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第十章 魔導国学園騒動
55話 世界を喰らう蛇
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ダリアの魔術とぼくの攻撃が嚙み合ったおかげで、流れるように兵器を破壊するけど……その破片を取り込んで新たな兵器が補充されると、再びこちらに向かって来る。
まるで同じ行動の繰り返しで、たった数分の攻防の筈なのにあっと言う間に何十分、いや……何時間も、掛かっている気がして精神がすり減る感覚が心を削り、思考が鈍って目の前の事に関して集中する事しか出来なくなって行く。
「……これは何時になったら終わるんだろう」
そんな言葉が自然と口から零れてしまう。
マスカレイドの圧倒的な物量を活かした戦法に、身体が悲鳴を上げてはち切れそうなるけど、母さんの言うように今の身体能力なら【怪力】を全力が使っても耐えられる。
以前までだったら、腕が弾けたり、全身の骨が砕けたりとか酷い事になっていたけど……この状態なら、治癒術を使わなくても耐えきれる程度の損傷しか無いから、治癒術を使わなくても言い分、全体的な負担が少ない。
「父さん!大丈夫か!?」
「しんどい以外は問題無いから、大丈夫だよ」
「……まじかよ、父さんまで化け物になってんじゃねぇか」
「酷い言われようだね」
思考が鈍っていても、これくらいの話は出来るくらいには余裕がある。
これには勿論理由があって、マスカレイドの魔術で作られた毒の塊が飛んでくるけど、それらを全て母さんが様々な属性の魔術で無効化してくれているからだ。
気化しても危険性のある毒は火属性の魔術で蒸発させた後に、風属性の魔術で遠くへと飛ばし、可燃性のあるタイプは土属性の魔術で覆ってしまう。
それどころか、土に吸われても触れただけで肌が爛れ溶けてしまうような劇薬に関しては、水の魔術で濃度を薄めた後に凍らせてマスカレイドに向けて打ち返す。
そんな判断が瞬時に行われていて、余りに二人のレベルの高さに思わず見惚れてしまいそうになる。
「ソフィア、まだ準備に時間が掛かりそう?」
「後少し、本当に後少しです!後少しであちら側から呼び出す事が出来ます!」
「……呼び出すって何を呼ぶのさ」
「レースさんもディザスティアとセラフナハシュの戦いの時に見た筈ですよ?あの巨大な蛇の姿を、あれはセラフナハシュが使役する眷属【世界を喰らう蛇】と呼ばれる使い魔です、指輪を使い遠いこの世界ではない何処かから、捕まえて引っ張り出すんですよ」
「なんか聞いてるだけで、やばい雰囲気がするんだけど大丈夫かよ」
あのディザスティアを拘束した巨大な蛇を呼び出す。
そんな事が人の身で可能なのだろうかと思うけど、ソフィアが言うのなら可能なのだろう。
何せ、歴代の魔王達の身体を使用して作り出された魔力の篭った指輪を使う事で、【智神】セラフナハシュを呼び出す事が出来たくらいだ、眷属を呼び出す事が出来ても不思議ではない。
「ダリアさん、ご安心ください……世界を喰らう蛇くらいなら何度も呼び出した事があるので仲良しなんですよ?」
「何度もって……おまえ何やってんだよ」
「しょ、しょうがないんですよぉ!だってセラフナハシュに新しく開発された魔術や治癒術をみせて満足させる為には、眷属の眼を通すしかないんですよ?だから何度も呼び出してはお世話になるしかないんです!」
「お、おぅ……けど、セラフナハシュはソフィアの中に封印されてんだろ?」
何かソフィアがまためんどくさい人みたいになってるけど、今はそんな事を気にするよりも目の前の兵器達を破壊する事に集中した方がいい。
そう思いながら武器をふるい続けるけど、徐々に体力が尽き始めたようで腕が鈍りのように重く感じる。
身体の損傷なら治癒術を使う事で治す事は出来るけど、肉体に溜まった疲労に関しては効果が無いに等しい、そう思うと前衛で戦い続けられる人の底なしに近い程の体力が少しだけ羨ましく感じてしまう。
「確かに封印されていますけど、それはこの世界にいた分霊……つまり分身みたいなもので、本体は鏡の向こう側にいるんですよ」
「……は?それってなんかおかしくねぇか?御伽噺に出て来る三英雄の活躍で、神は五大国を治める王の中に封印されたんだろ?」
「あの中で唯一、分霊だけをこの世界に送って安全な場所に避難していたのがセラフナハシュです、まぁ実際は姉妹神である【賢神】マリーヴェイパーがシャルネ様達に滅ぼされ封印された事を恐れて、分霊を作り上げた後元の世界に逃げただけなんですけどね」
「……何か凄い小物っぽくないか?それって、父さん顔が真っ青だぞ!?ちょっと待ってろ!俺も前に出る!」
ダリアの声が後ろから聞こえたかと思うと、破壊したばかりの兵器と位置を精霊術で交換したのか、目の前に姿を現す。
そして横なぎにされた大剣を跳んで跳び越えて隣に立つと、心器の剣を構えて数体切り伏せて、ぼくの負担を減らそうとしてくれる。
「まぁ……しょうがないと思いますよ?私達人間が自分の命がかわいいように、神も死にたくはないんだと思いま……、あ、見つけました、【世界を喰らう蛇】を呼び出します!」
……鏡の中から翼を持つ巨大な蛇が飛び出して来たかと思うと、周囲をゆっくりと確認するとフィリアを見て『……今日は良く呼び出される日だ、で?この状況から見るに新術のお披露目では無いのだろう?では我は何をすればいい』とぼく達へと迫って来る兵器達をなぎ倒しながら言葉にする。
その問いに対してフィリアが頷きながら『あの機械の塊たちを贄に捧げるので、マスカレイドの無力化をお願いします!』と答えると、まるで笑っているかのように長い舌を何度か出すと、口を大きく開き兵器達を飲み込み始めるのだった。
まるで同じ行動の繰り返しで、たった数分の攻防の筈なのにあっと言う間に何十分、いや……何時間も、掛かっている気がして精神がすり減る感覚が心を削り、思考が鈍って目の前の事に関して集中する事しか出来なくなって行く。
「……これは何時になったら終わるんだろう」
そんな言葉が自然と口から零れてしまう。
マスカレイドの圧倒的な物量を活かした戦法に、身体が悲鳴を上げてはち切れそうなるけど、母さんの言うように今の身体能力なら【怪力】を全力が使っても耐えられる。
以前までだったら、腕が弾けたり、全身の骨が砕けたりとか酷い事になっていたけど……この状態なら、治癒術を使わなくても耐えきれる程度の損傷しか無いから、治癒術を使わなくても言い分、全体的な負担が少ない。
「父さん!大丈夫か!?」
「しんどい以外は問題無いから、大丈夫だよ」
「……まじかよ、父さんまで化け物になってんじゃねぇか」
「酷い言われようだね」
思考が鈍っていても、これくらいの話は出来るくらいには余裕がある。
これには勿論理由があって、マスカレイドの魔術で作られた毒の塊が飛んでくるけど、それらを全て母さんが様々な属性の魔術で無効化してくれているからだ。
気化しても危険性のある毒は火属性の魔術で蒸発させた後に、風属性の魔術で遠くへと飛ばし、可燃性のあるタイプは土属性の魔術で覆ってしまう。
それどころか、土に吸われても触れただけで肌が爛れ溶けてしまうような劇薬に関しては、水の魔術で濃度を薄めた後に凍らせてマスカレイドに向けて打ち返す。
そんな判断が瞬時に行われていて、余りに二人のレベルの高さに思わず見惚れてしまいそうになる。
「ソフィア、まだ準備に時間が掛かりそう?」
「後少し、本当に後少しです!後少しであちら側から呼び出す事が出来ます!」
「……呼び出すって何を呼ぶのさ」
「レースさんもディザスティアとセラフナハシュの戦いの時に見た筈ですよ?あの巨大な蛇の姿を、あれはセラフナハシュが使役する眷属【世界を喰らう蛇】と呼ばれる使い魔です、指輪を使い遠いこの世界ではない何処かから、捕まえて引っ張り出すんですよ」
「なんか聞いてるだけで、やばい雰囲気がするんだけど大丈夫かよ」
あのディザスティアを拘束した巨大な蛇を呼び出す。
そんな事が人の身で可能なのだろうかと思うけど、ソフィアが言うのなら可能なのだろう。
何せ、歴代の魔王達の身体を使用して作り出された魔力の篭った指輪を使う事で、【智神】セラフナハシュを呼び出す事が出来たくらいだ、眷属を呼び出す事が出来ても不思議ではない。
「ダリアさん、ご安心ください……世界を喰らう蛇くらいなら何度も呼び出した事があるので仲良しなんですよ?」
「何度もって……おまえ何やってんだよ」
「しょ、しょうがないんですよぉ!だってセラフナハシュに新しく開発された魔術や治癒術をみせて満足させる為には、眷属の眼を通すしかないんですよ?だから何度も呼び出してはお世話になるしかないんです!」
「お、おぅ……けど、セラフナハシュはソフィアの中に封印されてんだろ?」
何かソフィアがまためんどくさい人みたいになってるけど、今はそんな事を気にするよりも目の前の兵器達を破壊する事に集中した方がいい。
そう思いながら武器をふるい続けるけど、徐々に体力が尽き始めたようで腕が鈍りのように重く感じる。
身体の損傷なら治癒術を使う事で治す事は出来るけど、肉体に溜まった疲労に関しては効果が無いに等しい、そう思うと前衛で戦い続けられる人の底なしに近い程の体力が少しだけ羨ましく感じてしまう。
「確かに封印されていますけど、それはこの世界にいた分霊……つまり分身みたいなもので、本体は鏡の向こう側にいるんですよ」
「……は?それってなんかおかしくねぇか?御伽噺に出て来る三英雄の活躍で、神は五大国を治める王の中に封印されたんだろ?」
「あの中で唯一、分霊だけをこの世界に送って安全な場所に避難していたのがセラフナハシュです、まぁ実際は姉妹神である【賢神】マリーヴェイパーがシャルネ様達に滅ぼされ封印された事を恐れて、分霊を作り上げた後元の世界に逃げただけなんですけどね」
「……何か凄い小物っぽくないか?それって、父さん顔が真っ青だぞ!?ちょっと待ってろ!俺も前に出る!」
ダリアの声が後ろから聞こえたかと思うと、破壊したばかりの兵器と位置を精霊術で交換したのか、目の前に姿を現す。
そして横なぎにされた大剣を跳んで跳び越えて隣に立つと、心器の剣を構えて数体切り伏せて、ぼくの負担を減らそうとしてくれる。
「まぁ……しょうがないと思いますよ?私達人間が自分の命がかわいいように、神も死にたくはないんだと思いま……、あ、見つけました、【世界を喰らう蛇】を呼び出します!」
……鏡の中から翼を持つ巨大な蛇が飛び出して来たかと思うと、周囲をゆっくりと確認するとフィリアを見て『……今日は良く呼び出される日だ、で?この状況から見るに新術のお披露目では無いのだろう?では我は何をすればいい』とぼく達へと迫って来る兵器達をなぎ倒しながら言葉にする。
その問いに対してフィリアが頷きながら『あの機械の塊たちを贄に捧げるので、マスカレイドの無力化をお願いします!』と答えると、まるで笑っているかのように長い舌を何度か出すと、口を大きく開き兵器達を飲み込み始めるのだった。
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