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第八章 戦いの先にある未来

39話 森の中での出会い

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 あの後黒い鱗の正体が会いたくないと思っていたドラゴンだったけど、巨人を殺した後何故かぼくと暫く見つめ合う事になり……

「そう怯えないで良い、人族等という小さい命を喰らった所で腹など満たされはしないからな」

 まさかモンスターに喋り掛けられる何て思わなかった。
こっちを見ながらも器用に前脚の鋭い爪で解体されて行く、初めて見た種族だけど体の中身はどうやら人族と変わらないみたいだけど、何を見せられているのだろうか。

「でもこの巨人は食べるんだよね?」
「勿論だ、こいつは巣に忍び込み寝ている儂から卵を盗もうとしたからのぅ、気付かなければ自然の摂理として納得はするが、見つけてしまった以上はそろそろ孵る雛の栄養になって貰わねばな」
「……そうなんだ」
「それともなんだ?お主も喰うか?」
「いや、ぼくは遠慮しとくよ」

 さすがに角以外は人と同じ見た目をしている生物を食べる何て考えたくない……。
人型と言えばオーク等のモンスターならクイストが辺境開拓都市になって以降、冒険者達の活躍によって高級食材として市場に出回るようになったけど、加工される前の姿を見てしまったら少しだけ食べづらくなりそうだ。
そんな事を考えている内に、解体されて団子のようになった巨人の肉を自身の爪に差すと、翼を広げてドラゴンが飛び立とうとする。

「……そうか、ならここで出会った縁として一つ忠告をしておいてやろう」
「忠告?」
「この地の王として君臨していたドラゴンと巨人が何者かによって殺されて以降、この森は不安定な状況にあるのでな、いささか今は小さき者達にとって危険な状況にある、安全に出たいのならば儂らと同じ目線に立たぬ事だな」
「ありがとう、忠告して貰うついでに一つ教えて貰っていいかな……、この国の首都って何処にあるのか分かる?」
「図々しい奴め……、それなら分かりやすく道を作ってやろう」

 ドラゴンが笑いながら長い尻尾に魔力の風を纏わせるとそのまま横に振って飛ばす。
それが樹々を切り倒しながら道を作ると……

「今作った道を進めば着くだろう、では儂はこれで帰らせて貰うぞ?卵を温めなければならぬのでな」

 と言葉にして飛びだって巣へと帰って行く。
取り合えず道を作って貰ったから明日の朝まで休んでから移動しよう。
とは言え眠れないだろうから、体の力を抜いて目を閉じておこうかな――

「……思った以上に眠れてしまった」

 硬い木の感触と慣れない環境のせいで、眠れないと思っていたし……、もし寝てしまって寝返りを打ってしまったら落ちて怪我をしてしまうかもと言う心配もあった。
けど実際は朝までぐっすりと寝ていたし、葉の隙間から差す葉洩れ日が心地良い。
何とも緊張感が無いなぁって思いながら地上へと降りて昨日言われた通りに歩き始めるけど……

「ケイスニルの拠点から出る前に食べる物を分けて貰えば良かった」

 気を失っていた一週間を含めて食事を取って来なかっただろうから、恐ろしい空腹感に襲われている。
意識が無い間はカエデとかが治癒術を使って食材を魔力に変換して体内に入れていてくれただろうけど、それはあくまで延命の為に必要な処置であって、目を覚まして以降は何も食べて無いから早めに栄養を取らないと危険だろう。

「とはいえ急いで食べてしまうと、体への負担が大きいからまずは水から慣らしてそこからは形が崩れる程に煮込んだ食事と言う感じにしない危険だ」

 とりあえず何か食べれる物が無いかと周囲を見渡しては見るけど、見た事の無い果物が生っている樹がある位だ。
取り合えず雪の魔術で作り出した玉を当てて落としてみたけどこれは食べれるのだろうか。
とは言え皮を剥くための道具も無いし、仮に食べるとしてもすり潰して食べれるようにする為の環境もここにはない。
それにこの中には虫が入っているのかもしれないけど、食べなければ命に係わる……それに毒を持っていたり危険な寄生虫が居たとしてもその時は治癒術を使って取り除けばいい、空間魔術と治癒術を合わせた新術を以前作った時の経験からある程度自分の身体を使って実験を繰り返して来たし、安全に取り除ける筈だ。
そう思って果物を口に含むと……

「ん……、凄い甘くておいしい」

 皮は柔らかくて、果物の実は少しだけ硬い、それに甘さが凄くて噛めば噛む程自然と口内に唾液が溜まって行く。
これなら良く噛んでからゆっくり飲み込んで行けば問題無さそうだ。
とはいえ……、たまに硬い種が歯に当たって何とも言えない不快な気持ちになるのは残念だけど、こればっかりはしょうがないから飲み込む前に種だけ地面へと吐き出す。
こういう時ダートみたいに空間魔術を上手く使える事が出来るなら食べる前に取り除くとか出来るのになぁ、そういう意味ではダートみたいになりたいけど、雪と空間魔術を同じ練度で使えるようになったら色々と便利そうだからもっと練習してみようかな。

「……これで後は水があったらいいんだけどなぁ」

……一応生活用の水を出したりする魔術とかはあるし、それに関しては誰でも使えはするけど自分の魔力で作りだした水を摂取しても体内で魔力に戻ってしまうから意味が無い。
どうしたものかなぁって思いながら歩いていると、前方から人の声が聞こえてくる。
もしかして聞き間違いかもしれない、それか昨日のドラゴンのように人の言葉を話すモンスターの可能性もあるから近くの樹の後ろに隠れると、『レース、おーい、いるかぁ?レースぅ!』とかなり昔にアキラさんの通信端末で見た長い赤髪を三つ編みにした男性が金髪碧眼の紳士服の男性を連れて歩いてくるのだった。
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