519 / 579
第十章 魔導国学園騒動
63話 日常へと帰りたい
しおりを挟む
彼の考えてる事が分からない。
提案をしたかと思えば、断っても問題無いというし……なら何故あのような事を話したのか。
いくら考えても、頭の中に答えを出す事が出来なくて困惑してしまう。
「ふと思ったんだけどいいかな」
「……ん?なんだいレース君」
「マーシェンスにいる間とはいったけど、出来ればすぐにメセリーの【辺境都市クイスト】に戻りたいから、直ぐに決めた方がいい気がするんだけど……」
「何を言ってるんだい?直ぐに戻るって……、それは少しばかり無理があるんじゃないかな」
「……え?」
直ぐに戻るのに無理があるって、いったいどういう事だろうか。
メセリーには身重のダートと婚約者のカエデがいるし、自分の運営している診療所や学園の事が気になる。
診療所に関してはスイがいるから問題無いとは思うけど、学園に関しては彼女がぼくの変わりに教師をしているとはいえ……生徒達の個性が強すぎて心配だ。
スパルナは真面目な子だけれど、自己主張が苦手なところがあるし……エスペランサはクラスをまとめる才能の持ち主だけれど、あの一件以降どうにも彼女を馬鹿にする生徒が増えていたから、色々と問題が山積みで……そういう意味でも直ぐに戻って日常に戻りたい。
「ん……」
「……カーティス?」
「誰か来たみたいだね」
大きな足音を立てながら、誰かが部屋に近づいてくるとノックをせずに勢いよく扉が開く。
「ちょっと!カーティス様がレース様の部屋に行ったってどういう事ですの!?」
「……どう言う事って、孫の顔を見に来たんだけどいけないのかい?」
「孫って、レース様はハルサーの血筋じゃありませんですわよ!?」
「家族に必要なのは血筋じゃなくて、心だよ……夫婦になるという事はお互いの思いから幸不幸を共有するものだからね、……そんなマスカレイドとカルディアの育てた子供なら俺からしたら孫みたいなものさ」
「深い事を言ってるように聞こえますけど……、ちょっと何を言ってるのか分かりませんわ」
ミオラームが部屋に入ってくるとぼくとカーティスの前に立つ。
そして空いている椅子に腰かけると……
「……それで?何の話をしていたんですの?」
「メセリーに直ぐに帰りたいって言う話をしていたんだけど、無理だと言われてさ」
「あぁ……確かに、今はまだ帰れませんわね」
「ミオラーム……?」
どうしてミオラームまでそんな事を言うのだろうか……、そう思って色々と考えては見るけれど、思い当たる事としては、このマーシェンスという国において【賢王】という身分であるという事位だ。
彼女が帰れないと言葉にするという事は、何か事情があるのかもしれない。
「帰れないってどういう事?」
「今回我が国マーシェンスにおいて、マスカレイドの元研究室で起きた事件について、少々困った事になっておりますの」
「困った事?」
「えぇ、ソフィア様の事は隣国の【魔導国メセリー】から私が招いた事に出来ますが……、レース様に関してはどうしても国の貴族達を説得する材料が無くて……ほら、北の大国【ストラフィリア】の前王ヴォルフガング・ストラフィリアの第一子という立場もあるでしょう?ですから……えっと、国際的に問題が起きてしまいそうでして……」
国際的な問題が起きたと言われても、今のぼくは実父ヴォルフガングの息子としてではなく、メセリーの平民として生活をしているから正直どうしてそんな事になっているのか理解が出来ない。
「それと貴族達を説得する材料って?」
「あぁ……、これって傭兵団を率いている俺が聞いていい話かい?必要なら少しの間席を離れるけど?」
「ここにいて構いませんわ、えっと……説得に関してはどうしてストラフィリアの元第一王子が我がマーシェンスにいるのか、更にはマスカレイドの元研究室で戦闘を行い意識を失った状態で、宿に運び込まれて治療を受けていたのかと、色々とですわね」
「……つまり、ぼくはマーシェンスに不法入国したとか、そういう流れになってるって事かな」
「今のままではそうなりますわね……、ですので急遽ストラフィリアの【覇王】ミュラッカ・ストラフィリア様に連絡をいれ、あちらでの役職を作っておりますわ」
役職を作っているってそんな事を急に言われても、どう反応するべきか……。
ただ各国の王族達がぼくの為に色々と気を使ってくれることが分かる、それがなんだか申し訳ないような気がして、少しばかり気まずい気持ちになる。
「……もしかしてミオラーム、その役職に俺達【死絶傭兵団】を利用するつもりかい?」
「えぇ、そうする予定ですし、追加の依頼として報酬は弾みますわよ?」
「これは副団長に、勝手に依頼を受けるなと怒られそうだけど……面白そうだから受ける事にするよ」
「感謝致しますわ……、ですのでレース様には申し訳ないのですが、暫くの間マーシェンスの首都【アーケインギア】に滞在して頂きますわ」
……マーシェンスの首都の名前がぼくの記憶とは違う気がするけど、今はそんな事を気にする必要は無いだろう。
取り合えず、妹……いや現【覇王】ミュラッカと、メセリーの【魔王】ソフィア、そして目の前にいるマーシェンスの【賢王】が、国際問題にならないように色々と手を尽くしてくれているのは分かった。
ならぼくに出来る事は、皆に任せてゆっくりと待つ事で……でもその間、ダートの側に入れない事に不安を感じる。
そんな事を考えながら、早く日常に戻れる事を願うのだった。
提案をしたかと思えば、断っても問題無いというし……なら何故あのような事を話したのか。
いくら考えても、頭の中に答えを出す事が出来なくて困惑してしまう。
「ふと思ったんだけどいいかな」
「……ん?なんだいレース君」
「マーシェンスにいる間とはいったけど、出来ればすぐにメセリーの【辺境都市クイスト】に戻りたいから、直ぐに決めた方がいい気がするんだけど……」
「何を言ってるんだい?直ぐに戻るって……、それは少しばかり無理があるんじゃないかな」
「……え?」
直ぐに戻るのに無理があるって、いったいどういう事だろうか。
メセリーには身重のダートと婚約者のカエデがいるし、自分の運営している診療所や学園の事が気になる。
診療所に関してはスイがいるから問題無いとは思うけど、学園に関しては彼女がぼくの変わりに教師をしているとはいえ……生徒達の個性が強すぎて心配だ。
スパルナは真面目な子だけれど、自己主張が苦手なところがあるし……エスペランサはクラスをまとめる才能の持ち主だけれど、あの一件以降どうにも彼女を馬鹿にする生徒が増えていたから、色々と問題が山積みで……そういう意味でも直ぐに戻って日常に戻りたい。
「ん……」
「……カーティス?」
「誰か来たみたいだね」
大きな足音を立てながら、誰かが部屋に近づいてくるとノックをせずに勢いよく扉が開く。
「ちょっと!カーティス様がレース様の部屋に行ったってどういう事ですの!?」
「……どう言う事って、孫の顔を見に来たんだけどいけないのかい?」
「孫って、レース様はハルサーの血筋じゃありませんですわよ!?」
「家族に必要なのは血筋じゃなくて、心だよ……夫婦になるという事はお互いの思いから幸不幸を共有するものだからね、……そんなマスカレイドとカルディアの育てた子供なら俺からしたら孫みたいなものさ」
「深い事を言ってるように聞こえますけど……、ちょっと何を言ってるのか分かりませんわ」
ミオラームが部屋に入ってくるとぼくとカーティスの前に立つ。
そして空いている椅子に腰かけると……
「……それで?何の話をしていたんですの?」
「メセリーに直ぐに帰りたいって言う話をしていたんだけど、無理だと言われてさ」
「あぁ……確かに、今はまだ帰れませんわね」
「ミオラーム……?」
どうしてミオラームまでそんな事を言うのだろうか……、そう思って色々と考えては見るけれど、思い当たる事としては、このマーシェンスという国において【賢王】という身分であるという事位だ。
彼女が帰れないと言葉にするという事は、何か事情があるのかもしれない。
「帰れないってどういう事?」
「今回我が国マーシェンスにおいて、マスカレイドの元研究室で起きた事件について、少々困った事になっておりますの」
「困った事?」
「えぇ、ソフィア様の事は隣国の【魔導国メセリー】から私が招いた事に出来ますが……、レース様に関してはどうしても国の貴族達を説得する材料が無くて……ほら、北の大国【ストラフィリア】の前王ヴォルフガング・ストラフィリアの第一子という立場もあるでしょう?ですから……えっと、国際的に問題が起きてしまいそうでして……」
国際的な問題が起きたと言われても、今のぼくは実父ヴォルフガングの息子としてではなく、メセリーの平民として生活をしているから正直どうしてそんな事になっているのか理解が出来ない。
「それと貴族達を説得する材料って?」
「あぁ……、これって傭兵団を率いている俺が聞いていい話かい?必要なら少しの間席を離れるけど?」
「ここにいて構いませんわ、えっと……説得に関してはどうしてストラフィリアの元第一王子が我がマーシェンスにいるのか、更にはマスカレイドの元研究室で戦闘を行い意識を失った状態で、宿に運び込まれて治療を受けていたのかと、色々とですわね」
「……つまり、ぼくはマーシェンスに不法入国したとか、そういう流れになってるって事かな」
「今のままではそうなりますわね……、ですので急遽ストラフィリアの【覇王】ミュラッカ・ストラフィリア様に連絡をいれ、あちらでの役職を作っておりますわ」
役職を作っているってそんな事を急に言われても、どう反応するべきか……。
ただ各国の王族達がぼくの為に色々と気を使ってくれることが分かる、それがなんだか申し訳ないような気がして、少しばかり気まずい気持ちになる。
「……もしかしてミオラーム、その役職に俺達【死絶傭兵団】を利用するつもりかい?」
「えぇ、そうする予定ですし、追加の依頼として報酬は弾みますわよ?」
「これは副団長に、勝手に依頼を受けるなと怒られそうだけど……面白そうだから受ける事にするよ」
「感謝致しますわ……、ですのでレース様には申し訳ないのですが、暫くの間マーシェンスの首都【アーケインギア】に滞在して頂きますわ」
……マーシェンスの首都の名前がぼくの記憶とは違う気がするけど、今はそんな事を気にする必要は無いだろう。
取り合えず、妹……いや現【覇王】ミュラッカと、メセリーの【魔王】ソフィア、そして目の前にいるマーシェンスの【賢王】が、国際問題にならないように色々と手を尽くしてくれているのは分かった。
ならぼくに出来る事は、皆に任せてゆっくりと待つ事で……でもその間、ダートの側に入れない事に不安を感じる。
そんな事を考えながら、早く日常に戻れる事を願うのだった。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!


せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる