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第八章 戦いの先にある未来
26話 目が覚めるとそこは……
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目が覚めると見た事のない天井だった。
ここは何処だろうと体を起き上がらせようとすると何やら異様にバランスが悪い、何ていうか左側が軽くて右側が想いような変な感じだ。
でも起きないと周りの様子を見ることが出来ないから腕を使って起き上がろうとすると
「あれ?左腕が動かない……」
左腕を動かしている感覚があるのに動かないし、とりあえず近くの物を手に取ろうとしても指先が触れる事が無い。
いったいどうしたのだろうかと首を動かして確認するとそこには……
「……腕が無い?」
「ん、んん……レース?」
ぼくの腕が根本から無くなっていた。
思わず大きな声を出しそうになると安心する声がして、そっちの方を向くとベッドに頭だけを乗せて突っ伏した姿勢で眠っていたのか、ゆっくりとダートが顔を上げてこっちを見る。
「目を覚ました!?良かった……、起きてくれた、私レースがこのまま目を覚まさなかったらどうすればいいのか分からなくて……」
「心配かけさせてごめんね」
「ううん、レースが起きてくれたからいいの」
「……ところでさ、色々と頭が混乱してるんだけど戦いはどうなったの?」
「やっぱり気になるよね……、あのね?」
気を失っていた時に起きた事をダートが話してくれたけど、あの後深手を負っていたケイスニルがルードを助けに来てメイメイと戦闘を始めたらしく、その間にぼくの出血をダートが必死に止めてくれたらしい。
けど問題はその後だったそうで、自身の姿を心器によりマンティコアへと変えたケイスニルが、メイメイを一撃で戦闘不能においやりそのままぼく達を何処かへと連れて行こうとしたとの事で……
「その時に傷だらけのアキラさん達がやってきて何とか撃退してくれたの」
「……そうなんだ」
メイメイを一撃で倒すなんて、もしかしてだけど以前ぼく達が戦った時は手を抜いていたのかもしれない。
それかぼく達の事を弱いと判断して油断していたか、もしくは両方か……、少なからず彼女を倒せるという事はSランク冒険者と同格の実力があるわけで、グロウフェレスみたいに何らかの方法で冒険者登録時に行われる鑑定の結果を偽装したのだと思う。
「……と言う事はアキラさん達がぼく達をここに運んでくれたって事?」
「うん、それで今はメイディの首都メディスケイトの宿に取って休ませて貰ってる感じかな」
「メイディの首都?それってあの遠くに見えた大きな樹の中にあるって話だったよね、凄い距離があったと思うんだけど……」
「栄花騎士団最高幹部のライさんって人が私と同じように空間魔術が使える人で、首都の宿に座標を登録してくれていたおかげで直ぐに安全な場所に移動出来たの」
「……そっか」
とりあえず安全な場所に移動出来たのは良かった。
とは言え……、現状が理解出来たから落ち着いて左腕を見てみるけど、確かあの時勢いよく爆ぜて肉片へと変わってしまった腕の断面は誰が処置したのか、蛋白質が熱で変質して凝固している。
幸い事に治癒術を使える位の魔力は戻っているみたいだから、右手で傷口に触れて変質してしまった個所を治す。
「この感覚的に誰かが止血の後に傷口を焼いたみたいだけど……」
「空間跳躍で移動する際に傷が開く可能性があるからって事で、ハスさんって言う人が傷口を焼いてくれたの……、治癒術師ならこれ位後で治せるからって」
「確かに緊急時の止血方としては間違えでは無いけど……、この範囲を焼くってなると患者がショック死する可能性もあるのに大胆な事をするね」
「私も驚いたけど全員が満身創痍な状態だったから余裕が無かったと思うの……」
「いや、別に攻めてる訳じゃないよ、こうして命が助かったんだからむしろ感謝してる位だよ」
……ただ、腕が根元から無くなってしまった以上、一応禁忌指定された治癒術を使えば再び生やす事は出来るけど変わりに自身の寿命を削る事になる。
過去にミュカレーに脚を切断された時と今回を合わせたら、自分に使うのは二度目だしそれを考えると無視できない程の寿命を失ってしまうだろう。
さすがにそれは嫌だな……、大切な人と一緒に生きる時間を出来ればこれ以上減らしたくない。
ただここまで考えてふと思った事がある……ジラルドとクロウを過去にこの術で何度か治した事があるけど……、クロウは生命力が強くぼく達と比べたら長い時を生きる獣人族だから問題無いと思うけど、ジラルドはただの何処にでもいる人族だし現に冒険者ギルドの長になった後の彼は、以前と比べて筋肉が落ち痩せてしまっていたから……ぼくの予想が間違っていないのなら術の影響が出ている筈だ。
「……レース?どうしたの?」
「あぁいや何でもない、ちょっと考え事をしていただけだよ」
「ならいいけど、腕を失ったショックもあると思うし無理だけはしないでね?」
「無理をしたらダートが悲しむでしょ?だから絶対に無理はしないから安心して欲しいかな」
「うん……、あっそういえばレースの腕の事で言い忘れた事があるんだけど――」
……彼女と話しながら、ジラルドにどう伝えようかと悩んでいた時だった。
部屋の扉が勢い良く開いたかと思うと『レース様っ!腕がなくなったと聞いて、私が駆けつけて差し上げましたわっ!、ちゃちゃっと新しい腕を作って差し上げるので安心してくださいませ!』と、メセリーに滞在している筈のマーシェンスの【賢王】ミオラーム・マーシェンスが満面の笑みを浮かべて室内へと入って来るのだった。
ここは何処だろうと体を起き上がらせようとすると何やら異様にバランスが悪い、何ていうか左側が軽くて右側が想いような変な感じだ。
でも起きないと周りの様子を見ることが出来ないから腕を使って起き上がろうとすると
「あれ?左腕が動かない……」
左腕を動かしている感覚があるのに動かないし、とりあえず近くの物を手に取ろうとしても指先が触れる事が無い。
いったいどうしたのだろうかと首を動かして確認するとそこには……
「……腕が無い?」
「ん、んん……レース?」
ぼくの腕が根本から無くなっていた。
思わず大きな声を出しそうになると安心する声がして、そっちの方を向くとベッドに頭だけを乗せて突っ伏した姿勢で眠っていたのか、ゆっくりとダートが顔を上げてこっちを見る。
「目を覚ました!?良かった……、起きてくれた、私レースがこのまま目を覚まさなかったらどうすればいいのか分からなくて……」
「心配かけさせてごめんね」
「ううん、レースが起きてくれたからいいの」
「……ところでさ、色々と頭が混乱してるんだけど戦いはどうなったの?」
「やっぱり気になるよね……、あのね?」
気を失っていた時に起きた事をダートが話してくれたけど、あの後深手を負っていたケイスニルがルードを助けに来てメイメイと戦闘を始めたらしく、その間にぼくの出血をダートが必死に止めてくれたらしい。
けど問題はその後だったそうで、自身の姿を心器によりマンティコアへと変えたケイスニルが、メイメイを一撃で戦闘不能においやりそのままぼく達を何処かへと連れて行こうとしたとの事で……
「その時に傷だらけのアキラさん達がやってきて何とか撃退してくれたの」
「……そうなんだ」
メイメイを一撃で倒すなんて、もしかしてだけど以前ぼく達が戦った時は手を抜いていたのかもしれない。
それかぼく達の事を弱いと判断して油断していたか、もしくは両方か……、少なからず彼女を倒せるという事はSランク冒険者と同格の実力があるわけで、グロウフェレスみたいに何らかの方法で冒険者登録時に行われる鑑定の結果を偽装したのだと思う。
「……と言う事はアキラさん達がぼく達をここに運んでくれたって事?」
「うん、それで今はメイディの首都メディスケイトの宿に取って休ませて貰ってる感じかな」
「メイディの首都?それってあの遠くに見えた大きな樹の中にあるって話だったよね、凄い距離があったと思うんだけど……」
「栄花騎士団最高幹部のライさんって人が私と同じように空間魔術が使える人で、首都の宿に座標を登録してくれていたおかげで直ぐに安全な場所に移動出来たの」
「……そっか」
とりあえず安全な場所に移動出来たのは良かった。
とは言え……、現状が理解出来たから落ち着いて左腕を見てみるけど、確かあの時勢いよく爆ぜて肉片へと変わってしまった腕の断面は誰が処置したのか、蛋白質が熱で変質して凝固している。
幸い事に治癒術を使える位の魔力は戻っているみたいだから、右手で傷口に触れて変質してしまった個所を治す。
「この感覚的に誰かが止血の後に傷口を焼いたみたいだけど……」
「空間跳躍で移動する際に傷が開く可能性があるからって事で、ハスさんって言う人が傷口を焼いてくれたの……、治癒術師ならこれ位後で治せるからって」
「確かに緊急時の止血方としては間違えでは無いけど……、この範囲を焼くってなると患者がショック死する可能性もあるのに大胆な事をするね」
「私も驚いたけど全員が満身創痍な状態だったから余裕が無かったと思うの……」
「いや、別に攻めてる訳じゃないよ、こうして命が助かったんだからむしろ感謝してる位だよ」
……ただ、腕が根元から無くなってしまった以上、一応禁忌指定された治癒術を使えば再び生やす事は出来るけど変わりに自身の寿命を削る事になる。
過去にミュカレーに脚を切断された時と今回を合わせたら、自分に使うのは二度目だしそれを考えると無視できない程の寿命を失ってしまうだろう。
さすがにそれは嫌だな……、大切な人と一緒に生きる時間を出来ればこれ以上減らしたくない。
ただここまで考えてふと思った事がある……ジラルドとクロウを過去にこの術で何度か治した事があるけど……、クロウは生命力が強くぼく達と比べたら長い時を生きる獣人族だから問題無いと思うけど、ジラルドはただの何処にでもいる人族だし現に冒険者ギルドの長になった後の彼は、以前と比べて筋肉が落ち痩せてしまっていたから……ぼくの予想が間違っていないのなら術の影響が出ている筈だ。
「……レース?どうしたの?」
「あぁいや何でもない、ちょっと考え事をしていただけだよ」
「ならいいけど、腕を失ったショックもあると思うし無理だけはしないでね?」
「無理をしたらダートが悲しむでしょ?だから絶対に無理はしないから安心して欲しいかな」
「うん……、あっそういえばレースの腕の事で言い忘れた事があるんだけど――」
……彼女と話しながら、ジラルドにどう伝えようかと悩んでいた時だった。
部屋の扉が勢い良く開いたかと思うと『レース様っ!腕がなくなったと聞いて、私が駆けつけて差し上げましたわっ!、ちゃちゃっと新しい腕を作って差し上げるので安心してくださいませ!』と、メセリーに滞在している筈のマーシェンスの【賢王】ミオラーム・マーシェンスが満面の笑みを浮かべて室内へと入って来るのだった。
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