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第十一章 盗賊王と機械の国
1話 マーシェンスでの生活
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あれからあっという間に一週間以上経過して、気づいたらそろそろ一ヶ月になる。
その間にあったことと言えば、ストラフィリアからミュラッカがマーシェンスへと外交という形で入国しミオラームと話し合いをした結果、メセリーを含めた三国家間にて秘密裏にマスカレイドの捜索をしていた事になり、その為の捜査官として秘密裏に活動していた事になった。
「……まぁ、それはいいんだけど」
「うん?父さんどうした?」
「この扱いはちょっとだけ困るなって」
正式な立場が決定した後、この前までいた宿から要人用に作られた宿泊施設に移動する事になったけれど、さすがに何て言うか困る事ばかりだ。
食事に関しては、部屋に備え付けられたボタンを押す事で豪華な食事が出て来るけど……、その中に【完全栄養食】というものがあってこの前試しに押してみたら、四角いブロック状に加工された物が一個と、スープだけが出て来た。
出した以上は食べようと思って口に入れたら最後、口内の水分を全て吸われるかのような感覚と、喉にへばりつく不快感。
慌ててスープを口に入れたら、中で膨らんで様々な味が舌を刺激して危うく窒息するのではないかという程の苦痛を経験したけれど……、スープに入れる事で溶けて食べられるようになるのなら、最初から説明書も一緒に出して欲しい気持ちになった。
「あぁ、父さん未だに慣れないみたいだもんなぁ、俺なんてすっかり慣れちまったよ」
「お風呂に関しては、治癒術で身体を清潔に保てばいいけど……」
「治癒術じゃ体臭は消せないから臭くねぇか?……俺からしたら、この国の風呂は楽だから好きだけどな」
「好きって……、椅子に座ったら鼻と口以外お湯に包まれて、自動で全身洗われるのは何か苦手だなぁって」
生前のマスカレイドが作った魔導具から発展した、入浴補助用という事だけど……何だか人としてダメになりそうというか。
何もかもが楽に出来てしまう事に関して忌避感を覚えてしまう。
「……父さん、まだ十代だろ?思考が凝り固まるのにしては早すぎじゃねぇか?」
「いや、治癒術師として思う事があってさ」
「思う事って言われても、俺は治癒術師じゃねぇからなぁ」
「ダリアも治癒術師になれば分かると思うよ?一応今のぼくの立場を使えば、辺境都市クイストに戻ったら治癒術師の資格を取らせる事も出来るよ」
「……勘弁してくれよ、俺には父さんみたいに繊細な作業が出来るような性格してねぇから、治癒術師に何かなったら人を殺しちまう」
確かにダリアの性格だと、治癒術を使っている最中に集中力が切れて医療事故を起こしてしまう危険性がある。
繊細な作業に関しては、時空間魔術を扱える才能があるから問題無いとは思うけど、短気な所がある子だから、そういう意味でも難しいだろう。
けど、逆にそういうところさえ改善出来れば、治癒術師としての才能はあると感じるし……彼女の父親という立場で考えたら、そういうところを伸ばしてあげたい。
多分、母さん……いや、カルディアやマスカレイドも生前は同じ気持ちだったのだろうか。
……最近、二人の事を考えてはダートのお腹の中にいる子が産まれた時に、どう育てればいいのか考える事が増えた気がする。
それと同じくらい、ダリアに対しても改めて親としてしっかりと接する事が出来ているのか考えるけど、考えれば考える程、子育てに関して答えが出せない辺り、ダートと二人で悩んで考え続けた方がいいのかもしれない。
「そこは、やってみないと分からないから、少しだけでも挑戦してみない?」
「……そこまで言うなら考えとく」
「なら、宿泊施設に戻ったら早速治癒術について教えるよ」
「……カルディアの婆さん方式は止めてくれよ?」
「ダリアならきっと大丈夫だよ」
そんなやり取りをしながら、運動不足解消の為に行っている散歩を続けていると思うけど、室内だと魔導具のおかげで調整されているから気にならないが、外に出ると蒸気機関と言われる独自に発展を遂げた機械による蒸気が、首都全体に充満していて蒸し暑い。
それに……、蒸気を使って動く蒸気自動車と言われる鉄の馬車が時折、舗装された通路を通るけど、通り過ぎた後に残る熱さが正直言って苦手だ。
「……まじでカルディアの婆さん方式でやるのかよ、それなら今日はも歩きたくねぇな」
「歩きたくないって、運動不足になるよ」
「もう一時間も歩いてんだから大丈夫だって……、んじゃ後は楽しようぜ!」
……マーシェンスの首都では、人が通る為に整備された通路に用意されているブレスレット型の魔導具を装着して魔力を通す事で、足元が動き出して立ったまま移動できるようになっている。
これだと運動習慣の不足から足腰の筋肉が弱ってしまうから個人的には使って欲しくないのだけれど、すっかりこの国に馴染んでしまったダリアからしたら、楽が出来るなら楽をしたいのだろう。
そう思いながら、ぼくも魔導具を装着すると魔力を流して回路に付与された魔術を発動させ、宿泊施設へと戻るのだった。
その間にあったことと言えば、ストラフィリアからミュラッカがマーシェンスへと外交という形で入国しミオラームと話し合いをした結果、メセリーを含めた三国家間にて秘密裏にマスカレイドの捜索をしていた事になり、その為の捜査官として秘密裏に活動していた事になった。
「……まぁ、それはいいんだけど」
「うん?父さんどうした?」
「この扱いはちょっとだけ困るなって」
正式な立場が決定した後、この前までいた宿から要人用に作られた宿泊施設に移動する事になったけれど、さすがに何て言うか困る事ばかりだ。
食事に関しては、部屋に備え付けられたボタンを押す事で豪華な食事が出て来るけど……、その中に【完全栄養食】というものがあってこの前試しに押してみたら、四角いブロック状に加工された物が一個と、スープだけが出て来た。
出した以上は食べようと思って口に入れたら最後、口内の水分を全て吸われるかのような感覚と、喉にへばりつく不快感。
慌ててスープを口に入れたら、中で膨らんで様々な味が舌を刺激して危うく窒息するのではないかという程の苦痛を経験したけれど……、スープに入れる事で溶けて食べられるようになるのなら、最初から説明書も一緒に出して欲しい気持ちになった。
「あぁ、父さん未だに慣れないみたいだもんなぁ、俺なんてすっかり慣れちまったよ」
「お風呂に関しては、治癒術で身体を清潔に保てばいいけど……」
「治癒術じゃ体臭は消せないから臭くねぇか?……俺からしたら、この国の風呂は楽だから好きだけどな」
「好きって……、椅子に座ったら鼻と口以外お湯に包まれて、自動で全身洗われるのは何か苦手だなぁって」
生前のマスカレイドが作った魔導具から発展した、入浴補助用という事だけど……何だか人としてダメになりそうというか。
何もかもが楽に出来てしまう事に関して忌避感を覚えてしまう。
「……父さん、まだ十代だろ?思考が凝り固まるのにしては早すぎじゃねぇか?」
「いや、治癒術師として思う事があってさ」
「思う事って言われても、俺は治癒術師じゃねぇからなぁ」
「ダリアも治癒術師になれば分かると思うよ?一応今のぼくの立場を使えば、辺境都市クイストに戻ったら治癒術師の資格を取らせる事も出来るよ」
「……勘弁してくれよ、俺には父さんみたいに繊細な作業が出来るような性格してねぇから、治癒術師に何かなったら人を殺しちまう」
確かにダリアの性格だと、治癒術を使っている最中に集中力が切れて医療事故を起こしてしまう危険性がある。
繊細な作業に関しては、時空間魔術を扱える才能があるから問題無いとは思うけど、短気な所がある子だから、そういう意味でも難しいだろう。
けど、逆にそういうところさえ改善出来れば、治癒術師としての才能はあると感じるし……彼女の父親という立場で考えたら、そういうところを伸ばしてあげたい。
多分、母さん……いや、カルディアやマスカレイドも生前は同じ気持ちだったのだろうか。
……最近、二人の事を考えてはダートのお腹の中にいる子が産まれた時に、どう育てればいいのか考える事が増えた気がする。
それと同じくらい、ダリアに対しても改めて親としてしっかりと接する事が出来ているのか考えるけど、考えれば考える程、子育てに関して答えが出せない辺り、ダートと二人で悩んで考え続けた方がいいのかもしれない。
「そこは、やってみないと分からないから、少しだけでも挑戦してみない?」
「……そこまで言うなら考えとく」
「なら、宿泊施設に戻ったら早速治癒術について教えるよ」
「……カルディアの婆さん方式は止めてくれよ?」
「ダリアならきっと大丈夫だよ」
そんなやり取りをしながら、運動不足解消の為に行っている散歩を続けていると思うけど、室内だと魔導具のおかげで調整されているから気にならないが、外に出ると蒸気機関と言われる独自に発展を遂げた機械による蒸気が、首都全体に充満していて蒸し暑い。
それに……、蒸気を使って動く蒸気自動車と言われる鉄の馬車が時折、舗装された通路を通るけど、通り過ぎた後に残る熱さが正直言って苦手だ。
「……まじでカルディアの婆さん方式でやるのかよ、それなら今日はも歩きたくねぇな」
「歩きたくないって、運動不足になるよ」
「もう一時間も歩いてんだから大丈夫だって……、んじゃ後は楽しようぜ!」
……マーシェンスの首都では、人が通る為に整備された通路に用意されているブレスレット型の魔導具を装着して魔力を通す事で、足元が動き出して立ったまま移動できるようになっている。
これだと運動習慣の不足から足腰の筋肉が弱ってしまうから個人的には使って欲しくないのだけれど、すっかりこの国に馴染んでしまったダリアからしたら、楽が出来るなら楽をしたいのだろう。
そう思いながら、ぼくも魔導具を装着すると魔力を流して回路に付与された魔術を発動させ、宿泊施設へと戻るのだった。
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