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第八章 戦いの先にある未来

間章 紅獅子と協力者 ケイスニル視点

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 気に入らねぇ……実に気に入らねぇ、どうしてこんなガキの面倒を見てやらなければいけないのか。
飼い主とマスカレイドに言われメイディに来たのは良い、指示通りに好き勝手暴れて栄花騎士団と協力関係にあるレースとダートと言う奴らを協力要請を利用して呼び出し確保するのも別に構わない。
個人的にはダートと言う人族の女が持っていたあの心器の剣のせいで、以前油断していたとはいえ敗北をしたからな、指示さえ無ければその場で喰い殺して血肉にしてやりたいところだったが、今はそれよりも興味深い奴がいる。
あのレースと言う男、以前戦った時は治癒術しか使えない雑魚にしか見えなかったが、俺がルードを迎えに来た時に見た光景は……、単純な力だけなら俺ですら受け止める事が困難なアンデッドオーガの一撃を生身の人間が相打ちに持ち込んだ。

「この時代にも面白い奴がいるみてぇだな、それに比べてこいつは……」

 飼い主がマスカレイドを通じて協力者に用意させた小屋のベッドに横たわり寝息をたてるルードの髪を撫でながら思うが、小僧はこの国に来てからずっと俺に着いて来る。
しまいにはアレをして欲しい、これが欲しい、一緒にご飯を食べたいと一々何かを言ってくるあたり、もしかしてだが俺の事を父親の変わりか何かと勘違いしてねぇか?。

「……しかも情が湧いて来ちまってんだよな、俺にガキがいたらこんな感じなのかねぇ」

確かに誇りある魔族、今は獣人族と名を変えてはいるが、弱者は守るべき者であり強者は戦いの中で命を奪い奪い合う戦士だ。
その中でも心が折れ戦う能力を失った戦士は飯でしかない、俺の種族は強い者を喰う事でその者の知識と経験を体に取り入れて成長する。
ただそれだけでは体が成長について来れないが故に体を鍛え一流の戦士になって行く……、そういう意味では俺は既に限界に至ってしまったがその先の世界に行ける能力はない。

「とはいえ、俺も今回はヤバかった、油断したわけじゃねぇがあの三人の連携はやべぇだろ」

 何となく見覚えのある水色の刀剣使いが足止めし氷の魔術を使った妨害、三つ編み野郎は銃から弾では無く炎をそのまま撃ち出すから遠距離専門の奴かと思い近づいたら凄まじい身体能力で力任せの打撃をして来たのは驚かされた。
とは言え三人目がめんどくさい、金髪野郎が格闘技による近接攻撃を主体にしながらも拳に雷を纏わせ、攻撃を防ぐ度に体の感覚が麻痺して行く。
しまいにゃ蠍の尾を刺そうとしたら空間を移動して距離を離したかと思うと複数のナイフを取り出し、それぞれを拳と雷で繋げて器用に飛ばしては自分の手に戻しては、再び投げるを繰り返して来る。
俺の知識程度じゃあ、電流の流れで引きあったり反発しあったりする事位しか分からねぇけど、それの応用なんだとは思うが、しかもあの金髪野郎が後ろに下がると刀剣の奴が前に出て防御と妨害に徹してくるせいで思わず、キレて本気になっちまうとはな。

「しかも最悪な事に、安全な所に隠れてろって言ったのに何時の間にかいねぇし……、何とか匂いを辿って来たらあんな事になると、色々と今回は外れクジを引いたな」

 別に戦って死ぬのなら本望だから良い。
勝ったら美味い飯が食える、それにだ負けても俺の存在は強者の中に残り続けるからな。

「……ちょっと、私あんな大規模な戦いするとか聞いて無いんだけど!」

 色々と考え込んでいると不機嫌な顔をしたSランク冒険者【滅尽】焔の炎姫が小屋の扉を開けて外から入って来る。

「炎姫か、誰かに尾行されたりしてねぇだろうな」
「この国で私を疑う人何ていないから大丈夫……けどね、いくら協力するとは言え私の大好きなこの国を必要以上に荒らすなら許さないからね」
「……俺達を裏切ったらガイストを取り戻す事が出来なくなるがいいのかよ、背中を押したとは言え予想以上に道を踏み外した大事な弟子を元に戻したいんだろ?」
「くっ……あの陰険眼鏡、あの子はねぇ復讐を終える事でやっと自分の人生を歩む事が出来る筈だったのに、どうしてこんなことに」
「さぁな、ただまぁ俺が言うのもどうかとは思うけどよ、こちら側に来る才能があったと思うぞ?ここで寝てる小僧もそうだけどよ、過去に囚われすぎてんだよ、人族の短い人生を取り戻したい事に費やすよりも明日上手いもん食うために生きた方が楽しいだろうにな」

 正直俺には小僧が死んだ両親に会いたいという気持ちが理解出来ない、それにガイストの過去に戻って幸せな日々を送りたいという考えも分からない。
そんな難しい事を考える位なら、強い奴と戦って食って寝てまた戦ってを繰り返した方が楽しいだろうが。

「……本当にあなたが言う名って言う話ね」
「俺にも色々と思う事があんだよ」
「そう……、あなたに当たっても何だか申し訳ない気持ちになりそう、なまじ話が通じてしまうから普段相手をしてる悪人とは違ってやり辛いし」
「ふぅん、そうかよ」
「そういう達観した態度が余計にそう思わせるって分かってる?、あぁただの脳みそまで筋肉で詰まった馬鹿だったら良かったのに、……あ、そう言えばその子もう一週間も眠ったままだけど大丈夫なの?、私が毎日顔を出して面倒見てあげてるけどそろそろ自然の魔力を栄養に変換して体内に直接入れるって言う方法じゃ摂取できる量的にも限界があると思うけど?」

 ……大丈夫な訳ないだろ、精霊術の応用で周囲の魔力を変換してとか俺には理解が難しい方法で面倒を見て貰ってはいるが、この一週間でだいぶ頬が痩せこけた。
他にも手足にも生気が無くなって来ている辺り、このまま目を覚まさなければ命を失うだろう。
こういう時治癒術が使える奴が居ないと不便だな、小僧一人まともに助ける事が出来やしねぇ。

「うるせぇよ、それよりもおめぇの方はどうなんだ?」
「ちゃんとやってるわよ、でも正直私じゃ役不足なの分かってるんじゃない?」
「そんな訳ないだろう、ただこの国で英雄として国民に認知しているおめぇが首都で国王とやり合うとなったら国民はどっちの味方になるんだろうな、名前だけで国の事に関心が無く国内の治安を冒険者に丸投げしている無責任な王と英雄であるおめぇ、良く考えなくても革命を起こした英雄様に着くのはだろうがよ」
「革命って、確かにこの国は変わった方が良い事も多いけど、何だかんだバランスが取れているのにどうしてこんなことに……」
「革命が済んだら、薬姫を新たな王に添えて傀儡政権にするだけだ、まぁそれを忘れて本気で殴っちまったがな……」

……革命を起こして現在の王を討伐し薬姫を新たな王にする。
Sランク冒険者になれる程の実力があるとはいえ、正直俺達からしたらまだ倒せない程ではない。
それにグロウフェレスの術で催眠をかけ思い通りに動く人形にしてしまえば、俺達の意のままに動く傀儡になるだろう。
そうすれば今の拠点よりも良い物が手に入り、飼い主の目的を果たすのに必要な人材が集まりやすくなる筈だ、革命の決行は一週間後血湧き肉躍る最高の戦いを始めたいものだと表情を歪ませるのだった。
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