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第八章 戦いの先にある未来

63話 新しい武器の素材

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 武器の事を考えてなかった。
さすがに素手で戦う訳にはいかないし、となるとコルクからも貰った短剣か治癒術師が持つ長杖位しか持っている物がない。
右手は長杖でもいいかもしれないけど【怪力】を使ったら壊れてしまうだろうし、短剣も同じだと思う。
じゃあどうすればいいのかと悩んでいると……

「なぁ俺思うんだけどさ、父さんの義肢に作った素材って栄花騎士団に残ってねぇのか?」
「義肢?あぁ、トキの姉御が作った奴だよな……多分だけどあんじゃね?ちょっと通信してみるわ」

 ハスが通信用の端末を取り出すとボタンを押す。
そして暫くすると端末から金属を叩くような音がしたかと思うと……

『ハスっ!あたいは暫く忙しいから通信してくんなって言っただろっ!』
「……ごめんって!でもレースの事で大事な話があんだよ!」
『あぁ!?レースだぁ?……ったく、いったいあたいに何を聞きたいんだい?』
「ほら、義肢を作った時に使った素材があんだろ?もしそれが残ってたらあいつの為に武器を作ってやってくれねぇか?」
『……はぁ?ちょっと話の流れが見えないから一から説明しな!』

 ……なんか凄い怒ってる。
通話しながらも規則的に金属同士を叩きつけたり、何かを切るような音がしてなんだか本当に忙しそうだ。

「わぁったよ、とりあえず説明するわ……、とりあえずさっきあった事なんだけど──」

 ハスが喧嘩の事からその後に行った反省会、そして狼を使った時に無防備になってしまう事について説明すると作業をする手が止まったのか、静かになったと思うと……通信端末越しに重い扉が開くような音がして、暫くしたら重い金属を引きずる嫌な音がする。

『……あぁ、あるにはあんだけどさ、【不壊】を付与する素材は貴重だからあんま使いたくないと言いたかったんだけどね』
「あ?なんだよもったいぶった言い方しやがって」
『実はケイから、レースと姫ちゃんの結婚祝いに同じ素材で大剣を作ってくれって頼まれてね、物が無いから無理だっつったのによぉ』
「あぁ……前置きはいいからあるのかないのかだけ教えてくれねぇか?」
『いや、いいから黙って聞けって、大事な友人と姫ちゃんの為なら取ってくるって言って態々素材になる、高ランク冒険者でも苦戦するモンスターを大量に狩って来て余るくらいあんだよ、……んでさ、試しに複数の素材を掛け合わせて作ったんだけど【不壊】以外にもう一つ余計な能力がついちまって困った事になってんだわ』

 ケイがそんな事をしてくれていたことに驚いたけど、それよりも困った事って何だろう。
大剣なのに軽くて使いづらいとか?もしそうだったら困ってしまうけど、違うなら気にする程ではないと気がする。

「困った事だぁ?」
『本来なら一つだけしか付与出来ない筈なのに【重量化】という能力が何故かついちまって……、やばいくらいに重いんだよね、あたいでも引きずるのがやっとなほどさ、まぁ変わりに一撃の威力は凄い事になってるかな』
「おぉ、すげぇじゃねぇかっ!すぐに送ってくれよ!」
『ハスっ!あんた人の話聞いてんのかい!?、あたいでも引きずるのがやっとなものをどうやって運べっていうんだい!』

 トキ程の人物が引きずる事しかできない物をぼくが扱えるだろうか。
怪力を使っても持てなかったらただの重い金属の塊にしかならない。

「姉御こそ何言ってんだよ……、空間収納が付与された入れ物でも作って中に入れればいいじゃねぇか」
『あ?そんなのできるわけ……いや出来るわ、鞘を作ってそこに空間収納の魔術を付与出来る技師に頼めばいけるかも、まさかあんたから助言を受ける事になるとわね』
「確かに俺は戦う事しか頭にないバカだけど、バカなりに考えてんだぞ?ってことで大剣の件はこれでいいだろ?、まだ素材が余ってんなら長杖も作ってもらえねぇか?、ほら治癒術師が使ってるあれだよ」
『ん?あぁ、それなら大剣の鞘と一緒に今から作るからそうだね、三日位したら届けられるように徹夜して仕上げる事にするわ、あたいも二人の結婚祝いに何か渡してあげたいしね……、んじゃ今から集中するから通信を切るよっ!完成したら近くの冒険者ギルドに届けるからあんた名義で受け取りなっ!じゃあね!戦馬鹿!』

 そう言って一方的に通信が切られた後、なぜかぼくに向かって親指を上げて誇らしげな笑みを作る。
確かに大剣と長杖があれば今まで通りには戦えると思うけど、本当にそこまで色々ともらってしまっていいのだろうか。

「よし、とりあえずこれで話はついたからなっ!後はライが来るのを待つだけだ」
「良かったな父さん、これでもっと強くなれるかもしれないぜ?」
「うん……、でもここまで色んな物をもらっていいのかなって心配になるよ」
「あぁ?気にすんなって、姉御が俺名義で受け取れって事は使った素材とかの代金を俺に請求するって意味だけどさ、俺からもカエデ姫の件でお祝いしたいからな、どーんと胸を張って受け取ってくれよ」

……そう言われたら断るわけにもいかない気がする。
そんな事を思いながら、どうやってお礼を言うべきか悩んでいると『……待つだけも何も、あそこまで大きな声で話していたら訓練場の外まで丸聞こえだぞ?』と言いながらライが訓練場へと入って来るのだった。
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