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第九章 戦いの中で……
60話 新たな敵
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吹き飛んで来た二人によって戦場の雰囲気が変わる。
氷で出来た翼で全身を守りながら地面へと叩きつけられたアキラさんは、口から大量の血を流しながら片膝をつく。
アナイスに関しては、全身を炎に包まれたかと思うと精霊が人の形を取り彼女を受け止めていた。
「アキラさん!」
「来るな!アナイス、一時休戦だ……あれを倒すぞ!」
「しょうがないわね、この国を壊されたくないもの」
いきなり出て来て休戦とか言われても、何があったか理解できなくて反応に困る。
周りの人やアンデッド達もそうで、自我のあるデュラハン達も今起きている事に理解がおいついてないのか、その場に縫い付けられたかのように動かない。
「……えっと、どうなってるの?」
「マスカレイドだ……奴が来た」
「ありえないわね、なんなのあいつ……」
いや、二人で話を進めないで欲しい。
今はそんな状況じゃないし……
「……いや、吹き飛んで来たかと思ったらいきなり休戦とか言われても困るんだけど」
「え?なんなのこいつ」
「レースはこういう奴だ、難しく考えるな……ところで貴様は戦えるか?来るなとは言ったが戦力が欲しい、着いてこい」
「でも、ぼくがいなくなったら残りのアンデッド達を倒せる人や治癒術が使える人が……」
「アンデッド?あのルードって子のよね、それなら……」
アナイスの精霊が剣の姿になり彼女の手に収まるとそのまま横なぎにすると、周囲の空気が波打ったように見えたかと思うと、戦場にいる全てのアンデッドの身体が炎に包まれ燃え始める。
肉体の無い筈のゴーストも燃えているのを見るあたり……肉体が無いせいで物理的な攻撃には強くても、魔術による攻撃には弱いのかもしれない。
「これで駆除は終わり……、レースだよね?あなたどれくらい強いの?見た所二匹の狼の方が強そうなんだけど」
「えっと……」
「戦闘能力に関しては、力だけは心器の能力で私達に匹敵はするレベルだ……後は狼に関してだが当たりさえすれば、死を覚悟してしまう程の一撃を使えるな、後は向かいながら説明するから着いてこい」
アキラさんが氷の翼を広げると、口元の血を服の袖でふき取りながら宙へと飛び上がる。
取り合えず追いかける為に狼に指示を出すと、アナイスの剣が精霊に戻り小柄な竜の姿に変わるとそのまま背に乗り隣に並んで走り出す。
「つまり……力馬鹿って事ね?」
「後は【叡智】カルディアの弟子兼養子として育てられたおかげで、高水準の治癒術が使える」
「ルディーの?そういえば昔ストラフィリアで捨て子を拾ったって言ってたわね、でも……森であった時に思ったけどあなたって治癒術師っぽくないよね、白いローブを着てるのにさ」
「……それは私達のせいだな、心器の使い方や戦い方を教えている内に、な」
「んー、武器が大剣と長杖だし、雪の魔術を使った魔術を使うかららしくないって言われたらそうかもだけど、ぼくはちゃんとした治癒術師だ……よ、あっ!」
……そういえば大剣だけ持って長杖をあの場に置いて来てしまった気がする。
これはやってしまったかもしれない、一応雪の魔術を使えば代用になる物は作れそうだけど強度的に多分握ったら壊れてしまいそうだ。
「……どうした?」
「長杖を忘れてきました」
「何を言っている?長杖なら貴様の後ろにいる狼が咥えているだろ」
「え?」
驚いて後ろを振り向くと、確かに雪の長杖ではなく【不壊】が付与された方の長杖を咥えている。
もしかしてだけど……ぼくが忘れてるのに気づいて冒険者達の所に行く際に拾ってくれたのかもしれない。
取り合えず乗ってる狼に減速するよう指示を出して、長杖を受け取る前にお礼を言って頭を撫でるとそのまま受け取ると、再び加速してアナイスの隣に並ぶ。
「気づいてなかったの?」
「え?まぁ……うん」
「なんか……そういう抜けてる所ルディーに似てるわね、血が繋がってなくても親子って感じがして羨ましいわ」
「羨ましい?」
「私の弟子は、復讐に囚われてしまったもの……まぁ止めなかった私にも非があるけど、後悔はしていないわ」
弟子……多分、ぼくの実姉であるガイストの事だろう。
「ガイスト……いや、ぼくの姉の事だよね」
「姉……?もしかしてあなた、あの子の弟なの?」
「あぁ、うん……母親は違うけど、血の分けた家族だよ」
「そう……、じゃああなたと一緒にこの国に来た子達は?」
「ぼくの家族だよ、奥さんと子供」
ぼくがそう告げるとアナイスは驚いた顔をする。
そして暫くして申し訳なさそうな表情をしたかと思うと……
「私はあの子の家族と敵対していたのね、何て事をしていたのかしら……これは私の正義に反するわ」
「えっと?」
「イフリーゼ!一時休戦は無しよ、私はこの子の味方になるわ……反乱も終わり!今の私はメイディの守護者【滅尽】アナイス・アナイアレイトよ!、弟子の家族とこの国を守る為に正義を執行するわ!」
「……そうか、なら貴様らに私の背中を任せるぞ」
……アナイスが味方になった事に驚きを隠せないけど、こうしてやり取りをしている間に戦場の反対側が見えて来て『さて、お喋りはここまでだ……マスカレイドと接敵するぞ』とアキラさんの声がして気を引き締める。
いつでも戦えるように武器を強く握りしめて、眼に映ったのは首都から大量の枝が生え鞭のようにしなりながらマスカレイドに攻撃を仕掛けている姿だった。
氷で出来た翼で全身を守りながら地面へと叩きつけられたアキラさんは、口から大量の血を流しながら片膝をつく。
アナイスに関しては、全身を炎に包まれたかと思うと精霊が人の形を取り彼女を受け止めていた。
「アキラさん!」
「来るな!アナイス、一時休戦だ……あれを倒すぞ!」
「しょうがないわね、この国を壊されたくないもの」
いきなり出て来て休戦とか言われても、何があったか理解できなくて反応に困る。
周りの人やアンデッド達もそうで、自我のあるデュラハン達も今起きている事に理解がおいついてないのか、その場に縫い付けられたかのように動かない。
「……えっと、どうなってるの?」
「マスカレイドだ……奴が来た」
「ありえないわね、なんなのあいつ……」
いや、二人で話を進めないで欲しい。
今はそんな状況じゃないし……
「……いや、吹き飛んで来たかと思ったらいきなり休戦とか言われても困るんだけど」
「え?なんなのこいつ」
「レースはこういう奴だ、難しく考えるな……ところで貴様は戦えるか?来るなとは言ったが戦力が欲しい、着いてこい」
「でも、ぼくがいなくなったら残りのアンデッド達を倒せる人や治癒術が使える人が……」
「アンデッド?あのルードって子のよね、それなら……」
アナイスの精霊が剣の姿になり彼女の手に収まるとそのまま横なぎにすると、周囲の空気が波打ったように見えたかと思うと、戦場にいる全てのアンデッドの身体が炎に包まれ燃え始める。
肉体の無い筈のゴーストも燃えているのを見るあたり……肉体が無いせいで物理的な攻撃には強くても、魔術による攻撃には弱いのかもしれない。
「これで駆除は終わり……、レースだよね?あなたどれくらい強いの?見た所二匹の狼の方が強そうなんだけど」
「えっと……」
「戦闘能力に関しては、力だけは心器の能力で私達に匹敵はするレベルだ……後は狼に関してだが当たりさえすれば、死を覚悟してしまう程の一撃を使えるな、後は向かいながら説明するから着いてこい」
アキラさんが氷の翼を広げると、口元の血を服の袖でふき取りながら宙へと飛び上がる。
取り合えず追いかける為に狼に指示を出すと、アナイスの剣が精霊に戻り小柄な竜の姿に変わるとそのまま背に乗り隣に並んで走り出す。
「つまり……力馬鹿って事ね?」
「後は【叡智】カルディアの弟子兼養子として育てられたおかげで、高水準の治癒術が使える」
「ルディーの?そういえば昔ストラフィリアで捨て子を拾ったって言ってたわね、でも……森であった時に思ったけどあなたって治癒術師っぽくないよね、白いローブを着てるのにさ」
「……それは私達のせいだな、心器の使い方や戦い方を教えている内に、な」
「んー、武器が大剣と長杖だし、雪の魔術を使った魔術を使うかららしくないって言われたらそうかもだけど、ぼくはちゃんとした治癒術師だ……よ、あっ!」
……そういえば大剣だけ持って長杖をあの場に置いて来てしまった気がする。
これはやってしまったかもしれない、一応雪の魔術を使えば代用になる物は作れそうだけど強度的に多分握ったら壊れてしまいそうだ。
「……どうした?」
「長杖を忘れてきました」
「何を言っている?長杖なら貴様の後ろにいる狼が咥えているだろ」
「え?」
驚いて後ろを振り向くと、確かに雪の長杖ではなく【不壊】が付与された方の長杖を咥えている。
もしかしてだけど……ぼくが忘れてるのに気づいて冒険者達の所に行く際に拾ってくれたのかもしれない。
取り合えず乗ってる狼に減速するよう指示を出して、長杖を受け取る前にお礼を言って頭を撫でるとそのまま受け取ると、再び加速してアナイスの隣に並ぶ。
「気づいてなかったの?」
「え?まぁ……うん」
「なんか……そういう抜けてる所ルディーに似てるわね、血が繋がってなくても親子って感じがして羨ましいわ」
「羨ましい?」
「私の弟子は、復讐に囚われてしまったもの……まぁ止めなかった私にも非があるけど、後悔はしていないわ」
弟子……多分、ぼくの実姉であるガイストの事だろう。
「ガイスト……いや、ぼくの姉の事だよね」
「姉……?もしかしてあなた、あの子の弟なの?」
「あぁ、うん……母親は違うけど、血の分けた家族だよ」
「そう……、じゃああなたと一緒にこの国に来た子達は?」
「ぼくの家族だよ、奥さんと子供」
ぼくがそう告げるとアナイスは驚いた顔をする。
そして暫くして申し訳なさそうな表情をしたかと思うと……
「私はあの子の家族と敵対していたのね、何て事をしていたのかしら……これは私の正義に反するわ」
「えっと?」
「イフリーゼ!一時休戦は無しよ、私はこの子の味方になるわ……反乱も終わり!今の私はメイディの守護者【滅尽】アナイス・アナイアレイトよ!、弟子の家族とこの国を守る為に正義を執行するわ!」
「……そうか、なら貴様らに私の背中を任せるぞ」
……アナイスが味方になった事に驚きを隠せないけど、こうしてやり取りをしている間に戦場の反対側が見えて来て『さて、お喋りはここまでだ……マスカレイドと接敵するぞ』とアキラさんの声がして気を引き締める。
いつでも戦えるように武器を強く握りしめて、眼に映ったのは首都から大量の枝が生え鞭のようにしなりながらマスカレイドに攻撃を仕掛けている姿だった。
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