事も出来ませんわ。
「この後はどうされるんスか?」
「そうですね。各事業があるので…回ろうかと」
「そっか。じゃぁ俺は先にパロンシン領に戻ります。いつでも…待ってるんで」
アミナリンさんは先に戻られたのですが…。
翌日もそのまた翌日も私は何も手につかないのです。
こんな事はなかったのに。
「お嬢様ァァァ」
「どうしたの?ルル?」
「体が…体がぁ」
「痛いの?何処が痛い?」
「あら汁が欠乏してルルはもうダメかも知れません」
「全然大丈夫そうね。はい、仕事して」
そうは言っても、私の仕事も全然捗っておらず山積み。
気が付けばパロンシン領で走り回っていた半年間を思い出してしまうのです。
「思うんですけど、事業の本拠地。移転しちゃえばいいと思うんですよ」
「何を言ってるの。移転ってどこに移転するのよ」
「パロンシン領です」
「あのね。ルル…」
ふと周囲を見ると事務所にいる全員がこちらをみて「うんうん」と頷いているのです。
だけど、現実的な事を考えると問題が御座います。
事業する上で連絡網が発達していない今は、時間のロスが致命的な失敗を生んでしまうこと。
そして、ホートベル侯爵家はもう私しかいないのです。
アミナリンさんの気持ちに応えてしまうとアミナリンさんはバリファン伯爵家を継がれます。
休眠中の爵位を持つ夫婦はいますが、夫婦で違う爵位の当主は成立しませんし、個人で爵位を捨てるのは簡単でも、お互いの肩には何十万という領民の生活があるのです。
「お嬢様」
「何?」
「あなたな~らどぉするぅ~」
「どうもしないわよ!早く仕事しなさい!」
予定していた滞在日数も過ぎ、必ずしも私が常駐しなければならない事もない。
既に赴任している担当も居て、事業には影響がないのです。
そう。誰か一人いなくなって停滞するような事業にはしていません。
それがこんなに心にぽっかりと穴をあけるような気持ちになるなんて。
答えが出ないまま、日常に忙殺され3か月の月日が経ったのです。
★~★
「お嬢様、お届け物ですよ」
「何かしら」
「じゃーん!!干物セットぉ~」
ルルが箱の蓋を開けた瞬間に部屋の中にぱぁっと磯の香が広がったのです。
聞けば加工場が完成し、第一便を送ってくれたのだとか。
「事務所を移転とか、爵位とかそういうの抜きにして行ってみたらどうです?」
かの日、パロンシン領に一緒に行った事業長。
到着して直ぐに隣の領に荷馬車などの手配に行ってくれた方です。
「何にも考えないで、ルルさんと観光。行ってみたらどうです?」
「そうね…気晴らしに行ってみようかしら」
「どうせなら慰安旅行ってどうです?」
「それは無理。宿屋がないもの」
「そっかぁ。一般の家に泊めてもらうってのもお互いに抵抗ありますしね」
「隣国じゃ民間宿泊ってのも出来たそうですけど、大変らしいですよ」
「民間宿泊事業やってみたらどうです?この前国から依頼の河川事業も終わって人、余ってますし」
なんだか無理やり行かせようとしてる気がしてならないわ。
そんな事を言われながら、ルルが早速手配をしてくれて出向くことになったのです。
貨物と一緒に馬車に揺られて、パロンシン領に到着をすると以前とはまるきり違っておりました。
「わぁ!!お嬢様。海側が全部畑になってますよ!」
「本当ね。たった3、4か月見なかっただけなのに」
「あれ?ナティさんじゃないか!ひっさしぶりぃ!!ルルたんもひっさしぶりぃ!どう?今夜。俺ん家であら汁食ってく?」
「行きます!行きます!茎ワカメもありますよね?!」
「おぉ~あるあるぅ!!もう山盛り入れちゃうよ?」
「やったぁ!!お嬢様、荷物お願いしますね!!」
「あっ!!ルル!!どこに行くの!!」
「あら汁祭りですぅ~」
領民の方と手を繋いでスキップしながら去っていくルル。
ルルの茎ワカメ推しは有名で御座いました。
あれ?確かあの領民さんは奥様を亡くされてたんじゃないかしら?
不貞じゃないならいいかな。
「もぅ。ルルの分も運ばなきゃいけないじゃない」
1人1つのトランクで御座いますが、両手となると足が地面にメリメリと埋もれそうですわ。
はぁはぁ息を切らせて歩くこと15分。
やっとバリファン伯爵家の屋根が見えて参りました。
バリファン伯爵家は少し内側になるので、ぎりぎり移転をしなかったのです。
――わぁ。相変わらず~直さないんだわ――
コッタンク様は自分よりもまず領民なので、家を修復するとすれば一番最後かも?
「こんにちは~」
あれ?留守?誰もいないのかしら。
でも背後に気配がある?そう思って振り返ると。
「わぁぁーっ!!!」
「そんなに驚かなくてもいいっしょ。どした?」
以前よりも日に焼けたアミナリンさんが立っておりました。
こんなに背が高かったかしら?
年齢が年齢ですし、3、4か月ですごく背が伸びる事はないと思うのですけど。
あったら知りたいわ。あと3cmでいいから足を伸ばしたいわ。
「アミナリンさん…ちょっと観光に」
「観光?見るような場所あったっけな?」
そう。パロンシン領は特にこれ!と言った観光スポットがないのです。
だから民間宿泊と言っても観光客がこなければ成り立たないのです。
「今じゃないけど、時間を置いたらいい場所知ってるッスよ」
「あら?そうなの?」
「取り敢えず荷物。運ぶ?俺、持つけど?」
「ありがとう~助かるぅ。出来ればもっと早く来てくれたらもっと助かった~」
「ハハハ。ごめんな」
夜になっても帰ってこないルル。
コッタンク様とカロルーナ様は「放っておいても大丈夫」と申しますけれどルルは食いしん坊でもありますから無理をいってあれこれ飲み食いをしているかと思うとドキドキします。
しかし、時間を置いたらいい場所がある。
そう言われたので、明日かな?と思っていたら「よし、寝るぞ」となった時にご指名で御座います。
しかも…
「しぃぃー。親父たち寝てっから」
と泥棒のように抜き足差し足でそっと玄関から出て、どこに行くのかと思えば港です。
「乗って。暗いから足元気ぃつけてな。ほら。手。足を付けたら船だから揺れっから」
「はい…おっとっと…どこに行くんです?」
「言ったろ?時間を置いたらいい場所があるって」
何処だろうと思いつつ、櫓をこぐアミナリンさんを見て、海に目をやると夜なので真っ黒な海。
少し怖い気も致しましたが、風が顔にかなり当たります。
かなりスピードがあるのは引き潮なので湾の外に流れる潮流に乗っているからでございました。
「よし。着いた。えぇーっと…ちょっと待ってな?」
「はい?」
ごそごそと何故か毛布を敷き始めたアミナリンさん。
何があるのかなと思えば…。
「寝っ転がって上、見てみな」
「え?寝るんですの?ここに?」
「そうそう。びっくりすっから。騙されたと思って寝てみ?」
まぁここまでくればアミナリンさんなので襲われはしないでしょうけども覚悟を決めます。
コロンと横になり上を見ると。
「わぁぁー。すごい!星だらけ!!」
「だろ?騙されて良かっただろ?」
「騙されてはないんだけど…こんな綺麗な夜空って初めて」
満天の星。空は夜で暗いのに星が無数に煌めいて、こんなに綺麗な空を見たのは本当に初めてで御座いました。
「そのままでいいからさ。聞いてよ」
「なんでしょう」
「帰ってきて考えた。俺は伯爵家を継がなきゃなんねぇし、ナティさんは侯爵家を継がなきゃなんねぇ。どっちもっていう両立はまず無理だ。それにここは国土の端っこ。事業をするにも色々手掛けているナティさんには不便の方が多い。だからさ…結婚って言っちまったけど…無理に考えなくていいかなって」
「そうなの…そうよねぇ。私も事業とかあってやーめたって放り投げる事は出来ないの」
「でも考えなくていいって思っても考えちまうんだよ。だからさ…3年は待つ気でいたし、そう考えるとあと2年?いきなり恋人とかは無理だけど…友達っていうか…あ~ダメだ。友達って言っといてナティさんが他の男と手ぇ繋いでたら絶対殴るわ。俺。どうしよう」
「どうしようって…フフっ。私、ここが好きなのかも。ずっと考えてて仕事も手に付かなかったの。それに来た時アミナリンさんを見てこんなに背が高かったかなとか。ほぼ一緒に居たのに。良かったら2年待ってくれると嬉しいかな。その間に私、アミナリンさんをよく見てみたいわ」
「よし!俺も男だ。3年は待つって決めてたんだから待つよ。その間に俺の事をじっくり見てくれ」
「こちらこそ。嫌なところも全部…きっと呆れちゃうかも?」
「俺が呆れることはないよ。逆かもな。会えない時は手紙を書くさ。2年経ったら今、空にある星より手紙の数が多いくらいに。字ィ…下手だけど」
「期待してるわ。私、綺麗な字より個性のある字の方が好きよ?」
2年後、アミナリンさんは婿養子に来てくださいました。
バリファン伯爵家は妹のビオヘルミさんが継ぎます。
手紙のやり取りで一向に進展しない事に業を煮やし、「私、家を継ぐ」とアミナリンさんが漁に出ている時に、2度目の王都訪問になるコッタンク様を連れてさっさと爵位譲渡を済ませてしまったのです。
入れ違うようにルルが「あら汁の君」の元に嫁いで行きました。
初夜、アミナリンさんが私に相談があると言います。
「相談?何の相談?」
「俺と結婚してくれてありがとう。一生、愛してもいいかな?」
「勿論よ。私もありがとう」
Fin
★~★
長い話にお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>
今回もコメント沢山いただきありがとうございます♡
遅い返信で御座いますけども、待って頂けると嬉しいです。
ふと見てみるとΣ( ̄□ ̄|||)
え?ランキングがやばい事になってました…
いつからなのか‥お礼が遅くなり申し訳ないっ!!
応援頂いたおかげです。ありがとうございます<(_ _)>
そして!!悲報!!
完結後なのに、気が付いたら「どS」じゃない「S」なアナタにアレがあります。
予定は多分金曜日あたり??
では、読んで頂きありがとうございました(=・ω・=)にゃ~♥
2,059
お気に入りに追加
3,066
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
王子様、あなたの不貞を私は知っております
岡暁舟
恋愛
第一王子アンソニーの婚約者、正妻として名高い公爵令嬢のクレアは、アンソニーが自分のことをそこまで本気に愛していないことを知っている。彼が夢中になっているのは、同じ公爵令嬢だが、自分よりも大部下品なソーニャだった。
「私は知っております。王子様の不貞を……」
場合によっては離縁……様々な危険をはらんでいたが、クレアはなぜか余裕で?
本編終了しました。明日以降、続編を新たに書いていきます。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる