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第九章 戦いの中で……

39話 作戦会議

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 ライさんが困ったような顔をしてぼくの方を見る。
こっちを見られてもこうなってしまった以上は説明をするしかないだろう。
そしてカエデは状況の説明を更に詳しく求めているようで、ライさんの方を見て……

「では話し合いをしましょうか」
「……その前に先程の魔導具越しに謝罪したけど、改めて謝らせて欲しい……副団長であるカエデ姫を騙すような事をして本当に申し訳ない」
「その事に関しては別に良いです、むしろどうやってSランク冒険者【滅尽】の対応をするつもりだったので?」
「彼女の対応に関してはアキラに一任しているが……、現状彼女の中で俺は死んだ事になっているからね、現状戦場で自由に動けるという利点があるよ」
「……つまり滅尽と死人使い相手に奇襲を仕掛けるという事ですか」

 奇襲をしかけるのはありかもしれないけど、アナイス・アナイアレイトの場合一瞬で森を滅ぼしたあの一撃があるし、ルード・フェレスは自身の魔術を使い現在もおびただしい数のアンデッドを産み出している筈。

「厳密にはルードにだね、彼は今既に人族ではなくマンティコアと呼ばれるモンスターだ……、ケイスニルの実力がメイメイをたった一撃で気絶させる程の能力があった事から考えるにSランク冒険者に匹敵する可能性がある、そんな危険人物の魔力を取り込んだ以上、ルードも同じの能力があると考えた方がいい」
「……確かにその可能性はあるとは思いますが、レースさんとハスさんの二人で死人使いと対峙させるのは危険です」
「そこは問題ない、レース君との戦闘訓練で十分な実力がある事を理解してるからね……特に、近接戦闘においては心器の能力で作り出す大剣を使う雪の狼が居るのが大きい」
「……でもあの狼よりも、ぼくの事を守るように動いてる長杖を加えてる個体の方が強かったんだよね、だからどっちかというと大剣の方は攻めるよりも守る方が強いと思う」

 トキと武器の性能を確認する為の戦いで見たけど、長杖の能力をうまく使いこなして彼女を物理面でも圧倒したし、更には恐ろしい練度の雪の魔術を使っていたからどう見てもこの個体の方が近接戦闘が上手い。
逆に大剣の方は、近接においては強いけど戦い方がどっちかというと受け身な事が多い……相手の攻撃を大剣で受けてから反撃に入る事が多いから、役割を変えた方が良い気がする。
ただ……もし大剣の能力を使い、更に狼を産み出せるようになったら二匹を前に出して残りの個体で守りを固めるとか出来たら、戦略的に動けると思うけど多分今のぼくの能力で生み出せるのは、多分三体が限界だろう。
最近までは二匹までしか無理だったけど、戦闘訓練を重ねるうちに大剣の能力である【氷雪狼】の練度が上がったのか、感覚的にこれ位なら出来そうだと感じる。
けどその場合、大剣と長杖の個体みたいに心器を核として生み出す事が出来ないから、耐久面においては不安が残るし尚且つ、能力も使えないだろうから……本当に攻撃を受ける為の壁にしか使えないか、背中に乗る事で移動に役立てる事位しか出来ない気がする。

「ライさん?何だか最初から作戦を練り直した方がいい気がしますよ?」
「俺もそう思うけど、ここまで動いてしまった以上は今更変更は出来ないかな」
「あ、一応……三体目も出せると思うから、ぼくの守りはその個体に任せて残り二匹で前線に出ればルードと戦う時有利に動けるんじゃないかな」
「そういうのは早めに言いなさい、君を主軸にして作戦を考えているのだから……」
「そうですよレースさん、仲間なんですから今の手札は全部公開した方がいいと思います」

 二人から凄い圧を感じるけど、長杖を持っている方が強いと分かったのはつい最近の事だから……言うのを忘れてたのはしょうがないと思う。
けど言わなかったぼくの方に問題があるのは確かだから、次からは気を付けないと……

「まぁ……その事に関してはもういいよ、取り合えず今は後でレース君に伝えるつもりだった、アンデッドを調べた結果をカエデ姫にも聞いて貰おうかな」
「アンデッドを調べた結果ですか?」
「あぁ、彼らはアンデッドになってのみ動きが良い個体のみ、身体の一部が食べられていてね、頭だったり腕の一部だったり……中には下半身の全てが無くなってたりしたよ」
「……それってもしかして、マンティコアの相手を捕食する事で能力を上げる種族的な特徴の?」
「それで間違いないだろうね、【死人使い】ルード・フェレスから見て強いと判断した相手だけ取り込んだんだと思う」

……ライさんが雷の魔術で動けなくした後、アナイス・アナイアレイトの攻撃が行われるまでの短い間にここまで詳しく調べられた事に驚きを隠せない。
ぼくだったらなんも調べられないと思うし、仮に出来たとしても治癒術を使ってアンデッドの中に流れるルードの魔力と波長を合わせて、彼の居場所を見つける事くらいで……その後にあの攻撃を受けて一瞬にして灰になっていた筈だ。
そんな事を思いながら、ライさんの話を聞くのだった。
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