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第十章 魔導国学園騒動
25話 何故ここに君が……
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何とか落ち着きを取り戻した生徒達に今回のような事はして欲しいとお願いをされない限りは、あのような危険な教え方はやらないと約束をした。
その後授業の終わりを告げる音が鳴ると、未だに目を覚まさないエスペランサをダリアとスパルナに任せて職員室に戻る。
「レース先生、初めての授業の方はどうでしたか?」
「んー、色々とあったから何て説明すればいいか」
「……やっぱり、生徒達がまともに授業を受けてくれませんでした?」
「あぁ、いえ……んー、何て言えばいいかな」
セイランの質問に何て返せばいいのか分からなくて言葉に詰まる。
母さんから教わった方法を生徒達に頼まれて、実際にやってみたら生徒の一人が気を失って倒れたり、どう見ても今回の授業に関しては失敗としか言えない。
「生徒達は授業をしっかりと受けてくれたんだけど……、ぼくの方で失敗しちゃってさ」
「ほぅ……あの子達が授業を受けたのですか?」
話を聞いていたキューが興味を持ったのか、椅子から立ち上がると近づいてくる。
「うん、エスペランサが協力してくれたおかげだよ」
「学園に来てその日のうちに、あのクラスで起きている問題を解決するとは……学園長直々にスカウトした優秀な人材だと聞きましたが、聞いていた以上かもしれませんね」
「……キュー先生が人を褒める所、私初めて見ました」
「私はいつも皆さんの事認めてますし心の中では褒めてますよ?セイランは真面目で真っすぐな方で素晴らしいと思います」
「え?あ、ありがとうございます」
キューの言葉にセイランが頬を真っ赤に染めたかと思うと、その場にしゃがんで顔を隠してしまう。
スカートの中が不自然にバタバタと左右に動いているせいで……帽子をかぶったりして獣人である事を隠してるみたいなのに、これでは意味が無い気がする。
「……ところでレースさん、生徒が授業を受けてくれたという事は理解出来ましたが、失敗とは?」
「んー、生徒達に母さんから治癒術を教わったのと同じ方法で授業をして欲しいって言われて……実際にやったらエスペランサが気を失ったり、教室内で騒ぎが起きてしまったりと色々とあってさ」
「なるほど、興味があるのでどのような物か試して頂いても?」
「……結構危ないと思うけど」
「何かあったとしても、それはやりたいと願い出た者の責任です……よろしくお願いします」
そこまで言うのならやった方がいいだろう。
キューの手を取り、彼と魔力の波長を合わせて行く……。
「……っ!?」
「おや?どうしましたか?」
彼の姿はどう見ても人族のそれなのに、魔力の波長から分かるそれは……尾が三本生えていて──
「なるほど……これは確かに危険ですね」
「え?まだ何も……」
どうしてまだ治癒術を使っていないのに危険だと判断出来るのか。
彼から感じる違和感はいったい……、何だか嫌な予感がして全身から嫌な汗が流れる。
すると、キューが顔を近づけて来て小声で囁くように……
「これ以上はお互いの為に止めましょう」
「その声、あの姿……まさか」
「……止めましょうと言ったばかりですよ」
と言葉にすると、グロウフェレス……いや、今はキューが自分の机に戻っていく。
彼がどうしてここにいるのか、ぼく達の敵である筈なのに……
「はわぁ~、キュー先生に褒められちゃいましたぁ」
「……何だか嬉しそうだね」
「う、嬉しいもなにもっ!普段私は公私を分けてますのでって、言う態度を取ってる人がいきなり見せるデレ、最高じゃないですか!」
「……え?」
「分かりません?分かりますよね!分かる筈ですよ!普段クールな人が心を開いてくれるって凄い嬉しいんですよ!」
……ごめん、キューの事が頭から離れてしまいそうになる程に、ちょっと何を言ってるのか分からない。
けど、とりあえず分かったのはセイランは思ったよりも、面白い人なのかもしれないという事くらいか。
「……レースさん、セイランさんはテンションが上がるとこうなってしまうので、落ち着くまで聞いたふりしてるといいですよ」
「聞いたふりとは酷いですねキュー先生っ!けど、そういう所も素敵だと思います、そしてですね──」
何だか初対面の頃とは印象が変わりそうな程に早口で色々と語り出したけど、今のぼくには理解出来そうにない話題で、キューが言うように頷くくらいしかできない。
「あぁ……うん、そうなんだ?」
「そうなんです!やっと分かってくれたようで安心しました、ん?……そういえば助手のカエデさんの姿が見えませんけど、何処に行ったんですか?」
「カエデならダート……いや、妊娠してるぼくの一人目の奥さんの様子を見に帰ったよ、家に一応使用人がいるから大丈夫だと思うけど、彼女は優秀な治癒術師だから側にいたいらしくてさ」
「あら……?という事は、レースさんはその若さで二人目のお子さんが出来るんですね、凄いなぁ」
「たまたま人の縁に恵まれただけだよ」
……そんな話をしたら、今度はどんな風に奥さんと出会ったのかセイランから質問責めにあってしまい、どう反応すればいいのか再び困っていたら『セイランさん、そういう個人的な事は、仕事が終わってからにしてください』とキューが止めてくれるのだった。
その後授業の終わりを告げる音が鳴ると、未だに目を覚まさないエスペランサをダリアとスパルナに任せて職員室に戻る。
「レース先生、初めての授業の方はどうでしたか?」
「んー、色々とあったから何て説明すればいいか」
「……やっぱり、生徒達がまともに授業を受けてくれませんでした?」
「あぁ、いえ……んー、何て言えばいいかな」
セイランの質問に何て返せばいいのか分からなくて言葉に詰まる。
母さんから教わった方法を生徒達に頼まれて、実際にやってみたら生徒の一人が気を失って倒れたり、どう見ても今回の授業に関しては失敗としか言えない。
「生徒達は授業をしっかりと受けてくれたんだけど……、ぼくの方で失敗しちゃってさ」
「ほぅ……あの子達が授業を受けたのですか?」
話を聞いていたキューが興味を持ったのか、椅子から立ち上がると近づいてくる。
「うん、エスペランサが協力してくれたおかげだよ」
「学園に来てその日のうちに、あのクラスで起きている問題を解決するとは……学園長直々にスカウトした優秀な人材だと聞きましたが、聞いていた以上かもしれませんね」
「……キュー先生が人を褒める所、私初めて見ました」
「私はいつも皆さんの事認めてますし心の中では褒めてますよ?セイランは真面目で真っすぐな方で素晴らしいと思います」
「え?あ、ありがとうございます」
キューの言葉にセイランが頬を真っ赤に染めたかと思うと、その場にしゃがんで顔を隠してしまう。
スカートの中が不自然にバタバタと左右に動いているせいで……帽子をかぶったりして獣人である事を隠してるみたいなのに、これでは意味が無い気がする。
「……ところでレースさん、生徒が授業を受けてくれたという事は理解出来ましたが、失敗とは?」
「んー、生徒達に母さんから治癒術を教わったのと同じ方法で授業をして欲しいって言われて……実際にやったらエスペランサが気を失ったり、教室内で騒ぎが起きてしまったりと色々とあってさ」
「なるほど、興味があるのでどのような物か試して頂いても?」
「……結構危ないと思うけど」
「何かあったとしても、それはやりたいと願い出た者の責任です……よろしくお願いします」
そこまで言うのならやった方がいいだろう。
キューの手を取り、彼と魔力の波長を合わせて行く……。
「……っ!?」
「おや?どうしましたか?」
彼の姿はどう見ても人族のそれなのに、魔力の波長から分かるそれは……尾が三本生えていて──
「なるほど……これは確かに危険ですね」
「え?まだ何も……」
どうしてまだ治癒術を使っていないのに危険だと判断出来るのか。
彼から感じる違和感はいったい……、何だか嫌な予感がして全身から嫌な汗が流れる。
すると、キューが顔を近づけて来て小声で囁くように……
「これ以上はお互いの為に止めましょう」
「その声、あの姿……まさか」
「……止めましょうと言ったばかりですよ」
と言葉にすると、グロウフェレス……いや、今はキューが自分の机に戻っていく。
彼がどうしてここにいるのか、ぼく達の敵である筈なのに……
「はわぁ~、キュー先生に褒められちゃいましたぁ」
「……何だか嬉しそうだね」
「う、嬉しいもなにもっ!普段私は公私を分けてますのでって、言う態度を取ってる人がいきなり見せるデレ、最高じゃないですか!」
「……え?」
「分かりません?分かりますよね!分かる筈ですよ!普段クールな人が心を開いてくれるって凄い嬉しいんですよ!」
……ごめん、キューの事が頭から離れてしまいそうになる程に、ちょっと何を言ってるのか分からない。
けど、とりあえず分かったのはセイランは思ったよりも、面白い人なのかもしれないという事くらいか。
「……レースさん、セイランさんはテンションが上がるとこうなってしまうので、落ち着くまで聞いたふりしてるといいですよ」
「聞いたふりとは酷いですねキュー先生っ!けど、そういう所も素敵だと思います、そしてですね──」
何だか初対面の頃とは印象が変わりそうな程に早口で色々と語り出したけど、今のぼくには理解出来そうにない話題で、キューが言うように頷くくらいしかできない。
「あぁ……うん、そうなんだ?」
「そうなんです!やっと分かってくれたようで安心しました、ん?……そういえば助手のカエデさんの姿が見えませんけど、何処に行ったんですか?」
「カエデならダート……いや、妊娠してるぼくの一人目の奥さんの様子を見に帰ったよ、家に一応使用人がいるから大丈夫だと思うけど、彼女は優秀な治癒術師だから側にいたいらしくてさ」
「あら……?という事は、レースさんはその若さで二人目のお子さんが出来るんですね、凄いなぁ」
「たまたま人の縁に恵まれただけだよ」
……そんな話をしたら、今度はどんな風に奥さんと出会ったのかセイランから質問責めにあってしまい、どう反応すればいいのか再び困っていたら『セイランさん、そういう個人的な事は、仕事が終わってからにしてください』とキューが止めてくれるのだった。
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