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第十章 魔導国学園騒動
51話 叡智と黎明
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マスカレイドのカタストロフが研究室を破壊しながら迫る。
ダリアが必死に精霊に魔力を渡して術を発動させようとしているけど……
「ちょっ!おま……逃げんなっ!くっそ肝心な時に役に立たねぇ!」
「……安全な場所に移動させてくれるんじゃなかったの?」
「死にたくないから逃げるって言って、俺の中に隠れやがった!」
「えぇ……」
死にたくないって言う気持ちは分かるけど、まさかこのタイミングで精霊に逃げられる何て思わなかった。
さすがに今から避けようとしても間に合わないし、ダリアの時空間魔術を使ったとしても獣化したグロウフェレスを抱えて移動するのは不可能だ。
せめて……彼が人の姿に戻ってから意識を失ってくれたら良かったのだけれど、こればっかりは文句を言ってもしょうがない。
「……あなた達、何を無防備にその場で立ってるの?」
「母さん!?」
焦っているぼく達の前に母さんが空間魔術で転移すると、心器の鉄扇を顕現させると……
「……地よ風よ、火よ、水よ一つに連なりて、我が叡智を示せ【魔導砲】」
四つの属性の魔術が一か所に集まったかと思うと、黒い閃光となってマスカレイドに向けて放たれる。
そしてカタストロフと衝突すると、二つの色が合わさり一つの球体に姿を変えると肥大して行き、周囲を飲み込みんで行く。
「……ソフィアちゃん、今のうちにミオラームちゃんとグロウフェレスを安全な場所に移動させてちょうだい」
「カルディア様……、分かりました!」
ソフィアの杖槍の先端に魔力の光が灯ると、二人が霧に包まれる。
そして……完全に姿を覆い隠すと、目の前にいるグロウフェレスの姿がどんどん薄くなって行くと、水に溶けるように消えてしまう。
「ミオラーム様とグロウフェレスの転移終わりました!カルディア様……いえ、師匠!次は何をすれば!」
「残った三人は私と共にレイドの相手をしなさい!今の私では彼を倒す事が出来ない……、だから力を貸して!」
「分かったけど、ぼくに出来る事って何かある?」
「私とレイドが掛けた封印が解けて、封じていたあなたの本来の心器が使えるようになったはず、それに……今のあなたはディザスティアの力の残滓とセラフナハシュの力の一部をその身に宿しているのでしょう?なら、充分戦える筈よ」
どうして母さんが、二柱の神の力を封じている事を知っているのだろうか。
色々と気になるけれど、封印が解けた事で本当にマスカレイドと戦える事が出来るようになったというのなら、試してみた方がいいかもしれない。
けど……やり取りをしている内に、球体にヒビが入ったかと思うと……囲うように魔法陣が空中に展開され……
「虚数崩壊」
「粒子崩壊」
母さんとマスカレイドの声が聞こえたかと思うと、半分が塵になって消え。
もう半分が黒く染まると、空気に溶けるように色が薄くなり見えなくなった。
そして……静寂が場を包み込んだかと思うと、マスカレイドの背中から生えていた無数の管が外れて床に落ち、ゆっくりと立ち上がる。
「……どうしてここにルディ、貴様がいる?」
「レイド、あなたはどうしてこんな姿になってしまったの?」
「どうして?何を言っているんだ?ルディ、これは俺とお前が共に夢見て目指した魔導の行きつく先の一つ、魔導と機械の融合だ」
「……レイド?」
「これがあれば、この力があれば俺達の知的欲求により作り出されて産まれた娘も、ルディーが広い俺達で育てたレースも守る事が出来る、俺が作り生み出した技術で……弱き者を、守るべきものを守り暮らし、人々の生活を豊かにすることが出来る!」
全身が機械の身体になったマスカレイドのその目は焦点が合ってなくて、会話も出来ているようで出来ていない。
けど、正気を失ってなお必死に大事な者を守ろうとする姿は……何だか痛々しくて、言葉に詰まってしまう。
「母さん、マスカレイドはシャルネの【精神汚染】の影響で精神が歪んで……」
「……レイドは、Sランク冒険者の中でも心が不安定で、何時も悩んでばかりだったから、影響を受けてしまったのね」
「その為に魔導人形を作った、俺の心を操ったシャルネを滅ぼし、俺達の平和を取り戻し家族としての時間を過ごすために、……ん?そこにいる青年は誰だ?」
「……青年?マスカレイド、ぼくはレースだよ、そして隣にいる子はぼくとダートの娘のダリア」
「……貴様がレース?嘘を言うな、おまえはまだこんなに小さい子供のは……ず……、ん?何だこの記憶はなぜ俺が大人になったレースと異世界から呼び出したダートとストラフィリアで?、どうしてメセリーで戦いを?なんだ、なんだこれは、ん?どうして俺はこんな姿になっているんだ?俺の身体は何処だ?これはなんだ?」
……マスカレイドの表情が困惑に染めると母さんの方を見て『……ルディ、俺はどうなってしまったんだ?』と言葉にすると、まるで助けを求めるかのようにマンティコアの腕を伸ばす。
彼の行動に応えるように母さんも腕を伸ばすけど、途中で意識を失ったかのように腕が下がりその場に固まってしまう。
そのまま、再び静寂が場を支配したかと思うと……マスカレイドが頭を抱えて喉が張り裂けんばかりの声を上げると『思い出した、思い出した……全部、全部!俺は、俺は……何て事を、どうして!』と錯乱し始めるのだった。
ダリアが必死に精霊に魔力を渡して術を発動させようとしているけど……
「ちょっ!おま……逃げんなっ!くっそ肝心な時に役に立たねぇ!」
「……安全な場所に移動させてくれるんじゃなかったの?」
「死にたくないから逃げるって言って、俺の中に隠れやがった!」
「えぇ……」
死にたくないって言う気持ちは分かるけど、まさかこのタイミングで精霊に逃げられる何て思わなかった。
さすがに今から避けようとしても間に合わないし、ダリアの時空間魔術を使ったとしても獣化したグロウフェレスを抱えて移動するのは不可能だ。
せめて……彼が人の姿に戻ってから意識を失ってくれたら良かったのだけれど、こればっかりは文句を言ってもしょうがない。
「……あなた達、何を無防備にその場で立ってるの?」
「母さん!?」
焦っているぼく達の前に母さんが空間魔術で転移すると、心器の鉄扇を顕現させると……
「……地よ風よ、火よ、水よ一つに連なりて、我が叡智を示せ【魔導砲】」
四つの属性の魔術が一か所に集まったかと思うと、黒い閃光となってマスカレイドに向けて放たれる。
そしてカタストロフと衝突すると、二つの色が合わさり一つの球体に姿を変えると肥大して行き、周囲を飲み込みんで行く。
「……ソフィアちゃん、今のうちにミオラームちゃんとグロウフェレスを安全な場所に移動させてちょうだい」
「カルディア様……、分かりました!」
ソフィアの杖槍の先端に魔力の光が灯ると、二人が霧に包まれる。
そして……完全に姿を覆い隠すと、目の前にいるグロウフェレスの姿がどんどん薄くなって行くと、水に溶けるように消えてしまう。
「ミオラーム様とグロウフェレスの転移終わりました!カルディア様……いえ、師匠!次は何をすれば!」
「残った三人は私と共にレイドの相手をしなさい!今の私では彼を倒す事が出来ない……、だから力を貸して!」
「分かったけど、ぼくに出来る事って何かある?」
「私とレイドが掛けた封印が解けて、封じていたあなたの本来の心器が使えるようになったはず、それに……今のあなたはディザスティアの力の残滓とセラフナハシュの力の一部をその身に宿しているのでしょう?なら、充分戦える筈よ」
どうして母さんが、二柱の神の力を封じている事を知っているのだろうか。
色々と気になるけれど、封印が解けた事で本当にマスカレイドと戦える事が出来るようになったというのなら、試してみた方がいいかもしれない。
けど……やり取りをしている内に、球体にヒビが入ったかと思うと……囲うように魔法陣が空中に展開され……
「虚数崩壊」
「粒子崩壊」
母さんとマスカレイドの声が聞こえたかと思うと、半分が塵になって消え。
もう半分が黒く染まると、空気に溶けるように色が薄くなり見えなくなった。
そして……静寂が場を包み込んだかと思うと、マスカレイドの背中から生えていた無数の管が外れて床に落ち、ゆっくりと立ち上がる。
「……どうしてここにルディ、貴様がいる?」
「レイド、あなたはどうしてこんな姿になってしまったの?」
「どうして?何を言っているんだ?ルディ、これは俺とお前が共に夢見て目指した魔導の行きつく先の一つ、魔導と機械の融合だ」
「……レイド?」
「これがあれば、この力があれば俺達の知的欲求により作り出されて産まれた娘も、ルディーが広い俺達で育てたレースも守る事が出来る、俺が作り生み出した技術で……弱き者を、守るべきものを守り暮らし、人々の生活を豊かにすることが出来る!」
全身が機械の身体になったマスカレイドのその目は焦点が合ってなくて、会話も出来ているようで出来ていない。
けど、正気を失ってなお必死に大事な者を守ろうとする姿は……何だか痛々しくて、言葉に詰まってしまう。
「母さん、マスカレイドはシャルネの【精神汚染】の影響で精神が歪んで……」
「……レイドは、Sランク冒険者の中でも心が不安定で、何時も悩んでばかりだったから、影響を受けてしまったのね」
「その為に魔導人形を作った、俺の心を操ったシャルネを滅ぼし、俺達の平和を取り戻し家族としての時間を過ごすために、……ん?そこにいる青年は誰だ?」
「……青年?マスカレイド、ぼくはレースだよ、そして隣にいる子はぼくとダートの娘のダリア」
「……貴様がレース?嘘を言うな、おまえはまだこんなに小さい子供のは……ず……、ん?何だこの記憶はなぜ俺が大人になったレースと異世界から呼び出したダートとストラフィリアで?、どうしてメセリーで戦いを?なんだ、なんだこれは、ん?どうして俺はこんな姿になっているんだ?俺の身体は何処だ?これはなんだ?」
……マスカレイドの表情が困惑に染めると母さんの方を見て『……ルディ、俺はどうなってしまったんだ?』と言葉にすると、まるで助けを求めるかのようにマンティコアの腕を伸ばす。
彼の行動に応えるように母さんも腕を伸ばすけど、途中で意識を失ったかのように腕が下がりその場に固まってしまう。
そのまま、再び静寂が場を支配したかと思うと……マスカレイドが頭を抱えて喉が張り裂けんばかりの声を上げると『思い出した、思い出した……全部、全部!俺は、俺は……何て事を、どうして!』と錯乱し始めるのだった。
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