上 下
491 / 567
第十章 魔導国学園騒動

36話 二手に分かれて

しおりを挟む
 ロドリゲスの研究室に転移したぼく達は、二手に分かれて行動をする事にした。
ぼくとソフィア、セイランとキュー、この組み合わせで動きつつ、途中で母さんと合流したら3人で行動をする。
正直あの二人を別行動させるのはどうかと思ったうけど……

「レースさん?何だか不満がありそうな表情をしてますけど……?」
「いや、別行動する必要があるのかなって」
「ちゃんとありますよ?あの二人がいると、心器を使えないでしょう?」
「あぁ……」

 確かに学園にいる間は、心器の使用を止められているから、二人が別行動させる事で使えるようにしてくれるのは嬉しいけど、……キュー、いやグロウフェレスをセイランと二人きりにする事の危険性をソフィアは分かっていないのかもしれない。
シャルネと別行動をしているとはいえ、彼女の仲間である以上、完全に信用する訳のは危険だ。
あの時の二人のやり取りを思い出してみると……セイランはダートのように異世界から転移してきた又は、ミオラームと同じ転生者だろう。
彼女達の目的を考えると、正直最悪の組み合わせでしかない。

「それよりも、ソフィアはキューの正体を知ってるの?」
「あぁ……やっぱりあれ、中身が違うんですね」
「うん、彼はグロウフェレスって言うぼく達の……え?中身が違う?」
「はい、学園の教師としてスカウトした時と比べて、余りにも性格や態度が違うので、気にはなっていたのですけど、確信に至る情報が無かったので」
「それなら聞いてくれたら良かったと思うんだけど?」

 怪しいと思ってるなら、調べられるんだから……学園長という立場を利用すればいいのに

「……レースさん、それは無茶ぶりですよ?私がキュー、いえグロウフェレスさんでしたか?その人とあなたの関係を知らないのに、聞いてくれたら良かったと言われても、無理がありますよね?」
「……あぁ、うん、ぼくが悪かったよ」
「分かればよろしいのですよ、さて……そのグロウフェレスさんとはどういう関係かお話して貰って良いですか?ここまで話して、何もないとかはないですよね?」
「うん……実は──」

 ソフィアに、辺境都市クイストやストラフィリアで起きた事を話す。
すると、面白い物語に耳を傾けるような仕草をしたかと思うと

「……つまり、キューさんのご先祖に当たる人物がグロウフェレスさんなのかもしれませんね」
「え?それってどういう」
「召喚術を使う事で、任意の場所に契約した生物を呼び出せるのは、レースさんもご存じだとは思います」
「まぁ、実際にこの目で見てるからある程度は理解しているけど……」
「私の想像の範囲を過ぎないのですけど、キューさんがご先祖様から要請を受けて精神を自分の中に召喚したのかもしれませんよ?」

 そんな事が本当に出来るのかと疑問に思ってしまうけど、ソフィアが実際に見たキューと、現在の印象の違いを考えるとありえるのではないか感じる。
けど、その場合本来の人格は何処に行ってしまったのだろうか、精神……いや、人格は脳が司っているけど、そこに二つの精神が存在する事になった場合、何が起きるのか分からない以上危険だ。
もうかなり前のように感じるけど、暗示の魔術を使い別の人格を作り出していたダートの事を思い出してしまう。

「それって大丈夫なの?」
「専門外な術に関する知識なので自信はありませんけど、術者と召喚される側は利害関係が一致している事が多いそうですから、問題無いと思いますよ?現にキューさ……いえ、グロウフェレスさんは学園にいる間、問題を起こしていませんし、診療所に尋ねに来た時も友好的だったのでしょう?」
「そうだけど……、それってケイスニルからの手紙のせいなんじゃ」
「それだけで敵対関係にある人が、あなたと友好関係を築くと思いますか?少なからず相手はレースさんと比べたら格上の相手ですよ?」
「けど、あの時と比べたらぼくも結構強くなった……ん!?」

 ソフィアが急にぼくの口に指を当てると、まるで叱るような仕草でおでこを軽く叩く。
痛くは無いけど……何か悪い事をしてしまったような気がして、反射的に黙ってしまう。

「もう……レースさんはそういう所が良くないですね、あなたが強くなるという事は相手も成長してると言う事ですよ?それに私達と比べたら遥かに長い時を生きているのですから、自分が強さを過信するとそのうち痛い目を見ますよって……その顔は既に経験したみたいですね」
「……まぁ、メイディにいた時に、栄花騎士団最高幹部の人と喧嘩する事になって、その際に色々とね」
「なら、分かる筈ですよね?レースさんの年齢的にそろそろ自分の考えが固まって来て、自分を変える事が難しくなってくる年頃ですからね、今みたいに同じ事を繰り返す前に失敗から学んだ事はちゃんとやらないように意識しないと、お嫁さんや婚約者さんに嫌われてしまいますよ?、まぁ……カエデ様は駄目な人がタイプでしょうから大丈夫だと思いますけど、ダートさんはお子さんが産まれるんですからちゃんと気を付けないと」

……ソフィアが弟に注意を促すような仕草をすると、『私なら反省する事があったらメモを取って自分を見つめ直すようにしてますよ?』と言葉にする。
そんな会話をしながらロドリゲスの研究室を探索していると、何処からか何かが倒れたり割れるような音がしたかと思うと、聞き覚えのある声が遠くから響くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...