455 / 536
第十章 魔導国学園騒動
1話 故郷への帰還
しおりを挟む
メイディに滞在して、気が付いたら一月以上の月日が経過していた。
その間に何をしていたかと言うと、首都にいる小児や産婦人を専門としている治癒術師の元へ行き、お金を渡して教えを請うたりしたりけど……
『これ以上来ないでください、私達が惨めに感じるので』
という意味の分からない事を言われてしまい、触りの部分しか教えて貰う事が出来なかった。
彼女達がメセリーにいた時、覚えるのに一年以上掛ったのを直ぐに覚える事が出来たのは、教えるのが上手かったからだと思うし、そういう意味でも優秀な人達なんだと思う。
なのにいったい何処が気に入らなかったのだろうか……色々と疑問に思って、本人達に聞こうとはしたけど
『……あなたには凡人の気持ちなんて分からないんでしょうね』
という言葉が帰って来るだけだった。
だからしょうがなく、メイメイの元へ行き彼女の元でダートに渡している薬の作り方を教えて貰おうとしたけど……
『……今は薬の事よりも、お腹に子供がいるダートの側にいるべきじゃと余は思うぞ?』
と言われ帰されてしまう。
確かにメイメイの言いたい事は分かるけど、ダートの身の回りの世話に関してはカエデやフランメが率先してやってくれてるし、それに何かあってもいいようにランが護衛に付いているから、特にやることが無い。
とはいえそのまま外をぶらぶらとしている訳にもいかないから、部屋に戻り皆と話したりして過ごしつつ、時折メイメイに呼ばれては、診療所に卸す薬の種類について話し合いをしたり、ダリアがテスターとして協力しているらしい人族向けに調整したらしい薬の効果について、治癒術師という立場からどう判断するかの相談を受ける。
そんな事を繰り返している内に、メセリーに帰る日が決まった。
「もう帰ってしまうとは残念じゃのぅ……、のぅレースよ、ダリアだけでもここに置いて行くとか出来んか?余としては友人が帰ってしまうのが寂しくてのぅ」
「何言ってんだよ、月に一回はメイディに薬を届けに来るんだろ?だったらその時に遊んだりすればいいじゃねぇか」
「……けどのぅ、対等に話し合える相手がこの国にはおらぬのじゃよ」
「アナイスとは対等に話したり出来るんじゃない?」
「奴は余の護衛じゃからな、対等の立場にはなれぬよ……それに」
首都の外に出て冒険者ギルドへと向かいながら話をしているけど、そういえばアナイスは何処にいるのだろうか。
護衛騎士だというのにメイメイの近くにいないし……、それだと護衛とは到底言えない気がする。
「おぬしも気付いたように、アナイスは近くにはおらぬよ……、護衛騎士を任されはしたが、あやつは己が正義に正直な女じゃからのぅ、何処かで助けを呼ぶ声が聞こえたら直ぐにいなくなるのじゃ」
「それって護衛騎士の意味あるの?」
「まぁ、毎日ちゃんと首都に帰って来るから気にしとらん、それに余としてはやるべき時にしっかりと仕事をして貰えるのならそれで充分じゃよ」
メイメイがそれでいいなら構わないけど、それで反乱に参加した人達が納得するだろうか。
略全員がアンデッドにされてしまったとはいえ、戦いに参加しなかった人もいるだろう。
その人達の事を考えたら、納得してもらえない気がする。
「……何か凄い不満がありそうな顔をしておるが、おぬしが気にするような事ではないぞ?」
「え?でもさ、反乱を起こした人達がアナイスがメイメイの近くにいない現状に納得出来るの?」
「さぁ、それは余には分からぬよ、民衆の心を察して動けと言うのは無理があるからのぅ……ただ、今まで国内で問題が起きた時に颯爽と駆けつけてくれていたSランク冒険者が護衛騎士になった瞬間、助けに来てくれなくなるよりも、国公認の護衛騎士という肩書を背負い国民を助けに現れるという方が、救国の英雄感があって良いと思うぞ?」
「そういうものなのかな」
「まぁ、そんなもんじゃよ……どんな国でも変化を求め、英雄に憧れ、非日常を夢見る者は一定数おるからな、あやつはそういう意味でも、これから先どんどん目立って貰わねばな」
何だか凄い難しい話を聞いてしまった気がする。
特に部外者であるぼく達がそれを聞いて良いのだろうか……、もちろん無闇やたらに誰かに話したりなどはしないけど、ふとした時に口から出てしまう時があるかもしれないから、リスクを考えたら話すべきではないと思う。
「……あ、これに関しては別に話しても良いぞ?」
「え?」
「むしろ、そうやって狡猾な事を堂々と出来ると見せた方が良いからのぅ……ほれ、この国には犯罪組織が沢山あるからの、綺麗事ばかりしか言わない王よりも、そういいう姿を見せておいた方が良いのじゃよ……そうした方が、必要とあればおぬしらも道具として使うぞという意思表示になるからな」
「へぇ……」
……そんな話をしている内に冒険者ギルドに何事も無く着いたぼく達は、ここまで送ってくれたメイメイにお礼を言うと、中へと入っていく。
そしてカエデの案内の元、転移の魔導具のある部屋へと向かうと久しぶりの故郷へと帰るのだった。
その間に何をしていたかと言うと、首都にいる小児や産婦人を専門としている治癒術師の元へ行き、お金を渡して教えを請うたりしたりけど……
『これ以上来ないでください、私達が惨めに感じるので』
という意味の分からない事を言われてしまい、触りの部分しか教えて貰う事が出来なかった。
彼女達がメセリーにいた時、覚えるのに一年以上掛ったのを直ぐに覚える事が出来たのは、教えるのが上手かったからだと思うし、そういう意味でも優秀な人達なんだと思う。
なのにいったい何処が気に入らなかったのだろうか……色々と疑問に思って、本人達に聞こうとはしたけど
『……あなたには凡人の気持ちなんて分からないんでしょうね』
という言葉が帰って来るだけだった。
だからしょうがなく、メイメイの元へ行き彼女の元でダートに渡している薬の作り方を教えて貰おうとしたけど……
『……今は薬の事よりも、お腹に子供がいるダートの側にいるべきじゃと余は思うぞ?』
と言われ帰されてしまう。
確かにメイメイの言いたい事は分かるけど、ダートの身の回りの世話に関してはカエデやフランメが率先してやってくれてるし、それに何かあってもいいようにランが護衛に付いているから、特にやることが無い。
とはいえそのまま外をぶらぶらとしている訳にもいかないから、部屋に戻り皆と話したりして過ごしつつ、時折メイメイに呼ばれては、診療所に卸す薬の種類について話し合いをしたり、ダリアがテスターとして協力しているらしい人族向けに調整したらしい薬の効果について、治癒術師という立場からどう判断するかの相談を受ける。
そんな事を繰り返している内に、メセリーに帰る日が決まった。
「もう帰ってしまうとは残念じゃのぅ……、のぅレースよ、ダリアだけでもここに置いて行くとか出来んか?余としては友人が帰ってしまうのが寂しくてのぅ」
「何言ってんだよ、月に一回はメイディに薬を届けに来るんだろ?だったらその時に遊んだりすればいいじゃねぇか」
「……けどのぅ、対等に話し合える相手がこの国にはおらぬのじゃよ」
「アナイスとは対等に話したり出来るんじゃない?」
「奴は余の護衛じゃからな、対等の立場にはなれぬよ……それに」
首都の外に出て冒険者ギルドへと向かいながら話をしているけど、そういえばアナイスは何処にいるのだろうか。
護衛騎士だというのにメイメイの近くにいないし……、それだと護衛とは到底言えない気がする。
「おぬしも気付いたように、アナイスは近くにはおらぬよ……、護衛騎士を任されはしたが、あやつは己が正義に正直な女じゃからのぅ、何処かで助けを呼ぶ声が聞こえたら直ぐにいなくなるのじゃ」
「それって護衛騎士の意味あるの?」
「まぁ、毎日ちゃんと首都に帰って来るから気にしとらん、それに余としてはやるべき時にしっかりと仕事をして貰えるのならそれで充分じゃよ」
メイメイがそれでいいなら構わないけど、それで反乱に参加した人達が納得するだろうか。
略全員がアンデッドにされてしまったとはいえ、戦いに参加しなかった人もいるだろう。
その人達の事を考えたら、納得してもらえない気がする。
「……何か凄い不満がありそうな顔をしておるが、おぬしが気にするような事ではないぞ?」
「え?でもさ、反乱を起こした人達がアナイスがメイメイの近くにいない現状に納得出来るの?」
「さぁ、それは余には分からぬよ、民衆の心を察して動けと言うのは無理があるからのぅ……ただ、今まで国内で問題が起きた時に颯爽と駆けつけてくれていたSランク冒険者が護衛騎士になった瞬間、助けに来てくれなくなるよりも、国公認の護衛騎士という肩書を背負い国民を助けに現れるという方が、救国の英雄感があって良いと思うぞ?」
「そういうものなのかな」
「まぁ、そんなもんじゃよ……どんな国でも変化を求め、英雄に憧れ、非日常を夢見る者は一定数おるからな、あやつはそういう意味でも、これから先どんどん目立って貰わねばな」
何だか凄い難しい話を聞いてしまった気がする。
特に部外者であるぼく達がそれを聞いて良いのだろうか……、もちろん無闇やたらに誰かに話したりなどはしないけど、ふとした時に口から出てしまう時があるかもしれないから、リスクを考えたら話すべきではないと思う。
「……あ、これに関しては別に話しても良いぞ?」
「え?」
「むしろ、そうやって狡猾な事を堂々と出来ると見せた方が良いからのぅ……ほれ、この国には犯罪組織が沢山あるからの、綺麗事ばかりしか言わない王よりも、そういいう姿を見せておいた方が良いのじゃよ……そうした方が、必要とあればおぬしらも道具として使うぞという意思表示になるからな」
「へぇ……」
……そんな話をしている内に冒険者ギルドに何事も無く着いたぼく達は、ここまで送ってくれたメイメイにお礼を言うと、中へと入っていく。
そしてカエデの案内の元、転移の魔導具のある部屋へと向かうと久しぶりの故郷へと帰るのだった。
1
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる