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第25話 期間限定同居人
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一宿一飯ではないが、素材は別として素直に「美味しい」と感じたし3本も食べてしまったので、ファティーナは御礼としてシルヴェリオに湯殿で汗を流す事を許し、新しい着替えも貸し出した。
「本当に1カ月もここにいるつもりなの?」
「うん。邪魔にならないように外で寝るから安心して」
――全然安心できないんだけど――
ファティーナは恥ずかしながら野宿をした事がない。昔はシルヴェリオが捕まえてくる蝉や蝶、時にダンゴムシは平気だったが、年齢が上がるにつれ足の数が多いのと、足がない生き物は苦手になった。
なので寝ている時に蚊に刺されたりもだが、「ンンンー」っと蚊の飛ぶ音がすると「ムキー!!」っとなり退治するまで眠れない。外で寝るとなれば間違いなく一睡も出来ずに朝を迎えることになる。
それに森の生き物は動物であれ昆虫であれ夜行性が多い。
滅多に遭遇しないけれどこの森には熊もいるし狼も鹿もイノシシもいる。
――きっと帰れって言ったらまた外で寝るんだろうな――
と、なればもし怪我でもされたらさらに滞在が伸びる事に成り兼ねない。
最初に来た時に街道までシルヴェリオは飛んだが、ファティーナは転移の力は使えない。
ヘゼル王国の魔導士がファティーナの強い拒絶を感じ取った時に発動するだけだ。
「外で寝て動物に襲われたらどうするの」
「大丈夫だよ。カバとかコモドドラゴンなら話は別だけど」
「おらんわ!!」
シルヴェリオから邪な気持ちを感じ取ることもないし、前回のような拒絶をする理由がないのでファティーナは考えた末、空いている部屋を1カ月だけシルヴェリオに貸す事にした。
「いいの?!ありがとう。姉様。掃除とか料理は任せて!」
「蛇以外で。いい?カラスヘビじゃなくマムシならOKとかそういう事じゃないから!」
「え?」
――なぜ疑問符?――
「じゃぁ姉様、カエルとかモグラは」
「食わぬ!!」
「姉様は偏食だなぁ。バランスよく食べないとダメだよ」
「そんなバランスなんぞいらぬ!!」
いったいリーディス王国の騎士団は騎士達に何を食べさせているのだろうかと不安になってしまう。
――今度サミュエル様に書簡を送る時に注意しようかしら――
ファティーナの食生活よりもシルヴェリオの食生活を心配してしまいそうになるが、当のシルヴェリオは今日から与えられた部屋を見て大喜び。
「寝台とロッカーしかないわ。着替えはロッカーにあるから」
「壁と天井があるよ。床と壁は明日か明後日に直しておくよ」
「直すところなんかあったかしら」
「あるよ。穴が開いてるから多分・・・ネズミだね。ラッキー!!捕獲しとくよ」
「捕獲?駆除じゃなくて?」
「毒餌で駆除したら食べる時の下処理が面倒だからさ」
ファティーナは本気でサミュエルに騎士団の食について進言した方が良いんじゃないかと思った。その前に食卓にネズミが上がる事を阻止せねばならない。
「NG食材にネズミも追加して頂戴」
「結構美味いのに…野鼠は歯ごた――」
「林檎を齧ったら歯ぐきから血が出たことないけどそれくらい弱いの!10代ともうすぐ30代を一緒にしないで!」
自分で言っておいて悲しくなる。
――そうだった。私、あと1年半で三十路――
現在28歳。来年は29歳。28歳と29歳は大した違いを感じないが29歳と30歳の差は大きい。しかもファティーナが30歳でもシルヴェリオは18歳だ。その差は体感で天文学的。
「姉様…好き嫌いはダメだよ。食生活を見直したほうがいいよ」
「好き嫌い以前の問題なの!」
――ゲデモノ食いの貴方に言われたくないわ――
好き嫌いはいけない。それは解っているが食材の調達をシルヴェリオに任せるととんでもない事になりそうな気がして届けられる食材で調理する事を強く頼んだ。
しかし、早速「ふぉ?」と思う事があった。
湯殿に行こうとすると布袋をシルヴェリオが差し出してきた。
「なに?これ」
「庭の草むしりしてたらヨモギがあったから、洗って干しておいたんだ」
「ヨモギ?お茶にするんじゃなくて?」
「違うよ。湯殿で湯船に入れて使うんだ」
「なぜそんな事をするのよ」
「姉様、もうすぐ月のものだろ?女性の体は温めた方が痛みが軽いって軍医が言ってた」
余計なお世話だー!!と投げつけそうになったがシルヴェリオには悪気が全くない。
――待って。それよりどうして知ってるのよ?――
「違うから!違うからね!」
「そうなの?苛ついてるみたいだから近いのかと思ったんだ」
――苛つかせてるの、誰だと思ってるのぉ!――
ファティーナはやっぱり追い出そうかと思ったが、言い出した手前直ぐに撤回するのも腹立たしい。13年も1人だったので同居人がいるとペースが乱れる事もあるのだろうと気にせず過ごすようにしようと心に誓った。
「本当に1カ月もここにいるつもりなの?」
「うん。邪魔にならないように外で寝るから安心して」
――全然安心できないんだけど――
ファティーナは恥ずかしながら野宿をした事がない。昔はシルヴェリオが捕まえてくる蝉や蝶、時にダンゴムシは平気だったが、年齢が上がるにつれ足の数が多いのと、足がない生き物は苦手になった。
なので寝ている時に蚊に刺されたりもだが、「ンンンー」っと蚊の飛ぶ音がすると「ムキー!!」っとなり退治するまで眠れない。外で寝るとなれば間違いなく一睡も出来ずに朝を迎えることになる。
それに森の生き物は動物であれ昆虫であれ夜行性が多い。
滅多に遭遇しないけれどこの森には熊もいるし狼も鹿もイノシシもいる。
――きっと帰れって言ったらまた外で寝るんだろうな――
と、なればもし怪我でもされたらさらに滞在が伸びる事に成り兼ねない。
最初に来た時に街道までシルヴェリオは飛んだが、ファティーナは転移の力は使えない。
ヘゼル王国の魔導士がファティーナの強い拒絶を感じ取った時に発動するだけだ。
「外で寝て動物に襲われたらどうするの」
「大丈夫だよ。カバとかコモドドラゴンなら話は別だけど」
「おらんわ!!」
シルヴェリオから邪な気持ちを感じ取ることもないし、前回のような拒絶をする理由がないのでファティーナは考えた末、空いている部屋を1カ月だけシルヴェリオに貸す事にした。
「いいの?!ありがとう。姉様。掃除とか料理は任せて!」
「蛇以外で。いい?カラスヘビじゃなくマムシならOKとかそういう事じゃないから!」
「え?」
――なぜ疑問符?――
「じゃぁ姉様、カエルとかモグラは」
「食わぬ!!」
「姉様は偏食だなぁ。バランスよく食べないとダメだよ」
「そんなバランスなんぞいらぬ!!」
いったいリーディス王国の騎士団は騎士達に何を食べさせているのだろうかと不安になってしまう。
――今度サミュエル様に書簡を送る時に注意しようかしら――
ファティーナの食生活よりもシルヴェリオの食生活を心配してしまいそうになるが、当のシルヴェリオは今日から与えられた部屋を見て大喜び。
「寝台とロッカーしかないわ。着替えはロッカーにあるから」
「壁と天井があるよ。床と壁は明日か明後日に直しておくよ」
「直すところなんかあったかしら」
「あるよ。穴が開いてるから多分・・・ネズミだね。ラッキー!!捕獲しとくよ」
「捕獲?駆除じゃなくて?」
「毒餌で駆除したら食べる時の下処理が面倒だからさ」
ファティーナは本気でサミュエルに騎士団の食について進言した方が良いんじゃないかと思った。その前に食卓にネズミが上がる事を阻止せねばならない。
「NG食材にネズミも追加して頂戴」
「結構美味いのに…野鼠は歯ごた――」
「林檎を齧ったら歯ぐきから血が出たことないけどそれくらい弱いの!10代ともうすぐ30代を一緒にしないで!」
自分で言っておいて悲しくなる。
――そうだった。私、あと1年半で三十路――
現在28歳。来年は29歳。28歳と29歳は大した違いを感じないが29歳と30歳の差は大きい。しかもファティーナが30歳でもシルヴェリオは18歳だ。その差は体感で天文学的。
「姉様…好き嫌いはダメだよ。食生活を見直したほうがいいよ」
「好き嫌い以前の問題なの!」
――ゲデモノ食いの貴方に言われたくないわ――
好き嫌いはいけない。それは解っているが食材の調達をシルヴェリオに任せるととんでもない事になりそうな気がして届けられる食材で調理する事を強く頼んだ。
しかし、早速「ふぉ?」と思う事があった。
湯殿に行こうとすると布袋をシルヴェリオが差し出してきた。
「なに?これ」
「庭の草むしりしてたらヨモギがあったから、洗って干しておいたんだ」
「ヨモギ?お茶にするんじゃなくて?」
「違うよ。湯殿で湯船に入れて使うんだ」
「なぜそんな事をするのよ」
「姉様、もうすぐ月のものだろ?女性の体は温めた方が痛みが軽いって軍医が言ってた」
余計なお世話だー!!と投げつけそうになったがシルヴェリオには悪気が全くない。
――待って。それよりどうして知ってるのよ?――
「違うから!違うからね!」
「そうなの?苛ついてるみたいだから近いのかと思ったんだ」
――苛つかせてるの、誰だと思ってるのぉ!――
ファティーナはやっぱり追い出そうかと思ったが、言い出した手前直ぐに撤回するのも腹立たしい。13年も1人だったので同居人がいるとペースが乱れる事もあるのだろうと気にせず過ごすようにしようと心に誓った。
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