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第九章 戦いの中で……
65話 心配な気持ち ダート視点
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首都にある隠し部屋の中に避難しているけど、本当にこれでいいのかと不安になってしまう。
隣に座っているカエデちゃんも落ち着かないみたいだけど、時折私の方を見ては空になったカップに紅茶を淹れてくれたり、話し相手になってくれたりと気を使ってくれる。
「……レース、大丈夫かな」
「心配なのは分かりますが信じるしかないです……」
確かにその通りなんだけど、時折激しい地震が起きたかのように室内が揺れ、カタカタと食器が音を鳴らすのを聞いていると不安になって来る。
カエデちゃんの言うように信じるべきなんだと思うけど……Sランク冒険者が二人にそれに匹敵する可能性があるルード、そして彼が使役するアンデッド達、幾ら騎士や冒険者の人達がいるからとはいえ心配になる。
「でも確かに外の状態が分からないのは不安になりますね」
「うん……」
とはいえここで私が不安になったとしても、この状況が変わる訳ではない。
レースには栄花騎士団の最高幹部である、ハスさんとトキさんがいるし……【氷雪狼】を使えばヴォルフガングお義父様もいるから大丈夫だと思う。
それに多分、もう一匹の方はレースを見る優しい視線から察するに産みの親であるスノーホワイト・ヴォルフガングその人な筈、ストラフィリアに滞在していた時ミュラッカちゃんにどんな人か聞いた事があるけど、心器の能力である【怪力】と長杖を使った腕力による力押しが得意だったそうで……、親子喧嘩が起きた時はお義父様ですら一方的に倒されてしまう程だったらしい。
特に……心器の扱いについては、物心ついた頃には何時の間にか使えるようになってたと、ミュラッカちゃんに言ってたみたいだから、もしかしたら生前は凄い人だったのかも。
「一応、空間魔術を使って外の様子を見る事なら出来るとは思うけど……この部屋の座標が分からないからなぁ」
「なら少しずつ位置を変えながら繋げて見るとかどうですか?それで上手く行ったら安全な所から様子を見れるかもしれませんよ?」
「……ならそうしてみようかな」
カエデちゃんの助言を聞いて空間魔術を使って見るけど、空間を切り裂いて繋いだ場所は真っ暗で何も見えないし聞こえないかと思ったら、大量の水が出て来た辺りもしかしたら樹の水を吸い上げる管に繋がってしまったのかもしれない。
急いで接続を切ると……
「……ちょっと室内を汚さないで欲しいの、掃除する側になって欲しいの」
「あ、ランちゃんごめんね?」
部屋の中に備えづけられている掃除道具を持って来たランちゃんが、カエデちゃんと一緒にびしょぬれになった床を掃除してくれる。
私も立ち上がろうとするけど、二人に座って安静にしているように言われてしまって申し訳ない気持ちになってしまう。
そう思いながら空間を再度繋げると今度は青空が目の前に広がり、周囲には白い雲がゆっくりと流れているのが見えたから、もっと下に繋げた方がいいかなと接続を切ろうとした時だった。
「あれぇ?あーしの知らない空間があるみたいだけどぉ、あなた達何してるの?」
「え!?」
「って!接続切らないでよー、痛いってー」
「え、あっ!ご、ごめんな……っ!?」
いきなり不思議な髪色をした女性が現れたかと思ったら、そのまま上半身を中に突っ込んで来た。
驚いて咄嗟に接続を切ってしまったら下半身を向こう側に残して、そのまま床へと落ちてしまう。
本来なら大量の血液が噴き出す筈のその身体からは何も出る事が無く、半透明の光が溢れている。
そして徐々に皮膚に覆われて人の下半身を模したかと思うと、そのまま立ち上がり……
「えっと、まずは服を貸してくれない?」
「ダートお姉様!」
「そこを離れるの!私の勘が言ってるの……こいつは危険なの!」
「……失礼ね、あーしはただの通りすがりの化物よ?」
ランちゃんが双剣を構えて、化物と名乗った少女に向かって飛び掛かるけど……近づいた瞬間に動きが凄いゆっくりとした動作になって抵抗する事も出来ずに、見えない何かに手足を縛られ空中に固定されてしまう。
「乱暴者はあーしに嫌われるよ?せっかく、ガイストちゃんを首都に連れて来てあげたのにこの仕打ちは無くない?」
「……ガイストが?」
「そうだよ?レース君とお話してねー、アナイスちゃんを殺さない変わりに力を貸す事になってるんだー、だからあーしは敵じゃなくて今は味方だ、よ?」
「カエデちゃん、この人は大丈夫だと思うからお話をしてみよ?、あなたもえっと……」
……名前を呼ぼうとしたけど分からない。
レースの味方だとは言ったけど、それが本当かもわからないしガイストさんを連れて来たという事も本当かどうか疑わしい。
「マリステラ、あーしはマリステラだよ、ダートちゃん」
「……マリステラちゃん、ランちゃんの拘束を解いてくれる?」
「えぇ?また襲われたら怖いからぁ、マリステラちゃんどうしよっかなぁ」
「私からもお願いします……何かあったら責任を取るので」
「へぇ、責任を取るんだぁ?じゃあそうだね……もう一度同じ所に空間を開いてくれる?今度は人が一人分通れる位大きくしてぇ……、後!着る物ちょうだい、何時まであーしは下半身露出した痴女ムーブしなくちゃいけないの?」
……指示に従って、再度空間を繋げるとそこから見覚えのある長い白髪に赤い瞳を持った、メイディの民族衣装に身を包んだガイストが下半身を抱えて飛び込んで来る。
そして不機嫌な顔をして、マリステラに投げつけると『なんで我がおぬしの下半身を持たなければいけんのじゃ』と口にして睨みつけるのだった。
隣に座っているカエデちゃんも落ち着かないみたいだけど、時折私の方を見ては空になったカップに紅茶を淹れてくれたり、話し相手になってくれたりと気を使ってくれる。
「……レース、大丈夫かな」
「心配なのは分かりますが信じるしかないです……」
確かにその通りなんだけど、時折激しい地震が起きたかのように室内が揺れ、カタカタと食器が音を鳴らすのを聞いていると不安になって来る。
カエデちゃんの言うように信じるべきなんだと思うけど……Sランク冒険者が二人にそれに匹敵する可能性があるルード、そして彼が使役するアンデッド達、幾ら騎士や冒険者の人達がいるからとはいえ心配になる。
「でも確かに外の状態が分からないのは不安になりますね」
「うん……」
とはいえここで私が不安になったとしても、この状況が変わる訳ではない。
レースには栄花騎士団の最高幹部である、ハスさんとトキさんがいるし……【氷雪狼】を使えばヴォルフガングお義父様もいるから大丈夫だと思う。
それに多分、もう一匹の方はレースを見る優しい視線から察するに産みの親であるスノーホワイト・ヴォルフガングその人な筈、ストラフィリアに滞在していた時ミュラッカちゃんにどんな人か聞いた事があるけど、心器の能力である【怪力】と長杖を使った腕力による力押しが得意だったそうで……、親子喧嘩が起きた時はお義父様ですら一方的に倒されてしまう程だったらしい。
特に……心器の扱いについては、物心ついた頃には何時の間にか使えるようになってたと、ミュラッカちゃんに言ってたみたいだから、もしかしたら生前は凄い人だったのかも。
「一応、空間魔術を使って外の様子を見る事なら出来るとは思うけど……この部屋の座標が分からないからなぁ」
「なら少しずつ位置を変えながら繋げて見るとかどうですか?それで上手く行ったら安全な所から様子を見れるかもしれませんよ?」
「……ならそうしてみようかな」
カエデちゃんの助言を聞いて空間魔術を使って見るけど、空間を切り裂いて繋いだ場所は真っ暗で何も見えないし聞こえないかと思ったら、大量の水が出て来た辺りもしかしたら樹の水を吸い上げる管に繋がってしまったのかもしれない。
急いで接続を切ると……
「……ちょっと室内を汚さないで欲しいの、掃除する側になって欲しいの」
「あ、ランちゃんごめんね?」
部屋の中に備えづけられている掃除道具を持って来たランちゃんが、カエデちゃんと一緒にびしょぬれになった床を掃除してくれる。
私も立ち上がろうとするけど、二人に座って安静にしているように言われてしまって申し訳ない気持ちになってしまう。
そう思いながら空間を再度繋げると今度は青空が目の前に広がり、周囲には白い雲がゆっくりと流れているのが見えたから、もっと下に繋げた方がいいかなと接続を切ろうとした時だった。
「あれぇ?あーしの知らない空間があるみたいだけどぉ、あなた達何してるの?」
「え!?」
「って!接続切らないでよー、痛いってー」
「え、あっ!ご、ごめんな……っ!?」
いきなり不思議な髪色をした女性が現れたかと思ったら、そのまま上半身を中に突っ込んで来た。
驚いて咄嗟に接続を切ってしまったら下半身を向こう側に残して、そのまま床へと落ちてしまう。
本来なら大量の血液が噴き出す筈のその身体からは何も出る事が無く、半透明の光が溢れている。
そして徐々に皮膚に覆われて人の下半身を模したかと思うと、そのまま立ち上がり……
「えっと、まずは服を貸してくれない?」
「ダートお姉様!」
「そこを離れるの!私の勘が言ってるの……こいつは危険なの!」
「……失礼ね、あーしはただの通りすがりの化物よ?」
ランちゃんが双剣を構えて、化物と名乗った少女に向かって飛び掛かるけど……近づいた瞬間に動きが凄いゆっくりとした動作になって抵抗する事も出来ずに、見えない何かに手足を縛られ空中に固定されてしまう。
「乱暴者はあーしに嫌われるよ?せっかく、ガイストちゃんを首都に連れて来てあげたのにこの仕打ちは無くない?」
「……ガイストが?」
「そうだよ?レース君とお話してねー、アナイスちゃんを殺さない変わりに力を貸す事になってるんだー、だからあーしは敵じゃなくて今は味方だ、よ?」
「カエデちゃん、この人は大丈夫だと思うからお話をしてみよ?、あなたもえっと……」
……名前を呼ぼうとしたけど分からない。
レースの味方だとは言ったけど、それが本当かもわからないしガイストさんを連れて来たという事も本当かどうか疑わしい。
「マリステラ、あーしはマリステラだよ、ダートちゃん」
「……マリステラちゃん、ランちゃんの拘束を解いてくれる?」
「えぇ?また襲われたら怖いからぁ、マリステラちゃんどうしよっかなぁ」
「私からもお願いします……何かあったら責任を取るので」
「へぇ、責任を取るんだぁ?じゃあそうだね……もう一度同じ所に空間を開いてくれる?今度は人が一人分通れる位大きくしてぇ……、後!着る物ちょうだい、何時まであーしは下半身露出した痴女ムーブしなくちゃいけないの?」
……指示に従って、再度空間を繋げるとそこから見覚えのある長い白髪に赤い瞳を持った、メイディの民族衣装に身を包んだガイストが下半身を抱えて飛び込んで来る。
そして不機嫌な顔をして、マリステラに投げつけると『なんで我がおぬしの下半身を持たなければいけんのじゃ』と口にして睨みつけるのだった。
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