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ガイナスは口元をフッと緩ませ「頼んだぞ、カイル」と穏やかに言った。
その言葉は張り詰めたような空気を弛緩させ、場の雰囲気が変わったのを覚えている。
そして皆が頬を緩ませている中、プリシラだけが不思議そうに俺を見上げていた。
その後、いつ結婚するのか話し合われた。
あの時は気疲れしてしまっていて、内容を詳しく覚えていないんだが、ティナが二十歳になるまで待って欲しいという事と、街の教会で式を行うという事が決まったんだ。
そして何故か、皆んなで街にドレスの下見をしに行くという流れになったんだが、プリシラが行きたくないと言いだして、俺が一緒に家に残る事なった。
正直な所、少し休みたかったからありがたいと思っていたが、あんな事になるなんてな。
「それじゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「あぁ、わかった」
玄関で皆の背中を見送る。
ティナはとても楽しそうに笑っていた。
「カイルはどんなのが良い?」
そんな言葉を出かける前に俺のところに来て、こっそり言いにきたけど、フリフリの付いた可愛いやつが良いなど本音を言えるわけもなく、お前の好きなやつを選んだらいいと言ってやった。
実際は、フリフリ、いや、その、なんだ。そうじゃなくてあれだ、ティナの気に入ったやつにしたらいいと思うだったが、ティナは「わかった~!楽しみにしててね~!」と笑顔を弾ませていた。
そんな事があったから、どんなドレスを選んでくるのかなと思いながらドアを閉める。
「お兄ちゃん」
薄暗さを感じる低い呼び声。
明らかにいつもと違う声質に、慌てて振り返る。
「どうして?」
悲しみと怒りが複雑に絡まり合う、プリシラの姿がそこにあった。
その言葉は張り詰めたような空気を弛緩させ、場の雰囲気が変わったのを覚えている。
そして皆が頬を緩ませている中、プリシラだけが不思議そうに俺を見上げていた。
その後、いつ結婚するのか話し合われた。
あの時は気疲れしてしまっていて、内容を詳しく覚えていないんだが、ティナが二十歳になるまで待って欲しいという事と、街の教会で式を行うという事が決まったんだ。
そして何故か、皆んなで街にドレスの下見をしに行くという流れになったんだが、プリシラが行きたくないと言いだして、俺が一緒に家に残る事なった。
正直な所、少し休みたかったからありがたいと思っていたが、あんな事になるなんてな。
「それじゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「あぁ、わかった」
玄関で皆の背中を見送る。
ティナはとても楽しそうに笑っていた。
「カイルはどんなのが良い?」
そんな言葉を出かける前に俺のところに来て、こっそり言いにきたけど、フリフリの付いた可愛いやつが良いなど本音を言えるわけもなく、お前の好きなやつを選んだらいいと言ってやった。
実際は、フリフリ、いや、その、なんだ。そうじゃなくてあれだ、ティナの気に入ったやつにしたらいいと思うだったが、ティナは「わかった~!楽しみにしててね~!」と笑顔を弾ませていた。
そんな事があったから、どんなドレスを選んでくるのかなと思いながらドアを閉める。
「お兄ちゃん」
薄暗さを感じる低い呼び声。
明らかにいつもと違う声質に、慌てて振り返る。
「どうして?」
悲しみと怒りが複雑に絡まり合う、プリシラの姿がそこにあった。
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