446 / 576
第九章 戦いの中で……
65話 心配な気持ち ダート視点
しおりを挟む
首都にある隠し部屋の中に避難しているけど、本当にこれでいいのかと不安になってしまう。
隣に座っているカエデちゃんも落ち着かないみたいだけど、時折私の方を見ては空になったカップに紅茶を淹れてくれたり、話し相手になってくれたりと気を使ってくれる。
「……レース、大丈夫かな」
「心配なのは分かりますが信じるしかないです……」
確かにその通りなんだけど、時折激しい地震が起きたかのように室内が揺れ、カタカタと食器が音を鳴らすのを聞いていると不安になって来る。
カエデちゃんの言うように信じるべきなんだと思うけど……Sランク冒険者が二人にそれに匹敵する可能性があるルード、そして彼が使役するアンデッド達、幾ら騎士や冒険者の人達がいるからとはいえ心配になる。
「でも確かに外の状態が分からないのは不安になりますね」
「うん……」
とはいえここで私が不安になったとしても、この状況が変わる訳ではない。
レースには栄花騎士団の最高幹部である、ハスさんとトキさんがいるし……【氷雪狼】を使えばヴォルフガングお義父様もいるから大丈夫だと思う。
それに多分、もう一匹の方はレースを見る優しい視線から察するに産みの親であるスノーホワイト・ヴォルフガングその人な筈、ストラフィリアに滞在していた時ミュラッカちゃんにどんな人か聞いた事があるけど、心器の能力である【怪力】と長杖を使った腕力による力押しが得意だったそうで……、親子喧嘩が起きた時はお義父様ですら一方的に倒されてしまう程だったらしい。
特に……心器の扱いについては、物心ついた頃には何時の間にか使えるようになってたと、ミュラッカちゃんに言ってたみたいだから、もしかしたら生前は凄い人だったのかも。
「一応、空間魔術を使って外の様子を見る事なら出来るとは思うけど……この部屋の座標が分からないからなぁ」
「なら少しずつ位置を変えながら繋げて見るとかどうですか?それで上手く行ったら安全な所から様子を見れるかもしれませんよ?」
「……ならそうしてみようかな」
カエデちゃんの助言を聞いて空間魔術を使って見るけど、空間を切り裂いて繋いだ場所は真っ暗で何も見えないし聞こえないかと思ったら、大量の水が出て来た辺りもしかしたら樹の水を吸い上げる管に繋がってしまったのかもしれない。
急いで接続を切ると……
「……ちょっと室内を汚さないで欲しいの、掃除する側になって欲しいの」
「あ、ランちゃんごめんね?」
部屋の中に備えづけられている掃除道具を持って来たランちゃんが、カエデちゃんと一緒にびしょぬれになった床を掃除してくれる。
私も立ち上がろうとするけど、二人に座って安静にしているように言われてしまって申し訳ない気持ちになってしまう。
そう思いながら空間を再度繋げると今度は青空が目の前に広がり、周囲には白い雲がゆっくりと流れているのが見えたから、もっと下に繋げた方がいいかなと接続を切ろうとした時だった。
「あれぇ?あーしの知らない空間があるみたいだけどぉ、あなた達何してるの?」
「え!?」
「って!接続切らないでよー、痛いってー」
「え、あっ!ご、ごめんな……っ!?」
いきなり不思議な髪色をした女性が現れたかと思ったら、そのまま上半身を中に突っ込んで来た。
驚いて咄嗟に接続を切ってしまったら下半身を向こう側に残して、そのまま床へと落ちてしまう。
本来なら大量の血液が噴き出す筈のその身体からは何も出る事が無く、半透明の光が溢れている。
そして徐々に皮膚に覆われて人の下半身を模したかと思うと、そのまま立ち上がり……
「えっと、まずは服を貸してくれない?」
「ダートお姉様!」
「そこを離れるの!私の勘が言ってるの……こいつは危険なの!」
「……失礼ね、あーしはただの通りすがりの化物よ?」
ランちゃんが双剣を構えて、化物と名乗った少女に向かって飛び掛かるけど……近づいた瞬間に動きが凄いゆっくりとした動作になって抵抗する事も出来ずに、見えない何かに手足を縛られ空中に固定されてしまう。
「乱暴者はあーしに嫌われるよ?せっかく、ガイストちゃんを首都に連れて来てあげたのにこの仕打ちは無くない?」
「……ガイストが?」
「そうだよ?レース君とお話してねー、アナイスちゃんを殺さない変わりに力を貸す事になってるんだー、だからあーしは敵じゃなくて今は味方だ、よ?」
「カエデちゃん、この人は大丈夫だと思うからお話をしてみよ?、あなたもえっと……」
……名前を呼ぼうとしたけど分からない。
レースの味方だとは言ったけど、それが本当かもわからないしガイストさんを連れて来たという事も本当かどうか疑わしい。
「マリステラ、あーしはマリステラだよ、ダートちゃん」
「……マリステラちゃん、ランちゃんの拘束を解いてくれる?」
「えぇ?また襲われたら怖いからぁ、マリステラちゃんどうしよっかなぁ」
「私からもお願いします……何かあったら責任を取るので」
「へぇ、責任を取るんだぁ?じゃあそうだね……もう一度同じ所に空間を開いてくれる?今度は人が一人分通れる位大きくしてぇ……、後!着る物ちょうだい、何時まであーしは下半身露出した痴女ムーブしなくちゃいけないの?」
……指示に従って、再度空間を繋げるとそこから見覚えのある長い白髪に赤い瞳を持った、メイディの民族衣装に身を包んだガイストが下半身を抱えて飛び込んで来る。
そして不機嫌な顔をして、マリステラに投げつけると『なんで我がおぬしの下半身を持たなければいけんのじゃ』と口にして睨みつけるのだった。
隣に座っているカエデちゃんも落ち着かないみたいだけど、時折私の方を見ては空になったカップに紅茶を淹れてくれたり、話し相手になってくれたりと気を使ってくれる。
「……レース、大丈夫かな」
「心配なのは分かりますが信じるしかないです……」
確かにその通りなんだけど、時折激しい地震が起きたかのように室内が揺れ、カタカタと食器が音を鳴らすのを聞いていると不安になって来る。
カエデちゃんの言うように信じるべきなんだと思うけど……Sランク冒険者が二人にそれに匹敵する可能性があるルード、そして彼が使役するアンデッド達、幾ら騎士や冒険者の人達がいるからとはいえ心配になる。
「でも確かに外の状態が分からないのは不安になりますね」
「うん……」
とはいえここで私が不安になったとしても、この状況が変わる訳ではない。
レースには栄花騎士団の最高幹部である、ハスさんとトキさんがいるし……【氷雪狼】を使えばヴォルフガングお義父様もいるから大丈夫だと思う。
それに多分、もう一匹の方はレースを見る優しい視線から察するに産みの親であるスノーホワイト・ヴォルフガングその人な筈、ストラフィリアに滞在していた時ミュラッカちゃんにどんな人か聞いた事があるけど、心器の能力である【怪力】と長杖を使った腕力による力押しが得意だったそうで……、親子喧嘩が起きた時はお義父様ですら一方的に倒されてしまう程だったらしい。
特に……心器の扱いについては、物心ついた頃には何時の間にか使えるようになってたと、ミュラッカちゃんに言ってたみたいだから、もしかしたら生前は凄い人だったのかも。
「一応、空間魔術を使って外の様子を見る事なら出来るとは思うけど……この部屋の座標が分からないからなぁ」
「なら少しずつ位置を変えながら繋げて見るとかどうですか?それで上手く行ったら安全な所から様子を見れるかもしれませんよ?」
「……ならそうしてみようかな」
カエデちゃんの助言を聞いて空間魔術を使って見るけど、空間を切り裂いて繋いだ場所は真っ暗で何も見えないし聞こえないかと思ったら、大量の水が出て来た辺りもしかしたら樹の水を吸い上げる管に繋がってしまったのかもしれない。
急いで接続を切ると……
「……ちょっと室内を汚さないで欲しいの、掃除する側になって欲しいの」
「あ、ランちゃんごめんね?」
部屋の中に備えづけられている掃除道具を持って来たランちゃんが、カエデちゃんと一緒にびしょぬれになった床を掃除してくれる。
私も立ち上がろうとするけど、二人に座って安静にしているように言われてしまって申し訳ない気持ちになってしまう。
そう思いながら空間を再度繋げると今度は青空が目の前に広がり、周囲には白い雲がゆっくりと流れているのが見えたから、もっと下に繋げた方がいいかなと接続を切ろうとした時だった。
「あれぇ?あーしの知らない空間があるみたいだけどぉ、あなた達何してるの?」
「え!?」
「って!接続切らないでよー、痛いってー」
「え、あっ!ご、ごめんな……っ!?」
いきなり不思議な髪色をした女性が現れたかと思ったら、そのまま上半身を中に突っ込んで来た。
驚いて咄嗟に接続を切ってしまったら下半身を向こう側に残して、そのまま床へと落ちてしまう。
本来なら大量の血液が噴き出す筈のその身体からは何も出る事が無く、半透明の光が溢れている。
そして徐々に皮膚に覆われて人の下半身を模したかと思うと、そのまま立ち上がり……
「えっと、まずは服を貸してくれない?」
「ダートお姉様!」
「そこを離れるの!私の勘が言ってるの……こいつは危険なの!」
「……失礼ね、あーしはただの通りすがりの化物よ?」
ランちゃんが双剣を構えて、化物と名乗った少女に向かって飛び掛かるけど……近づいた瞬間に動きが凄いゆっくりとした動作になって抵抗する事も出来ずに、見えない何かに手足を縛られ空中に固定されてしまう。
「乱暴者はあーしに嫌われるよ?せっかく、ガイストちゃんを首都に連れて来てあげたのにこの仕打ちは無くない?」
「……ガイストが?」
「そうだよ?レース君とお話してねー、アナイスちゃんを殺さない変わりに力を貸す事になってるんだー、だからあーしは敵じゃなくて今は味方だ、よ?」
「カエデちゃん、この人は大丈夫だと思うからお話をしてみよ?、あなたもえっと……」
……名前を呼ぼうとしたけど分からない。
レースの味方だとは言ったけど、それが本当かもわからないしガイストさんを連れて来たという事も本当かどうか疑わしい。
「マリステラ、あーしはマリステラだよ、ダートちゃん」
「……マリステラちゃん、ランちゃんの拘束を解いてくれる?」
「えぇ?また襲われたら怖いからぁ、マリステラちゃんどうしよっかなぁ」
「私からもお願いします……何かあったら責任を取るので」
「へぇ、責任を取るんだぁ?じゃあそうだね……もう一度同じ所に空間を開いてくれる?今度は人が一人分通れる位大きくしてぇ……、後!着る物ちょうだい、何時まであーしは下半身露出した痴女ムーブしなくちゃいけないの?」
……指示に従って、再度空間を繋げるとそこから見覚えのある長い白髪に赤い瞳を持った、メイディの民族衣装に身を包んだガイストが下半身を抱えて飛び込んで来る。
そして不機嫌な顔をして、マリステラに投げつけると『なんで我がおぬしの下半身を持たなければいけんのじゃ』と口にして睨みつけるのだった。
1
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる