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第十章 魔導国学園騒動

9話 帰りながら話そう

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 ミオラームと話してる最中に、編入に関してのやり取りが終わったのかダリアが館から出て来た。

「さて、お話はこれ位にして早く帰って奥様達にちゃんと相談するのですわよ?」
「うん、そうするよ、色々と話をしてくれてありがとうミオラーム」

 彼女にお礼を言うと帰路につく。
その道中でダリアの相談無く編入の件について勝手に決めてしまった事に関して謝罪しようとすると……

「あのさ……」
「別に怒ってねぇよ、俺の事を考えてくれたんだろ?なら娘がとやかく言う事じゃねぇよ……それに」
「それに?」
「学園に、マローネの孫がいるんだってよ、だから俺も行ってみてぇなぁって」
「マローネさんの孫?それはぼくも気になるかも、あの人は色々とお世話になったし」

 マローネには本当に色んな意味でお世話になった。
今診療所の寮として使っている所にあった家壊れた時に、今の家を紹介してくれたり……それ以外にもぼくがコルクと共に移住して際にも様々な気遣いをしてくれた記憶がある。
特にあの立地で診療所を一人で経営出来ていたのも、ぼくが欲しいと説明した設備を彼女が揃えてくれたからだし、思い出せば思い出す程あの人には感謝しか言葉にできる感情が無い。

「だろ?俺がまだダ……母さんと一つだった時に、色々と相談に乗って貰ったりもしたからな、出来れば友達になりてぇなって」
「なれるんじゃないかな、ほらあの人の孫って事はしっかりしてる人だと思うし」
「だよなぁ、ただ……俺が編入される予定のクラスに面倒な奴がいるらしいんだよなぁ」

 隣で何だか言いづらそうにしているダリアを見て、聞いていいものかどうか悩むけど、彼女が話をしようとしているのなら言うまで待った方がいいのかもしれない。
そう思いながら歩く速度を緩めると……

「ほら、あのウァ……ウェルドなんだっけ?」
「あぁ……ウァルドリィ・ワイズ・ウイリアム教授の事?」
「あぁ、それだそれ、そいつの血縁がいるらしくてよぉ、色々と問題起こしてるらしいんだよなぁ?」
「血縁って……あの人の親戚かな」
「それ以外に何があんだよ……でさ、そいつが結構問題起こしてるらしくてよ、面倒な事になってるらしいぜ?」

 ……血縁って事はそうだろうけど、どうして面倒事を起こしているのだろうか。
もしぼくがそのクラスの授業を受け持つ事があったら、しっかりとやる事が出来るのか、色々と心配になるけれど多分大丈夫だろう。

「なんでもよ、教授だっけ?あいつが栄花で騎士団の幹部をやってる事を自慢して、魔術や治癒術に関する授業に関しても、色々と問題を起こしてるそうなんだよな」
「何だかめんどくさそうだね」
「だろ?特に成績が優秀な生徒らしくてさ、そのせいで生徒と教師の間で派閥が出来てるらしい」
「……あぁ、もしかしてソフィアから、そのクラスに入って何かして欲しいって頼まれたりしたの?」
「されたって言うか、俺がそのクラスに入る事で解決できるって言ってたぜ?」

 ダリアがクラスに入る事で問題が解決出来る。
多分だけど、座学や訓練でしか魔術や治癒術を使用した事が無い生徒達よりも実戦経験が豊富な生徒を編入させる事で、出来てしまった嫌な流れを変えようという事かもしれない。
けど……個人的にはそれは悪手な気がしてしまう、ダリアのような気が強いタイプが入って来て、生成優秀らしい教授の親戚の子との間でぶつかるような事があったらどうなるか。
間違いなく孤立してしまうか、陰湿ないじめにあってしまうかのどちらかな気がする。
そうなってしまった場合、ぼくは彼女を守る事が出来るだろうかと不安になるけれど、そこはダートやカエデと相談しながら対応を考えてみた方がいいだろう。

「もしクラスで何かあったら直ぐに、ぼくやダート達に言うんだよ?」
「何かあったらってなんだよ」
「ほら……もしかしたら虐めとかあったりするかもしれないし」
「俺が虐められるだぁ?んな訳ねぇだろ、仮にそんな事あったとしても俺が力づくで解決すっから気にすんなって」
「……それならいいけど、無理だけはしないようにね」

 本人がそういうならぼくに出来る事は無いけど、もし助けを求められたら直ぐに動けるようにしておこう。

「あ、そうだ父さん、折角クイストに戻って来たんだから何か食ってから帰らねぇか?」
「別にいいけど、何処か行きたい所があるの?」
「あぁ……、ほら父さんがジラルドやアキラと三人で行ったりしてるあそこだよ」
「あぁ、あそこか……そこなら慣れてるからいいよ」
「へへ、一度行ってみたかったんだよなぁ!んじゃ案内頼むぜ?」

……会話をしながら、久しぶりに懐かしの飲食店へと向かうとお客の入りが少ない店舗が見えて来る。
相変わらず落ち着く雰囲気だなと思いながら中に入ると『いらっしゃいませー!後でご注文を聞きますので、お好きな席についてメニューを見てお待ちくださ……って!レース先生じゃないですか、最近全然来てくれなかったから心配だったんですよぉ?』と明るい声が出迎えてくれるのだった。
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