353 / 540
第八章 戦いの先にある未来
48話 思い付きの術と切り札
しおりを挟む
全力で叩きつけた大剣が二人の間に現れた氷の柱にあたり粉々に砕けたかと思うと、瞬時に再生ぼくの周囲を覆う。
そして逃げ場が無くなった所を氷の刀が壁事串刺しにしようと貫く。
避けれそうにないから武器で受けようとしたら、狼が何を考えたのかぼくに体当たりをして突き飛ばす。
いきなりの事に受け身も取れずに氷と雪に覆われた床に倒れ込むと長杖を使って急いで起き上がり、何が起きたのか確認する……、そして目の前に見えた光景は
「……狼のおかげで命拾いしたな、今の一撃で終わるものかと思っていたのだが」
「っ!」
「何を驚いた顔をしている?まさか本当に命を奪いに来るとは思ってなかったのか?」
そんな訳はないけど、今の一瞬で分かってしまった事がある。
今のぼくの実力では間違いなくアキラに勝てない、何時魔術を使ったのか分からない程の速さで発動した氷の魔術からのカウンター、そしてそこからの必殺の一撃。
今のは狼が守ってくれたから生きていられたけど、次同じ状況になったらどうしようもないだろう。
ならどうすればいいのか……
「まさかとは思うが、今の一撃で実力差が分かったから勝てない、私を納得させられないというのでは無いだろうな?」
「……そんな事は無いよ、ただどうやって今の反撃に対応すればいいのか考えているだけかな」
「考えている?格上との実戦でか?……愚か者め、実戦では悩み迷いを抱いた者ほど早く死ぬ、そもそも考える余裕や読み合いとはお互いに実力が近いからこそ発生する者だ、自分よりも強い相手に立ち止まって考える時間が生まれるという事は、そいつが貴様の事を格下だと思って油断しているか、そもそも遊ばれている時位だ」
「……じゃあアキラさんは?」
「試練を与える以上、時間を与える余裕位はある……、まぁ格下だと思われていると思え」
そんな事を言われても今のぼくに出来る事は会話をしながら自分に有利な状況を作って行く事だけ、……こうしている間に使えるようになった大剣の能力、【大雪原】を使って氷に覆われた床を一面雪で覆いつくしたはいいけど、ここで今出来る事はケイとの修業のお陰で使えるようになった武術か、それとも【自動迎撃】を使ったカウンターか……。
これがいいのか、それともあれだとうかと考えるけど、アキラさんの言うように格上との戦闘中にこんなに考える時間なんて相手は与えてくれないだろう。
現にトレーディアスでゴスペルに襲われた時は一瞬で意識を失ってしまったし、グロウフェレスと戦った時は相手がぼくの事を格下だと思っていたからこそ、あの不意打ちが効いた。
では……格上相手に勝利を収める事が出来た時はどんな時だっただろうか、クラウズ王の時は確か新術の雪のゴーレムを使って勝ったけど……ん?思い付き?、心器を核にしたゴーレム、大剣の能力【氷雪狼】で召喚される狼に心器を埋め込んだら?……試してみてもいいかもしれない。
「ほう、何か考え付いたようだな?、だがそれまでの思考時間が長過ぎる次からは止まって考えずに戦いながら冷静に状況を見ながら考えろ、それが出来て初めて一流だ」
「……はい」
「とりあえず話はここまでだ、ここからは確実に殺しに行くぞ」
アキラさんが刀を床に突き刺すと――
【我は終焉にて種の管理を任されし、天の神より作られた六の翼の五】
以前ジラルド達とアキラさんが戦って時に唱えていた詠唱は、前半が聞き取れないほどに声が小さかったけど今はしっかりと聞こえ、ぼくを覆うように氷の結晶を象った魔法陣が現れると青白い輝きを放ちながら周囲の気温を恐ろしい速度で下げていく。
その光景に身体が恐怖で凍えてしまいそうなり、本能的な恐怖に足がすくみそうになるけど、気力を振り絞り、雪の長杖に魔力の糸を括り付けて床に突き立てると……
【死よりも静謐な氷の安息の元に……】
周囲の雪が集まって行き、心器を取り込んだ一匹の巨大な狼が生まれ、雪で出来た身体の周囲を氷が徐々に覆い先端が鋭く尖った氷が鎧のようになると遠吠えをしながら、一瞬でぼくの前に現れたかと思うと前脚を使って器用にぼくの背中へと投げて乗せてくれる。
……思い付きでやりはしたけど、もしかして今の移動は長杖の能力【空間移動】に似ているのを見る限り、取り込んだ事で使える力が増えたのかもしれない。
と言う事はもしかしてと思い、心の中で【魔力暴走】を使うように指示して見ると、その場で姿勢を低くして口を大きく開き、周囲の雪を吸い込みながら恐ろしい速度で魔力の光が集まり雪の結晶が作られて行く。
【再び目覚めの時が訪れるまで眠れ、アイスレクイエム】
……それに合わせるかのように詠唱を終えて術名を唱えると、魔法陣から氷の棘が無数に飛び出して立体的な氷の結晶を作り上げていく。
以前見た物とは違い、ぼくを閉じ込めるようにして成長して行く術に対して、このまま何も出来ずにいると確実に死ぬ事になると頭の中で警報が鳴る。
その瞬間何も考えられなくなり、感情に任せて背から飛び降りると同時に狼の口から吐き出された巨大な雪の結晶の形をした魔力の塊の後ろに続いてアキラさんへと向かい走るのだった。
そして逃げ場が無くなった所を氷の刀が壁事串刺しにしようと貫く。
避けれそうにないから武器で受けようとしたら、狼が何を考えたのかぼくに体当たりをして突き飛ばす。
いきなりの事に受け身も取れずに氷と雪に覆われた床に倒れ込むと長杖を使って急いで起き上がり、何が起きたのか確認する……、そして目の前に見えた光景は
「……狼のおかげで命拾いしたな、今の一撃で終わるものかと思っていたのだが」
「っ!」
「何を驚いた顔をしている?まさか本当に命を奪いに来るとは思ってなかったのか?」
そんな訳はないけど、今の一瞬で分かってしまった事がある。
今のぼくの実力では間違いなくアキラに勝てない、何時魔術を使ったのか分からない程の速さで発動した氷の魔術からのカウンター、そしてそこからの必殺の一撃。
今のは狼が守ってくれたから生きていられたけど、次同じ状況になったらどうしようもないだろう。
ならどうすればいいのか……
「まさかとは思うが、今の一撃で実力差が分かったから勝てない、私を納得させられないというのでは無いだろうな?」
「……そんな事は無いよ、ただどうやって今の反撃に対応すればいいのか考えているだけかな」
「考えている?格上との実戦でか?……愚か者め、実戦では悩み迷いを抱いた者ほど早く死ぬ、そもそも考える余裕や読み合いとはお互いに実力が近いからこそ発生する者だ、自分よりも強い相手に立ち止まって考える時間が生まれるという事は、そいつが貴様の事を格下だと思って油断しているか、そもそも遊ばれている時位だ」
「……じゃあアキラさんは?」
「試練を与える以上、時間を与える余裕位はある……、まぁ格下だと思われていると思え」
そんな事を言われても今のぼくに出来る事は会話をしながら自分に有利な状況を作って行く事だけ、……こうしている間に使えるようになった大剣の能力、【大雪原】を使って氷に覆われた床を一面雪で覆いつくしたはいいけど、ここで今出来る事はケイとの修業のお陰で使えるようになった武術か、それとも【自動迎撃】を使ったカウンターか……。
これがいいのか、それともあれだとうかと考えるけど、アキラさんの言うように格上との戦闘中にこんなに考える時間なんて相手は与えてくれないだろう。
現にトレーディアスでゴスペルに襲われた時は一瞬で意識を失ってしまったし、グロウフェレスと戦った時は相手がぼくの事を格下だと思っていたからこそ、あの不意打ちが効いた。
では……格上相手に勝利を収める事が出来た時はどんな時だっただろうか、クラウズ王の時は確か新術の雪のゴーレムを使って勝ったけど……ん?思い付き?、心器を核にしたゴーレム、大剣の能力【氷雪狼】で召喚される狼に心器を埋め込んだら?……試してみてもいいかもしれない。
「ほう、何か考え付いたようだな?、だがそれまでの思考時間が長過ぎる次からは止まって考えずに戦いながら冷静に状況を見ながら考えろ、それが出来て初めて一流だ」
「……はい」
「とりあえず話はここまでだ、ここからは確実に殺しに行くぞ」
アキラさんが刀を床に突き刺すと――
【我は終焉にて種の管理を任されし、天の神より作られた六の翼の五】
以前ジラルド達とアキラさんが戦って時に唱えていた詠唱は、前半が聞き取れないほどに声が小さかったけど今はしっかりと聞こえ、ぼくを覆うように氷の結晶を象った魔法陣が現れると青白い輝きを放ちながら周囲の気温を恐ろしい速度で下げていく。
その光景に身体が恐怖で凍えてしまいそうなり、本能的な恐怖に足がすくみそうになるけど、気力を振り絞り、雪の長杖に魔力の糸を括り付けて床に突き立てると……
【死よりも静謐な氷の安息の元に……】
周囲の雪が集まって行き、心器を取り込んだ一匹の巨大な狼が生まれ、雪で出来た身体の周囲を氷が徐々に覆い先端が鋭く尖った氷が鎧のようになると遠吠えをしながら、一瞬でぼくの前に現れたかと思うと前脚を使って器用にぼくの背中へと投げて乗せてくれる。
……思い付きでやりはしたけど、もしかして今の移動は長杖の能力【空間移動】に似ているのを見る限り、取り込んだ事で使える力が増えたのかもしれない。
と言う事はもしかしてと思い、心の中で【魔力暴走】を使うように指示して見ると、その場で姿勢を低くして口を大きく開き、周囲の雪を吸い込みながら恐ろしい速度で魔力の光が集まり雪の結晶が作られて行く。
【再び目覚めの時が訪れるまで眠れ、アイスレクイエム】
……それに合わせるかのように詠唱を終えて術名を唱えると、魔法陣から氷の棘が無数に飛び出して立体的な氷の結晶を作り上げていく。
以前見た物とは違い、ぼくを閉じ込めるようにして成長して行く術に対して、このまま何も出来ずにいると確実に死ぬ事になると頭の中で警報が鳴る。
その瞬間何も考えられなくなり、感情に任せて背から飛び降りると同時に狼の口から吐き出された巨大な雪の結晶の形をした魔力の塊の後ろに続いてアキラさんへと向かい走るのだった。
1
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる