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第八章 戦いの先にある未来
46話 条件と責任
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あれが【薬王】ショウソク・メイディ、いったい何時から話を聞いていたのか。
最初からか、それとも……無いとは思うけど、ぼく達が首都に来てからずっとだろうか。
思わず身構えてしまうけど、周囲の誰も武器を構えて無いのを見てとりあえず冷静になる様に努力をする。
「……誰だったか、そこの俺の妻が着ていた服に袖を通している」
「ダートです、メイメイちゃんに使うように言われて着させて貰っています」
「そうか、娘が決めたのならそれでいい、俺の全ては娘の為にあるのだからな」
そう言えば普段と服装が違うなと思っていたけ、ど似合っていたから気にしてなかった。
まぁ、今はそんな事よりも目の前にいる人物の事が重要だけど、あのやり取りを見る限りもしかしてダートとショウソクは遭遇した事があるのかもしれない。
「なるほど、その様子だと俺の事を誰にも言っていないようだな」
「……そんな声に出して言わなくても、首都と同化しているあなたは知ってるんでしょ?」
「それはそうだ、だが直接本人の口から聞くのは大事な事だ、もしかしたら眼や手のシグナルで、又は筆談でやり取りしている可能性があるからな」
そう言いながら部屋の扉を開けると、何故か外に出るように促して一人で出て行ってしまう。
意図は読めないし、ダートが何を言っていないのか分からないけどとりあえず着いて行った方が良い気がする。
取り合えず急いで彼を追って隣に並ぶと……
「……娘の部屋であれこれ大事な話をしたくないからな、ところでお前は誰だ?見た所左腕が作り物のようだが、不快だな……まるでこの世界その物を騙そうとするような術を感じる」
「多分だけど、マスカレイドの作った偽装の魔術が付与された魔導具に入っていた回路が入っているからかな……」
「あの愚か者の作った道具か、お前と愚か者の関係は何だ?」
「……育ての親のようなものかな」
「と言う事はお前が【叡智】と【黎明】の拾われ子で、ヴォルフガングの息子か……、で?お前の名前はなんだ?」
どうしてそんなに名前を聞くのだろうか。
他の皆が追い付いて来た後も、何度も名前を聞かれるからめんどくさくなって応えると
「そうか……、興味は無いが忘れるまでは覚えといてやろう」
と答えると通路の突き当りにある扉を開いて順番に中へと入って行く。
するとそこには、謁見の間とも言えるような広い部屋で奥に豪華な椅子があるだけで、他には調度品も何も無く殺風景だ。
「……ショウソク、私達をここまで連れて来て何のつもりだ?」
「お前は確か……あぁ、応えないで良い、覚える気が無いからな、それよりも話を聞いて思ったが……栄花騎士団としては今すぐそこのヴォルフガングの息子を捕らえるべきではないのか?、事情はともかくこの世界の禁忌を犯したのだから、立場的にはこの場で首を刎ねる必要があるだろう、お前らがやらないのなら今ここで俺がやってもいいのだが?」
「……ショウソク様、これに関しては私の責任の元不問としようと思います」
「納得出来かねるな、この世界において中立を貫き続けた国の組織が一人の人間に対して寛容が過ぎると思うのだが、そうだな……条件を達成したらというのはどうだ?」
「条件……ですか?」
いったいどんな条件を出すつもりだろうか。
内容次第では無理だけど確かにショウソクの言う通り、ぼくがしてしまったのはこの世界において禁忌と言われてもしょうがないものだけど……
「結果はどうであれ……あぁ、ヴォルフガングの息子の行動の結果被害者が増えなかった事、そして本人が意図してやった事では無かったという事実を踏まえ、紅獅子の相手をしてもらう、その結果討伐に成功したら不問にするという事に同意してやろう」
「そんな、そんな危険な事っ!レースさんにやらせるわけには……」
「それなら副団長であるお前が手伝ってやればいいだろう……、一人で危険なら複数人でやればいい、違うか?」
「えっと……」
「残念だがここは俺の国で、俺が法律だ……、とは言えこの国がどうなろうとどうでもいいが、俺には娘を守り育てるという義務がある、その為には国を守らなければいけないからな、それに戦うというのなら必要最低限の支援位ならしてやろう」
そう言うと椅子に座って足組んだショウソクがぼくの方を睨みつけてくるけど、正直それで不問になるならありだと思うし……、やってしまった事に関して自分で責任を取るのは当然の事だと思う。
「……それでいいよ、一人でも頑張るから大丈夫」
「レース、それなら私も行くよ?」
「気持ちは嬉しいけど……、ダートはほら今は大事な時期だから出来れば安全な所にいて欲しい、だから悪いんだけど後方にいて貰っていいかな」
「そんな事言われても着いて行くよ?だって、レースの隣にいたいもの、カエデちゃんはどうするの?」
「わ、私もお二人と一緒に居たいです……、いえ、居させてください、足手まといには絶対なりませんから」
……そう言う二人の眼には強い意志と覚悟があって、これに関してそれでも一人でやるとは言い辛い。
ただ一人で戦うよりも一緒に来てくれる人がいるのは嬉しいし頼りになるから安心出来る、そう思っているとショウソクが立ち上がり『決まったようだな……、【滅尽】焔の炎姫は俺が足止めしておいてやる、お前等は攻めて来るまでの間に必要な準備を整えておけ』と言葉にすると、少しずつ姿が薄くなって行きぼく達の前から消えてしまうのだった。
最初からか、それとも……無いとは思うけど、ぼく達が首都に来てからずっとだろうか。
思わず身構えてしまうけど、周囲の誰も武器を構えて無いのを見てとりあえず冷静になる様に努力をする。
「……誰だったか、そこの俺の妻が着ていた服に袖を通している」
「ダートです、メイメイちゃんに使うように言われて着させて貰っています」
「そうか、娘が決めたのならそれでいい、俺の全ては娘の為にあるのだからな」
そう言えば普段と服装が違うなと思っていたけ、ど似合っていたから気にしてなかった。
まぁ、今はそんな事よりも目の前にいる人物の事が重要だけど、あのやり取りを見る限りもしかしてダートとショウソクは遭遇した事があるのかもしれない。
「なるほど、その様子だと俺の事を誰にも言っていないようだな」
「……そんな声に出して言わなくても、首都と同化しているあなたは知ってるんでしょ?」
「それはそうだ、だが直接本人の口から聞くのは大事な事だ、もしかしたら眼や手のシグナルで、又は筆談でやり取りしている可能性があるからな」
そう言いながら部屋の扉を開けると、何故か外に出るように促して一人で出て行ってしまう。
意図は読めないし、ダートが何を言っていないのか分からないけどとりあえず着いて行った方が良い気がする。
取り合えず急いで彼を追って隣に並ぶと……
「……娘の部屋であれこれ大事な話をしたくないからな、ところでお前は誰だ?見た所左腕が作り物のようだが、不快だな……まるでこの世界その物を騙そうとするような術を感じる」
「多分だけど、マスカレイドの作った偽装の魔術が付与された魔導具に入っていた回路が入っているからかな……」
「あの愚か者の作った道具か、お前と愚か者の関係は何だ?」
「……育ての親のようなものかな」
「と言う事はお前が【叡智】と【黎明】の拾われ子で、ヴォルフガングの息子か……、で?お前の名前はなんだ?」
どうしてそんなに名前を聞くのだろうか。
他の皆が追い付いて来た後も、何度も名前を聞かれるからめんどくさくなって応えると
「そうか……、興味は無いが忘れるまでは覚えといてやろう」
と答えると通路の突き当りにある扉を開いて順番に中へと入って行く。
するとそこには、謁見の間とも言えるような広い部屋で奥に豪華な椅子があるだけで、他には調度品も何も無く殺風景だ。
「……ショウソク、私達をここまで連れて来て何のつもりだ?」
「お前は確か……あぁ、応えないで良い、覚える気が無いからな、それよりも話を聞いて思ったが……栄花騎士団としては今すぐそこのヴォルフガングの息子を捕らえるべきではないのか?、事情はともかくこの世界の禁忌を犯したのだから、立場的にはこの場で首を刎ねる必要があるだろう、お前らがやらないのなら今ここで俺がやってもいいのだが?」
「……ショウソク様、これに関しては私の責任の元不問としようと思います」
「納得出来かねるな、この世界において中立を貫き続けた国の組織が一人の人間に対して寛容が過ぎると思うのだが、そうだな……条件を達成したらというのはどうだ?」
「条件……ですか?」
いったいどんな条件を出すつもりだろうか。
内容次第では無理だけど確かにショウソクの言う通り、ぼくがしてしまったのはこの世界において禁忌と言われてもしょうがないものだけど……
「結果はどうであれ……あぁ、ヴォルフガングの息子の行動の結果被害者が増えなかった事、そして本人が意図してやった事では無かったという事実を踏まえ、紅獅子の相手をしてもらう、その結果討伐に成功したら不問にするという事に同意してやろう」
「そんな、そんな危険な事っ!レースさんにやらせるわけには……」
「それなら副団長であるお前が手伝ってやればいいだろう……、一人で危険なら複数人でやればいい、違うか?」
「えっと……」
「残念だがここは俺の国で、俺が法律だ……、とは言えこの国がどうなろうとどうでもいいが、俺には娘を守り育てるという義務がある、その為には国を守らなければいけないからな、それに戦うというのなら必要最低限の支援位ならしてやろう」
そう言うと椅子に座って足組んだショウソクがぼくの方を睨みつけてくるけど、正直それで不問になるならありだと思うし……、やってしまった事に関して自分で責任を取るのは当然の事だと思う。
「……それでいいよ、一人でも頑張るから大丈夫」
「レース、それなら私も行くよ?」
「気持ちは嬉しいけど……、ダートはほら今は大事な時期だから出来れば安全な所にいて欲しい、だから悪いんだけど後方にいて貰っていいかな」
「そんな事言われても着いて行くよ?だって、レースの隣にいたいもの、カエデちゃんはどうするの?」
「わ、私もお二人と一緒に居たいです……、いえ、居させてください、足手まといには絶対なりませんから」
……そう言う二人の眼には強い意志と覚悟があって、これに関してそれでも一人でやるとは言い辛い。
ただ一人で戦うよりも一緒に来てくれる人がいるのは嬉しいし頼りになるから安心出来る、そう思っているとショウソクが立ち上がり『決まったようだな……、【滅尽】焔の炎姫は俺が足止めしておいてやる、お前等は攻めて来るまでの間に必要な準備を整えておけ』と言葉にすると、少しずつ姿が薄くなって行きぼく達の前から消えてしまうのだった。
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