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第十章 魔導国学園騒動
46話 彼が帰って来ない ダート視点
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いつもならそレースが帰って来る時間なのに帰って来ない。
何かがあったんじゃ無いかと心配になるけど、最近は学園の生徒さんや同僚さん達と打ち解けて、仲良くなったみたいだから、話し込んだりしているのかも?そういう事なら納得出来る。
そう思うと、今のレースは出会った時と比べて本当に変わった。
勿論、悪い方では無くて良い方向にだけど、独りよがりで誰とも必要以上に関わろうとしなかったのに、今では友人や仲間に恵まれている。
そのきっかけに私がいるのが凄い嬉しい、でもその変わりに一人の時間が増えたのは寂しく感じてしまう。
「……レース、まだかなぁ」
「遅くなるという連絡はありませんでしたが、えっとダート様、心配でしたら私が様子を見に行きましょうか?」
「もしかしたら生徒さんや同僚さん達とお話をしているのかもしれないから……」
「ですがダート様、身重の妻を残して不安にさせるのは良くない事だと思いますよ?」
「確かに少しだけ、不安にはなるけどサリッサさんがいるから大丈夫だよ?」
お腹の中に子供がいて、それなりに成長して大きくなってきたから家にいる時間が増えたけど、サリッサさんが面倒を見てくれるおかげで快適な暮らしが出来ている。
それ以外にもレースの助手として学園に通っているカエデちゃんも、帰って来たら色々と身の回りの事をしてくれたり、移動する際は身体を支えてくれるおかげで、体調の方も良くて、激しい運動が出来ない以外は平和で暇な毎日を過ごしているけど何だか物足りない。
出来れば……お弁当とかを持って学園に行ったり、忙しいレースの変わりに診療所の手伝いをしたいけど、やろうとしたら皆に心配をかけてしまうと思うから……大人しくメイメイちゃんが用意してくれた、妊娠中の症状を抑える薬を飲んで大人しくする。
「そういえばカエデ様も今日はおかえりが遅いですね、ダート様、何か聞いたりとかはしていませんか?」
「ん?カエデちゃんなら、今日はランちゃんのところに用があるとかで寮に行ってるよ?」
「……寮、ですか」
「あぁ……、やっぱり気になる?」
サリッサさんの顔が嫌悪感に歪む。
たぶん……、この前レースの変わりに寮の様子を見に行った際にフランメに会った事が原因だと思う。
ストラフィリアの前王ヴォルフガング・ストラフィリアの実の娘であり、彼を殺害した彼女が何時の間にか寮の管理をしている。
サリッサさんの立場からしたら、忠誠を誓い仕えた主人を殺した相手が楽しそうに生活をしている姿を見たら、気持ちとしては凄い複雑だろうし、嫌悪感を抱くのも当然だ。
「……はい、フランメ様の事情は勿論理解しております、ですが……やはり頭では理解が出来ても感情では難しいのです」
「私もサリッサさんと同じ立場にだったら、辛いと思うから無理して距離を縮めようとしないでいいと思うよ?」
「……そう言って頂けるのは嬉しいのですが、辺境都市クイストで暮らして行く以上は、フランメ様と向き合っていかなければいけないと思うので、それに出来れば……あの」
「……サリッサさん?」
「今はまだ難しいのですが、いずれ打ち解ける事が出来たらと思います」
そこまで無理をしないでいいのにと思うけど、サリッサさんが決めた事なら私に止める権利は無い。
でもそれでも心配で……
「サリッサさん大丈夫?無理してない?」
「……えぇ、ですが、ルミィ様が気にしておられないのに、私だけがずっと気にし続けているのは良くないと思いますので」
「サリッサさんのそういうところ凄いなぁ」
「……そうですか?」
「うん、私だったら、そこまで嫌な感情を持った人と仲良くなろうとは思えないから、歩み寄ろうとするのは凄いと思う、私もサリッサさんの事見習わないと」
私には出来ない事を、勇気を出して行動に起こそうと出来る人は本当に凄いと感じる。
それにこういう尊敬できる一人の大人の女性が近くにいてくれて、使用人として身の回りの世話をしてくれるのは本当に心強いし、子供が元気に生まれて大きくなった時に、サリッサさんのそういう姿を見て強い子に育って欲しいなって思う。
「見習うだなんてそんな……、私からしたらこれから母親になるダート様の方が立派だと思いますし、その堂々としたところは見習わないとって思ってますよ?」
「そうかな、でも……私も最初はこんな感じじゃなかったよ?レースと出会って一緒にいるうちに、影響を受けた感じかな……、あぁでも一番はお腹の中にこの子が来てくれたからかも?何て言うか彼に依存し過ぎてしまうよりも、しっかりとしなくちゃって思う事が増えたから」
「……女は母になると強くなると、ストラフィリアの諺にありますが、本当にその通りなのかもしれませんね」
「へぇ、そういうのがあるんだ……、でも確かに強くはなれたかも?」
「えぇ、確実に強くそして逞しく成長なされたかと……」
……そんなやり取りをしている内に、ふと外を見たら日が暮れて夕時になっていた。
サリッサさんが、私の側から離れて夕ご飯の支度をしようとキッチンに行くと……『ダート様……、これをっ!』とレースが普段使っているマグカップを持ってくる。
いったいどうしたのだろうかと思って、彼女の手にあるそれを見ると昨日まではヒビが入っていなかったのに、無数のひび割れが起きていて……何だか嫌な予感がするのだった。
何かがあったんじゃ無いかと心配になるけど、最近は学園の生徒さんや同僚さん達と打ち解けて、仲良くなったみたいだから、話し込んだりしているのかも?そういう事なら納得出来る。
そう思うと、今のレースは出会った時と比べて本当に変わった。
勿論、悪い方では無くて良い方向にだけど、独りよがりで誰とも必要以上に関わろうとしなかったのに、今では友人や仲間に恵まれている。
そのきっかけに私がいるのが凄い嬉しい、でもその変わりに一人の時間が増えたのは寂しく感じてしまう。
「……レース、まだかなぁ」
「遅くなるという連絡はありませんでしたが、えっとダート様、心配でしたら私が様子を見に行きましょうか?」
「もしかしたら生徒さんや同僚さん達とお話をしているのかもしれないから……」
「ですがダート様、身重の妻を残して不安にさせるのは良くない事だと思いますよ?」
「確かに少しだけ、不安にはなるけどサリッサさんがいるから大丈夫だよ?」
お腹の中に子供がいて、それなりに成長して大きくなってきたから家にいる時間が増えたけど、サリッサさんが面倒を見てくれるおかげで快適な暮らしが出来ている。
それ以外にもレースの助手として学園に通っているカエデちゃんも、帰って来たら色々と身の回りの事をしてくれたり、移動する際は身体を支えてくれるおかげで、体調の方も良くて、激しい運動が出来ない以外は平和で暇な毎日を過ごしているけど何だか物足りない。
出来れば……お弁当とかを持って学園に行ったり、忙しいレースの変わりに診療所の手伝いをしたいけど、やろうとしたら皆に心配をかけてしまうと思うから……大人しくメイメイちゃんが用意してくれた、妊娠中の症状を抑える薬を飲んで大人しくする。
「そういえばカエデ様も今日はおかえりが遅いですね、ダート様、何か聞いたりとかはしていませんか?」
「ん?カエデちゃんなら、今日はランちゃんのところに用があるとかで寮に行ってるよ?」
「……寮、ですか」
「あぁ……、やっぱり気になる?」
サリッサさんの顔が嫌悪感に歪む。
たぶん……、この前レースの変わりに寮の様子を見に行った際にフランメに会った事が原因だと思う。
ストラフィリアの前王ヴォルフガング・ストラフィリアの実の娘であり、彼を殺害した彼女が何時の間にか寮の管理をしている。
サリッサさんの立場からしたら、忠誠を誓い仕えた主人を殺した相手が楽しそうに生活をしている姿を見たら、気持ちとしては凄い複雑だろうし、嫌悪感を抱くのも当然だ。
「……はい、フランメ様の事情は勿論理解しております、ですが……やはり頭では理解が出来ても感情では難しいのです」
「私もサリッサさんと同じ立場にだったら、辛いと思うから無理して距離を縮めようとしないでいいと思うよ?」
「……そう言って頂けるのは嬉しいのですが、辺境都市クイストで暮らして行く以上は、フランメ様と向き合っていかなければいけないと思うので、それに出来れば……あの」
「……サリッサさん?」
「今はまだ難しいのですが、いずれ打ち解ける事が出来たらと思います」
そこまで無理をしないでいいのにと思うけど、サリッサさんが決めた事なら私に止める権利は無い。
でもそれでも心配で……
「サリッサさん大丈夫?無理してない?」
「……えぇ、ですが、ルミィ様が気にしておられないのに、私だけがずっと気にし続けているのは良くないと思いますので」
「サリッサさんのそういうところ凄いなぁ」
「……そうですか?」
「うん、私だったら、そこまで嫌な感情を持った人と仲良くなろうとは思えないから、歩み寄ろうとするのは凄いと思う、私もサリッサさんの事見習わないと」
私には出来ない事を、勇気を出して行動に起こそうと出来る人は本当に凄いと感じる。
それにこういう尊敬できる一人の大人の女性が近くにいてくれて、使用人として身の回りの世話をしてくれるのは本当に心強いし、子供が元気に生まれて大きくなった時に、サリッサさんのそういう姿を見て強い子に育って欲しいなって思う。
「見習うだなんてそんな……、私からしたらこれから母親になるダート様の方が立派だと思いますし、その堂々としたところは見習わないとって思ってますよ?」
「そうかな、でも……私も最初はこんな感じじゃなかったよ?レースと出会って一緒にいるうちに、影響を受けた感じかな……、あぁでも一番はお腹の中にこの子が来てくれたからかも?何て言うか彼に依存し過ぎてしまうよりも、しっかりとしなくちゃって思う事が増えたから」
「……女は母になると強くなると、ストラフィリアの諺にありますが、本当にその通りなのかもしれませんね」
「へぇ、そういうのがあるんだ……、でも確かに強くはなれたかも?」
「えぇ、確実に強くそして逞しく成長なされたかと……」
……そんなやり取りをしている内に、ふと外を見たら日が暮れて夕時になっていた。
サリッサさんが、私の側から離れて夕ご飯の支度をしようとキッチンに行くと……『ダート様……、これをっ!』とレースが普段使っているマグカップを持ってくる。
いったいどうしたのだろうかと思って、彼女の手にあるそれを見ると昨日まではヒビが入っていなかったのに、無数のひび割れが起きていて……何だか嫌な予感がするのだった。
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