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第十章 魔導国学園騒動
63話 日常へと帰りたい
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彼の考えてる事が分からない。
提案をしたかと思えば、断っても問題無いというし……なら何故あのような事を話したのか。
いくら考えても、頭の中に答えを出す事が出来なくて困惑してしまう。
「ふと思ったんだけどいいかな」
「……ん?なんだいレース君」
「マーシェンスにいる間とはいったけど、出来ればすぐにメセリーの【辺境都市クイスト】に戻りたいから、直ぐに決めた方がいい気がするんだけど……」
「何を言ってるんだい?直ぐに戻るって……、それは少しばかり無理があるんじゃないかな」
「……え?」
直ぐに戻るのに無理があるって、いったいどういう事だろうか。
メセリーには身重のダートと婚約者のカエデがいるし、自分の運営している診療所や学園の事が気になる。
診療所に関してはスイがいるから問題無いとは思うけど、学園に関しては彼女がぼくの変わりに教師をしているとはいえ……生徒達の個性が強すぎて心配だ。
スパルナは真面目な子だけれど、自己主張が苦手なところがあるし……エスペランサはクラスをまとめる才能の持ち主だけれど、あの一件以降どうにも彼女を馬鹿にする生徒が増えていたから、色々と問題が山積みで……そういう意味でも直ぐに戻って日常に戻りたい。
「ん……」
「……カーティス?」
「誰か来たみたいだね」
大きな足音を立てながら、誰かが部屋に近づいてくるとノックをせずに勢いよく扉が開く。
「ちょっと!カーティス様がレース様の部屋に行ったってどういう事ですの!?」
「……どう言う事って、孫の顔を見に来たんだけどいけないのかい?」
「孫って、レース様はハルサーの血筋じゃありませんですわよ!?」
「家族に必要なのは血筋じゃなくて、心だよ……夫婦になるという事はお互いの思いから幸不幸を共有するものだからね、……そんなマスカレイドとカルディアの育てた子供なら俺からしたら孫みたいなものさ」
「深い事を言ってるように聞こえますけど……、ちょっと何を言ってるのか分かりませんわ」
ミオラームが部屋に入ってくるとぼくとカーティスの前に立つ。
そして空いている椅子に腰かけると……
「……それで?何の話をしていたんですの?」
「メセリーに直ぐに帰りたいって言う話をしていたんだけど、無理だと言われてさ」
「あぁ……確かに、今はまだ帰れませんわね」
「ミオラーム……?」
どうしてミオラームまでそんな事を言うのだろうか……、そう思って色々と考えては見るけれど、思い当たる事としては、このマーシェンスという国において【賢王】という身分であるという事位だ。
彼女が帰れないと言葉にするという事は、何か事情があるのかもしれない。
「帰れないってどういう事?」
「今回我が国マーシェンスにおいて、マスカレイドの元研究室で起きた事件について、少々困った事になっておりますの」
「困った事?」
「えぇ、ソフィア様の事は隣国の【魔導国メセリー】から私が招いた事に出来ますが……、レース様に関してはどうしても国の貴族達を説得する材料が無くて……ほら、北の大国【ストラフィリア】の前王ヴォルフガング・ストラフィリアの第一子という立場もあるでしょう?ですから……えっと、国際的に問題が起きてしまいそうでして……」
国際的な問題が起きたと言われても、今のぼくは実父ヴォルフガングの息子としてではなく、メセリーの平民として生活をしているから正直どうしてそんな事になっているのか理解が出来ない。
「それと貴族達を説得する材料って?」
「あぁ……、これって傭兵団を率いている俺が聞いていい話かい?必要なら少しの間席を離れるけど?」
「ここにいて構いませんわ、えっと……説得に関してはどうしてストラフィリアの元第一王子が我がマーシェンスにいるのか、更にはマスカレイドの元研究室で戦闘を行い意識を失った状態で、宿に運び込まれて治療を受けていたのかと、色々とですわね」
「……つまり、ぼくはマーシェンスに不法入国したとか、そういう流れになってるって事かな」
「今のままではそうなりますわね……、ですので急遽ストラフィリアの【覇王】ミュラッカ・ストラフィリア様に連絡をいれ、あちらでの役職を作っておりますわ」
役職を作っているってそんな事を急に言われても、どう反応するべきか……。
ただ各国の王族達がぼくの為に色々と気を使ってくれることが分かる、それがなんだか申し訳ないような気がして、少しばかり気まずい気持ちになる。
「……もしかしてミオラーム、その役職に俺達【死絶傭兵団】を利用するつもりかい?」
「えぇ、そうする予定ですし、追加の依頼として報酬は弾みますわよ?」
「これは副団長に、勝手に依頼を受けるなと怒られそうだけど……面白そうだから受ける事にするよ」
「感謝致しますわ……、ですのでレース様には申し訳ないのですが、暫くの間マーシェンスの首都【アーケインギア】に滞在して頂きますわ」
……マーシェンスの首都の名前がぼくの記憶とは違う気がするけど、今はそんな事を気にする必要は無いだろう。
取り合えず、妹……いや現【覇王】ミュラッカと、メセリーの【魔王】ソフィア、そして目の前にいるマーシェンスの【賢王】が、国際問題にならないように色々と手を尽くしてくれているのは分かった。
ならぼくに出来る事は、皆に任せてゆっくりと待つ事で……でもその間、ダートの側に入れない事に不安を感じる。
そんな事を考えながら、早く日常に戻れる事を願うのだった。
提案をしたかと思えば、断っても問題無いというし……なら何故あのような事を話したのか。
いくら考えても、頭の中に答えを出す事が出来なくて困惑してしまう。
「ふと思ったんだけどいいかな」
「……ん?なんだいレース君」
「マーシェンスにいる間とはいったけど、出来ればすぐにメセリーの【辺境都市クイスト】に戻りたいから、直ぐに決めた方がいい気がするんだけど……」
「何を言ってるんだい?直ぐに戻るって……、それは少しばかり無理があるんじゃないかな」
「……え?」
直ぐに戻るのに無理があるって、いったいどういう事だろうか。
メセリーには身重のダートと婚約者のカエデがいるし、自分の運営している診療所や学園の事が気になる。
診療所に関してはスイがいるから問題無いとは思うけど、学園に関しては彼女がぼくの変わりに教師をしているとはいえ……生徒達の個性が強すぎて心配だ。
スパルナは真面目な子だけれど、自己主張が苦手なところがあるし……エスペランサはクラスをまとめる才能の持ち主だけれど、あの一件以降どうにも彼女を馬鹿にする生徒が増えていたから、色々と問題が山積みで……そういう意味でも直ぐに戻って日常に戻りたい。
「ん……」
「……カーティス?」
「誰か来たみたいだね」
大きな足音を立てながら、誰かが部屋に近づいてくるとノックをせずに勢いよく扉が開く。
「ちょっと!カーティス様がレース様の部屋に行ったってどういう事ですの!?」
「……どう言う事って、孫の顔を見に来たんだけどいけないのかい?」
「孫って、レース様はハルサーの血筋じゃありませんですわよ!?」
「家族に必要なのは血筋じゃなくて、心だよ……夫婦になるという事はお互いの思いから幸不幸を共有するものだからね、……そんなマスカレイドとカルディアの育てた子供なら俺からしたら孫みたいなものさ」
「深い事を言ってるように聞こえますけど……、ちょっと何を言ってるのか分かりませんわ」
ミオラームが部屋に入ってくるとぼくとカーティスの前に立つ。
そして空いている椅子に腰かけると……
「……それで?何の話をしていたんですの?」
「メセリーに直ぐに帰りたいって言う話をしていたんだけど、無理だと言われてさ」
「あぁ……確かに、今はまだ帰れませんわね」
「ミオラーム……?」
どうしてミオラームまでそんな事を言うのだろうか……、そう思って色々と考えては見るけれど、思い当たる事としては、このマーシェンスという国において【賢王】という身分であるという事位だ。
彼女が帰れないと言葉にするという事は、何か事情があるのかもしれない。
「帰れないってどういう事?」
「今回我が国マーシェンスにおいて、マスカレイドの元研究室で起きた事件について、少々困った事になっておりますの」
「困った事?」
「えぇ、ソフィア様の事は隣国の【魔導国メセリー】から私が招いた事に出来ますが……、レース様に関してはどうしても国の貴族達を説得する材料が無くて……ほら、北の大国【ストラフィリア】の前王ヴォルフガング・ストラフィリアの第一子という立場もあるでしょう?ですから……えっと、国際的に問題が起きてしまいそうでして……」
国際的な問題が起きたと言われても、今のぼくは実父ヴォルフガングの息子としてではなく、メセリーの平民として生活をしているから正直どうしてそんな事になっているのか理解が出来ない。
「それと貴族達を説得する材料って?」
「あぁ……、これって傭兵団を率いている俺が聞いていい話かい?必要なら少しの間席を離れるけど?」
「ここにいて構いませんわ、えっと……説得に関してはどうしてストラフィリアの元第一王子が我がマーシェンスにいるのか、更にはマスカレイドの元研究室で戦闘を行い意識を失った状態で、宿に運び込まれて治療を受けていたのかと、色々とですわね」
「……つまり、ぼくはマーシェンスに不法入国したとか、そういう流れになってるって事かな」
「今のままではそうなりますわね……、ですので急遽ストラフィリアの【覇王】ミュラッカ・ストラフィリア様に連絡をいれ、あちらでの役職を作っておりますわ」
役職を作っているってそんな事を急に言われても、どう反応するべきか……。
ただ各国の王族達がぼくの為に色々と気を使ってくれることが分かる、それがなんだか申し訳ないような気がして、少しばかり気まずい気持ちになる。
「……もしかしてミオラーム、その役職に俺達【死絶傭兵団】を利用するつもりかい?」
「えぇ、そうする予定ですし、追加の依頼として報酬は弾みますわよ?」
「これは副団長に、勝手に依頼を受けるなと怒られそうだけど……面白そうだから受ける事にするよ」
「感謝致しますわ……、ですのでレース様には申し訳ないのですが、暫くの間マーシェンスの首都【アーケインギア】に滞在して頂きますわ」
……マーシェンスの首都の名前がぼくの記憶とは違う気がするけど、今はそんな事を気にする必要は無いだろう。
取り合えず、妹……いや現【覇王】ミュラッカと、メセリーの【魔王】ソフィア、そして目の前にいるマーシェンスの【賢王】が、国際問題にならないように色々と手を尽くしてくれているのは分かった。
ならぼくに出来る事は、皆に任せてゆっくりと待つ事で……でもその間、ダートの側に入れない事に不安を感じる。
そんな事を考えながら、早く日常に戻れる事を願うのだった。
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