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第十章 魔導国学園騒動
20話 ……見覚えがある
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何処かで見たような気がする栄花から移住して来たらしい男性を見るけど、何時会ったのか思い出す事が出来ない。
「……?レース先生、どうかしましたか?」
「あ、いえ……すいません、あなたとは何処かであったような気がして」
「私とですか?」
人の顔をじろじろ見るのは良くないと思いつつも、何だか目が離せない。
どうしてなのか自分なりに考えては見るけれど、これと言って思い当たるところが無くて……
「あぁ、えっと……」
「ん?そういえば、失礼名乗っていませんでしたね……私の事はキューとお呼びください」
栄花出身という割には珍しい名前をしている気がする。
あの国の人達は、カエデを例にするとあっちの言葉で【楓】と書くらしくて名前の文字数が少ない程位が高い家系や、国から見て大事な役職についている人物とみなす事になるらしい。
他にはぼくの師匠であり、友人のアキラさんは【晶】だし……確かメイディで一緒に戦ったライさんやハスは、【来】と【蓮】っていう風に書くって教わったから、その名前に関して違和感を感じてしまう。
いや、もしかしたらぼくの思い違いかもしれないけど……キューって言う名前をあの国の言葉に当てはめる事が出来ないような気がして……
「栄花の名付け文化とちょっとだけ違うんですね」
「あぁ……本当の名前は九尾というのですが、友人達からキューちゃんと呼ばれる事が多いので、そっちで名乗ってしまいました」
「……九尾?」
「あ、私知ってますよ、栄花のおとぎ話に出て来る有名なお狐様の事ですよね?何でも長く生きる過程で尾の数が増えて、最終的には九尾と呼ばれるようになり人を助ける神様として神聖視されたりする動物ですよね」
「セイランさんはお詳しいようですね、その通り……私はその九尾を信仰する一族の出で、そのおとぎ話にあやかりこの名前を頂いただけのただの一般人ですよ」
……九尾、ストラフィリアで戦った【天魔】シャルネ・ヘイルーンを主人と呼んでいた、指名手配中の元Aランク冒険者【幻死の瞳】グロウフェレスを思い出す。
確か幻術を使って自身の姿を九本の尾を持つ狐に変えたりしてたし、彼も札を使って術を発動したり召喚術のような物を使っていたような気がする。
そう思うと、何だか目の前にいる彼が人族の見た目をしているのに、グロウフェレスと共通点があるような気がして、当時を思い出して背中に嫌な汗が伝うような感覚がした。
「それは勿論、この学園に教師として呼ばれるようになった際に色々と独自に調べましたもの、私って結構真面目なんですよ?」
「どうやらそのようで……、ところでずっと黙って椅子に座っているあなたは会話に混ざらないのですか?」
「わ、私はいいのですわ!」
キューが声を掛けると、ツナギのような物を着て、顔にガスマスクを着けている小柄な人が驚いたような声を上げながら椅子から立ち上がる。
あれは……うん、あの珍しい髪色の女の子はどう見てもミオラームだ。
「でも、私やキュー先生のようにちゃんと自己紹介をした方がいいと思いますよ?」
「それ位分かってますわっ!……なら自己紹介だけ、私マリーと言いますの!マーシェンスから分け合ってこの国に滞在しているのですけど、働かないとお金に困ってしまうので特別に教師として雇われたのですわ!」
「え?あぁ……マリー?、君はミオ──」
「わー!わー!私はマリー!マリーですわ!」
「……あぁ、うんよろしくねマリー」
多分だけど、ぼくの予想が間違えでなければマリーという名前は、彼女の中に封じられている神の一柱【賢神】マリーヴェイパーから名前を取っているのかもしれない。
けど……意識しないといつも通りミオラームと呼びそうになるから気を付けないと、そのうち問題を起こしてしまいそうだ。
「あれ?マリー先生とレース先生はお会いした事あるんですか?」
「えぇ、そうですのよ?レース様の左腕の義肢を作成したのは私なんですの!」
「へぇ……そうなんですねぇ、知り合いだったなら教えてくれたらいいのに」
「さすがに職場で公私混同する訳にはいかないからね、そういう所はしっかりしないと」
「ほぅ、レースくんは真面目なのですね……そういう方なら私としても安心ですね、あなたと同じで私も公私はしっかりと分けたいタイプなので」
キューが頷きながらそう答えると、自身の机に座り何やら木の札に文字を書き始める。
彼からしたらもう話すような事は無いという事なのだろうか。
「えぇ?折角知り合ったんですから仲良くしましょうよぉ!」
「そうですわよ?お友達とまでは行かなくても、仲良くするのは大事だと思いますわ、その方が良いと思いませんこと?」
「……私は結構です、ここでは仕事で来てるだけなので」
「もう、キュー様はいけずですわ、私こんなに皆様と仲良くしたいと言ってますのに」
「無理強いは良くないよマリー先生、レース先生も無理にとは言わないけど仲良くして欲しいな」
……確かにミオラームの言うように、職員同士で仲良くするのは大事だと思う。
そういう事ならぼくも皆と友好的に接する事が出来るように頑張ってみた方がいいと考えながら『いや、こちらこそ、これから仲良くしてくれると嬉しいかな』と、握手を求めるのだった。
「……?レース先生、どうかしましたか?」
「あ、いえ……すいません、あなたとは何処かであったような気がして」
「私とですか?」
人の顔をじろじろ見るのは良くないと思いつつも、何だか目が離せない。
どうしてなのか自分なりに考えては見るけれど、これと言って思い当たるところが無くて……
「あぁ、えっと……」
「ん?そういえば、失礼名乗っていませんでしたね……私の事はキューとお呼びください」
栄花出身という割には珍しい名前をしている気がする。
あの国の人達は、カエデを例にするとあっちの言葉で【楓】と書くらしくて名前の文字数が少ない程位が高い家系や、国から見て大事な役職についている人物とみなす事になるらしい。
他にはぼくの師匠であり、友人のアキラさんは【晶】だし……確かメイディで一緒に戦ったライさんやハスは、【来】と【蓮】っていう風に書くって教わったから、その名前に関して違和感を感じてしまう。
いや、もしかしたらぼくの思い違いかもしれないけど……キューって言う名前をあの国の言葉に当てはめる事が出来ないような気がして……
「栄花の名付け文化とちょっとだけ違うんですね」
「あぁ……本当の名前は九尾というのですが、友人達からキューちゃんと呼ばれる事が多いので、そっちで名乗ってしまいました」
「……九尾?」
「あ、私知ってますよ、栄花のおとぎ話に出て来る有名なお狐様の事ですよね?何でも長く生きる過程で尾の数が増えて、最終的には九尾と呼ばれるようになり人を助ける神様として神聖視されたりする動物ですよね」
「セイランさんはお詳しいようですね、その通り……私はその九尾を信仰する一族の出で、そのおとぎ話にあやかりこの名前を頂いただけのただの一般人ですよ」
……九尾、ストラフィリアで戦った【天魔】シャルネ・ヘイルーンを主人と呼んでいた、指名手配中の元Aランク冒険者【幻死の瞳】グロウフェレスを思い出す。
確か幻術を使って自身の姿を九本の尾を持つ狐に変えたりしてたし、彼も札を使って術を発動したり召喚術のような物を使っていたような気がする。
そう思うと、何だか目の前にいる彼が人族の見た目をしているのに、グロウフェレスと共通点があるような気がして、当時を思い出して背中に嫌な汗が伝うような感覚がした。
「それは勿論、この学園に教師として呼ばれるようになった際に色々と独自に調べましたもの、私って結構真面目なんですよ?」
「どうやらそのようで……、ところでずっと黙って椅子に座っているあなたは会話に混ざらないのですか?」
「わ、私はいいのですわ!」
キューが声を掛けると、ツナギのような物を着て、顔にガスマスクを着けている小柄な人が驚いたような声を上げながら椅子から立ち上がる。
あれは……うん、あの珍しい髪色の女の子はどう見てもミオラームだ。
「でも、私やキュー先生のようにちゃんと自己紹介をした方がいいと思いますよ?」
「それ位分かってますわっ!……なら自己紹介だけ、私マリーと言いますの!マーシェンスから分け合ってこの国に滞在しているのですけど、働かないとお金に困ってしまうので特別に教師として雇われたのですわ!」
「え?あぁ……マリー?、君はミオ──」
「わー!わー!私はマリー!マリーですわ!」
「……あぁ、うんよろしくねマリー」
多分だけど、ぼくの予想が間違えでなければマリーという名前は、彼女の中に封じられている神の一柱【賢神】マリーヴェイパーから名前を取っているのかもしれない。
けど……意識しないといつも通りミオラームと呼びそうになるから気を付けないと、そのうち問題を起こしてしまいそうだ。
「あれ?マリー先生とレース先生はお会いした事あるんですか?」
「えぇ、そうですのよ?レース様の左腕の義肢を作成したのは私なんですの!」
「へぇ……そうなんですねぇ、知り合いだったなら教えてくれたらいいのに」
「さすがに職場で公私混同する訳にはいかないからね、そういう所はしっかりしないと」
「ほぅ、レースくんは真面目なのですね……そういう方なら私としても安心ですね、あなたと同じで私も公私はしっかりと分けたいタイプなので」
キューが頷きながらそう答えると、自身の机に座り何やら木の札に文字を書き始める。
彼からしたらもう話すような事は無いという事なのだろうか。
「えぇ?折角知り合ったんですから仲良くしましょうよぉ!」
「そうですわよ?お友達とまでは行かなくても、仲良くするのは大事だと思いますわ、その方が良いと思いませんこと?」
「……私は結構です、ここでは仕事で来てるだけなので」
「もう、キュー様はいけずですわ、私こんなに皆様と仲良くしたいと言ってますのに」
「無理強いは良くないよマリー先生、レース先生も無理にとは言わないけど仲良くして欲しいな」
……確かにミオラームの言うように、職員同士で仲良くするのは大事だと思う。
そういう事ならぼくも皆と友好的に接する事が出来るように頑張ってみた方がいいと考えながら『いや、こちらこそ、これから仲良くしてくれると嬉しいかな』と、握手を求めるのだった。
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