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第九章 戦いの中で……
27話 恐怖系の物語
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何時もならこの時間にダートとカエデが部屋にいる筈なのに誰もいない。
もしかして何かあったのではないかと不安になって探してしまうけれど……
「ダートが居ない?」
「……さっきまであんなに落ち着いてた奴が焦ってんじゃねぇよ」
「だって、ダートとカエデが……」
「だから落ち着けって、ランが先に戻って姫ちゃんに報告した後【薬王】か【薬姫】に伝える為に出て行ったんじゃねぇの?」
焦り過ぎて、ハスの方が冷静になってしまっている。
本来ならぼくが冷静でいなければいけないのに……情けない。
『……色々と心配だから音声と映像をこっちで確認できるようにしとくよ』
更にはライさんからもそんな気遣いをされてしまうあたり、余程取り乱していたんだと思う。
『とはいえ周りに悟られたらいけないから、こちらからは連絡をしないようにするけど何か用がある時は耳元の魔導具を2回叩いて欲しい』
でも正直そうやって気遣ってくれるのはありがたい。
近くで誰かが見守ってくれるというだけで、安心感があるし……何か相談したいときに直ぐに連絡出来る相手がいるのも気持ちが楽になる。
「……ハス、迷惑かけてごめん」
「あ?べ、別にこれ位迷惑でもなんでもねぇよ……ま、まぁ?戻ったらおめぇの嫁さんが居なくなってたら焦るのはしょうがねぇんじゃねぇの?」
「えっと、じゃあありがとう?」
「いや、ここでお礼言われても反応に困んだけど?……あぁ、まぁいいさっさと俺達も姫ちゃん達のとこに合流しに行くぞ?」
そう言ってハスが部屋の扉を開けて通路に出ようとするけど、何かを思い出したかのような顔をしてこっちに振り向くと……
「姫ちゃん達が何処にいるか……おめぇ知ってるか?」
「多分謁見の間にいるんじゃないかな」
「謁見の間かぁ、それってどこにあるのか覚えてねぇんだよなぁ……ほらいつもそういうのライに任せてたからよぉ」
「何でもライさん任せにするの良くないと思うよ?」
「……言われなくても分かってるよ、特にこれからはあいつがいねぇんだから俺もしっかりとしねぇといけねぇし、まぁでも俺はいいんだけどさ……妹にはどう説明すればいいのか分かんねぇや」
その場にしゃがんでいきなりどう説明すればいいのか分からないと言われても、正直こっちの方が何の反応をすればいいのか分からない。
「今は説明よりも、これからどうするかじゃないかな……」
「そうだよな、とりあえずアキにはこの任務が終わったら話すわ」
「その方がいいよ、取り合えず謁見の間までの道はぼくが覚えてるからついて来てよ」
「おぅ、わりぃな」
部屋から出て通路に出るといつもよりも静かな気がする。
普段は扉の前に騎士の人が立っていたり、巡回しているのにすれ違う事も無ければ気配すら感じない。
「……何か凄い静かだね」
「あぁ、何かこういうの昔読んだ本で見た事あるな」
「読んだ本?」
「あぁ、古い洋館にゾンビが出て来る奴でよ……夜間の襲撃に合って逃げ込んだ先で襲われるって奴なんだよな、確かシオリっていう奴が昔に書いたホラー小説なんだけどさ結構怖かったぜ?」
ぼくの事を気遣って話題を出してくれてるんだと思うんだけど、アンデッドに遭遇した後にそんな話を出されても何ていうか……話題の選び方が良くない気がする。
「何でも悪の組織が作ったウイルスって言うのを使って起きた、バイオテロっていうのらしくてさ、これが何ていうか詳しくは説明が省かれてて分かんねぇけど雰囲気が結構怖かったんだよなぁ……例えば、こうやって通路の角を曲がると人が倒れててよ、その上にゾンビが覆いかぶさってんだよ」
ハスの中ではライさんは死んだ事になっているのに……辛くないのだろうか。
ちょっとだけ心配になるけど、笑顔で話しているのを見ると止めるのも悪い気がする。
ただ……これで本当に通路の角を曲がってゾンビが出てきたら、どんな反応をすればいいのか分からない。
幾ら物語の話だとしても内容が不穏過ぎる……。
「って言っても出て来る訳ねぇけどな」
「わっ!なのじゃ!」
「う、うわ!?まじで!?」
走ってぼくを追い抜いたハスが通路の角を覗き込むような仕草をすると、聞き覚えのある声が聞こえ……、驚いた彼が尻もちを付く。
「レース逃げろ!本当にゾンビが出た!ここは俺に任せておめぇだけでも謁見の間に逃げろ!」
「わっ!わぁなのじゃ!ゾンビなのじゃよぉ!余じゃよぉ!噛んじゃうのじゃよ」
「や、やめっ!噛むな!噛んだら俺も感染して……あ、あぁっ!?」
さっきまでの雰囲気は何処に行ったのか……、そして何を見せられているのか。
ハスがあまりにも必死に目の前で暴れるから、止めるのも悪い気がしてその場に思わず立ち尽くしてしまう。
「……何じゃおぬし、そこまで本気で怖がられると傷つくのじゃが?」
「え?あ……、ゾンビじゃねぇのか?」
「そんな訳なかろう!余はただおぬし等が楽しそうに話してるのを見て悪乗りしただけじゃ!」
「や、ややこしい事すんじゃねぇよ!」
「レース……、もしかしてなのじゃがこやつヘタレか?」
……そう言って通路の角から顔を出したメイメイは、顔を様々な色で染めていて……見ようによっては返り血が付いたように見えて本物のゾンビのようだ。
確かにあの話をしている最中に出会ったら焦ってパニックを起こすのはしょうがないと思うけど、『……く、もう、無理、こんなん笑うって!』という声と共にダリアの笑い声が通路の奥から聞こえて来て、思わずハスに同情してしまうのだった。
もしかして何かあったのではないかと不安になって探してしまうけれど……
「ダートが居ない?」
「……さっきまであんなに落ち着いてた奴が焦ってんじゃねぇよ」
「だって、ダートとカエデが……」
「だから落ち着けって、ランが先に戻って姫ちゃんに報告した後【薬王】か【薬姫】に伝える為に出て行ったんじゃねぇの?」
焦り過ぎて、ハスの方が冷静になってしまっている。
本来ならぼくが冷静でいなければいけないのに……情けない。
『……色々と心配だから音声と映像をこっちで確認できるようにしとくよ』
更にはライさんからもそんな気遣いをされてしまうあたり、余程取り乱していたんだと思う。
『とはいえ周りに悟られたらいけないから、こちらからは連絡をしないようにするけど何か用がある時は耳元の魔導具を2回叩いて欲しい』
でも正直そうやって気遣ってくれるのはありがたい。
近くで誰かが見守ってくれるというだけで、安心感があるし……何か相談したいときに直ぐに連絡出来る相手がいるのも気持ちが楽になる。
「……ハス、迷惑かけてごめん」
「あ?べ、別にこれ位迷惑でもなんでもねぇよ……ま、まぁ?戻ったらおめぇの嫁さんが居なくなってたら焦るのはしょうがねぇんじゃねぇの?」
「えっと、じゃあありがとう?」
「いや、ここでお礼言われても反応に困んだけど?……あぁ、まぁいいさっさと俺達も姫ちゃん達のとこに合流しに行くぞ?」
そう言ってハスが部屋の扉を開けて通路に出ようとするけど、何かを思い出したかのような顔をしてこっちに振り向くと……
「姫ちゃん達が何処にいるか……おめぇ知ってるか?」
「多分謁見の間にいるんじゃないかな」
「謁見の間かぁ、それってどこにあるのか覚えてねぇんだよなぁ……ほらいつもそういうのライに任せてたからよぉ」
「何でもライさん任せにするの良くないと思うよ?」
「……言われなくても分かってるよ、特にこれからはあいつがいねぇんだから俺もしっかりとしねぇといけねぇし、まぁでも俺はいいんだけどさ……妹にはどう説明すればいいのか分かんねぇや」
その場にしゃがんでいきなりどう説明すればいいのか分からないと言われても、正直こっちの方が何の反応をすればいいのか分からない。
「今は説明よりも、これからどうするかじゃないかな……」
「そうだよな、とりあえずアキにはこの任務が終わったら話すわ」
「その方がいいよ、取り合えず謁見の間までの道はぼくが覚えてるからついて来てよ」
「おぅ、わりぃな」
部屋から出て通路に出るといつもよりも静かな気がする。
普段は扉の前に騎士の人が立っていたり、巡回しているのにすれ違う事も無ければ気配すら感じない。
「……何か凄い静かだね」
「あぁ、何かこういうの昔読んだ本で見た事あるな」
「読んだ本?」
「あぁ、古い洋館にゾンビが出て来る奴でよ……夜間の襲撃に合って逃げ込んだ先で襲われるって奴なんだよな、確かシオリっていう奴が昔に書いたホラー小説なんだけどさ結構怖かったぜ?」
ぼくの事を気遣って話題を出してくれてるんだと思うんだけど、アンデッドに遭遇した後にそんな話を出されても何ていうか……話題の選び方が良くない気がする。
「何でも悪の組織が作ったウイルスって言うのを使って起きた、バイオテロっていうのらしくてさ、これが何ていうか詳しくは説明が省かれてて分かんねぇけど雰囲気が結構怖かったんだよなぁ……例えば、こうやって通路の角を曲がると人が倒れててよ、その上にゾンビが覆いかぶさってんだよ」
ハスの中ではライさんは死んだ事になっているのに……辛くないのだろうか。
ちょっとだけ心配になるけど、笑顔で話しているのを見ると止めるのも悪い気がする。
ただ……これで本当に通路の角を曲がってゾンビが出てきたら、どんな反応をすればいいのか分からない。
幾ら物語の話だとしても内容が不穏過ぎる……。
「って言っても出て来る訳ねぇけどな」
「わっ!なのじゃ!」
「う、うわ!?まじで!?」
走ってぼくを追い抜いたハスが通路の角を覗き込むような仕草をすると、聞き覚えのある声が聞こえ……、驚いた彼が尻もちを付く。
「レース逃げろ!本当にゾンビが出た!ここは俺に任せておめぇだけでも謁見の間に逃げろ!」
「わっ!わぁなのじゃ!ゾンビなのじゃよぉ!余じゃよぉ!噛んじゃうのじゃよ」
「や、やめっ!噛むな!噛んだら俺も感染して……あ、あぁっ!?」
さっきまでの雰囲気は何処に行ったのか……、そして何を見せられているのか。
ハスがあまりにも必死に目の前で暴れるから、止めるのも悪い気がしてその場に思わず立ち尽くしてしまう。
「……何じゃおぬし、そこまで本気で怖がられると傷つくのじゃが?」
「え?あ……、ゾンビじゃねぇのか?」
「そんな訳なかろう!余はただおぬし等が楽しそうに話してるのを見て悪乗りしただけじゃ!」
「や、ややこしい事すんじゃねぇよ!」
「レース……、もしかしてなのじゃがこやつヘタレか?」
……そう言って通路の角から顔を出したメイメイは、顔を様々な色で染めていて……見ようによっては返り血が付いたように見えて本物のゾンビのようだ。
確かにあの話をしている最中に出会ったら焦ってパニックを起こすのはしょうがないと思うけど、『……く、もう、無理、こんなん笑うって!』という声と共にダリアの笑い声が通路の奥から聞こえて来て、思わずハスに同情してしまうのだった。
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