417 / 535
第九章 戦いの中で……
38話 大事なお話
しおりを挟む
話があると言っても……起きる気配の無いハスを置いて行っていいのだろうか。
目を覚ましたら近くに誰もいないというのは彼に悪い気がする。
そんな気がしてカエデに聞いて見るけど……
「ハスを起こしてから行った方がいいんじゃないかな」
「寝たまま起きないハスさんが悪いですし、待機中なのに気を抜いた罰です……目を覚ました時に一人きりで不安になって泣けばいいんですよ」
「泣けばって……まぁカエデがそういうなら止めないけどさ」
という返事が返って来たかと思うと、カエデは反応を待たずに書庫から出て階段を下り始める。
カエデを追いかけ部屋に戻る前に書庫に置かれているメモ用紙に、話し合いが終わり解散した事を書き残して急いで彼女を追いかけた。
「レースさん?どうして直ぐに着いて来てくれなかったんですか?」
「いや……、やっぱりハスの事を考えたら書き置きを残してから行った方がいい気がしてさ」
「……そういう真面目な所は良いと思いますけど、私は今怒ってるんですよ?」
階段の途中で立ち止まると、彼女にしては珍しく不機嫌な表情を顔に浮かべてこちらへと振り向く。
「……怒ってる?」
「このイヤーカフスはライさんのですよね?以前通信端末の技術を解析して作成した魔導具として見せて貰った事があるので」
「でもさっきあの部屋で話してた時は、気にしてなさそうだったけど……」
「それは気づかなかった振りをしていただけです、そうじゃなかったら嘘をついたら針千本何ていいません」
そもそも針千本の意味が分からないから、そんな風に言われても反応に困る。
取り合えず移動を再開しながら、こういう時にどういう言葉を口にするのが正解なんだろうかと考えては見るけど……幾ら思考を繰り返しても、分からない事が分からないという答えしか出ない。
「……その針千本の意味が分からないんだけど」
「え?結構有名な言葉だと思いますけど……、ほら約束をしたからには、それを破って噓をついた時には裁縫用の針を千本飲ませるって意味で……」
「いや、初めて聞いたけど……、多分栄花でしか使われてないと思うよ?」
「……知りませんでした」
一応メセリーには嘘をついた場合、魔術や治癒術の実験動物にする的な内容の囃し言葉があるけど……正直ぼくが子供の頃は内容が冗談に聞こえなかった。
現代の魔術と治癒術の母と言われるSランク冒険者【叡智】カルディアと、父とも言える【黎明】マスカレイド、あの二人がいる環境で育つと……母さんから言われた時に、寝ている内に本当に実験動物にされてしまうのではないか不安になり眠れない夜を過ごした事がある程度には怖かった記憶がある。
まぁただ当時は、小さい子供特有の親に構って欲しいが故の行動だったけど……今思うとやり過ぎだと思われたから、戒める為に言われたのだろう。
「……何か気まずい雰囲気になっちゃいましたね」
「まぁ、ぼくは気にして無いからいいよ……それよりもカエデを怒らせるような事をしてごめんね」
「そこで素直に謝って来るのほんと卑怯ですよ?でも今回は許してあげません……だってライさんが死んだと思ってたら生きてるって分かりましたし、レースさんも知ってて黙ってるのは本当にダメだと思います」
「それについても反省してるよ、ただ通路で会話してると誰が聞いてるか分からないからね、取り合えず部屋についた事だし中に入ろうか」
取り合えず部屋についたから扉を開けて中に入るといつものように椅子に座る。
そしていつもは隣に座るカエデが、なぜか正面に座るとイヤーカフスを外してテーブルの上に置く。
その仕草はいつもぼく達に見せるのとは違い、栄花騎士団の副団長としての立場で目の前に立っているように見えた。
「……話しながら事情をある程度聞いて、納得のいく内容だったからそれに関してはいいです」
「それなら……」
「でもそれと私個人の感情は別ですよ?信頼している人達に嘘をつかれるのは、心苦しい物がありますし、ダートお姉様が同じように嘘をつかれたと知ったらどう思うか分からない訳じゃ分からないレースさんじゃないですよね?」
「多分ダートなら、言わなくても分かってくれるんじゃないかな……ほら、今言えないという事はそれなりの事情があるんじゃないかって」
今までもダートはそうやって言いづらそうにしてる事に関しては言葉にするまで待ってくれたし、彼女なら今回の事に関しても何か理由があるのではないかと既に感付いてはいるだろうけど、聞いて来ないという事はそういう事なのだろう。
「この質問をした私が馬鹿でしたね」
「そんな呆れたような顔をされても……」
「これに関してはもう怒ってた私が馬鹿らしいのでもういいです、それよりもライさんから聞きましたけど彼が入っている魔導具の袋を持ってますよね?それを出してください」
「えっと……、取り合えずテーブルの上に置けばいいのかな」
……カエデの指示に従い、空間収納の魔術が付与された魔導具の袋を取り出すとテーブルの上に置く。
すると中からライさんが出て来て椅子に座るのだった、
目を覚ましたら近くに誰もいないというのは彼に悪い気がする。
そんな気がしてカエデに聞いて見るけど……
「ハスを起こしてから行った方がいいんじゃないかな」
「寝たまま起きないハスさんが悪いですし、待機中なのに気を抜いた罰です……目を覚ました時に一人きりで不安になって泣けばいいんですよ」
「泣けばって……まぁカエデがそういうなら止めないけどさ」
という返事が返って来たかと思うと、カエデは反応を待たずに書庫から出て階段を下り始める。
カエデを追いかけ部屋に戻る前に書庫に置かれているメモ用紙に、話し合いが終わり解散した事を書き残して急いで彼女を追いかけた。
「レースさん?どうして直ぐに着いて来てくれなかったんですか?」
「いや……、やっぱりハスの事を考えたら書き置きを残してから行った方がいい気がしてさ」
「……そういう真面目な所は良いと思いますけど、私は今怒ってるんですよ?」
階段の途中で立ち止まると、彼女にしては珍しく不機嫌な表情を顔に浮かべてこちらへと振り向く。
「……怒ってる?」
「このイヤーカフスはライさんのですよね?以前通信端末の技術を解析して作成した魔導具として見せて貰った事があるので」
「でもさっきあの部屋で話してた時は、気にしてなさそうだったけど……」
「それは気づかなかった振りをしていただけです、そうじゃなかったら嘘をついたら針千本何ていいません」
そもそも針千本の意味が分からないから、そんな風に言われても反応に困る。
取り合えず移動を再開しながら、こういう時にどういう言葉を口にするのが正解なんだろうかと考えては見るけど……幾ら思考を繰り返しても、分からない事が分からないという答えしか出ない。
「……その針千本の意味が分からないんだけど」
「え?結構有名な言葉だと思いますけど……、ほら約束をしたからには、それを破って噓をついた時には裁縫用の針を千本飲ませるって意味で……」
「いや、初めて聞いたけど……、多分栄花でしか使われてないと思うよ?」
「……知りませんでした」
一応メセリーには嘘をついた場合、魔術や治癒術の実験動物にする的な内容の囃し言葉があるけど……正直ぼくが子供の頃は内容が冗談に聞こえなかった。
現代の魔術と治癒術の母と言われるSランク冒険者【叡智】カルディアと、父とも言える【黎明】マスカレイド、あの二人がいる環境で育つと……母さんから言われた時に、寝ている内に本当に実験動物にされてしまうのではないか不安になり眠れない夜を過ごした事がある程度には怖かった記憶がある。
まぁただ当時は、小さい子供特有の親に構って欲しいが故の行動だったけど……今思うとやり過ぎだと思われたから、戒める為に言われたのだろう。
「……何か気まずい雰囲気になっちゃいましたね」
「まぁ、ぼくは気にして無いからいいよ……それよりもカエデを怒らせるような事をしてごめんね」
「そこで素直に謝って来るのほんと卑怯ですよ?でも今回は許してあげません……だってライさんが死んだと思ってたら生きてるって分かりましたし、レースさんも知ってて黙ってるのは本当にダメだと思います」
「それについても反省してるよ、ただ通路で会話してると誰が聞いてるか分からないからね、取り合えず部屋についた事だし中に入ろうか」
取り合えず部屋についたから扉を開けて中に入るといつものように椅子に座る。
そしていつもは隣に座るカエデが、なぜか正面に座るとイヤーカフスを外してテーブルの上に置く。
その仕草はいつもぼく達に見せるのとは違い、栄花騎士団の副団長としての立場で目の前に立っているように見えた。
「……話しながら事情をある程度聞いて、納得のいく内容だったからそれに関してはいいです」
「それなら……」
「でもそれと私個人の感情は別ですよ?信頼している人達に嘘をつかれるのは、心苦しい物がありますし、ダートお姉様が同じように嘘をつかれたと知ったらどう思うか分からない訳じゃ分からないレースさんじゃないですよね?」
「多分ダートなら、言わなくても分かってくれるんじゃないかな……ほら、今言えないという事はそれなりの事情があるんじゃないかって」
今までもダートはそうやって言いづらそうにしてる事に関しては言葉にするまで待ってくれたし、彼女なら今回の事に関しても何か理由があるのではないかと既に感付いてはいるだろうけど、聞いて来ないという事はそういう事なのだろう。
「この質問をした私が馬鹿でしたね」
「そんな呆れたような顔をされても……」
「これに関してはもう怒ってた私が馬鹿らしいのでもういいです、それよりもライさんから聞きましたけど彼が入っている魔導具の袋を持ってますよね?それを出してください」
「えっと……、取り合えずテーブルの上に置けばいいのかな」
……カエデの指示に従い、空間収納の魔術が付与された魔導具の袋を取り出すとテーブルの上に置く。
すると中からライさんが出て来て椅子に座るのだった、
1
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる