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第37話♡  手を握られて、誘われた場所

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2週間もすると街道沿いのゴミはほぼ無くなり、今度は雑木林や沢に投棄されたゴミを集めます。

子供たちが道に落ちている小石を拾ってくれると、1回目の招集では手を挙げてくれなかった領民が自主的に動き始めたのです。

「何をされてるんです?」

「あ、あの…その…穴を埋めようと思いまして…」

石畳みで舗装をされているわけではないので、雨が降ると水溜まりになる箇所に土を入れて、踏んで固めて出来るだけ平らになるようにしてくださっておりました。

山の縁もゴミで隠れておりましたが、通行に邪魔になる枝などを落とし、芝サクラなどを植えてくださる方もいます。

今更雇ってくれとは言えず、かといって黙って見ている事も出来ず、自分の出来ることをしてくださっておりました。

「現在、漁はお休みなのでしょう?」

「まぁ…はい…。気分転換にちょこっと行くくらいで」

「ならもうすぐ荷が到着をするのでさらに人が必要なのです。お知り合いにもお声がけ頂いて助けて頂けるとありがたいですわ」

「いいのか?もう募集は終わってるんじゃ…」

「まだまだです。これからさらに力自慢の方が必要なのですよ?」

ゴミが片付けば土の入れ替えと防潮堤、そして家屋の解体と建設が始まるのです。
人は幾らでも欲しいですわ。


☆~☆

「うっわぁ…これパロンシン領?!」

「見て、お兄ちゃん!ゴミがあったところに花も植えられてる!」

「気が付いたか?ビオ」

「うん。馬車が揺れない…道がボコボコしてない!」

<< なんということでしょう~ >>


アミナリンさんとビオヘルミさんは直近でのビフォーを知っているので、まさにビフォーアフターとなった領地を目を丸くして感嘆の声を上げっぱなしで御座います。

馬車が広場に到着をすると、轟轟と燃えるゴミを見て「納得~」と頷いて下さり、アミナリンさんは私の前に駆けて来ると手を握り、ブンブンと振りながら「ありがとう!!」何故か抱きしめられてしまいました。

ハグを通り越し、明らかに抱きしめられておりますがビオヘルミさんが「トゥ!」手刀を軽くアミナリンさんの額に落とすと離れてくださいました。


到着をしたばかりだというのに、ビオヘルミさんに「疲れたろ。家で休め」と告げたのにアミナリンさんは精力的で御座います。

「親父、これ、王都土産」

ほいっと紙袋を手渡したアミナリンさんで御座いますが、コッタンク様がガサガサと紙袋から中身を取り出すと…。

――え?あれって王都土産?――

いえいえ、違いますよね?
確かここに向かっている途中で隣の領地の幾つ目かの休憩所で売ってるのを見ましたもの。

「アミナリン…製造者が隣の領地の菓子屋なんだが」

「き、気のせいじゃないか?」

絶対に気のせいではないでしょう。
お土産を買い忘れて途中でそれっぽいのを買うけど即バレ。あるあるですわ。


そんなアミナリンさん。
またもや私の手を握っております。

決してハートが飛び交ったり、ハートのエースが出てこない訳では御座いません。

純粋にお誘い頂いたのです。
色気も何もない肥料焼けの畑に。


「土とコーングルテンミールが届く前に農地を見て欲しいんスよ」

「一応コッタンク様にはご案内頂いておりますよ?」

「そうなんだけど。俺がやっちまった事だし。俺からちゃんと説明するのが筋って思うんだ」


案内をされた場所はコッタンク様に案内された場所とはまた違う場所。一番追肥をしてしまった場所との事で、連作をすればいいと聞き、王都に行く前に野菜の苗を植えたそうですが…。


「見事に葉っぱも真っ白になっちまってる」

ずぼっと苗を引き抜けば根っこが真っ黒。土がついて真っ黒なのではなく、肥料焼けで根が腐っているのです。

「くそっ!いくら俺が白か黒かはっきりしろって言っちまう性格だとしても!!」

それ、性格と関係ないですわよ?
白い葉っぱに黒い根っこ。肥料焼けの特徴ですもん。

ですが、アミナリンさんは優しい人なのでしょう。

このまま枯れるのを待つだけの苗を「ごめんな」と声を掛けながら抜き始めたのです。

「ナティさんはここにどンくらい居てくれるんスか?」

あら?アミナリンさん。涙声になっていらっしゃる?

ついつい可愛いと思ってしまい、適当に返してしまいました。

「望まれるならいつまでも」
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