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第八章 戦いの先にある未来

65話 実力の確認とやり過ぎたぼく

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 【自動迎撃】が発動する度に、雪の壁から鋭い刺が飛び出し相手の頭に向かって飛んで行くようになっているけど……、途中で蒸発して消えてしまう。
ライさんがハスとは相性が悪いとは言っていたけど、まさか彼とも良くないとは思わなかった。

「予想以上に防御が硬い……、それに殴ったら飛んでくる魔術が邪魔だね」

 そう言いながらも余裕そうに攻撃をしてくるから、本当に邪魔だと思っているのか分からない。
でもここからどうやって反撃すればいいのか……、薬の効果はもう切れてるから【怪力】を使う事は出来ないし、本来のぼくの実力を知りたいという意味なら【氷雪狼】を使う事も出来ないだろう。

「出来るなら反撃してくれていいんだよ?俺は攻撃を躱すのは得意だから大丈夫だよ」

 そういうけど今ぼくに出来る事と言えば、大剣の能力で大量の雪を作り出す位だろうけど……、纏っている電流が発する熱で解かされてしまう気がする。
ならどうすればいいのか……、んー一応雪の魔術以外に出来る事と言ったらダリアがまだ心器の中にいる時に使えるようになった空間魔術位だけど、あれはどちらかと言うか治癒術と併用して使う事ばかり考えてたから実戦では、いや?でも思い付きで戦った方が強くなれるって言われたし試してみようか……。

「なら反撃するけど、怪我したらごめんね?」
「構わないよ、実力を測る以上は怪我をする可能性があるのは承知済みだからね」

 言質が取れたから意識を集中して空間魔術を発動する。
場所はライさんの足元、使う魔術は自動迎撃で発動しているのと同じ【スノースパイク】だけど、先端を尖らせていると殺傷力が高すぎるから平たくして勢いよく下から突き上げるように打ち出すと……

「……っ!?これはっ!」

 ライさんが離れたのか攻撃が止み、周囲に張り巡らされていた雪の壁が消え周囲が見えるようになる。

「あ……、空間魔術の座標指定間違えたかも」
「間違えたよりも範囲が広すぎだね、避けられなかったら危なかったよ」

 床が下から突き上げられて大きな穴が開き酷いことになっている。
それに先端を平たくしたおかげで思った以上に範囲が広くなったみたいで、せり上がった雪の魔術が天井に届き砕けてしまっていた。

「ライ、今のどう思うよ?こいつの思い付きの行動すげぇだろ?」
「……凄いっていうよりも、躱す事が出来なかったら間違いなく即死だったよ」
「だよなぁ、さすがにあの質量を溶かすのは俺でも時間がかかるし、挟まれたら死ぬ自信があるわ……、ダリアの父ちゃんすげぇな!」
「やめろ!笑顔で俺の頭を撫でんじゃねぇ!」
「ちょうど良い場所にダリアの頭があんだからしょうがねぇだろ?」

 何か話してるみたいだけど次はどうすればいいだろうか。
今の攻撃が躱されたという事はもっと範囲を広くする必要がある?、いやそれだとまた避けられるだけだし……、んーこういう時アキラさんならどうする?あの人が良くやる戦い方を考えてみるけど……

「……バックドラフトが使えそう」
「レースくん、今なん──」

 【スノーウォール】を使いライさんの周囲を雪の壁で覆うと、空間魔術を使って中に先端を平たくした【スノースパイク】を無数に発動する。
中で壁と魔術が激しくぶつかっているのか鈍い音と同時に、ズシンと言う下から突き上げて来るような衝撃が体に響く。

「レース、あんたライを殺す気か!?」
「……え?、ライさん躱すのが得意って言ってたから大丈夫でしょ?」
「こんな殺意の塊に閉じ込めたら躱すも何もないだろ!、待ってろライ!今助けに行く!」

 ハスが心器の銃を顕現させると壁に向かって炎の塊を撃ち出す。
けど、簡単に溶かせないようで……

「壁が厚すぎて溶けねぇ!、レースこの魔術を解け!これやばいって!」
「……確かに危なかったな、空間魔術を使って外に出なければ死んでいた」
「だろ?ライもそう思うだろ!?、レース早く出してやってくれよ!あいつは俺の幼馴染でこんな乱暴者で戦いしか脳がない俺を、理解して側にいてくれる大事な親友なんだ!」
「……恥ずかしい事を言う前に落ち着け」
「落ち着けっておま……ってあれ?ライがどうして外にいんだ?」

 ぼくもいつ外に出たのか見えなかった。
とはいえ両手に黒い刀身を持つナイフを持っているし、空間魔術を使ったって言ってたから……、もしかしてだけどその短剣を使って空間を跳躍して移動したのかもしれない。
そう思っていると真剣な顔をしたライさんがぼくへと近づいて来て……

「……レース君、君の実力は良く分かったからこれで終わりにしよう」
「え?でも……」
「君が思いついた事を試したいのは分かるが、これ以上はさすがに訓練場が持たないからね、試しに雪をハスに溶かして貰うから中が見てみたら良い」
「溶かして見なくてもやばいと思うけどな……」

……ハスが炎の玉を飛ばしながら雪を解かして行き、中がどうなっているのか分かるようになった。
そこには天井と床に複数の穴が開いていて酷い事になっている惨状が広がっていて、騎士の人達が戻って来たらどんな反応をするだろうかと頭を悩ませるのだった。
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