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2- 外の喧騒

幕間

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男は、荒れる息を抑えながら、木造家屋の影に潜んで、手に握る巻物に汗が滲んでいないことを確認してほっと一息をついた。羽織っていた黒い布は、目立つのでとっくのとうに捨ててしまっている。
十分はこのペースで走ってきて、体力の限界だった。目立ってしまっただろうか。しかし、もうすぐ、この街から出る。後もう少し、と彼は一休みした後、歩き始める。
なるべく不審に思われないように、ということを念頭に置いて。
この人の波に紛れて街の外まで逃げれば、完璧だ。


度重なる騒乱の歴史を物語るかのように、この街は城塞のように、壁が張り巡らされている。この地に限れば戦乱の時代は過ぎたと言えるが、未だ未開の地では土地を争って騒乱が起き、まだ完全なる平和とは程遠い、犯罪が各所で起こる時代でもある。それこそ万引きやスリくらいなら日常茶飯事だ。治安悪化を防ぐ為に中央が警察組織を創設していたりもするが、それも最近のことであり、また効果は実証されたとは言い難い。が、たまに妙な正義感を持った自警団なんかが街を徘徊することもあるので、細心の注意自体は必要だ。
城壁に囲まれるこの街を出れば、街道からどこか遠くへ逃げれる。誰かが彼を追っていたとしても、彼の居場所を特定することは、この広大な大地の中では不可能に近い。

歩きながらそんなことを長く考えていた彼だが、妙に不可解な感覚を覚え、あることに気づく。

人目からなるべく逃れることを最優先に、人混みの多い通りを歩いていた。それが裏目に出た結果。
細心の注意、か。とため息と共に呟く。

彼の手に握られていたはずの巻物は、喪失していた。手に不用意に持っていたことが悔やまれるが、嘆いてもしょうがない。
誰に、と考えるがこの人混みに紛れようとした為、
が、彼は自らの行動が「目的」の達成を一歩遅らせたと思うと、ため息しか出ないのだった。
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