上 下
369 / 535
第八章 戦いの先にある未来

63話 新しい武器の素材

しおりを挟む
 武器の事を考えてなかった。
さすがに素手で戦う訳にはいかないし、となるとコルクからも貰った短剣か治癒術師が持つ長杖位しか持っている物がない。
右手は長杖でもいいかもしれないけど【怪力】を使ったら壊れてしまうだろうし、短剣も同じだと思う。
じゃあどうすればいいのかと悩んでいると……

「なぁ俺思うんだけどさ、父さんの義肢に作った素材って栄花騎士団に残ってねぇのか?」
「義肢?あぁ、トキの姉御が作った奴だよな……多分だけどあんじゃね?ちょっと通信してみるわ」

 ハスが通信用の端末を取り出すとボタンを押す。
そして暫くすると端末から金属を叩くような音がしたかと思うと……

『ハスっ!あたいは暫く忙しいから通信してくんなって言っただろっ!』
「……ごめんって!でもレースの事で大事な話があんだよ!」
『あぁ!?レースだぁ?……ったく、いったいあたいに何を聞きたいんだい?』
「ほら、義肢を作った時に使った素材があんだろ?もしそれが残ってたらあいつの為に武器を作ってやってくれねぇか?」
『……はぁ?ちょっと話の流れが見えないから一から説明しな!』

 ……なんか凄い怒ってる。
通話しながらも規則的に金属同士を叩きつけたり、何かを切るような音がしてなんだか本当に忙しそうだ。

「わぁったよ、とりあえず説明するわ……、とりあえずさっきあった事なんだけど──」

 ハスが喧嘩の事からその後に行った反省会、そして狼を使った時に無防備になってしまう事について説明すると作業をする手が止まったのか、静かになったと思うと……通信端末越しに重い扉が開くような音がして、暫くしたら重い金属を引きずる嫌な音がする。

『……あぁ、あるにはあんだけどさ、【不壊】を付与する素材は貴重だからあんま使いたくないと言いたかったんだけどね』
「あ?なんだよもったいぶった言い方しやがって」
『実はケイから、レースと姫ちゃんの結婚祝いに同じ素材で大剣を作ってくれって頼まれてね、物が無いから無理だっつったのによぉ』
「あぁ……前置きはいいからあるのかないのかだけ教えてくれねぇか?」
『いや、いいから黙って聞けって、大事な友人と姫ちゃんの為なら取ってくるって言って態々素材になる、高ランク冒険者でも苦戦するモンスターを大量に狩って来て余るくらいあんだよ、……んでさ、試しに複数の素材を掛け合わせて作ったんだけど【不壊】以外にもう一つ余計な能力がついちまって困った事になってんだわ』

 ケイがそんな事をしてくれていたことに驚いたけど、それよりも困った事って何だろう。
大剣なのに軽くて使いづらいとか?もしそうだったら困ってしまうけど、違うなら気にする程ではないと気がする。

「困った事だぁ?」
『本来なら一つだけしか付与出来ない筈なのに【重量化】という能力が何故かついちまって……、やばいくらいに重いんだよね、あたいでも引きずるのがやっとなほどさ、まぁ変わりに一撃の威力は凄い事になってるかな』
「おぉ、すげぇじゃねぇかっ!すぐに送ってくれよ!」
『ハスっ!あんた人の話聞いてんのかい!?、あたいでも引きずるのがやっとなものをどうやって運べっていうんだい!』

 トキ程の人物が引きずる事しかできない物をぼくが扱えるだろうか。
怪力を使っても持てなかったらただの重い金属の塊にしかならない。

「姉御こそ何言ってんだよ……、空間収納が付与された入れ物でも作って中に入れればいいじゃねぇか」
『あ?そんなのできるわけ……いや出来るわ、鞘を作ってそこに空間収納の魔術を付与出来る技師に頼めばいけるかも、まさかあんたから助言を受ける事になるとわね』
「確かに俺は戦う事しか頭にないバカだけど、バカなりに考えてんだぞ?ってことで大剣の件はこれでいいだろ?、まだ素材が余ってんなら長杖も作ってもらえねぇか?、ほら治癒術師が使ってるあれだよ」
『ん?あぁ、それなら大剣の鞘と一緒に今から作るからそうだね、三日位したら届けられるように徹夜して仕上げる事にするわ、あたいも二人の結婚祝いに何か渡してあげたいしね……、んじゃ今から集中するから通信を切るよっ!完成したら近くの冒険者ギルドに届けるからあんた名義で受け取りなっ!じゃあね!戦馬鹿!』

 そう言って一方的に通信が切られた後、なぜかぼくに向かって親指を上げて誇らしげな笑みを作る。
確かに大剣と長杖があれば今まで通りには戦えると思うけど、本当にそこまで色々ともらってしまっていいのだろうか。

「よし、とりあえずこれで話はついたからなっ!後はライが来るのを待つだけだ」
「良かったな父さん、これでもっと強くなれるかもしれないぜ?」
「うん……、でもここまで色んな物をもらっていいのかなって心配になるよ」
「あぁ?気にすんなって、姉御が俺名義で受け取れって事は使った素材とかの代金を俺に請求するって意味だけどさ、俺からもカエデ姫の件でお祝いしたいからな、どーんと胸を張って受け取ってくれよ」

……そう言われたら断るわけにもいかない気がする。
そんな事を思いながら、どうやってお礼を言うべきか悩んでいると『……待つだけも何も、あそこまで大きな声で話していたら訓練場の外まで丸聞こえだぞ?』と言いながらライが訓練場へと入って来るのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...