治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第八章 戦いの先にある未来

間章 目覚めた禁忌の子 ルード視点

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 何だか身体が軽い。
自分の体では無いようなそんな錯覚を覚える。
もしかして死んでしまって魂だけの状態になってしまったのかも?、そうだったらこれ以上身体が苦しくないから良かったかも……、でも出来れば死ぬ前にもう一度お父さんとお母さんに会いたかったな。
そう思いながら眼を開けて見ると見覚えのある天井がそこにあって……

「……おぅ、小僧起きたか?」
「え?」

 誰かが勢いよく立ち上がったのか、椅子が倒れる音がする。
驚いて首を音がした方に向けるとケイスニルが安心したような顔をしながら歩いて来て……

「身体の調子はどうだ?何処か痛かったり苦しかったりするか?」
「……えっと」

 どうしてそんなに僕の事を心配してくれているのか。
しかも大事な人を見るような顔で……、僕とケイスニルの関係はマスカレイドに頼まれて組んでいるだけの他人なのにね。
でも……一緒に行動するようになってから色々と気を使ってくれるし、戦力として欲しい物があるからお願いしてみたら、めんどくさそうにしながらも獲って来てくれる。
それに僕が何かをすると大きな手で頭を撫でながら牙を見せながら笑う姿に、何となくお父さんが生きていたらこんな感じだったのかなと、姿を重ねてしまってついつい甘えすぎてしまう事があったけど……、困った顔をしながらも面倒を見てくれて何時の間にかこの人が本当にお父さんなら良かったなって思っていた。

「体の調子が今迄よりも良くて変な感じ……」
「それ以外には何かあるか?俺を見て何か感じるとか」
「良い匂いがする、安心するような……えっと、お父さんが生きていた時に感じた懐かしい感じ」
「そうか、そうかっ!」
「えっ!?うわっ、ちょっと!?」

 ケイスニルが僕を起こすと抱きしめて来る。
何が起きたのか分からなくて体が動かなくなってしまうけど、いったいどうしたのかなって思っていると、ふと室内にある鏡に映っている僕達の姿が見えて……

「え?な、なにこれ……」
「お?どうした?」
「何で僕の髪がケイスニルと同じになって翼と尻尾が生えてるの?」
「あぁ、そういう事か、今から説明する、実はな――」

 説明を聞くのがほんとならあの戦闘で気を失ってしまった後にケイスニルが助けに来てくれたみたいで、安全な所に連れて行ってくれた後そのまま目を覚まさずに一週間も寝ていたみたい。
しかもその間に死にかけてしまったらしくて、僕を助ける為に血を分けてくれたりしてくれたそうで……

「その結果僕の身体に変化が起きて……、今はケイスニルと同じ血が流れてるの?」
「あぁ、更に種族も俺と同じマンティコアになった、この意味が分かるか?」
「えっと……」
「分かんねぇか、……ならルードに分かりやすく説明するとな?小僧は俺のガキになったって事だ」
「……ガキ?でも僕にはケイスニル以外にもお父さんとお母さんがちゃんといるよ?」

 今迄死霊術を使う度に不足してしまった魔力を自分の身体を犠牲にして補って来て、ボロボロになってしまった体の中身も作り直されて頑丈な物になったみたい。
背丈も少し伸びた気がするし、それに合わせて能力が変わったのか大きく成長して変わってしまった気がする。
今の僕ならもう死霊術を使う度に痛くて苦しい思いをしなくて良さそう。

「ルード、おめぇのとうちゃんとかあちゃんはもう死んでいないだろ?」
「……でも、マスカレイドが言う事を聞けば合わせてくれるって言ってたよ?」
「おめぇはもうそんな事をしないでいい、今日から俺が父親になってやる、死んだ二人の分も一緒にいてやるよ」
「え?あ……、うん」
「良い返事だ、今日からお前はルード・レイフだ」

 僕は今日からルード・レイフ、その言葉を何度か繰り返してみるけど何だかそれが昔から自分の名前だったみたいで違和感を感じないけど、ルード・フェレスとして生きて来た時間もちゃんと僕の中にあって……、あれ?でもお父さんとお母さんの声を思い出す事が出来ないし、どんな顔をしていたのか、僕を見て優しく笑いながら頭を撫でてくれたのはお父さんの筈なのに、今ではケイスニルの姿しか浮かばない。
あぁそっか、ずっとお父さんとお母さんにもう一度会いたいと思って二人の死体をアンデッドにして繋ぎわせたりしていたけど、心の何処かではもう何をしても会えないって分かってた。
だから新しく父親になってくれるって言ってくれたケイスニルの事が凄い暖かくて、欲しかった物を、ずっと一人で寂しかった孤独感を埋めてくれる本当のお父さんだって思ってしまうんだ。
だから僕は――

「うん、お父さん」
「あぁ、俺がお前の親父だ」
「うん、大好きだよお父さん」

……お父さんが話してくれた内容の中に、マンティコアを増やして種族を完全にこの世界に蘇らせるという物があった。
確かに二人しかいないのは寂しいもんね……、僕もお父さんに協力して沢山増やせるようもっと大きくなって頑張ろうと思う。
だから僕にはもう前の家族はいらない、だって新しい大事な家族がいるんだから……、その為にはまずこの身体を上手く使えるようにならないと、お父さんみたいに力強くそしてかっこよくなってまずは沢山頭を撫でて貰うんだ。
そして……、あのレースお兄ちゃんとダートお姉ちゃんを食べればもっと強くなれると本能が告げるのだった。
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