治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第十章 魔導国学園騒動

62話 死絶の提案

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 いきなり大事な話と言われてもいったいどんな内容なのだろうか。
取り合えず聞いては見ようとは思うけど……

「なに、君の奥さん達を俺にくれっていう訳じゃないからそんな警戒しないでいいよ、……レース君がダートさんやカエデくんに愛されてるのは、ストラフィリアで見たからね」
「え、あぁ……うん」
「その顔は、いったい何を言い出しているんだこの人はって言う感じの表情かな……、何て言うか自分の考えが表情に出るのは本当に初代覇王にそっくりだね」

 色んな人に似ているとは言われるけど、そこまで共通点が多いのだろうか。
……一応、ぼくからしたら先祖のようなものだから、遺伝子的な意味で似通ったりするのは当然あるとは思う。
けれど性格や仕草が似ていると言われると何だか複雑な気持ちになる。

「初代覇王とそっくりと言われても、ぼくはぼくだから反応に困るんだけど?」
「……確かにそうだね、場を和ませようとしたけど失敗したみたいだ、じゃあ早速本題に入ろうと思うのだけれど、君はメイディでネフィーラとガルシア、後子供達を戦争の戦力として雇ったね?」
「……あの時が必要だったから雇ったけど、何かそれで問題があったりしたのかな」
「いや、それは別にいいんだ、ただその……なんだ?サリアやネフィーラが君の事をなぜか凄い気に入っていてね、彼女達の……この時なんて言えばいいのかな、高祖父の高祖父の祖父?」
「いや……、ぼくに聞かれても分からないよ、そこまで長生きしてる人とか滅多にいないと思うし」

 そもそもな話、グロウフェレスも言っていたけど……見境なく出会った相手と夫婦になり、数えきれない程の子供を作ったせいな気がする。
とはいえ、そのおかげで母さんとマスカレイドに育てて貰えたし、スイに出会えて診療所を任せたり出来るようになった。
だから結果的にはこの人に感謝する事になるけど、それはそれで尚の事どう接すればいいのか分からなくなってしまいそうだ。

「まぁ……それもそうか、ご先祖様って言うと既に死んでる事になってしまうし、高祖父を何度も着けるのはめんどくさい取り合えず父という事にしておこうか」
「もうそれでいいとは思うけど、それと二人がぼくの事を気に入ってるのがどうしたの?」
「君には分からないとお思うけど、俺の可愛い娘達と友人の血を引くカエデちゃんに好かれている君に対して興味があってね」

 カーティスが何処か懐かしい人を思い出すかのように、遠くを見たかと思うと視線をこちらへと向けて、真剣な表情を作る。

「君はこれから先、シャルネと戦う事になるのだろう?」
「……それと本題に何の関係が?」
「レース君、目的は俺と同じようだからどうだい?栄花騎士団との協力関係を止めて、俺達【死絶傭兵団】と共に来てくれないかな」
「……いきなり何を?」

 死絶傭兵団と共に来いと言われても、はい分かりましたと答える事は出来ない。
心器を使っている以上、栄花騎士団の管理下に入っているわけで、もし協力関係を捨てて彼らについて行った場合、ダート達がどうなるか分からないし、カエデも悲しむ筈だ。
そう思うと、ぼく一人では決める事が出来なくて、だから話題を逸らすために亡くなった人を利用するのは良くない気がするけど、今は使わせてもらおう。

「いきなりでもないよ、君たちは俺の息子の一人であるマスカレイドを倒した……それだけでは無く、彼の魔力特性【黎明】の継承、そしてディザスティアとセラフナハシュの力を体内に封じているんだよね?つまり戦力としては申し分ないという事だよ」
「……マスカレイドが死んだ事に対して思う事とかないの?」
「思う事が無いと言ったら嘘になるけれど、彼は彼なりに一生懸命に生きたからね、とやかく言う事はしないよ、で……協力関係を築く気はあるかい?」

 ダメだ、逸らそうとしても逃がしてくれそうにない。
ならここは素直に伝えた方がいいだろうか……、けどそれでカーティスの機嫌を損ねたらどうなるだろうか。
試しに【叡智】の特性を使って、カーティスの能力を確認してみるけれど……

名前:カーティス・ハルサー
性別:男
魔族:ナーガ種
心器:有
属性:毒(闇)
特性:粉塵 自身の魔力を塵へと変えて空気中に浮遊させる
   死絶 戦闘を行う際能力を高め、周囲を自身に有利な状況へと作り替える

肉体強化  10(10+)
魔術適正  7 (10)
治癒術適正 10(10+)

力8(10+) 魔力10(10+) 体力8(10+) 敏捷5(8) 器用10 賢さ8

 何度確認しても、今のぼくでは到底太刀打ちできそうにない。
けど……何となくわかった事がある、この()の中にある数値は、魔力特性を使用した際に起きる能力値の変動の事なのだろう。
これはもう、あれこれ考えずに正直に言った方がいい気がする。
そう思って震える身体を何とか落ち着かせて口を開く。

「……ちょっとだけ考えさせてほしい」
「いいよ、マーシェンスにいる間、沢山考えてみるといいよ……ただ、そんはさせないし、栄花騎士団に指名手配されて討伐対象になったとしても、俺達死絶傭兵団が君と家族の安全を保障させてもらうよ」
「……もし、断ったらどうするの?」

……想像が間違えて無ければ、断ったら命の保証はされないだろう。
けど、これに関してはカーティスの良心を信じるしか無い、そう思いながら彼を見つめたら『どうもしないかな……、だって君はマスカレイドが育てた子だからね、レース君は血の繋がりが無くても、俺からしたら孫みたいなものなんだよ、だから安心して選択をすればいいよ』と、何故か笑いかけてくるのだった。
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