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第10話 王家との取引①
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動揺を抑えようとすればするほどファティーナの中に過去が蘇る。
もう忘れてしまいたい過去はファティーナの心を締め上げた。
振り払っても脳裏には追放された日の事が蘇る。
★~★
国外追放の刑を受け入れて第1王子の従者に連れられて向かった先は国王一家の寛ぐリビングだった。
ファティーナはそこでアロンツォとマリアの不貞の事実も知った。
不思議と落ちついていられたのは、極度の緊張にもあったし「もう知らない!」とネブルグ公爵家に対し憎しみの気持ちの方が強かったので取り乱す事もなかっただけだ。
第1王子サミュエルが牢に来る前にアロンツォとマリアが連れ立って面会にでも来ていれば魔力封じの枷も吹き飛ばすくらいの魔力暴走はしたかも知れないが。
国王は王妃と共にファティーナに頭を下げた。
「此度の事、まことに申し訳ない。恥ずかしい話だが、まだ全てを把握できていない。公爵家ともなると潰すとなれば全ての逃げ道を塞がねばならないのでな」
「いえ、私の甘さが招いた事です。頭をお上げくださいませ」
サミュエルが牢に来た時にファティーナにはサミュエルから王家としての動きもある程度は聞かされていた。
次々にファティーナが首謀者であり主犯とする証言をした公爵家の使用人を呼んで吐かせたとしても今度は王家の圧力で虚偽の証言をさせられたと言われかねない。
見た、聞いたという人間の目や耳で得た証拠は証拠ではあるが決め手に欠ける。
俗にいう言った言わないの不毛な争いに成り兼ねないのだ。
今となっては「たられば」になるが…。
アロンツォに頼まれた式次第を部屋の中だけで探していれば。
馬車に行かなければ。
小瓶を手に取っていなければ。
そもそもでアロンツォに「自分で探せ」と言えば。
全て後の祭りだ。
婚約破棄と後見人辞退の届け出も可能な限り受け付けて不備が無ければ一両日中に認めるかの裁定はするが、裁定をするのも人間で全部を処理しきれるわけではない。
うっかりもあるので、問い合わせをされて受付しただけになっている届け出を慌てて処理する事もある。
王家は無能だと揶揄する者も居る。ファティーナもそんな気持ちが無かったとは言えない。もっとしっかりしていてくれれば父と兄が支援物資という善行を行う途中で命を落とす事もなかったかも知れないのだ。
しかし、今回の事でファティーナは「限界」を知った。
現国王と王妃は20年続いた戦が停戦となる3年前に即位。戦争を起こした張本人の国王が戦況悪化の責任を逃れるべく異例の生前退位をしたためである。
即位後は戦を終らせるために肥沃な領地を差し出し停戦に持ち込んだ。終戦にする事は出来なかったが無期限の停戦。実質の終戦だろう。
領地は勿体ないというものもいたが、国民の命を優先させた結果なのだ。
その後も戦後補償に駆けまわり手一杯。つまり国王であっても処理できる事項の数には限界があり、亡くなった父や兄、先代のネブルグ公爵が動かざるを得なかっただけだ。
そして今回の事で今の自分がどれほど温室育ちの花畑で限界点が低かったかも知った。
諦めをつけると何も惜しいものが無い。ただ憂いはあった。それが領地だった。
ファティーナは牢でもサミュエルに伝えていたが、今一度国王にも同じ事を頼んだ。
「では資金は全て国庫に寄贈で良いというのか?」
「はい。その代わりお願いがあります」
「なんなりと申せ」
「1つはその資金で国内に十分な物資の配給をしていただくこと。物資とは目に見えるものだけに限りません。学問であったり、技術も含みます」
「判った。その点に於いては部署を設け間もなく動き出す。同じ事を考えていてくれたとは。これで資金についても増税をしなくて済む。ありがとう。礼を言うよ」
「いいえ。そしてあと1つ。シード家の領地の件です」
「ネブルグ公爵家に所有権の移った領地の事か…書類に不備もなく差し止める事が出来なかった。すまない」
「いいえ。しかしあの地は数年で使い物にならなくなります。ネブルグ公爵家では面倒を見切れないと思うのです。しかし希少な薬草の採れる地である事は確か。なのでネブルグ公爵家が手放す時、若しくは抵当に入れて借金をする時に手を回して頂きたいのです」
「相判った。その時はシード家の――」
「違います。国の直轄地として管理をして頂きたいのです。1貴族の家で立て直せるような額ではないでしょうから寄贈する資金の一部を残しておいて、復興させてほしいのです。そして薬が行き渡らない期間が続きますからその対応も。そのくらいはありますでしょう?先生」
国王は目を丸くした。
ファティーナに指導をした魔導師とは国王の事。魔導師や魔導士は得意とする力が異なるが国王は間者などがよく使う変異術に長けていた。まさか身バレしているとは思わなかった。
国王が「判った」と言えばもうファティーナに憂いはなかった。
ファティーナはその後、サミュエルの術によって小さな家に転移をした。
★~★
本日はニャン爆走!!ニャンニャーン(=^・^=)
1時間おきです(異なる時は文末に次の時間を記載しています)
もう忘れてしまいたい過去はファティーナの心を締め上げた。
振り払っても脳裏には追放された日の事が蘇る。
★~★
国外追放の刑を受け入れて第1王子の従者に連れられて向かった先は国王一家の寛ぐリビングだった。
ファティーナはそこでアロンツォとマリアの不貞の事実も知った。
不思議と落ちついていられたのは、極度の緊張にもあったし「もう知らない!」とネブルグ公爵家に対し憎しみの気持ちの方が強かったので取り乱す事もなかっただけだ。
第1王子サミュエルが牢に来る前にアロンツォとマリアが連れ立って面会にでも来ていれば魔力封じの枷も吹き飛ばすくらいの魔力暴走はしたかも知れないが。
国王は王妃と共にファティーナに頭を下げた。
「此度の事、まことに申し訳ない。恥ずかしい話だが、まだ全てを把握できていない。公爵家ともなると潰すとなれば全ての逃げ道を塞がねばならないのでな」
「いえ、私の甘さが招いた事です。頭をお上げくださいませ」
サミュエルが牢に来た時にファティーナにはサミュエルから王家としての動きもある程度は聞かされていた。
次々にファティーナが首謀者であり主犯とする証言をした公爵家の使用人を呼んで吐かせたとしても今度は王家の圧力で虚偽の証言をさせられたと言われかねない。
見た、聞いたという人間の目や耳で得た証拠は証拠ではあるが決め手に欠ける。
俗にいう言った言わないの不毛な争いに成り兼ねないのだ。
今となっては「たられば」になるが…。
アロンツォに頼まれた式次第を部屋の中だけで探していれば。
馬車に行かなければ。
小瓶を手に取っていなければ。
そもそもでアロンツォに「自分で探せ」と言えば。
全て後の祭りだ。
婚約破棄と後見人辞退の届け出も可能な限り受け付けて不備が無ければ一両日中に認めるかの裁定はするが、裁定をするのも人間で全部を処理しきれるわけではない。
うっかりもあるので、問い合わせをされて受付しただけになっている届け出を慌てて処理する事もある。
王家は無能だと揶揄する者も居る。ファティーナもそんな気持ちが無かったとは言えない。もっとしっかりしていてくれれば父と兄が支援物資という善行を行う途中で命を落とす事もなかったかも知れないのだ。
しかし、今回の事でファティーナは「限界」を知った。
現国王と王妃は20年続いた戦が停戦となる3年前に即位。戦争を起こした張本人の国王が戦況悪化の責任を逃れるべく異例の生前退位をしたためである。
即位後は戦を終らせるために肥沃な領地を差し出し停戦に持ち込んだ。終戦にする事は出来なかったが無期限の停戦。実質の終戦だろう。
領地は勿体ないというものもいたが、国民の命を優先させた結果なのだ。
その後も戦後補償に駆けまわり手一杯。つまり国王であっても処理できる事項の数には限界があり、亡くなった父や兄、先代のネブルグ公爵が動かざるを得なかっただけだ。
そして今回の事で今の自分がどれほど温室育ちの花畑で限界点が低かったかも知った。
諦めをつけると何も惜しいものが無い。ただ憂いはあった。それが領地だった。
ファティーナは牢でもサミュエルに伝えていたが、今一度国王にも同じ事を頼んだ。
「では資金は全て国庫に寄贈で良いというのか?」
「はい。その代わりお願いがあります」
「なんなりと申せ」
「1つはその資金で国内に十分な物資の配給をしていただくこと。物資とは目に見えるものだけに限りません。学問であったり、技術も含みます」
「判った。その点に於いては部署を設け間もなく動き出す。同じ事を考えていてくれたとは。これで資金についても増税をしなくて済む。ありがとう。礼を言うよ」
「いいえ。そしてあと1つ。シード家の領地の件です」
「ネブルグ公爵家に所有権の移った領地の事か…書類に不備もなく差し止める事が出来なかった。すまない」
「いいえ。しかしあの地は数年で使い物にならなくなります。ネブルグ公爵家では面倒を見切れないと思うのです。しかし希少な薬草の採れる地である事は確か。なのでネブルグ公爵家が手放す時、若しくは抵当に入れて借金をする時に手を回して頂きたいのです」
「相判った。その時はシード家の――」
「違います。国の直轄地として管理をして頂きたいのです。1貴族の家で立て直せるような額ではないでしょうから寄贈する資金の一部を残しておいて、復興させてほしいのです。そして薬が行き渡らない期間が続きますからその対応も。そのくらいはありますでしょう?先生」
国王は目を丸くした。
ファティーナに指導をした魔導師とは国王の事。魔導師や魔導士は得意とする力が異なるが国王は間者などがよく使う変異術に長けていた。まさか身バレしているとは思わなかった。
国王が「判った」と言えばもうファティーナに憂いはなかった。
ファティーナはその後、サミュエルの術によって小さな家に転移をした。
★~★
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