至らない妃になれとのご相談でしたよね

cyaru

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第06話♡  ごめんなさいね?My・GOD

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初夜の翌日。
何処かしら不調を訴えるのが常の様ですけども、ぐっすりと睡眠を久しぶりに貪り目覚めも良かった私は約束の10時に間に合うように宮を出発致しました。

正教会に行く前に大商会の会頭夫妻にお願いせねばならない事も御座います。
話は事前につけてあると言っても、やはりきちんとご挨拶は必要で御座いますわ。


「ファリティはどうした?」

「妃殿下は1時間ほど前にお出かけになりましたが?」

「嘘だろ?一緒に行くんじゃなかったのか?」

「私に申されましても…」

「お前に言ったんじゃない。うわっ!もう出ないと遅れるじゃないか。馬車を出してくれ」


後で合流した従者に問えばそんなやり取りがあったのだとか。
私、一緒に行くとは約束しておりませんのに。

約束をしたのは正教会に10時。金庫を契約する事のみ。
勝手に色々と約束事を増やされては迷惑で御座います。


「ではこちらにご記入ください」

神官さんの差し出す金庫開設申込書に記入をしておりましたら、何故か馬車で来たのに息を切らしているレアンドロ様。まさか馬車に乗って来たのではなく、馬車を引いてきたのかしら。

「申し訳ございません。もう1通申込書をお願いできますでしょうか」

神官さんにもう1枚申請書を頼むと、レアンドロ様が問うてきます。

「え?それは違うのか?」

世の中は自分のために回っているのでは御座いませんわよ?
正教会に用があるのは貴方だけではないのです。

「こちらは個人的な物です。レアンドロ様にも心に秘めておきたい秘密の1つや2つ御座いますでしょう?」

「そ、それはそうだが…」

「女の秘密に興味を持つなど無粋ですわ。こちらが昨夜作成した予備を保管する金庫開設申込書ですわ。ご記入くださいませ」

「昨日から書いてばかりだな…まぁいいか」

――えぇ。よろしいのです――

先に個人的な書類を金額を支払い開設したばかりの金庫に預けます。
ちらりと横目でその様子を見ていたレアンドロ様は不思議そうな顔をされておられます。

「そんなに書類を…宮に置いておけばいいのに」

「何を仰います。大事な物こそ保険をかける意味で預けるのです」

「そうなのか…で、書いたがこれでいいのか?」

覗き込めばレアンドロ様が書き込む部分は問題なく埋められております。あとは私が第二条件として書き込み、料金を3年分添えて渡せばよいのです。

「3年分の先払いなのか?」

「3年後に1度だけ開ければよいだけですので」

「それもそうだな。だが君は割符を受け取っているじゃないか」


自分の事は見えていないのに他人の事はよく見えるようですわね。
私の手にしている割符が気になって仕方がないようですわ。


「先ほど私的に開設した金庫は頻繁に利用しますので」

「その割符が盗まれたら開けられなくなるじゃないか」

「割符は金庫の通し番号を記しているのです。そうですね。宿屋でその日宿泊する部屋番号のようなものなので解錠する条件は別に御座います。割符の番号は覚えたら大抵は皆さん廃棄されていますよ?」

「そうなのか…初めて利用するから知らなかったよ」

「事業には便利ですわ。私、実は殿下との金庫で15個目の契約ですのよ?」

「そんなに?!」


初めての利用者は少し開設に時間がかかるので、割符が手渡されるまで正教会の礼拝堂で神様に祈りを捧げることに致しました。

いえ、懺悔でしょうか。

昨日はこの場所で永遠の愛を誓ったのに夜になって円満離縁の話し合いをしたとなれば、神様もさぞ驚かれた事でしょう。

ごめんなさいね?My・GOD。

ステンドグラスからの光を浴びる神の像に心からの謝罪をしていると隣でレアンドロ様が問われます。


「いくつも金庫を開設しているのか?」

「えぇ。事業ごとに分けると混ざらないので便利ですよ?」

私は事業ごとに使い分けております。

以前は屋敷で書類も保管をしておりましたが半年前に父が再婚し、金目のものはないかとルシェルやルシェルの母のエマリアが荒らしてしまいますので重要な書類が破損、汚損されて困っていたところに金庫の存在を知ったのです。

費用は必要ですが利用する事により得られる快適さを知った今は知らなかった頃には戻れません。

「22番でお待ちのお客様~」

神官さんが番号を読み上げ、やっとレアンドロ様と連名で金庫が開設出来た模様。
以後は2人揃ってでないと金庫が開けられる事はないと説明を受け、私たちは予備の書面を預けたのです。
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