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第05話 怯える2人
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そしてネブルグ公爵家ではなく、密会用の屋敷ではアロンツォとマリアが自分を落ち着かせるために互いに言葉を掛け合う。
「ねぇ。大丈夫よね?」
「あぁ、問題ない…問題ないよ」
半年ほど前からアロンツォとマリアは不貞の関係にあった。
ファティーナに気付かれる前にネブルグ公爵夫妻やケネル子爵に気付かれるのも不味かった。
ファティーナは15歳。当主に成るには年齢が足らないが婚約者であるアロンツォの不貞相手がマリアとなればケネル子爵の後見を変更しろと言い出し兼ねない。
そしてアロンツォも不貞の責任を問われるのは困るのだ。結婚後に愛人を抱える夫婦は多いけれど結婚前は問題視されてしまう上に、その相手がファティーナの後見であるケネル子爵家のマリアだと言うのはバレてしまうと非常に不味かった。
それにしてもアロンツォとマリアの計画に暗殺などという物騒なものはなかった。
何時まで経っても会場に来ないファティーナの不手際を来客に見せ「これでは先が思いやられる」と婚約破棄をその場で言い渡すつもりだった。
婚約破棄の慰謝料としてファティーナの持つシード伯爵家の領地を頂く。破棄の慰謝料は家にも幾らかはとられるが大半は当事者となるアロンツォの懐に入ってくる。そうすれば領地を売って遊ぶ金には事欠かない。
次期当主となるまで公爵家の金は自由に出来ないけれど、シード伯爵家の領地は希少な薬草の産地でもあり喉から手が出るほど欲しかる貴族は幾らでもいた。
『万が一の事があれば当家の子息。空きを作っておきます』
と、ファティーナと共に挨拶回りをするアロンツォの前で堂々と言い放つ者までいたくらいだ。
ファティーナの後見はケネル子爵家なのだから、責任を取ってケネル子爵家からマリアが嫁げばいいだけだ。もう23歳になって次の相手を見繕うのもダルい上に、ケネル子爵家なのであれば気心も知れている。
ケネル子爵家も当然ファティーナの不手際についての責任は問われる。ケネル子爵家は責任問題から逃げることは出来ないので婚約者のすげ替えは簡単だと思ったし、次期当主のアロンツォがそれでいいと言えば通るものだと思っていた。
「暗殺だなんて…本当にティナ、そんな事をしたのかしら」
「判らない。だけど僕たちの事を気が付いていたら…」
「死なばもろともってこと?嫌よ!巻き添えなんかごめんだわ」
「何処まで自白したんだろう。聞いてないか?」
「知らないわよ。自白も何も…なんて恐ろしい。もし毒殺を本当に企てたのだとしたら、私達も狙われるんじゃないの?嫌、嫌よ。怖いっ」
アロンツォもマリアも「まさか!」と思い、あの場では咄嗟にファティーナを咎める言葉を吐いてしまったが本心であり嘘ではなかった。
むしろファティーナがあのような魔毒すら精製できる魔導士だったのだと再確認したくらいだ。
だとしても、ファティーナの罪は消えることはないが、ネブルグ公爵家が、いやアロンツォが順風満帆な未来を過ごすためにはファティーナがどうしても必要だった。
ネブルグ公爵家の領地はファティーナの使う力によって天候に関係なく豊作を続けている。その力はネブルグ公爵家から切り離されれば王家が取り込む事は目に見えて判っている。
アロンツォはファティーナと予定通り結婚をし、「救ってやったのだ」と恩を着せ、子供を産ませられるだけ産ませる。ファティーナの力を引き継ぐ子供は多ければ多いほど良い。
妊娠中でも力は使えるのだから領地を巡らせる。ファティーナが使い物にならなくなれば子供を使えばいい。そうすれば王都にいるアロンツォはマリアと楽しく遊んで暮らせる。
「計画に見直しが必要かもな」
「どう変えるの?ねぇもう、止めよう?よく考えたらティナは恐ろしい力が使えるのよ?こうしている今だって何か仕掛けてくるんじゃないかって心配なの」
「大丈夫だよ。牢にいる間は魔力が使えないように枷をされるはずだ」
腕の中でブルブルと震えるマリアを抱きしめアロンツォはどうにかしてファティーナをネブルグ公爵家に戻せないかと考えたのだった。
「ねぇ。大丈夫よね?」
「あぁ、問題ない…問題ないよ」
半年ほど前からアロンツォとマリアは不貞の関係にあった。
ファティーナに気付かれる前にネブルグ公爵夫妻やケネル子爵に気付かれるのも不味かった。
ファティーナは15歳。当主に成るには年齢が足らないが婚約者であるアロンツォの不貞相手がマリアとなればケネル子爵の後見を変更しろと言い出し兼ねない。
そしてアロンツォも不貞の責任を問われるのは困るのだ。結婚後に愛人を抱える夫婦は多いけれど結婚前は問題視されてしまう上に、その相手がファティーナの後見であるケネル子爵家のマリアだと言うのはバレてしまうと非常に不味かった。
それにしてもアロンツォとマリアの計画に暗殺などという物騒なものはなかった。
何時まで経っても会場に来ないファティーナの不手際を来客に見せ「これでは先が思いやられる」と婚約破棄をその場で言い渡すつもりだった。
婚約破棄の慰謝料としてファティーナの持つシード伯爵家の領地を頂く。破棄の慰謝料は家にも幾らかはとられるが大半は当事者となるアロンツォの懐に入ってくる。そうすれば領地を売って遊ぶ金には事欠かない。
次期当主となるまで公爵家の金は自由に出来ないけれど、シード伯爵家の領地は希少な薬草の産地でもあり喉から手が出るほど欲しかる貴族は幾らでもいた。
『万が一の事があれば当家の子息。空きを作っておきます』
と、ファティーナと共に挨拶回りをするアロンツォの前で堂々と言い放つ者までいたくらいだ。
ファティーナの後見はケネル子爵家なのだから、責任を取ってケネル子爵家からマリアが嫁げばいいだけだ。もう23歳になって次の相手を見繕うのもダルい上に、ケネル子爵家なのであれば気心も知れている。
ケネル子爵家も当然ファティーナの不手際についての責任は問われる。ケネル子爵家は責任問題から逃げることは出来ないので婚約者のすげ替えは簡単だと思ったし、次期当主のアロンツォがそれでいいと言えば通るものだと思っていた。
「暗殺だなんて…本当にティナ、そんな事をしたのかしら」
「判らない。だけど僕たちの事を気が付いていたら…」
「死なばもろともってこと?嫌よ!巻き添えなんかごめんだわ」
「何処まで自白したんだろう。聞いてないか?」
「知らないわよ。自白も何も…なんて恐ろしい。もし毒殺を本当に企てたのだとしたら、私達も狙われるんじゃないの?嫌、嫌よ。怖いっ」
アロンツォもマリアも「まさか!」と思い、あの場では咄嗟にファティーナを咎める言葉を吐いてしまったが本心であり嘘ではなかった。
むしろファティーナがあのような魔毒すら精製できる魔導士だったのだと再確認したくらいだ。
だとしても、ファティーナの罪は消えることはないが、ネブルグ公爵家が、いやアロンツォが順風満帆な未来を過ごすためにはファティーナがどうしても必要だった。
ネブルグ公爵家の領地はファティーナの使う力によって天候に関係なく豊作を続けている。その力はネブルグ公爵家から切り離されれば王家が取り込む事は目に見えて判っている。
アロンツォはファティーナと予定通り結婚をし、「救ってやったのだ」と恩を着せ、子供を産ませられるだけ産ませる。ファティーナの力を引き継ぐ子供は多ければ多いほど良い。
妊娠中でも力は使えるのだから領地を巡らせる。ファティーナが使い物にならなくなれば子供を使えばいい。そうすれば王都にいるアロンツォはマリアと楽しく遊んで暮らせる。
「計画に見直しが必要かもな」
「どう変えるの?ねぇもう、止めよう?よく考えたらティナは恐ろしい力が使えるのよ?こうしている今だって何か仕掛けてくるんじゃないかって心配なの」
「大丈夫だよ。牢にいる間は魔力が使えないように枷をされるはずだ」
腕の中でブルブルと震えるマリアを抱きしめアロンツォはどうにかしてファティーナをネブルグ公爵家に戻せないかと考えたのだった。
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