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第24話♠ 誰も私を待ってなかった
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何と滑稽な事だろうか。
よくよく考えてみれば私は第2王子なのだ。万が一を考えて父上や母上が間諜を密かにつけている事など解っていたはずなのに。
皆、知っていたのだ。
ファリティも知っていると言っていたじゃないか。
見て見ぬふり。いや違う。
ルシェルの事ばかりで、大事なことから目を背け、都合が悪いと自分が「これなら」と納得できる考えに歪めていただけで、やはりイサミアは役には立たないし、いくらルシェルの事が可愛い、愛しいと思っても側に置くべきではなかったのだ。
このままでは廃嫡までまっしぐらだ。
廃嫡となれば平民。イサミア達と同じ身分にはなるが、元王子である限り私は平穏無事に生きることは出来ない。
私は今、人生の岐路に立っている。
頭の中では解っている。
ルシェルをきっぱりと諦めてファリティに謝罪し、関係を再構築する。
おそらくこの方法が身分もこのまま、生活も変えることなく余生を過ごせる唯一の方法だ。
どこかにルシェルを匿い、愛人とする。そんな事をもう考えている時間はない。
しかし…真実の愛を諦めるのがこんなに身を切られるほど辛いことだなんて。
泣きたいのだが、情けなさが先に立って涙すら出てこない。
馬車に揺られて宮まで戻ってきたのだが、玄関に馬車が横付けする前から異変を感じた。
正門から玄関までの門道では何も感じなかったが、玄関に数人の使用人が出ていた。
「なんだ。殿下か」
使用人が私の馬車だと確認をすると何故か気落ちしてボヤく。
宮の主が帰ってくることに何故そんな言動をするのか意味が判らない。
部屋に戻ったらこいつの解雇書類を作成し、突きつけてやる!
馬車を降り、開かれたままの玄関から玄関ホールを見て、彼らが私待っていたのではないのを知った。
整列をしているなどそういう事ではない。
玄関ホールの中央から玄関扉寄りに後ろ手になり並んで座らされている3人。
使用人たちは私ではなく、騎士団を待っていたのだ。
が‥‥解せぬ!!
何故ルシェルが後ろ手になりまるで賊のように捕縛され座らされて連行待ちなんだ?
「どうしたのだ」
理由が判らない以上、問うしかない。私は近くに居た従者に問うた。
「殿下、お連れ様たちがこちらを盗み出そうとしましたので取り押さえました」
「え?これって…」
私は自分の目の前に箱に入れられて突き出された品を見て息を飲んだ。
私の私室からしか行けない部屋に保管してある宝飾品だった。
男性の用の耳飾りや、正装をした時の胸や肩につける胸章や肩章。カフスにタイピン。
それらの中にこんな雑多な扱いをされていい品ではないものもあった。
それは私がファリティと結婚をした時に、母上から「王子妃が身につける物」として…義母としてではなく王妃としての立場から贈るとわざわざ言葉も一緒に賜った宝飾品があった。
同じく私が第2王子であるが故に持つ宝飾品もある。
箱の中にごちゃごちゃになり纏めて入れられているが、その2つだけはそんな扱いをしていいものじゃない。
台座から石を外すと台座には王家の紋が刻印されていて、王族であることを証明するもの。
本当はファリティが持っていなければならないのだが、あの時の私はファリティと離縁しルシェルと再婚することを考えていたので、ファリティがゴネてこの宝飾品を離縁時に持って行かれては困ると渡さず持っていたのだ。
「何故これがここに?」
「盗まれそうになった証拠品だからです」
「そうじゃない!この…」
取り敢えずは王族の証となる宝飾品を手に取ろうとしたが「ダメです」使用人に一喝されてしまった。
「証拠品と言いましたよね?騎士団に提出しますので返却されるのを待ってください」
「待てるわけないだろう。もし騎士団ですり替えられたらどうするんだ!」
「そういう品は大事に保管すべきです。少なくとも2重、3重の施錠をするなりして」
そう言いながら使用人は視線をルシェルに移した。
まさか?ルシェルが盗んだ?そんな筈はないと思い、縛られたルシェルの前に膝をつき、ルシェルの肩に手を置いた。
「レアンドロ様。みんな酷いんです」
「そうか。そうだよな。ルシェルが賊と間違われるなんて何かの間違いだ」
「そうですよね。本当に失礼だわ。私は執務机の後ろにも扉があったから、開けたら部屋だっただけです」
「え?でもその扉は施錠してあっただろう?」
「鍵?あぁレアンドロ様はいつも鍵とか引き出しの上から3番目に入れてるでしょ?そこにありましたよ?」
ちょっと待て。
だからと言って入るのか?断りもなく?
ますます混乱してしまう。
頭をよぎるのは「イサミアと同類」という不安な文字。
「だからと言って勝手に鍵を開けて入るなんて」
「入らないでって言われてませんよ?レアンドロ様、そんな事言いました?」
確かにルシェルの事は愛しているし、執務室に呼んだりしたのは私だ。あの部屋に入るなと言った事もないがそもそも施錠されている部屋に入るか?興味があっても「鍵、かかってる」って諦めないか?
だとしても!だとしてもだ!
机の引き出しから勝手に鍵を取り出して家探しのような事を普通するか?
私の常識が試されているんだろうか。
ふと周囲を見た。
使用人の視線が痛い。
ついでに私の心も痛い。
ルシェル、君の言動も痛いのは何故だ?!
よくよく考えてみれば私は第2王子なのだ。万が一を考えて父上や母上が間諜を密かにつけている事など解っていたはずなのに。
皆、知っていたのだ。
ファリティも知っていると言っていたじゃないか。
見て見ぬふり。いや違う。
ルシェルの事ばかりで、大事なことから目を背け、都合が悪いと自分が「これなら」と納得できる考えに歪めていただけで、やはりイサミアは役には立たないし、いくらルシェルの事が可愛い、愛しいと思っても側に置くべきではなかったのだ。
このままでは廃嫡までまっしぐらだ。
廃嫡となれば平民。イサミア達と同じ身分にはなるが、元王子である限り私は平穏無事に生きることは出来ない。
私は今、人生の岐路に立っている。
頭の中では解っている。
ルシェルをきっぱりと諦めてファリティに謝罪し、関係を再構築する。
おそらくこの方法が身分もこのまま、生活も変えることなく余生を過ごせる唯一の方法だ。
どこかにルシェルを匿い、愛人とする。そんな事をもう考えている時間はない。
しかし…真実の愛を諦めるのがこんなに身を切られるほど辛いことだなんて。
泣きたいのだが、情けなさが先に立って涙すら出てこない。
馬車に揺られて宮まで戻ってきたのだが、玄関に馬車が横付けする前から異変を感じた。
正門から玄関までの門道では何も感じなかったが、玄関に数人の使用人が出ていた。
「なんだ。殿下か」
使用人が私の馬車だと確認をすると何故か気落ちしてボヤく。
宮の主が帰ってくることに何故そんな言動をするのか意味が判らない。
部屋に戻ったらこいつの解雇書類を作成し、突きつけてやる!
馬車を降り、開かれたままの玄関から玄関ホールを見て、彼らが私待っていたのではないのを知った。
整列をしているなどそういう事ではない。
玄関ホールの中央から玄関扉寄りに後ろ手になり並んで座らされている3人。
使用人たちは私ではなく、騎士団を待っていたのだ。
が‥‥解せぬ!!
何故ルシェルが後ろ手になりまるで賊のように捕縛され座らされて連行待ちなんだ?
「どうしたのだ」
理由が判らない以上、問うしかない。私は近くに居た従者に問うた。
「殿下、お連れ様たちがこちらを盗み出そうとしましたので取り押さえました」
「え?これって…」
私は自分の目の前に箱に入れられて突き出された品を見て息を飲んだ。
私の私室からしか行けない部屋に保管してある宝飾品だった。
男性の用の耳飾りや、正装をした時の胸や肩につける胸章や肩章。カフスにタイピン。
それらの中にこんな雑多な扱いをされていい品ではないものもあった。
それは私がファリティと結婚をした時に、母上から「王子妃が身につける物」として…義母としてではなく王妃としての立場から贈るとわざわざ言葉も一緒に賜った宝飾品があった。
同じく私が第2王子であるが故に持つ宝飾品もある。
箱の中にごちゃごちゃになり纏めて入れられているが、その2つだけはそんな扱いをしていいものじゃない。
台座から石を外すと台座には王家の紋が刻印されていて、王族であることを証明するもの。
本当はファリティが持っていなければならないのだが、あの時の私はファリティと離縁しルシェルと再婚することを考えていたので、ファリティがゴネてこの宝飾品を離縁時に持って行かれては困ると渡さず持っていたのだ。
「何故これがここに?」
「盗まれそうになった証拠品だからです」
「そうじゃない!この…」
取り敢えずは王族の証となる宝飾品を手に取ろうとしたが「ダメです」使用人に一喝されてしまった。
「証拠品と言いましたよね?騎士団に提出しますので返却されるのを待ってください」
「待てるわけないだろう。もし騎士団ですり替えられたらどうするんだ!」
「そういう品は大事に保管すべきです。少なくとも2重、3重の施錠をするなりして」
そう言いながら使用人は視線をルシェルに移した。
まさか?ルシェルが盗んだ?そんな筈はないと思い、縛られたルシェルの前に膝をつき、ルシェルの肩に手を置いた。
「レアンドロ様。みんな酷いんです」
「そうか。そうだよな。ルシェルが賊と間違われるなんて何かの間違いだ」
「そうですよね。本当に失礼だわ。私は執務机の後ろにも扉があったから、開けたら部屋だっただけです」
「え?でもその扉は施錠してあっただろう?」
「鍵?あぁレアンドロ様はいつも鍵とか引き出しの上から3番目に入れてるでしょ?そこにありましたよ?」
ちょっと待て。
だからと言って入るのか?断りもなく?
ますます混乱してしまう。
頭をよぎるのは「イサミアと同類」という不安な文字。
「だからと言って勝手に鍵を開けて入るなんて」
「入らないでって言われてませんよ?レアンドロ様、そんな事言いました?」
確かにルシェルの事は愛しているし、執務室に呼んだりしたのは私だ。あの部屋に入るなと言った事もないがそもそも施錠されている部屋に入るか?興味があっても「鍵、かかってる」って諦めないか?
だとしても!だとしてもだ!
机の引き出しから勝手に鍵を取り出して家探しのような事を普通するか?
私の常識が試されているんだろうか。
ふと周囲を見た。
使用人の視線が痛い。
ついでに私の心も痛い。
ルシェル、君の言動も痛いのは何故だ?!
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