471 / 575
第十章 魔導国学園騒動
16話 クラスの現状
しおりを挟む
ダリアが自己紹介をした後、クラス内を見渡して空いている席を勝手に探し始める。
こういう時は教師が指定するべきだと思うのだけれど、ぼくも今日から新任教師として働く訳だから何処が空いてるのか分からないし、彼女に任せた方がいいだろう。
「あ、あの……レース先生、ダリアさんが空いてる席を探してるみたいなので、私の隣使っていいですよ?」
「えっと、じゃあお願いしようかな……ダリア、あそこの子の隣の席が空いてるらしいからそこに座って」」
「ん?おぉ、お前いい奴だなっ!俺はさっき自己紹介したけどダリアってんだ、よろしくな?」
ダリアに任せようとしたら、スパルナが立ち上がって隣の椅子を指差しながら空いてる席を教えてくれる。
「こ、こち、らこそ、よろしくね?えっと私、スパルナ・フォン・フェーレンって言うの」
「フェーレン?って事は、もしかしてスパルナがマローネの孫か?」
「えっと、うん……」
「おぉ、まじか!って事は今からお前の俺の友達だなっ!」
席について直ぐにスパルナと打ち解けて友人関係を築いている辺り、ダリアのそういう所は本当に凄いと思う。
ぼくならそういうの出来ないし、友人関係を作るのに長い時間を要してしまうタイプだから、仮に相手が友人だと思ってくれていてもこっちが自覚する事が難しい。
「ちょっと!ダリアさん!?あなた……フェーレンとお友達になるつもりなのかしら?」
「ん?あぁ、そうだけど?それがどうしたんだよエスぺ」
「どうしたんだよってあなた……彼女はこの辺境都市クイストの前領主の親族ですわよ?魔王様に逆らった逆賊の身内とお友達になるなんて正気ではありませんわ」
エスペランサの言葉を聞いた数人の生徒が頷くと、敵意を込めた視線をダリアへと向ける。
多分、今ぼくが出来る事は彼女達の間に入って止めるよりも何も言わずに見守る事だろう。
仮にここで大人が話に割って入ってしまったら間違いなく拗れてしまうだろうし、様子を見る事も大事な筈だ。
「……エスぺおまえさぁ、そんなくだらない事言ってんじゃねぇよ」
「くだらないですって?ダリアさんあなた、このエスペランサ・アドリアーナ・ウィリアムをくだらいと仰るのですの?」
「あぁ、くだらねぇだろ、そこの頷いてる奴等も同じように馬鹿なんじゃねぇの?考えてみろよ、前の領主に問題があったとしてもスパルナには何の問題もねぇだろ、そいつの問題を家族に持ち込むんじゃねぇ、犯罪者の子は犯罪者理論振りかざしてんじゃねぇよくだらねぇ」
「な……えっ」
「俺が転校して来たからには、これから先そんな馬鹿みてぇな事しだしたらぶっとばすからな!覚悟しろよ?エスぺ、おめぇも友達だからって容赦しねぇぞ!」
何ていうか、凄いなぁって思う。
このクラスの問題がダリア一人で解決してしまうのではないだろうかと感じる程で、勢いだけで行動できるのは彼女の強みなのかもしれない。
「あいつ生意気じゃね?」
「一度分からせた方がいいだろこいつ」
「可愛いからって生意気だろ」
先程頷いていた生徒達が立ち上がってダリアへと近づきながら、見習いの魔術師が持つ短杖を構えると魔術の光を灯し始める。
さすがにこれは止めるべきだと思い声を掛けようとすると
「父さん。悪いけどここは俺に任せてくれよ、こういう馬鹿には実力を見せねぇと」
「いや、実力を見せる以前にそろそろやり過ぎだから止まりなよ、エスペランサや他の生徒も席につ──」
「るっせぇなぁ!新任の教師が偉そうにしてんじゃねぇよ!」
「あ、あなたっ!人に向かって直接魔術を使ってはいけませんわ!」
「いつも通り黙らせれば問題ねぇよ!」
意外な事にエスペランサが大きな声で、生徒達を止めようとするが……完全に頭に血が上っているようでそれぞれが詠唱を唱えながら魔術を発動する。
土塊や、先端が尖った水の槍、火の玉が向かってくるけど、どれも今まで経験した来た戦いのせいか脅威に感じる程では無い気がする。
……いや、威力は充分だと思うんだけど、何て言うか相手を傷つけようとしてるのに怖くないというか、何とも不思議な感じだ。
「レ、レース先生っ!避けてください!」
「ん?あぁ……これ位大丈夫だよ」
「な、うっそだろ……今の俺の全力だぞ」
「あ、ありえねぇ、何だよあれ」
空間収納から、【不壊】の効果が付与された大剣を取り出すと鞘から抜き放ち生徒達の魔術を叩き潰す。
心器が使えないから【怪力】の効果が落ちてるけど、鞘から抜いて振る位なら何とか出来る。
まぁ……その後は、重すぎて持ち上げる事すら出来ないせいで教壇に刺さってしまったけど相手に冷静さを取り戻させるのにはちょうど良い筈だ。
「……左腕の義肢だけでもおかしいのに、何だよその武器卑怯じゃねぇか!」
「戦う気が無い人に向かって複数人で魔術を使う方が卑怯だよ……、これ以上やるなら相手になるけど出来れば座って皆の自己紹介をして貰いたいかな」
……空間収納の中に鞘と大剣を戻しながらそう言うと、ダリアが何やってんだこいつ、という顔でこっちを見て来る。
その反応を見るに多分あれが最適解だったと思ったんだけど何かやり方を間違えたのかもしれない。
そう思いながら生徒達の自己紹介が始まるのを待つのだった。
こういう時は教師が指定するべきだと思うのだけれど、ぼくも今日から新任教師として働く訳だから何処が空いてるのか分からないし、彼女に任せた方がいいだろう。
「あ、あの……レース先生、ダリアさんが空いてる席を探してるみたいなので、私の隣使っていいですよ?」
「えっと、じゃあお願いしようかな……ダリア、あそこの子の隣の席が空いてるらしいからそこに座って」」
「ん?おぉ、お前いい奴だなっ!俺はさっき自己紹介したけどダリアってんだ、よろしくな?」
ダリアに任せようとしたら、スパルナが立ち上がって隣の椅子を指差しながら空いてる席を教えてくれる。
「こ、こち、らこそ、よろしくね?えっと私、スパルナ・フォン・フェーレンって言うの」
「フェーレン?って事は、もしかしてスパルナがマローネの孫か?」
「えっと、うん……」
「おぉ、まじか!って事は今からお前の俺の友達だなっ!」
席について直ぐにスパルナと打ち解けて友人関係を築いている辺り、ダリアのそういう所は本当に凄いと思う。
ぼくならそういうの出来ないし、友人関係を作るのに長い時間を要してしまうタイプだから、仮に相手が友人だと思ってくれていてもこっちが自覚する事が難しい。
「ちょっと!ダリアさん!?あなた……フェーレンとお友達になるつもりなのかしら?」
「ん?あぁ、そうだけど?それがどうしたんだよエスぺ」
「どうしたんだよってあなた……彼女はこの辺境都市クイストの前領主の親族ですわよ?魔王様に逆らった逆賊の身内とお友達になるなんて正気ではありませんわ」
エスペランサの言葉を聞いた数人の生徒が頷くと、敵意を込めた視線をダリアへと向ける。
多分、今ぼくが出来る事は彼女達の間に入って止めるよりも何も言わずに見守る事だろう。
仮にここで大人が話に割って入ってしまったら間違いなく拗れてしまうだろうし、様子を見る事も大事な筈だ。
「……エスぺおまえさぁ、そんなくだらない事言ってんじゃねぇよ」
「くだらないですって?ダリアさんあなた、このエスペランサ・アドリアーナ・ウィリアムをくだらいと仰るのですの?」
「あぁ、くだらねぇだろ、そこの頷いてる奴等も同じように馬鹿なんじゃねぇの?考えてみろよ、前の領主に問題があったとしてもスパルナには何の問題もねぇだろ、そいつの問題を家族に持ち込むんじゃねぇ、犯罪者の子は犯罪者理論振りかざしてんじゃねぇよくだらねぇ」
「な……えっ」
「俺が転校して来たからには、これから先そんな馬鹿みてぇな事しだしたらぶっとばすからな!覚悟しろよ?エスぺ、おめぇも友達だからって容赦しねぇぞ!」
何ていうか、凄いなぁって思う。
このクラスの問題がダリア一人で解決してしまうのではないだろうかと感じる程で、勢いだけで行動できるのは彼女の強みなのかもしれない。
「あいつ生意気じゃね?」
「一度分からせた方がいいだろこいつ」
「可愛いからって生意気だろ」
先程頷いていた生徒達が立ち上がってダリアへと近づきながら、見習いの魔術師が持つ短杖を構えると魔術の光を灯し始める。
さすがにこれは止めるべきだと思い声を掛けようとすると
「父さん。悪いけどここは俺に任せてくれよ、こういう馬鹿には実力を見せねぇと」
「いや、実力を見せる以前にそろそろやり過ぎだから止まりなよ、エスペランサや他の生徒も席につ──」
「るっせぇなぁ!新任の教師が偉そうにしてんじゃねぇよ!」
「あ、あなたっ!人に向かって直接魔術を使ってはいけませんわ!」
「いつも通り黙らせれば問題ねぇよ!」
意外な事にエスペランサが大きな声で、生徒達を止めようとするが……完全に頭に血が上っているようでそれぞれが詠唱を唱えながら魔術を発動する。
土塊や、先端が尖った水の槍、火の玉が向かってくるけど、どれも今まで経験した来た戦いのせいか脅威に感じる程では無い気がする。
……いや、威力は充分だと思うんだけど、何て言うか相手を傷つけようとしてるのに怖くないというか、何とも不思議な感じだ。
「レ、レース先生っ!避けてください!」
「ん?あぁ……これ位大丈夫だよ」
「な、うっそだろ……今の俺の全力だぞ」
「あ、ありえねぇ、何だよあれ」
空間収納から、【不壊】の効果が付与された大剣を取り出すと鞘から抜き放ち生徒達の魔術を叩き潰す。
心器が使えないから【怪力】の効果が落ちてるけど、鞘から抜いて振る位なら何とか出来る。
まぁ……その後は、重すぎて持ち上げる事すら出来ないせいで教壇に刺さってしまったけど相手に冷静さを取り戻させるのにはちょうど良い筈だ。
「……左腕の義肢だけでもおかしいのに、何だよその武器卑怯じゃねぇか!」
「戦う気が無い人に向かって複数人で魔術を使う方が卑怯だよ……、これ以上やるなら相手になるけど出来れば座って皆の自己紹介をして貰いたいかな」
……空間収納の中に鞘と大剣を戻しながらそう言うと、ダリアが何やってんだこいつ、という顔でこっちを見て来る。
その反応を見るに多分あれが最適解だったと思ったんだけど何かやり方を間違えたのかもしれない。
そう思いながら生徒達の自己紹介が始まるのを待つのだった。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~
北きつね
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。
ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。
一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。
ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。
おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。
女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる