上 下
21 / 52

第21話♡  ブランド野菜を海水で

しおりを挟む
「凄いですね…こんなすごいところ初めてです」

ビオヘルミさんが第1王子ライオネル様の宮、通称琥珀の宮の奥深く…に足を踏み入れると感嘆の声を漏らしております。

解るわぁ。私も最初に来た時は「初めのいぃぃっぽ」が踏み出せずに小鹿の如く足をガクブルでしたもの。ですがそこで間諜のサミュエル様とお会いしまして、「威嚇の第一歩だ!」とファイティングポーズを教えて頂きましたの。

今では繰り出すパンチは猫パンチですが恰好だけは一人前ですわ。
そう、わたくし「来るなら来い!」と受け身については何時襲われてもダイジョブダイジョブ~と笑ってかわせますが、攻めることが出来ないのです。


「ところで…海側に畑を作っても大丈夫なんですか?」

「勿論!むしろ海側だからこそ!のブランド野菜を育てるのです」


私の計画では隣国で見た「アスパラガス」がイチオシで御座います。
えぇ。ルルと夜中にこっそり宿屋を抜け出し、アスパラガスのバター炒めを食しまして、虜になったのです。

このアスパラガスをピッツァのトッピングにした時のホクホク&シャクっと感!

あの味をもう一度!!あの食感をリメンバー!
切なる願いですわ。


「ブランド野菜って無理ですよ…元々パロンシン領の土地ってそんなに肥沃でもないんです」

「だから良いんですよ!今回、これでもかー!ってアミナリン様が肥料を投入されたでしょう?」

「えぇ…お恥ずかしながら兄はゼロか100かみたいなところがあるんです。何をするにも全力なのでここに来る途中も大変でした」

なんてことなの。
生き様がデッドオアアライブだなんて。
いったい何があったのかしら。

「来る途中、幌馬車の乗客が食べていたパンが奪われたです」

「まぁ。まさか幌馬車で強盗とは…驚きますわね」

「いえ、相手は人じゃないんです。ハトだったんです」

まさかのハト。

でもハトを相手に何をしたの…まさかと思うけど。

「指をバーンな形にして豆鉄砲だと…当たりませんでしたけどね」

当たったらこっちがびっくりよ。
ハトも本気で豆鉄砲ならぬバーン食らうとは思わないでしょうし。

「でも、兄は本気でして。そういう無鉄砲なところがあるんです」

ビオヘルミさん、それ無鉄砲とはちょっと違うと思うわ。
1つ間違うと本気で痛い人になるから注意して差し上げて?


「でもね、肥料を大量に投入されているからこそ、海側に畑を作って今の畑から持ってくる少しの量で事足りるのよ」

「何を栽培しようと?」

「トマト。それからキャベツにホウレンソウ。忘れてならないのはアスパラガスね」

「出来るんですか?!潮風もあるんですよ?」

「それが良いの。この他にもブロッコリーとか。実はね、野菜とか散水するでしょう?その散水する水に海水を使うのよ」

「海水を?!枯れちゃいますよ!」

「そう思うでしょう?これが違うの。確かにヒタヒタにするくらいだと枯れてしまうんだけど、散水する程度なら海水でも十分に育つの。でも海水がダメな物もあるの。トウモロコシとか豆類はダメね」

「そうなんだぁ。全然知らなかったです」

「トマトとか海水で育てると普通の水で育てたトマトより糖度が倍近くになるのよ。絶対に売れるわ。これでチーズとマッシュルーム、そして唐辛子パラパラしたピッツァを食べると最高よ。あ。トッピングはアスパラガスとほうれん草ね」

「唐辛子?唐辛子ってなんです?」

「隣国で手に入れたスパイスの1種よ。そういえば鰤を養殖されているのよね」

「はい」

「切り身を焼いてピリ辛に煮つけた魚料理もあったわね。そういうのも販促考えてみなくちゃ」


ビオヘルミさんの緊張も解けて来たようですし、この先に待ち受けるご婦人方と早速プチお茶会で融資をご相談させて頂かなくっちゃ♡

働かざる者、食うべからずですものね。
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

【完結】あなたは知らなくていいのです

楽歩
恋愛
無知は不幸なのか、全てを知っていたら幸せなのか  セレナ・ホフマン伯爵令嬢は3人いた王太子の婚約者候補の一人だった。しかし王太子が選んだのは、ミレーナ・アヴリル伯爵令嬢。婚約者候補ではなくなったセレナは、王太子の従弟である公爵令息の婚約者になる。誰にも関心を持たないこの令息はある日階段から落ち… え?転生者?私を非難している者たちに『ざまぁ』をする?この目がキラキラの人はいったい… でも、婚約者様。ふふ、少し『ざまぁ』とやらが、甘いのではなくて?きっと私の方が上手ですわ。 知らないからー幸せか、不幸かーそれは、セレナ・ホフマン伯爵令嬢のみぞ知る ※誤字脱字、勉強不足、名前間違いなどなど、どうか温かい目でm(_ _"m)

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

処理中です...