上 下
3 / 52

第03話♡  即決の判断に感謝

しおりを挟む
書面をしたためてくれるレアンドロ様。
私には今、貴方が神に見えます。

国王陛下のように頭頂部に後光を纏うのは数年先になるでしょうけども、誰に見えずとも私には貴方が光り輝いて見えますわ。

「君も私のように最愛を見つけると良い。その件についても私は干渉しない。尤も…私にも言えるが婚姻中に大っぴらには出来ないがな」


何を仰っているのかしら。

あぁ、そういう事。

よく自分がしている悪事は周囲もしていると思う方がいらっしゃいます。

特に悪い事になると、相手が「嘘を吐いているんじゃないか」「不貞をしているんじゃないか」とまるで鏡を見るように自分の悪い面、隠さねばならない面を相手に投影するものです。

だから真っ先に思い浮かんでしまうのですわよね。

ですがご安心あれ!
私、痴情の縺れなどで噂になった事は一度も御座いませんの。

むしろ貴方とルシェルがウフンアハンな仲になったことで同情票が積み重なっておりますわ。

その同情票の中に、第1王子殿下と婚約者のご令嬢の実家があるのは秘密ですけど。


「申し訳ないのですが私は婚約者がいるのに他の異性に興味を持つという不道徳を良しとしておりませんし、婚姻関係にある間に不貞行為を働きたいとも考えておりません。そこまで人間のクズに成り下がりたいと思いませんし、節操無しと思われるのは生きていくのに不都合の方が多いですので」

「うっ…遠回しに批判をされている気がするな」


安心なさって?
遠回しではなく最短距離ですわ。


「しかし…離縁後は君も大変だろう?」

「大変なのはいつも今です。過去は成功すれば経験、失敗すれば反省となりますが、未来はどちらに転ぶか判りませんもの。なのでいつも大変のは今ですわ。オホホ」

「そうか…それもそうだな。私も考えたんだよ。ルシェルの産んだ子を君の子とするのはどうかと。しかしそれではルシェルは何時まで経っても日陰の身になるしな。離縁をするのが一番だと思い至ったんだ」

「養子縁組ならいざ知らず、わざわざ他人の子を自分の子として得る物は御座いません。3年間清い関係の夫婦で離縁するのですし、3年経ってもルシェル様は21歳。殿下は再婚になりますが誰も咎めもしないでしょう」

「しかし良い事ばかりだな。君に打ち明ける前は緊張したが…思い切って言って良かった。ルシェルの父君も姉から妹になるだけだし支援も変わらず続けてくれる」


そこには聊か不安な面も御座いますが、本人が良い気分になっておられるのに水を差すのは止めておきましょう。

他人様の懐事情など私があれこれと言う必要も御座いませんしね。
私はにこにことレアンドロ様に笑顔を返したのです。


「ルシェル様はイサミア氏の娘ですし、3年経つ頃にはイサミア氏も殿下の事は快く、いえ諸手を挙げて受け入れてくださるかと」

「実の父親の事をそういう呼び方をするとは…。それにルシェルの事も継母の連れ子だからと他人行儀な呼び名は感心しないな」

「私には生物学上の父がイサミア氏。ルシェル様とは他人です。ゆえに最低限の配慮で良いと考えておりますので」


ルシェルは父、イサミアの実子ですが不貞関係にある時に生まれた子。
現在はルシェルの母エマリアとイサミアが婚姻し、夫婦となり晴れて養子縁組をして親子になりましたが、私とは何も手続きをしておりませんので現実的に異母姉妹ではありますが、他人なのです。

認めてしまうと不貞関係があったとしてイサミア氏は監査対象となってしまうので、ルシェルにも外では言わぬようにとイサミア氏が言い聞かせていたはずですが。


「まぁいいだろう。3年か…その間は私も不用意な言動は慎む事にしよう」

「賢明なご判断ですわ。正教会も昨年のブルネル王国の国王夫妻離縁騒動で神経質になっておりますし、あまり大っぴらに逢瀬は繰り返さない方がよろしいかも知れませんわね」

「よく知っているな」

「そりゃ正教会から睨まれてよい事は1つも御座いませんもの。知らずに教皇の逆鱗に触れてしまわないように注意をするのは当然です。情報は常にフレッシュが一番ですわ」


少し考え込んだレアンドロ様で御座いますが、直ぐに了承の返事を頂けました。
即決の御判断に感謝ですわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

王太子殿下の子を授かりましたが隠していました

しゃーりん
恋愛
夫を亡くしたディアンヌは王太子殿下の閨指導係に選ばれ、関係を持った結果、妊娠した。 しかし、それを隠したまますぐに次の結婚をしたため、再婚夫の子供だと認識されていた。 それから10年、王太子殿下は隣国王女と結婚して娘が一人いた。 その王女殿下の8歳の誕生日パーティーで誰もが驚いた。 ディアンヌの息子が王太子殿下にそっくりだったから。 王女しかいない状況で見つかった王太子殿下の隠し子が後継者に望まれるというお話です。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には 好きな人がいた。 彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが 令嬢はそれで恋に落ちてしまった。 だけど彼は私を利用するだけで 振り向いてはくれない。 ある日、薬の過剰摂取をして 彼から離れようとした令嬢の話。 * 完結保証付き * 3万文字未満 * 暇つぶしにご利用下さい

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ★9/3『完全別居〜』発売
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

処理中です...