23 / 52
第23話♡ 嗅ぐときは吸い込む
しおりを挟む
ジェシカの人選を疑うつもりはないけれど、日を追うごとに「濃い」御夫人が増えるのは気のせいかしら。
社交界を生き抜いてきた御夫人方は抜け目が御座いません。
勿論私の提唱する事業に賛同いただき、融資を約束頂いた家もあるのですが時に見返りを求める方もいらっしゃるのです。
「ありがたい神様のお話なの。一度一緒に行かない?」
「いえ、礼拝なら教会に行ってますわ」
「大丈夫。この神様はお布施次第で目を瞑ってくれるわ」
それは神様じゃなくて「いんちきグル」だと思うのですわ。
怪しい新興宗教特有なのに信心の度合いが獲得信者数とお布施の額っておかしいと気が付かないのかしら。
「3分でいいの。貴女の幸せを祈らせて」
無理です。その3分間で脳内に警報がピコンピコン鳴り響きますわ。
それに幸せは祈ってもダメ。向こうから歩いてきてはくれません。
1日1歩、3日で3歩。そして2歩下がるふりして前進あるのみですわ。
さらに…。
「ねぇ。一度説明会に一緒に行かない?」
どうしてこうも怪しい勧誘は「一緒に行こう」と初回の顔合わせを強引に進めるのかしら。
「とってもいい商品ばかり扱ってるの。貴女が安く買えるだけじゃないわ。貴女が紹介してくれた人が買うとマージンも手に入るのよ」
それって1人会員を入会させるたびにお手当も出る奴ですよね。
マージンを割り振るなら一般にもっと安く売れるんじゃないの?
隣国で開通したグルグルダンスなチューチュー列車ならまだしも、「ねぇ行きましょうよ」と肩を掴まれてブンブンされると三半規管がマヒして脳内グルグルダンスになってしまうわ。
ファンファンしてステップ踏み出しても目が回ってるから千鳥足になっちゃうわよ。
勧誘をすり抜ける技の習得も必要だわと、ぐったりとしているとジェシカがやって参りました。
「ごめんねぇ。ほら、不穏分子ってどこにいるか判らないじゃない?いい機会だから炙りだししてるの」
「ジェシカ。炙りだしはミカンとかリンゴの果汁で紙に絵を描くだけにしといて」
「え?何それ…密約書とか暗号とかそんな感じなの?」
まさか!ジェシカ。知らなかったの?
爵位によって家庭教師は教えないのかしら。
そう言えばジェシカはアルコールランプも使ったことないって言ってたわね。
あ、でも確かに暗号っぽいかも知れないわ。
炙りだしで絵や文字が浮き出て来るもの。
ただ私は蝋燭に近づけすぎて灰にしてしまう事が多かったからまさか暗号を隠蔽したってこと?!
「どうでもいいけど、折角融資してくれる人を探しているのに‥」
「いいじゃない。金の臭いがする所に悪い奴も群がるのよ。今日の人選も素敵でしょう?ラケナイン公爵夫人は本当に痒いところに手が届くのよ♡ムッヒッヒ♡」
言いえて妙だわ。
かの日、私は悪代官のようにレオナルド様にちょこっと入れ知恵を致しましたが、ジェシカ…。私は今、貴女が「お主もワルよのぅ」って悪い顔で微笑みかけそうで怖いわ。
それに夫の公爵のウコナーワ氏もだけど、ラケナイン公爵夫人は顔が広すぎるのよ。
守備範囲が広いって言うのかしら。
大っぴらに私が噛んでると浸透しないといいんだけど、これくらいじゃないと王子妃って務まらないのかも知れないわね。
そんな事を考えておりますと、大きな体を小さく丸めたアミナリンさんが1人ぽつんとテーブルにいらっしゃいます。
「アミナリンさん。どうなさいました?」
「いやぁ…慣れなくて。なんていうか‥磯の香はいいんですけど香水はちょっと」
香水の香りは苦手な方もいらっしゃいますものね。
特に女性ばかりの集まりになると目立とうとしてバシャバシャと浴びるように振りかけて来る人も多いので、会場は香りが混ざり合って鼻が曲がりそうですもの。
「今日は屋外で良かったですわね」
「そうっスね。先日のサロンでやった時は限界突破が5回だったっスよ」
なんの限界だったのかは自主規制ですわね。
「ナティさんの匂いは気にならないのになぁ」
「あら。そうですの?」
おかしいわね。
私は香水は付けないのですけども…知らない間にスメルハラスメントをしてしまっていたのかしら。だとしたら申し訳ないわ。
「臭います?」
「うーん…なんていうか。ナティさんの香りって素潜りした時にアラメ見つけた!ってな感じなんスよ」
無茶苦茶想像しにくい香りね。喜んでいいのかしら。
パフューマーもきっとお手上げよ。
それに私は一応パロンシン領で獲れる特産品を聞いたから知ってるけど、ワカメ、ヒジキはご存じの方が多いでしょうがアラメはニッチ過ぎない?
ん?待って。
素潜りでしょう?嗅ぐときは吸い込むんだから鼻が痛くなるんじゃないの?
もしかするとアミナリンさんそのものがニッチなのかも知れませんわね。
取り敢えず、笑っておきましたわ。
社交界を生き抜いてきた御夫人方は抜け目が御座いません。
勿論私の提唱する事業に賛同いただき、融資を約束頂いた家もあるのですが時に見返りを求める方もいらっしゃるのです。
「ありがたい神様のお話なの。一度一緒に行かない?」
「いえ、礼拝なら教会に行ってますわ」
「大丈夫。この神様はお布施次第で目を瞑ってくれるわ」
それは神様じゃなくて「いんちきグル」だと思うのですわ。
怪しい新興宗教特有なのに信心の度合いが獲得信者数とお布施の額っておかしいと気が付かないのかしら。
「3分でいいの。貴女の幸せを祈らせて」
無理です。その3分間で脳内に警報がピコンピコン鳴り響きますわ。
それに幸せは祈ってもダメ。向こうから歩いてきてはくれません。
1日1歩、3日で3歩。そして2歩下がるふりして前進あるのみですわ。
さらに…。
「ねぇ。一度説明会に一緒に行かない?」
どうしてこうも怪しい勧誘は「一緒に行こう」と初回の顔合わせを強引に進めるのかしら。
「とってもいい商品ばかり扱ってるの。貴女が安く買えるだけじゃないわ。貴女が紹介してくれた人が買うとマージンも手に入るのよ」
それって1人会員を入会させるたびにお手当も出る奴ですよね。
マージンを割り振るなら一般にもっと安く売れるんじゃないの?
隣国で開通したグルグルダンスなチューチュー列車ならまだしも、「ねぇ行きましょうよ」と肩を掴まれてブンブンされると三半規管がマヒして脳内グルグルダンスになってしまうわ。
ファンファンしてステップ踏み出しても目が回ってるから千鳥足になっちゃうわよ。
勧誘をすり抜ける技の習得も必要だわと、ぐったりとしているとジェシカがやって参りました。
「ごめんねぇ。ほら、不穏分子ってどこにいるか判らないじゃない?いい機会だから炙りだししてるの」
「ジェシカ。炙りだしはミカンとかリンゴの果汁で紙に絵を描くだけにしといて」
「え?何それ…密約書とか暗号とかそんな感じなの?」
まさか!ジェシカ。知らなかったの?
爵位によって家庭教師は教えないのかしら。
そう言えばジェシカはアルコールランプも使ったことないって言ってたわね。
あ、でも確かに暗号っぽいかも知れないわ。
炙りだしで絵や文字が浮き出て来るもの。
ただ私は蝋燭に近づけすぎて灰にしてしまう事が多かったからまさか暗号を隠蔽したってこと?!
「どうでもいいけど、折角融資してくれる人を探しているのに‥」
「いいじゃない。金の臭いがする所に悪い奴も群がるのよ。今日の人選も素敵でしょう?ラケナイン公爵夫人は本当に痒いところに手が届くのよ♡ムッヒッヒ♡」
言いえて妙だわ。
かの日、私は悪代官のようにレオナルド様にちょこっと入れ知恵を致しましたが、ジェシカ…。私は今、貴女が「お主もワルよのぅ」って悪い顔で微笑みかけそうで怖いわ。
それに夫の公爵のウコナーワ氏もだけど、ラケナイン公爵夫人は顔が広すぎるのよ。
守備範囲が広いって言うのかしら。
大っぴらに私が噛んでると浸透しないといいんだけど、これくらいじゃないと王子妃って務まらないのかも知れないわね。
そんな事を考えておりますと、大きな体を小さく丸めたアミナリンさんが1人ぽつんとテーブルにいらっしゃいます。
「アミナリンさん。どうなさいました?」
「いやぁ…慣れなくて。なんていうか‥磯の香はいいんですけど香水はちょっと」
香水の香りは苦手な方もいらっしゃいますものね。
特に女性ばかりの集まりになると目立とうとしてバシャバシャと浴びるように振りかけて来る人も多いので、会場は香りが混ざり合って鼻が曲がりそうですもの。
「今日は屋外で良かったですわね」
「そうっスね。先日のサロンでやった時は限界突破が5回だったっスよ」
なんの限界だったのかは自主規制ですわね。
「ナティさんの匂いは気にならないのになぁ」
「あら。そうですの?」
おかしいわね。
私は香水は付けないのですけども…知らない間にスメルハラスメントをしてしまっていたのかしら。だとしたら申し訳ないわ。
「臭います?」
「うーん…なんていうか。ナティさんの香りって素潜りした時にアラメ見つけた!ってな感じなんスよ」
無茶苦茶想像しにくい香りね。喜んでいいのかしら。
パフューマーもきっとお手上げよ。
それに私は一応パロンシン領で獲れる特産品を聞いたから知ってるけど、ワカメ、ヒジキはご存じの方が多いでしょうがアラメはニッチ過ぎない?
ん?待って。
素潜りでしょう?嗅ぐときは吸い込むんだから鼻が痛くなるんじゃないの?
もしかするとアミナリンさんそのものがニッチなのかも知れませんわね。
取り敢えず、笑っておきましたわ。
1,588
お気に入りに追加
3,178
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
王太子殿下の子を授かりましたが隠していました
しゃーりん
恋愛
夫を亡くしたディアンヌは王太子殿下の閨指導係に選ばれ、関係を持った結果、妊娠した。
しかし、それを隠したまますぐに次の結婚をしたため、再婚夫の子供だと認識されていた。
それから10年、王太子殿下は隣国王女と結婚して娘が一人いた。
その王女殿下の8歳の誕生日パーティーで誰もが驚いた。
ディアンヌの息子が王太子殿下にそっくりだったから。
王女しかいない状況で見つかった王太子殿下の隠し子が後継者に望まれるというお話です。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。
しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。
相手は10歳年上の公爵ユーグンド。
昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。
しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。
それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。
実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。
国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。
無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる