治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第九章 戦いの中で……

51話 帰りの道中

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 首都へと帰る道を二人で歩いていると……昨日とは違い余りには不気味な雰囲気に包まれている。
厳密には野生動物やモンスターの気配が無くて異様な程に静寂に包まれているというか……、この感じアンデッドに遭遇した時と似ていて嫌な感じだ。
もしこの場で遭遇するような事があったらカエデを守る事が出来るだろうか。

「何だか静かですね……」
「ぼく達がアンデッドと遭遇した時もこんな感じだったから気を付けた方がいいかも」
「……なら少しだけ待ってください」

 カエデが心器のガラスペンを顕現させると何もない空間に文字を書いていく。
そして土属性の魔術にその文字を纏わせると、そのまま地面に向けて打ち出す。

「今のは?」
「魔術に索敵を指示して地面に打ち出しました、これを定期的に使いながら進めば誰かが通った時、私に直接魔力による信号が伝わるようになってるので相手が空から攻めてくるとか、そう言う事がなければ問題ありません」
「……そういうのって言葉にしたら現実になるって言わない?」
「物語だと良くあるらしいですね、確か……栄花にて一時期流行ったファンタジー系の劇では、フラグの回収と言われてましたっけ」
「メセリーの首都でもそういう劇があったけど、最終的に犠牲を出しながら悪の親玉を倒して終わりだったよね」

 フラグの回収何て滅多に起きないとは思うけど、実際に起きたらどんな反応をすればいいのだろうか。

「……無事に帰れたらダートとダリアを入れた四人でゆっくりとしようか」
「レースさん、それもフラグって言うのが立ってしまいますよ?」
「じゃあ、何て言えばいいんだろ」
「そういう時は、無事に怪我もなく帰ろうでいいと思います」
「そっか……それならカエデの事を何としてでも守るから、ちゃんと無事に帰ろうか」

 その後、少し歩いてはカエデに魔術を使って貰ってを繰り返しているけど、特に遭遇うすることなく時間が過ぎる。
理想を言うのならこの場で【氷雪狼】を使用して二人で背に乗って直ぐに戻りたいけど、もし移動中の無防備な状態を狙われて上空から襲撃されたらひとたまりもないだろう。
……あの時ルードと戦った時に現れた、ドラゴンと巨人族のアンデッドがあれだけとは限らない。
現にライさんが遭遇した殿を務めてくれた時もドラゴンのアンデッドに遭遇した。
つまり後どれくらい、彼の手持ちにいるのか……。

「私が土属性以外の魔術を使えたら良いんですけどね……、こういう時団長、いえ父みたいに出来たら良いんですけど」
「カエデのお父さんってそんなに凄いんだ?」
「そりゃ凄いですよ……心器の能力を使う事で、相手の魔力を使った攻撃を吸収し同じ威力で言葉通りに投げ返せたり、使わずにストックする事が出来ます」
「つまり……索敵に特化した魔術をストックしていたら、ここまで警戒しなくても良かったのかも?」
「ですね……、父は私の魔力特性と心器の能力の方が使い方次第では、自分よりも恐ろしい組み合わせになるとは言ってましたが……どうすればいいのか」

 魔術をストック出来るという事に驚きを隠せないけど、正直心器の能力って色んな物があるからそういう便利なのがあってもおかしくはない気がする。
ただカエデのお父さんも【斬裂流剣術】を持っているのだろうけど、正直……その能力がどんなものなのか分からないから、どれくらい凄いのか実感が持てない。
だからそれに関しては気にしない方向にしつつ、カエデの魔力特性【劣化】と心器の能力の組み合わせか……確か魔術に使うと攻撃が当たった個所の身体能力が劣化してしまうとか、そんな感じだった気がするけど……それと心器をどう合わせるのか。

「……本来の劣化は魔術等に適して無かったよね、威力が効果が劣化してしまうとか」
「後は武器等にも使うと劣化して脆くなってしまう等ですね、けど私の場合はその効果が攻撃をした相手に出るという同じ名前なのに、実際に起きる現状は別物です」
「それならさ、【指示】に劣化する内容を書いてみたらどうかな……例えば魔術に当たったら下半身の機能が劣化するって指示を出したら?更に詳細に指示を出すのなら、足首の関節を劣化されてみたらどうかな」
「……確かにそうする事で、足を効率的に破壊して行動を阻害するとか出来そうですね」
「しかもそれが当たりさえすれば、格上の相手だとしても確実に戦闘能力を下げる事が出来る、そこで思いついたんだけどさ……その能力ってぼくが使う武器にも書く事出来ないかな」

……どうやらぼくの考えすぎだったみたいで、無事に首都にたどり着いてしまった。
けど……このまま部屋に戻るよりも今はカエデと話を続けたい。
そう思いながら今日は姿が見えている騎士に挨拶をして中に入ると、そのまま以前泊まった宿へと入る。
厳密には主人が亡くなってしまっている為、既に宿ではなく無人の建物だけれどちょうどゆっくり話せる場所がここしかないというのが理由。
取り合えず中にある椅子に座るとカエデにも座るように促し、トキに作って貰った大剣を取り出すのだった。
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