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第01話♡ 脳内にファンファーレ
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「これは相談なんだが」
数時間前に教会で結婚の宣誓「誓います」とそれはそれは麗しい声で仰った私の夫が初夜、大きな寝台を背に取引を持ち掛けてきたのです。
言葉は「相談」でも目上の人間からの「相談」を言葉の通りに解釈するのは危険で御座います。
いうなれば決定事項の通達と申しましょうか。
判っておりますわよ。遠慮なくどうぞ。
「何で御座いましょうか?」
麗しい私の夫。
ハイネブレーグ王国の第2王子にして、今、最も玉座に近いと言われているレアンドロ様に返事を返したのです。
「この結婚が政略であることは私も理解をしている。君の父上であるホートベル侯爵にも感謝をしているのは紛れもない事実だ。だが…私は…君の異母妹ルシェルを愛してしまった」
「えぇ、知ってます」
「は?…え?…えっ?」
「存じておりますが何か?」
何を呆けた顔をされておられるのでしょう。
お連れになった従者の方も不穏な空気となってしまわれておりましたよ?
予定時間よりも3時間早くやって来てルシェルの部屋で何をされていたのか。秘密なのは当人だけで皆知っておりました。
ご自分が第2王子という立場も忘れるほどルシェルに没頭され、間諜の方も目が合うと苦笑いでしたわ。
お茶会も終始気怠い空気ではだけた胸元に赤い花。
見せたい人ってほんとにいるんだなと、ある意味感心しましたの。
『お義姉様が神に召されればいいのに』
『証拠が残るやり方は不味い』
そんな会話もされておられましたよね。
私といたしましては、侍女のルルと共に何度も何度も何度も!!
それはもう数えきれない程にシミュレーション致しまして、「あぁ言われればこうやり返そう作戦」の仕掛けられ待ちでしたのよ?
本日の成婚の儀までに何か仕掛けて来られるのではないか。
本当に待ち侘びていたのです。
階段落ちに池落ち、噴水落ちに舟遊び中の湖落ち。
着替えを常に持参するのは勿論のこと、着衣泳に受け身、柔術など元間諜のシードさんやサミュエルさんを第1王子殿下から紹介頂きまして技を習得し、怪我の功名と申しましょうか「何時でも襲ってもらって大丈夫」とお墨付きを頂きましたのに。
まさか、本当に誰も2人の関係に気が付いてないと思っておられたなんて。
驚き、桃ノ木、山椒の木、この木何の木、目玉焼きで御座います。
「待ってくれ。ファリティ」
「殿下、名前は正確に。愛称呼びをされているのを誰かに聞かれたらどう言い訳を?わたくしの事は正式名称でお呼びくださいませ」
「えっと…あの…」
嫌だわ。
まさかと思うけれど婚約期間3年。私のフルネームをご存じないのかしら。
立場が逆なら不敬罪に問われましてよ?
「殿下、わたくしのフルネームはファレンティナリティアで御座います」
「す、すまない。気が動転してしまって‥それでだなファレンティティリア」
「殿下、ファレンティナリティアで御座います」
「・・・・・申し訳ない。ワン・モア・タイム」
〆ていいかしら。
今ならリンゴと言わず素手でくるみ割り出来る握力を兼ね備えておりましてよ?
「この際です。世には緊急避難と言う言葉も御座います。わたくしの事は以降 君 とお呼びくださいませ」
「君‥‥」
「はい」
どうしたのかしら。返事をしただけなのに驚いた顔をしておられます。
「それで相談とは何で御座いましょう。ルシェル様の事で御座いますか?」
「他人行儀な…幾ら異母妹と言ってもだな。そういう態度だから…まぁいい。相談と言うのはだな」
省略致しましょう。
何故かと申しますと、つつじの花咲く頃に~、霧雨の降る日の夜会で~とその時々に応じて思い出を交えてお話くださいますが、惚気話と申しますのは語る本人は悦に浸れますが聞かされる側は「だから?」と結末だけ教えて頂ければ事が済む話の代表格ですので。
要約を致しますと、3年前、私と婚約をした時は仲良くしていこうと思ったけれど、半年前ルシェルと恋に落ち、ルシェル以外の事は考えられなくなった。
しかしこの婚約と結婚は議会決定をされて覆すことが出来なかった。
そこで最終手段として、離縁と言うバツが付く罰を甘んじて受け入れ、再婚でルシェルと結ばれたい。
それには私が王子妃として功績を残すのは宜しくないので、愚鈍な妃でいて欲しい。
ま、世間で言う離縁されても仕方のない馬鹿な妃に成れ。
そう言うことで御座います。
「確認で御座いますが、愚鈍な妃、至らない妃になれ。要約するとそういう事で御座いますね?」
「そうだ。問題はないだろう?ルシェルから君は日頃から怠慢だと聞いている。日々の生活をそのまま行ってくれればいい」
え?それってもしかして?!
私の脳内には大音量でファンファーレが鳴り響きました。
数時間前に教会で結婚の宣誓「誓います」とそれはそれは麗しい声で仰った私の夫が初夜、大きな寝台を背に取引を持ち掛けてきたのです。
言葉は「相談」でも目上の人間からの「相談」を言葉の通りに解釈するのは危険で御座います。
いうなれば決定事項の通達と申しましょうか。
判っておりますわよ。遠慮なくどうぞ。
「何で御座いましょうか?」
麗しい私の夫。
ハイネブレーグ王国の第2王子にして、今、最も玉座に近いと言われているレアンドロ様に返事を返したのです。
「この結婚が政略であることは私も理解をしている。君の父上であるホートベル侯爵にも感謝をしているのは紛れもない事実だ。だが…私は…君の異母妹ルシェルを愛してしまった」
「えぇ、知ってます」
「は?…え?…えっ?」
「存じておりますが何か?」
何を呆けた顔をされておられるのでしょう。
お連れになった従者の方も不穏な空気となってしまわれておりましたよ?
予定時間よりも3時間早くやって来てルシェルの部屋で何をされていたのか。秘密なのは当人だけで皆知っておりました。
ご自分が第2王子という立場も忘れるほどルシェルに没頭され、間諜の方も目が合うと苦笑いでしたわ。
お茶会も終始気怠い空気ではだけた胸元に赤い花。
見せたい人ってほんとにいるんだなと、ある意味感心しましたの。
『お義姉様が神に召されればいいのに』
『証拠が残るやり方は不味い』
そんな会話もされておられましたよね。
私といたしましては、侍女のルルと共に何度も何度も何度も!!
それはもう数えきれない程にシミュレーション致しまして、「あぁ言われればこうやり返そう作戦」の仕掛けられ待ちでしたのよ?
本日の成婚の儀までに何か仕掛けて来られるのではないか。
本当に待ち侘びていたのです。
階段落ちに池落ち、噴水落ちに舟遊び中の湖落ち。
着替えを常に持参するのは勿論のこと、着衣泳に受け身、柔術など元間諜のシードさんやサミュエルさんを第1王子殿下から紹介頂きまして技を習得し、怪我の功名と申しましょうか「何時でも襲ってもらって大丈夫」とお墨付きを頂きましたのに。
まさか、本当に誰も2人の関係に気が付いてないと思っておられたなんて。
驚き、桃ノ木、山椒の木、この木何の木、目玉焼きで御座います。
「待ってくれ。ファリティ」
「殿下、名前は正確に。愛称呼びをされているのを誰かに聞かれたらどう言い訳を?わたくしの事は正式名称でお呼びくださいませ」
「えっと…あの…」
嫌だわ。
まさかと思うけれど婚約期間3年。私のフルネームをご存じないのかしら。
立場が逆なら不敬罪に問われましてよ?
「殿下、わたくしのフルネームはファレンティナリティアで御座います」
「す、すまない。気が動転してしまって‥それでだなファレンティティリア」
「殿下、ファレンティナリティアで御座います」
「・・・・・申し訳ない。ワン・モア・タイム」
〆ていいかしら。
今ならリンゴと言わず素手でくるみ割り出来る握力を兼ね備えておりましてよ?
「この際です。世には緊急避難と言う言葉も御座います。わたくしの事は以降 君 とお呼びくださいませ」
「君‥‥」
「はい」
どうしたのかしら。返事をしただけなのに驚いた顔をしておられます。
「それで相談とは何で御座いましょう。ルシェル様の事で御座いますか?」
「他人行儀な…幾ら異母妹と言ってもだな。そういう態度だから…まぁいい。相談と言うのはだな」
省略致しましょう。
何故かと申しますと、つつじの花咲く頃に~、霧雨の降る日の夜会で~とその時々に応じて思い出を交えてお話くださいますが、惚気話と申しますのは語る本人は悦に浸れますが聞かされる側は「だから?」と結末だけ教えて頂ければ事が済む話の代表格ですので。
要約を致しますと、3年前、私と婚約をした時は仲良くしていこうと思ったけれど、半年前ルシェルと恋に落ち、ルシェル以外の事は考えられなくなった。
しかしこの婚約と結婚は議会決定をされて覆すことが出来なかった。
そこで最終手段として、離縁と言うバツが付く罰を甘んじて受け入れ、再婚でルシェルと結ばれたい。
それには私が王子妃として功績を残すのは宜しくないので、愚鈍な妃でいて欲しい。
ま、世間で言う離縁されても仕方のない馬鹿な妃に成れ。
そう言うことで御座います。
「確認で御座いますが、愚鈍な妃、至らない妃になれ。要約するとそういう事で御座いますね?」
「そうだ。問題はないだろう?ルシェルから君は日頃から怠慢だと聞いている。日々の生活をそのまま行ってくれればいい」
え?それってもしかして?!
私の脳内には大音量でファンファーレが鳴り響きました。
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