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第十章 魔導国学園騒動

34話 ロドリゲスの繋がり

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 この学園の主でもあり、この国の王でもあるソフィア・メセリーが職員室に入ると、隣にいたセイランが驚いた表情を浮かべると急いでその場に跪く。
キューは、無視をするかのように転移した先の映像を見続けている。

「まさか、あなた達が早く犯人を特定するとは思いませんでした」
「……思いませんでした?、生徒達の間で噂になっておりましたが?」
「キュー先生、魔王ソフィア・メセリー様の前ですよ!?」
「学園長という立場なのですから、そういう噂が立った場合真っ先に動くべきなのに、いったい何をしていたのですか?」

 キューが映像から目を離すと鋭い視線をソフィアに向ける。
けど、全く気にしていないかのように、拘束された状態で床に転がっているロドリゲスを指差すと

「……優秀な人材だと思いスカウトしたのに、このような結果になってしまいとても残念です」
「ソフィア、ここに彼を拘束して連れて来たという事は、ぼくたちに用があるんじゃないの?」
「えぇ……、口止めに来ました」
「口止め……ですか?」
「まず今回の件について、あなた達がここで見た事を外部に口外する事を禁じます」

 口外する事を禁じると言われたら、立場的にぼく達に出来るのはその指示に従う事しか出来なくなる。

「学園長、あなた……口外をするなという事は、生徒達が犠牲になる程の大きな問題を解決する方法があるのですか?」
「えぇ……、そこのレース先生の治癒術及び、私の師匠であり、彼の母でもあるSランク冒険者【叡智】カルディア様の力を借ります」
「……え?ぼくの治癒術?」
「はい、レースさんの技術であればモンスターと身体が結合してしまった生徒達を無事に切り離す事が出来る筈です、それに」
「それに?」

 確かにぼくの治癒術を使えば出来なくはない。
治癒術を使い内側から繋がっている部分を切り離した後、禁術指定されている術で治療を施し欠損した部分を作り直す事で、元に戻す事が出来る。
ただ、その場合彼らの寿命を削る事になるわけで……正直、そんな危険な事をするくらいなら、隣国のマーシェンスに行き魔導具の義肢を着けた方が負担が少ないと思う。

「拘束する際にロドリゲス先生から聞きましたけど、あの魔法陣の向こう側にはダリアさん達もいるらしいので、レースさんに拒否権は無いですね」
「……ダリアが?どうしてそんな事に」
「それが、あなた達のように噂の真相を調べようとしたようで、ロドリゲスの研究室に忍び込んだまでは良かったみたいですが……」
「捕まったって事ですね、ソフィア様、ダリアさん達はその後どうなったのか分かりますか?」
「今のところは薬で眠らされているそうです、彼が曰く、同じ志を持つ協力者、Sランク冒険者【黎明】マスカレイド・ハルサーが到着次第、ダリアさん達を他の生徒達のようにモンスターとの結合を開始するそうです」

 どうしてぼくに何も言わずに、そんな危険な事に首を突っ込んでしまったのか。
想像が出来ない訳では無いけど、ぼくなりに思いつく範囲だと……

『生徒が行方不明になっているという噂が本当だったらとんでもない事ですわ、ダリアさん、スパルナさん、私達で解決しますわよ!』
『んー、面白そうだな、よし!スパルナ、俺達で調べてみようぜ!』
『う、うん!』
『決まりましたわね!では、行きますわよ!私達仲良し三人組の出動ですわ!』

 とかそんなやり取りをして、好奇心のまま動いた結果、捕まってしまったんだと思う。

「え、叡智マスカレイド・ハルサー、それって凄いやばくないですか!?」
「……ソフィアさん、私もついて行っても良いでしょうか」
「あ、ソフィア様、私もついて行きます!大事な生徒が恐ろしい目にあっているのに、静観するわけには行きません!」
「お二人とも……分かりました、、レースさん、良い同僚を持ちましたね」

 セイランが着いて来てくれるのは嬉しいけど、本来は敵同士である筈のキューが力を貸してくれるのは何故だろうか。
ぼくなりに色々と考えては見るけど、これと言って納得の行く答えが出る筈も無く。

「キュー、どうして君は着いて来てくれるの?」
「……単純に、気になるだけです」
「キュー先生そんな事言っちゃって、本当は生徒達の事が心配なくせにー!」
「セイランさん、思っても言わない方がいい事も沢山あるんですよ?まs……気にならないと言ったら嘘になりますが、今は関係ないでしょう」
「そんな照れなくてもいいんですよ?」

 キューが困った表情を浮かべれると、何故かくの方に助けを求めるかのような視線を送って来る。

「……取り合えず、話しはまとまったみたいですし、今ここにいる私達と先にロドリゲスの研究室で待機しているカルディア様の元に行きましょうか」
「あ、はい!レース先生、キュー先生!急いでいきますよ!」

……皆で職員室を出て母さんの待つ、研究室へ行こうとした時だった。
ロドリゲスの拘束が解けたかと思うと、スッと立ち上がり懐から一枚の紙を取り出して広げる。
そして空中に魔法陣のような物が浮かび上がったかと思うと、彼を飲み込むように包む込み、何処かへと消えてしまい……『ソフィア様、ロドリゲス先生が!』と動揺するセイランの声が職員室の中に響くのだった。
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