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第十章 魔導国学園騒動
33話 ロドリゲスの研究室
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職員室に戻ったぼく達は、キューのデスクに集まると……
「さて、今からロドリゲスの研究室を映し出します」
「いったいどんな物が見えるのか、想像すると怖いですね」
「研究室って言われても、そこまで怖いものはないんじゃない?」
デスクに置かれた札から光が発せられたかと思うと、壁に向かって伸びて行く。
そして瞬きをするかのように何度か点滅を繰り返したかと思うと、薄暗い部屋が映し出され……
「……?ロドリゲスはいないのかな」
「いや、その筈はないと思いますよ?ロドリゲス先生はいつも授業を終えた後は研究室に行く筈ですし」
「どれ、部屋の中を移動させてみましょうか」
研究室内で召喚されたらしい何かは、テチテチというような独特な足音をさせながら室内を移動する。
すると見えたのは、大量の麦が床に積まれていたり、色とりどりの瓶に野菜や果物が浸けられている幻想的な光景だった。
「なんか綺麗だね」
「……これが全てお酒になるんですねぇ」
「二人とも、今は見惚れてる余裕は無いのでは?」
「ごめんなさいキュー先生、しっかりしないと!」
「分かればよろしい」
奥に進めば進むほど、刈り取られたばかりの麦が沢山詰まれていて、足の踏み場が無くなっていく。
そして部屋の突き当りまで行くと……
「……おや、何も無いですね」
「キュー先生にレース先生、これって……何かおかしくないですか?」
「おかしい?」
「はい、いる筈のロドリゲス先生がいないのもそうなんですけど、勉強会が出来るような環境も整ってないですよね?」
「あぁ、確かに……それなら生徒達は何処に行ったのかな」
室内には確かに勉強会を行うような場所は無い。
なら生徒達は何処に行ってしまったのか、そう思っていると詰まれた麦が淡く光り始め、そこからロドリゲスが浮かび上がるようにして現れる。
「……え!?キュー先生!レース先生!、麦の中からロドリゲス先生が!」
「これは、あぁなるほど」
「……キュー、何か知ってるの?」
「えぇ、あの現れ方は転移の魔法陣だと思います」
「転移の魔法陣ですか?それって優れた空間魔術の使い手じゃないと使えないんじゃなかったでしたっけ」
一応ぼくも空間魔術を使う事は出来るけど、空間跳躍や転移を行う事は出来ない。
心器の能力である【空間移動】を使えは似たような事を出来ない訳では無いけど、以前ストラフィリアで使った時に、とんでもない目にあった経験があるから、出来れば使いたくはない。
「いえ、魔法陣を使い決められた場所に飛ぶくらいなら誰でも出来ます」
「へぇ、そうなんですか?」
「はい、例えばロドリゲスの研究室をA地点として、移動先をB地点とします、それぞれの場所に同じ構築の魔法陣を設置する事で、使用者がその上に立ち魔力を流す事で自由に転移が可能となります」
「……なんか転移の魔導具と似てる気がする」
「レースさん、魔法陣と魔導具は同じ理屈で出来ているので、そう思うのは当然だと思いますよ?機械と魔術及び治癒術を融合して作られた技術が、魔導具、予め魔法陣を描く事で、専門的な知識が無くても本人の魔力次第では難易度の高い魔術を使用できる技術、ある程度の知識がある人であればあなたのように違和感を覚えるのは当然だと思いますよ」
詳しくは魔導具は機械以外にも、様々な物に術を発動させる為の回路を刻む事で、魔導具に付与された魔術や治癒術が使えるようになったりするけど、詳しい事は専門家では無いから分からない。
「……そうなんだ」
「興味が無さそうですね、まぁ別に構いませんが……さて、話はこれくらいにして麦の中に隠れている魔法陣の中に入って貰いましょうか」
キューの声が聞こえているのか、研究室の中を探索している何か麦の中へと入っていく。
すると、一瞬で風景が変わり、そこには……
「これは……、何て言う事を」
「そ、そんな、こんな事って!」
キューが眉間に皺を寄せながら険しい表情をする。
その隣で口元を抑えながらセイランがうずくまると、そのまま目に映った物見ないように目をそらす。
二人がそうなるのも当然だろう、ロドリゲスに連れていかれて行方不明になったであろう生徒達の殆どが、研究室にあった野菜や果物と同じように、人が一人入る大きさの瓶に入れられていて……
「……これは惨い、人にしていい事ではないですね」
「私、これは……噓でしょ」
「……」
身体の一部が、モンスターと結合されている生徒達が映し出されている光景に、言葉が詰まる。
瓶の中にいる生徒達は皆、身体の至るところから管のような物が接続されていて、最早人としての扱いをされているようには見えない。
「レース先生は、あれを見ても何も思わないんですか!?」
「思うけど……、今ぼく達に出来る事は」
「……無いと言いたいんですか!?生徒達がこんなひどい目にあってると言うのに!?」
「……セイランさん、落ち着いてください、私達が今出来る事はこの情報を学園長に伝える事です」
「その必要はありません、しかとこの目で見させて頂きましたから」
……勢いよく職員室の扉が開かれたかと思うと、学園長、いや、【魔王】ソフィア・メセリーが目に怒りの感情を込めて入って来る。
そして椅子に腰かけ『……ロドリゲス先生に関しての調査を、Sランク冒険者【叡智】カルディアと共に行っておりましたが、まさかここまで深刻な事態になっているだなんて思ってもいませんでした』と言葉にすると、先程まで研究室にいた筈のロドリゲスが拘束された状態で床に投げ出されるだった。
「さて、今からロドリゲスの研究室を映し出します」
「いったいどんな物が見えるのか、想像すると怖いですね」
「研究室って言われても、そこまで怖いものはないんじゃない?」
デスクに置かれた札から光が発せられたかと思うと、壁に向かって伸びて行く。
そして瞬きをするかのように何度か点滅を繰り返したかと思うと、薄暗い部屋が映し出され……
「……?ロドリゲスはいないのかな」
「いや、その筈はないと思いますよ?ロドリゲス先生はいつも授業を終えた後は研究室に行く筈ですし」
「どれ、部屋の中を移動させてみましょうか」
研究室内で召喚されたらしい何かは、テチテチというような独特な足音をさせながら室内を移動する。
すると見えたのは、大量の麦が床に積まれていたり、色とりどりの瓶に野菜や果物が浸けられている幻想的な光景だった。
「なんか綺麗だね」
「……これが全てお酒になるんですねぇ」
「二人とも、今は見惚れてる余裕は無いのでは?」
「ごめんなさいキュー先生、しっかりしないと!」
「分かればよろしい」
奥に進めば進むほど、刈り取られたばかりの麦が沢山詰まれていて、足の踏み場が無くなっていく。
そして部屋の突き当りまで行くと……
「……おや、何も無いですね」
「キュー先生にレース先生、これって……何かおかしくないですか?」
「おかしい?」
「はい、いる筈のロドリゲス先生がいないのもそうなんですけど、勉強会が出来るような環境も整ってないですよね?」
「あぁ、確かに……それなら生徒達は何処に行ったのかな」
室内には確かに勉強会を行うような場所は無い。
なら生徒達は何処に行ってしまったのか、そう思っていると詰まれた麦が淡く光り始め、そこからロドリゲスが浮かび上がるようにして現れる。
「……え!?キュー先生!レース先生!、麦の中からロドリゲス先生が!」
「これは、あぁなるほど」
「……キュー、何か知ってるの?」
「えぇ、あの現れ方は転移の魔法陣だと思います」
「転移の魔法陣ですか?それって優れた空間魔術の使い手じゃないと使えないんじゃなかったでしたっけ」
一応ぼくも空間魔術を使う事は出来るけど、空間跳躍や転移を行う事は出来ない。
心器の能力である【空間移動】を使えは似たような事を出来ない訳では無いけど、以前ストラフィリアで使った時に、とんでもない目にあった経験があるから、出来れば使いたくはない。
「いえ、魔法陣を使い決められた場所に飛ぶくらいなら誰でも出来ます」
「へぇ、そうなんですか?」
「はい、例えばロドリゲスの研究室をA地点として、移動先をB地点とします、それぞれの場所に同じ構築の魔法陣を設置する事で、使用者がその上に立ち魔力を流す事で自由に転移が可能となります」
「……なんか転移の魔導具と似てる気がする」
「レースさん、魔法陣と魔導具は同じ理屈で出来ているので、そう思うのは当然だと思いますよ?機械と魔術及び治癒術を融合して作られた技術が、魔導具、予め魔法陣を描く事で、専門的な知識が無くても本人の魔力次第では難易度の高い魔術を使用できる技術、ある程度の知識がある人であればあなたのように違和感を覚えるのは当然だと思いますよ」
詳しくは魔導具は機械以外にも、様々な物に術を発動させる為の回路を刻む事で、魔導具に付与された魔術や治癒術が使えるようになったりするけど、詳しい事は専門家では無いから分からない。
「……そうなんだ」
「興味が無さそうですね、まぁ別に構いませんが……さて、話はこれくらいにして麦の中に隠れている魔法陣の中に入って貰いましょうか」
キューの声が聞こえているのか、研究室の中を探索している何か麦の中へと入っていく。
すると、一瞬で風景が変わり、そこには……
「これは……、何て言う事を」
「そ、そんな、こんな事って!」
キューが眉間に皺を寄せながら険しい表情をする。
その隣で口元を抑えながらセイランがうずくまると、そのまま目に映った物見ないように目をそらす。
二人がそうなるのも当然だろう、ロドリゲスに連れていかれて行方不明になったであろう生徒達の殆どが、研究室にあった野菜や果物と同じように、人が一人入る大きさの瓶に入れられていて……
「……これは惨い、人にしていい事ではないですね」
「私、これは……噓でしょ」
「……」
身体の一部が、モンスターと結合されている生徒達が映し出されている光景に、言葉が詰まる。
瓶の中にいる生徒達は皆、身体の至るところから管のような物が接続されていて、最早人としての扱いをされているようには見えない。
「レース先生は、あれを見ても何も思わないんですか!?」
「思うけど……、今ぼく達に出来る事は」
「……無いと言いたいんですか!?生徒達がこんなひどい目にあってると言うのに!?」
「……セイランさん、落ち着いてください、私達が今出来る事はこの情報を学園長に伝える事です」
「その必要はありません、しかとこの目で見させて頂きましたから」
……勢いよく職員室の扉が開かれたかと思うと、学園長、いや、【魔王】ソフィア・メセリーが目に怒りの感情を込めて入って来る。
そして椅子に腰かけ『……ロドリゲス先生に関しての調査を、Sランク冒険者【叡智】カルディアと共に行っておりましたが、まさかここまで深刻な事態になっているだなんて思ってもいませんでした』と言葉にすると、先程まで研究室にいた筈のロドリゲスが拘束された状態で床に投げ出されるだった。
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