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第十章 魔導国学園騒動
7話 教師への推薦
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結局ぼく達の為に用意してくれた紅茶とお菓子は全てダリアの胃の中へと消えてしまった。
銀の装飾が付いたティーカップとお皿、毒が入っていたら色がくすむようになっているそれは、身体の害になるような物は入っていないから安心して欲しいという気遣いだろう。
そういう意味でも折角出して貰ったのだから少しくらいは食べようと思っていたのだけれど、もっと食べたいと言い出した為全て渡してしまい……
「いやぁ、美味かったなぁ……王族って言うのはいつもこんな美味いのが食えるのかねぇ」
「ソフィアが特別、甘いお菓子を食べるのが好きなだけだよ……良く母さんに連れられて新術の実験に付き合わされては、ストレス発散の為に愚痴ったりお菓子食べてたからね」
「うわぁ……なんかそれ太りそうだな」
確かにストレスからくる暴飲暴食はかなり健康に悪い。
ダリアが言うように体に余分な脂肪が付いてしまったり、内臓へと負担が大きい……まぁソフィアの事だから問題ないと思うけど……心配にはなる。
「摂取した分ちゃんと、頭を使ってエネルギーを消費してるので大丈夫ですよ」
「……げ、聞いてたのかよ」
「えぇ、聞いてましたよ?扉をノックしようとしたら美味しい物が食えるのかねぇって聞こえて、何を話すのか気になったもので」
「ソフィア……、態々聞き耳何て立てないでいいのに」
「だってレースさん!ダリアさんがこんな失礼な事を言うんですよ!?確かに私はもう良い歳したお姉さん!ですけど、ちゃんといついい人に出会えてもいいようにスタイルの管理はちゃんとしてますし、適度な運動も心掛けてるんです!出会いが無い、そう!出会いが無いだけなの!」
……扉の前にいたのなら、ここはソフィアの館なのだからノックして堂々と入ってきたらいいのに、それに態々いきなりそんな残念な大人の事情を話されても正直反応に困るからやめて欲しい。
仮にもこのメセリーを治める【魔王】ソフィア・メセリーなのだから、探さなくても良い人は見つかるだろうに……
「でもね?出会いが無い訳じゃないのよ?ただ……私の事を分かってくれる人がいないだけなの、何も言わなくても色々としてくれて身の回りのお世話をしてくれる……そんな素敵な理解ある人がいないの!」
「……それ王城の使用人でいいんじゃないかな」
「それはそうかもだけど違うの、そうじゃないの……例えばね?」
「いや、興味無いからいいよ、それよりも大事な話があるって聞いて来たんだけど、いったいどんなようなの?」
「え?あ……あぁ、そうでしたね」
まるでぼくをここに呼んだ理由を忘れてたと言わんばかりに、ハッとしたような顔をすると、静かな所作でゆっくりと椅子に腰を下ろす。
そして手に持った羊皮紙をテーブルの上に置くと……
「レースさん、あなたにこの辺境都市クイストにて新たに建設された、魔導学園の教師をお願いしたいの」
「……え?」
「あら?カルディア様から話を聞いてない?」
「……本人から聞いた方がいいって言われて送り出されたんだけど」
「ちゃんと全部伝えてって言ったのに……」
母さんの事だから、ぼくを驚かせようとして敢えて言わなかったんだろうなぁ。
そういう所は本当に性格が悪いし、予め内容を聞いていた方が話がスムーズに進むのに……
「まぁいいです、えっとこの辺境都市クイストが王室直属領になったじゃない?それでね?レースさん達がいない間に、王城内で会議があって……仮にも魔王が治める領地なのだからしっかりとした教育が受けられる施設を作るべきだと言われて、私は乗り気ではなかったんだけど周りから言われたらしょうがなくて……」
「んー、事情は分かったけどそれでどうしてぼくが教員に?」
「レースさんは、私と同じカルディア様の弟子だし……心器を扱える以上魔術と治癒術を同時に使えるでしょ?つまり、メセリーを誇るSランク冒険者【叡智】カルディア・フィリスの弟子というブランドが、生徒を集める為に必要なの」
「……ぼくはブランド製品じゃないけど?」
「うん、そこは申し訳ない気持ちに私もなってるんだけどね……?カルディア様も『そろそろレースちゃんには、本格的に人の上に立って物を教えられるようになった方がいいと思うの、だっていつまでも私がいる訳では無いもの』という事で許可を貰ってるの」
自分の身体を作っては、若い体に入れ替わったりしている母さんがいつまでもいる訳では無いと言った言葉に一瞬違和感を感じたけど……以前のフィリアとの一件以降延命を止めているのは何となくだけど理解はしている。
たった数日で顔にほうれい線が目立つようになって来たり、たまに声がしわがれている時があるのを実際に見て察せなかったら、それこそ問題だろう。
けど、今回家に帰った時の母さんは以前のように若い姿のままで……けど髪色も変わってたし、何処と無く雰囲気がダートに似ていて親子だと言われたら納得が行くような雰囲気があった。
「話は分かったから取り合えずダートと相談して考えてみるよ」
「えぇ、そういうのは奥さんとちゃんと話さないとダメよ?……あっ!そうだダリアさん」
「んぁ?なんだ?」
「あなた、学園の生徒にならない?レースさんの娘さんって事で特別に私の推薦枠って事で編入させてあげる、うん、決まり!その方がいいわ、あなたは若いんだからもっと色んな物を見て学び、魔導の真髄を目指さないと!」
……ソフィアはそう言うと、テーブルに置いてあるベルを手に取り鳴らす。
すると執事服を着た男性がノックをして入って来て、彼女とそっと耳打ちをすると何処からか【辺境都市クイスト:魔導学園編入推薦書】というのを取り出すのだった。
銀の装飾が付いたティーカップとお皿、毒が入っていたら色がくすむようになっているそれは、身体の害になるような物は入っていないから安心して欲しいという気遣いだろう。
そういう意味でも折角出して貰ったのだから少しくらいは食べようと思っていたのだけれど、もっと食べたいと言い出した為全て渡してしまい……
「いやぁ、美味かったなぁ……王族って言うのはいつもこんな美味いのが食えるのかねぇ」
「ソフィアが特別、甘いお菓子を食べるのが好きなだけだよ……良く母さんに連れられて新術の実験に付き合わされては、ストレス発散の為に愚痴ったりお菓子食べてたからね」
「うわぁ……なんかそれ太りそうだな」
確かにストレスからくる暴飲暴食はかなり健康に悪い。
ダリアが言うように体に余分な脂肪が付いてしまったり、内臓へと負担が大きい……まぁソフィアの事だから問題ないと思うけど……心配にはなる。
「摂取した分ちゃんと、頭を使ってエネルギーを消費してるので大丈夫ですよ」
「……げ、聞いてたのかよ」
「えぇ、聞いてましたよ?扉をノックしようとしたら美味しい物が食えるのかねぇって聞こえて、何を話すのか気になったもので」
「ソフィア……、態々聞き耳何て立てないでいいのに」
「だってレースさん!ダリアさんがこんな失礼な事を言うんですよ!?確かに私はもう良い歳したお姉さん!ですけど、ちゃんといついい人に出会えてもいいようにスタイルの管理はちゃんとしてますし、適度な運動も心掛けてるんです!出会いが無い、そう!出会いが無いだけなの!」
……扉の前にいたのなら、ここはソフィアの館なのだからノックして堂々と入ってきたらいいのに、それに態々いきなりそんな残念な大人の事情を話されても正直反応に困るからやめて欲しい。
仮にもこのメセリーを治める【魔王】ソフィア・メセリーなのだから、探さなくても良い人は見つかるだろうに……
「でもね?出会いが無い訳じゃないのよ?ただ……私の事を分かってくれる人がいないだけなの、何も言わなくても色々としてくれて身の回りのお世話をしてくれる……そんな素敵な理解ある人がいないの!」
「……それ王城の使用人でいいんじゃないかな」
「それはそうかもだけど違うの、そうじゃないの……例えばね?」
「いや、興味無いからいいよ、それよりも大事な話があるって聞いて来たんだけど、いったいどんなようなの?」
「え?あ……あぁ、そうでしたね」
まるでぼくをここに呼んだ理由を忘れてたと言わんばかりに、ハッとしたような顔をすると、静かな所作でゆっくりと椅子に腰を下ろす。
そして手に持った羊皮紙をテーブルの上に置くと……
「レースさん、あなたにこの辺境都市クイストにて新たに建設された、魔導学園の教師をお願いしたいの」
「……え?」
「あら?カルディア様から話を聞いてない?」
「……本人から聞いた方がいいって言われて送り出されたんだけど」
「ちゃんと全部伝えてって言ったのに……」
母さんの事だから、ぼくを驚かせようとして敢えて言わなかったんだろうなぁ。
そういう所は本当に性格が悪いし、予め内容を聞いていた方が話がスムーズに進むのに……
「まぁいいです、えっとこの辺境都市クイストが王室直属領になったじゃない?それでね?レースさん達がいない間に、王城内で会議があって……仮にも魔王が治める領地なのだからしっかりとした教育が受けられる施設を作るべきだと言われて、私は乗り気ではなかったんだけど周りから言われたらしょうがなくて……」
「んー、事情は分かったけどそれでどうしてぼくが教員に?」
「レースさんは、私と同じカルディア様の弟子だし……心器を扱える以上魔術と治癒術を同時に使えるでしょ?つまり、メセリーを誇るSランク冒険者【叡智】カルディア・フィリスの弟子というブランドが、生徒を集める為に必要なの」
「……ぼくはブランド製品じゃないけど?」
「うん、そこは申し訳ない気持ちに私もなってるんだけどね……?カルディア様も『そろそろレースちゃんには、本格的に人の上に立って物を教えられるようになった方がいいと思うの、だっていつまでも私がいる訳では無いもの』という事で許可を貰ってるの」
自分の身体を作っては、若い体に入れ替わったりしている母さんがいつまでもいる訳では無いと言った言葉に一瞬違和感を感じたけど……以前のフィリアとの一件以降延命を止めているのは何となくだけど理解はしている。
たった数日で顔にほうれい線が目立つようになって来たり、たまに声がしわがれている時があるのを実際に見て察せなかったら、それこそ問題だろう。
けど、今回家に帰った時の母さんは以前のように若い姿のままで……けど髪色も変わってたし、何処と無く雰囲気がダートに似ていて親子だと言われたら納得が行くような雰囲気があった。
「話は分かったから取り合えずダートと相談して考えてみるよ」
「えぇ、そういうのは奥さんとちゃんと話さないとダメよ?……あっ!そうだダリアさん」
「んぁ?なんだ?」
「あなた、学園の生徒にならない?レースさんの娘さんって事で特別に私の推薦枠って事で編入させてあげる、うん、決まり!その方がいいわ、あなたは若いんだからもっと色んな物を見て学び、魔導の真髄を目指さないと!」
……ソフィアはそう言うと、テーブルに置いてあるベルを手に取り鳴らす。
すると執事服を着た男性がノックをして入って来て、彼女とそっと耳打ちをすると何処からか【辺境都市クイスト:魔導学園編入推薦書】というのを取り出すのだった。
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