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第九章 戦いの中で……
47話 死絶傭兵団の団員
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『死絶の盟約の元、力を示したのなら従え』
サリアから教わったこの合言葉を聞いた時は驚いた。
意味は単純で、死絶カーティス・ハルサーの血縁に認められた者がこの言葉を使う事で、団員達に勝負を挑むことが出来るようになる。
それがどのような形の戦いになるかは団員によるらしいけど……、ある程度誰がどのような傾向にあるかは少しだけ彼女から聞いた。
「……へぇ、あんた何処のハルサーからその言葉を聞いたんだい?」
「おまえ、その言葉を口にしたからにはぶっ飛ばされる覚悟は出来てんだろうな」
シルクハットをかぶり赤い髪に琥珀色の瞳を持ち、メイディの民族衣装を着た体格の良い男性が椅子から立ち上がり近づいてくる。
カフスさんの言っていた言葉を思い出すなら、多分彼がガルシアだろう。
そしてあの紫色の髪の女性がネフィーラ……応接室の前で二人が話していた内容から考えると、女性の方は人族に対して差別意識を持っているのかもしれない。
獣人族がニンゲンって他種族を呼ぶ時は相手に敵意を持っていたりする時だ。
逆にガルシアの方は、特にそのような考えが無いみたいだから……会話をするなら彼の方が良さそう。
一応他の団員達を見るけれど……様々な髪の色の子供が沢山いる、それぞれが民族衣装に身を包む姿は何とも可愛らしい。
「おにーちゃんだれー?」
「どうして盟約の事知ってるのー?」
「背中の大きい棒はなにー?」
死絶傭兵団が、獣人族の子供を団員として抱えているのは有名だけど……実際に見ると不思議な感じがする。
「おまえら、こいつは俺達傭兵団の客だ……お兄ちゃんはこいつと大事な話があるから部屋の隅で大人しくしてな」
「えー……、ぼくもおにーちゃんと戦いたい!」
「ぼっこぼこにするー!」
「あんたら!話が進まないから静かにしな!良い子にしてたらお姉ちゃんが欲しいも物買ってあげるから」
「「「なら良い子にするー!」」」
子供達がそれぞれ床に座ると、玩具を取り出して各々遊び始める。
「悪かったな、取り合えずやり合える場所……取り合えず訓練場に行くか、あそこなら暴れてもいいだろ、んじゃおまえら良い子にしてろよ?」
「「「はーい!!」」」
ガルシアが応接室の扉を開けると、ぼくに出るように促す。
その気遣いに応えると、ガルシアが足早に前に出て先頭を歩き、ネフィーラが隣を歩きながらこっちを見て……
「それならあたしが相手するよ、あんたはハルサーの血縁じゃ無いからどうせ全力でやらないでしょ?」
「個人的にはガルシアと戦いたいんだけど……」
「お?おまえ俺の名前知ってんのか、ん?あぁ……そういやおまえの名前は?」
「ごめん、まだ名前を言ってなかった……レースだよ、サリアから聞いてない?」
「ん?あぁ……そういやサリアの嬢ちゃんから、ストラフィリアの王族と友達になったって聞いた事あるな、ネフィーラも聞いた事あるだろ?」
サリアの事を嬢ちゃんと呼ぶあたりガルシアは、死絶傭兵団の中では古株なのかもしれない。
「いんや、あたしはニンゲンに興味無いから覚えてないね……、それにこんな弱そうな男の名前を聞いてたとしても雑魚を覚える趣味は無いよ」
「……あぁ、何だ?レース、気を悪くしたら悪いな、こいつはガキの頃この国を拠点にしてる犯罪組織に親を殺された後そのまま捕まって奴隷扱いされてさ、特にその時に受けた酷い経験のせいで人族に対してトラウマがあんだよ」
「あんた勝手にあたしの過去を話してんじゃないよ」
「別にいいだろ?ほんとは俺が腕相撲で勝負したかったけど、出来ないみたいだし……それにもしネフィーラが負けたら俺達はレースに雇われるんだ、こちら側の事情を伝えた方が良い、じゃないと安心して背中を預けられないだろ?」
確かにそういう事情を話してくれた方が、ぼくとしても色々と気を使う事が出来るからありがたい。
それならぼくが勝つことが出来たら、極力ネフィーラには関わらないで大事な話はガルシアを通すようにしよう。
「……あたしが負ける訳ないじゃない、人間は皆あたしの毒の前では無力なんだから」
「まぁ、俺もそう思うがもしかしてって事があるからな……っと、着いたぞ?ほらお前がホストなんだから先に訓練場に入ってくれ」
「え?あ、うん」
言われるがままに訓練場に入ると……少し前にあんなにボロボロにしてしまったのに、ちゃんと修復された姿が見える。
トキがカフスに怒られながら直したのだろうけど、どうやってあの短時間で治したのだろうか。
二人には悪いけど、そっちの方が気になってしまう。
「さて……位置に着いたら俺が審判をする、取り合えずルールは簡単、ネフィーラに力を示す方法は単純に戦って勝つか負けるかだ……勿論、相手を殺すとかはなし!事故で死んだ場合はしょうがないとはいえ、意図して殺そうとしたら俺が止めてやる……んじゃ、早速だけどやってもらおうか」
「え?準備とかはしなくていいの?」
「実戦で準備とかする余裕あるかよ、敵と出会ったら殺るか殺られるかだよ」
「ならぼくもそれに合わせるよ」
……心器の長杖を背中から右手に持つと左手に大剣を顕現させる。
すると『何だあれ……気持ち悪い術を使うんだね、何もない所から武器を作り出すとか頭おかしいんじゃない?』とネフィーラが言うと彼女の髪の毛が波打ちながら伸びていく、一体何をしてくるのだろうかと警戒しているとそれが段々と異形の姿をした化け物へと変わるのだった。
サリアから教わったこの合言葉を聞いた時は驚いた。
意味は単純で、死絶カーティス・ハルサーの血縁に認められた者がこの言葉を使う事で、団員達に勝負を挑むことが出来るようになる。
それがどのような形の戦いになるかは団員によるらしいけど……、ある程度誰がどのような傾向にあるかは少しだけ彼女から聞いた。
「……へぇ、あんた何処のハルサーからその言葉を聞いたんだい?」
「おまえ、その言葉を口にしたからにはぶっ飛ばされる覚悟は出来てんだろうな」
シルクハットをかぶり赤い髪に琥珀色の瞳を持ち、メイディの民族衣装を着た体格の良い男性が椅子から立ち上がり近づいてくる。
カフスさんの言っていた言葉を思い出すなら、多分彼がガルシアだろう。
そしてあの紫色の髪の女性がネフィーラ……応接室の前で二人が話していた内容から考えると、女性の方は人族に対して差別意識を持っているのかもしれない。
獣人族がニンゲンって他種族を呼ぶ時は相手に敵意を持っていたりする時だ。
逆にガルシアの方は、特にそのような考えが無いみたいだから……会話をするなら彼の方が良さそう。
一応他の団員達を見るけれど……様々な髪の色の子供が沢山いる、それぞれが民族衣装に身を包む姿は何とも可愛らしい。
「おにーちゃんだれー?」
「どうして盟約の事知ってるのー?」
「背中の大きい棒はなにー?」
死絶傭兵団が、獣人族の子供を団員として抱えているのは有名だけど……実際に見ると不思議な感じがする。
「おまえら、こいつは俺達傭兵団の客だ……お兄ちゃんはこいつと大事な話があるから部屋の隅で大人しくしてな」
「えー……、ぼくもおにーちゃんと戦いたい!」
「ぼっこぼこにするー!」
「あんたら!話が進まないから静かにしな!良い子にしてたらお姉ちゃんが欲しいも物買ってあげるから」
「「「なら良い子にするー!」」」
子供達がそれぞれ床に座ると、玩具を取り出して各々遊び始める。
「悪かったな、取り合えずやり合える場所……取り合えず訓練場に行くか、あそこなら暴れてもいいだろ、んじゃおまえら良い子にしてろよ?」
「「「はーい!!」」」
ガルシアが応接室の扉を開けると、ぼくに出るように促す。
その気遣いに応えると、ガルシアが足早に前に出て先頭を歩き、ネフィーラが隣を歩きながらこっちを見て……
「それならあたしが相手するよ、あんたはハルサーの血縁じゃ無いからどうせ全力でやらないでしょ?」
「個人的にはガルシアと戦いたいんだけど……」
「お?おまえ俺の名前知ってんのか、ん?あぁ……そういやおまえの名前は?」
「ごめん、まだ名前を言ってなかった……レースだよ、サリアから聞いてない?」
「ん?あぁ……そういやサリアの嬢ちゃんから、ストラフィリアの王族と友達になったって聞いた事あるな、ネフィーラも聞いた事あるだろ?」
サリアの事を嬢ちゃんと呼ぶあたりガルシアは、死絶傭兵団の中では古株なのかもしれない。
「いんや、あたしはニンゲンに興味無いから覚えてないね……、それにこんな弱そうな男の名前を聞いてたとしても雑魚を覚える趣味は無いよ」
「……あぁ、何だ?レース、気を悪くしたら悪いな、こいつはガキの頃この国を拠点にしてる犯罪組織に親を殺された後そのまま捕まって奴隷扱いされてさ、特にその時に受けた酷い経験のせいで人族に対してトラウマがあんだよ」
「あんた勝手にあたしの過去を話してんじゃないよ」
「別にいいだろ?ほんとは俺が腕相撲で勝負したかったけど、出来ないみたいだし……それにもしネフィーラが負けたら俺達はレースに雇われるんだ、こちら側の事情を伝えた方が良い、じゃないと安心して背中を預けられないだろ?」
確かにそういう事情を話してくれた方が、ぼくとしても色々と気を使う事が出来るからありがたい。
それならぼくが勝つことが出来たら、極力ネフィーラには関わらないで大事な話はガルシアを通すようにしよう。
「……あたしが負ける訳ないじゃない、人間は皆あたしの毒の前では無力なんだから」
「まぁ、俺もそう思うがもしかしてって事があるからな……っと、着いたぞ?ほらお前がホストなんだから先に訓練場に入ってくれ」
「え?あ、うん」
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トキがカフスに怒られながら直したのだろうけど、どうやってあの短時間で治したのだろうか。
二人には悪いけど、そっちの方が気になってしまう。
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……心器の長杖を背中から右手に持つと左手に大剣を顕現させる。
すると『何だあれ……気持ち悪い術を使うんだね、何もない所から武器を作り出すとか頭おかしいんじゃない?』とネフィーラが言うと彼女の髪の毛が波打ちながら伸びていく、一体何をしてくるのだろうかと警戒しているとそれが段々と異形の姿をした化け物へと変わるのだった。
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