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第九章 戦いの中で……
22話 思いがけぬ遭遇
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急いで首都に戻る為に走っているけど、ライさんを本当に一人にしてしまっていいのだろうか。
「……レース、今は余計な事を考えんな無事に首都に着く事だけを考えろ」
「分かってるけど、ライさんの事が心配で……」
「ライなら大丈夫なの、信じてなの」
「だけど……」
「だぁもうっ!うだうだとうるせぇなぁ!ライが問題無いと言ったらそれが正しいんだよ!ほらさっさと行くぞ!」
ライさんの事が気になって立ち止まってしまったぼくの腕をハスが掴んで走る。
その顔は必至で現状に余裕が無い事が分かるけど……
「……そんなに心配なら私が助けに行ってもいいけど、まずは首都に戻ってからなの」
「いや、おめぇが戻ったら誰が姫……副団長に報告すんだよ」
「それはハスがやればいいと思うの」
「……いや俺じゃダメだろ、説明しようにも感情的になって上手く伝わらないのが嫌でも予想できちまうからな」
「ぼくがカエデに話すとかはどうかな……そうすれば二人はライさんの所に行けるよね?」
幾ら空間魔術が使えるとはいえ、もしもの可能性がある。
ルードがアンデッド達の近くにいた場合、逃げる事が間に合わなくなってしまうかもしれない、他にはあの時戦った時のようにドラゴンや巨人をアンデッドにして使役していた場合もそうだ。
どっちにしろそうなってしまったら詰みに近いと思う……、ルード自身が何処まで強くなっているのか分からないけど、マンティコアの特性を最大限に生かしていたら一人ではどうする事も出来ないだろう。
「……それは無理だな、おめぇが一人になった瞬間に襲われたらどうすんだ」
「そうなの、もしレースに何かあったらカエデちゃんやダートが悲しむの……だからそに提案が最善だったとしても聞くことは出来ないの」
「……ならどうするの?」
「そんなんさっきから言ってんだろ、俺達はライの事を信じて先に戻ればいいそれ以外に出来る事はねぇんだよ、おめぇも最初は信用して逃げたんだろ?」
「そうだけど……」
確かにライさんに任せて逃げたけど、それとこれとは別な気がする。
心配な物は心配だし、出来れば無事に戻って来て欲しいと思って最善の行動を考えるのは当然だと思う。
でも……今出来る事はハスの言うように彼を信じて首都まで逃げるしかないのは確かだ。
こういう時自身の弱さに嫌気が差しそうになる……、ぼくが師匠であるアキラさんみたいに強かったらあの場に残れたのかもしれない。
「なら逃げるぞ……ってまじかよ」
「……気配が無かったの」
走るぼく達の目の前に見覚えのある緋色の髪を持った女性が現れる。
その顔は怒りに歪んでおり、これ以上彼女に近づくと危ないと本能が警報を鳴らして足が止まってしまう……。
「……アナイス・アナイアレイト」
「これはあなた達がやったの?」
「……何の事を言ってるのか分からないの」
「はい、かいいえで構わないわ……これはあなた達がやったの?」
「アンデット達の事なら俺達じゃねぇぞ?……死霊術を作って森をアンデットまみれにしたのはおめぇのとこのガキだろ?」
アナイス・アナイアレイト、Sランク冒険者【滅尽】焔の炎姫の背後に炎で出来た獣が姿を現われたかと思うと一振りの剣へと姿を変え彼女の手に収まる。
「……私は協力するとは言ったけど、この国を滅ぼせとは言っていないわ」
「つまりどういう事なの?」
「今回だけあなた達に協力してあげる、森の動物やモンスター達を生きたままアンデッドに変えて、国民を好き勝手に食べて殺す何て許せない……けどね?これが終わったら今度はあなた達の番よ」
「協力してくれるならこの先にいる人を助けて欲しいんだ」
「……それは、えぇそれが私の正義を遂行する為ならやるしかないわね、ただ悪いけど助かるかは分からないわよ?だってこの森は私の手によって滅び尽きるのだから!」
アナイスが持っている剣を横薙ぎにすると、剣先から炎が飛んで行き周囲に燃え移る。
そして……
「あなた達私の後ろから離れないように気を付けてね──【澌尽灰滅】」
周囲に燃え移った炎が一か所に集まったかと思うと……閃光が走り、視界が真っ白になり何も見えなくなる。
「目が痛いの……」
「ごめんなさい可愛い子猫ちゃん、でも直ぐに見えるようになるから大丈夫だからね?」
「……俺の炎よりもやべぇぞこいつは」
暫くして目が見えるようになってきたかと思うとそこにあった光景は、辺り一面が黒い灰に覆われていた。
それはまるで生物が生きる事すら許されない場所のようで、周囲には音すらも死んでしまったのか自分達の呼吸する音以外には何も聞こえない。
「ライさんは大丈夫なのかな……」
「わかんねぇ……」
「残念だけど、私の切り札は一瞬にして効果範囲を滅ぼしてしまうから……生きてないと思うわよ?」
「……正義を語っていたくせに、やる事に容赦がなさすぎるの」
「正義を通す為には圧倒的な力が必要なものよ?綺麗ごとでは守る事が出来ないの」
……確かに力が必要なのは分かるけど、たった一瞬にして周囲を死の大地に変えてしまうのは如何な物か、そう思っていると『じゃあ私はやるべきことをやったから帰らせて貰うわ……、精々私が首都を攻める日に死なないように気を付ける事ね』と言葉にして、歩き去って行くのだった。
「……レース、今は余計な事を考えんな無事に首都に着く事だけを考えろ」
「分かってるけど、ライさんの事が心配で……」
「ライなら大丈夫なの、信じてなの」
「だけど……」
「だぁもうっ!うだうだとうるせぇなぁ!ライが問題無いと言ったらそれが正しいんだよ!ほらさっさと行くぞ!」
ライさんの事が気になって立ち止まってしまったぼくの腕をハスが掴んで走る。
その顔は必至で現状に余裕が無い事が分かるけど……
「……そんなに心配なら私が助けに行ってもいいけど、まずは首都に戻ってからなの」
「いや、おめぇが戻ったら誰が姫……副団長に報告すんだよ」
「それはハスがやればいいと思うの」
「……いや俺じゃダメだろ、説明しようにも感情的になって上手く伝わらないのが嫌でも予想できちまうからな」
「ぼくがカエデに話すとかはどうかな……そうすれば二人はライさんの所に行けるよね?」
幾ら空間魔術が使えるとはいえ、もしもの可能性がある。
ルードがアンデッド達の近くにいた場合、逃げる事が間に合わなくなってしまうかもしれない、他にはあの時戦った時のようにドラゴンや巨人をアンデッドにして使役していた場合もそうだ。
どっちにしろそうなってしまったら詰みに近いと思う……、ルード自身が何処まで強くなっているのか分からないけど、マンティコアの特性を最大限に生かしていたら一人ではどうする事も出来ないだろう。
「……それは無理だな、おめぇが一人になった瞬間に襲われたらどうすんだ」
「そうなの、もしレースに何かあったらカエデちゃんやダートが悲しむの……だからそに提案が最善だったとしても聞くことは出来ないの」
「……ならどうするの?」
「そんなんさっきから言ってんだろ、俺達はライの事を信じて先に戻ればいいそれ以外に出来る事はねぇんだよ、おめぇも最初は信用して逃げたんだろ?」
「そうだけど……」
確かにライさんに任せて逃げたけど、それとこれとは別な気がする。
心配な物は心配だし、出来れば無事に戻って来て欲しいと思って最善の行動を考えるのは当然だと思う。
でも……今出来る事はハスの言うように彼を信じて首都まで逃げるしかないのは確かだ。
こういう時自身の弱さに嫌気が差しそうになる……、ぼくが師匠であるアキラさんみたいに強かったらあの場に残れたのかもしれない。
「なら逃げるぞ……ってまじかよ」
「……気配が無かったの」
走るぼく達の目の前に見覚えのある緋色の髪を持った女性が現れる。
その顔は怒りに歪んでおり、これ以上彼女に近づくと危ないと本能が警報を鳴らして足が止まってしまう……。
「……アナイス・アナイアレイト」
「これはあなた達がやったの?」
「……何の事を言ってるのか分からないの」
「はい、かいいえで構わないわ……これはあなた達がやったの?」
「アンデット達の事なら俺達じゃねぇぞ?……死霊術を作って森をアンデットまみれにしたのはおめぇのとこのガキだろ?」
アナイス・アナイアレイト、Sランク冒険者【滅尽】焔の炎姫の背後に炎で出来た獣が姿を現われたかと思うと一振りの剣へと姿を変え彼女の手に収まる。
「……私は協力するとは言ったけど、この国を滅ぼせとは言っていないわ」
「つまりどういう事なの?」
「今回だけあなた達に協力してあげる、森の動物やモンスター達を生きたままアンデッドに変えて、国民を好き勝手に食べて殺す何て許せない……けどね?これが終わったら今度はあなた達の番よ」
「協力してくれるならこの先にいる人を助けて欲しいんだ」
「……それは、えぇそれが私の正義を遂行する為ならやるしかないわね、ただ悪いけど助かるかは分からないわよ?だってこの森は私の手によって滅び尽きるのだから!」
アナイスが持っている剣を横薙ぎにすると、剣先から炎が飛んで行き周囲に燃え移る。
そして……
「あなた達私の後ろから離れないように気を付けてね──【澌尽灰滅】」
周囲に燃え移った炎が一か所に集まったかと思うと……閃光が走り、視界が真っ白になり何も見えなくなる。
「目が痛いの……」
「ごめんなさい可愛い子猫ちゃん、でも直ぐに見えるようになるから大丈夫だからね?」
「……俺の炎よりもやべぇぞこいつは」
暫くして目が見えるようになってきたかと思うとそこにあった光景は、辺り一面が黒い灰に覆われていた。
それはまるで生物が生きる事すら許されない場所のようで、周囲には音すらも死んでしまったのか自分達の呼吸する音以外には何も聞こえない。
「ライさんは大丈夫なのかな……」
「わかんねぇ……」
「残念だけど、私の切り札は一瞬にして効果範囲を滅ぼしてしまうから……生きてないと思うわよ?」
「……正義を語っていたくせに、やる事に容赦がなさすぎるの」
「正義を通す為には圧倒的な力が必要なものよ?綺麗ごとでは守る事が出来ないの」
……確かに力が必要なのは分かるけど、たった一瞬にして周囲を死の大地に変えてしまうのは如何な物か、そう思っていると『じゃあ私はやるべきことをやったから帰らせて貰うわ……、精々私が首都を攻める日に死なないように気を付ける事ね』と言葉にして、歩き去って行くのだった。
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