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第八章 戦いの先にある未来
25話 痛み分け ダート視点
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何とか出血を止める事が出来たけど、短い間に大量の血液を失ってしまったせいでレースの顔に生気が無い。
白くなった肌に大量の汗、そして意識を失い呼びかけても返事が返って来ない現状に焦りを覚えるけど、今の私には出来る事が無くて……、こういう時に彼から直接治癒術を教わっていたカエデちゃんがいたら何か出来る事があったんじゃないかと思うと無力な自分が嫌になりそう。
折角暗示の魔術をまた使えるようになってまともに戦えるようになったのに、これじゃあレースのお荷物で対等な関係じゃない気がする。
「がぁっ!、てめぇ死ぬ覚悟は出来てんだろうなぁっ!」
「くふふ、こんな幼子を殺そうとするなぞ、この獣人は怖いのじゃっ!」
「……おちょくるのもたいがいにしろ」
ケイスニルが小脇に抱えてるルードを地面に優しく降ろして寝かせると、数歩前に出て両腕を地面に付け全身を紅い毛並みに覆われ獅子の姿へと変えて行く。
そして背中に大きな蝙蝠のような羽が生え、尻尾に当たる所からは蠍の尾が飛び出した。
その姿はあの時私達が戦ったのと同じで今ならこの姿がマンティコアと呼ばれた伝説のモンスタ―である事を理解出来る。
この世界の事について知らない事が多すぎると思って、アンさんとヒジリさんに修行をつけて貰ってる間にお伽噺の事とか気になる事を色々と聞いたけど……、その毛皮は如何なる鎧よりも硬くしなやかで、翼が起こす風の刃はどんな刃物よりも鋭く、尾の持つ毒は一度でも受ければたちまち身が腐り落ちると伝えられており、そんな化物をどうやってお伽噺の英雄達である【天魔】シャルネ・ヘイルーン、【斬鬼】ゼン・キリサキ、【死絶】カーティス・ハルサーの三人は倒したのか疑問に思う。
けどそれに対して返って来た返事は……『……三人で囲んで一方的に殴り倒したそうよ』という何の参考にならない答えだった。
「ついに正体を現したようじゃけど……、この身体の今の身体能力ではまずいかもしれんのぅ」
「……さっきからごちゃごちゃとうるせぇんだよっ!一撃で仕留めてやる」
「おぬしっ!その体系で二本脚で立つじゃとっ!?」
四足歩行になっていたケイスニルの前脚が人の腕に変わり、後ろの脚だけで器用に立ち上がると目で追う事が出来ない速度で動いたのか、姿がブレたかと思うと
「俺の前で生きているてめぇが悪い」
「あぁ、これ死んだかも知れんのじゃ……」
そこから紅い一筋の線だけを残して消えて、一瞬でメイメイちゃんの前に拳を突き出した状態で現れたかと思うと、凄まじい轟音と共に後ろへと吹き飛ばされたメイメイちゃんの全身が樹へと叩きつけられると、意識を失ったのか力無くその場に横たわる。
「うっそだろ、俺の切り札を喰らって体が残ってるとか化物かよ、まぁいいとりあえず邪魔物はいなくなったしな……、それに小僧を連れて逃げる予定だったが、あいつの頑張りのおかげで飼い主に良い土産が出来そうだ」
「え……、あっ」
マンティコアの姿から人に戻った化物が歩きながらこっちに近づいて来る。
レースを引きずって逃げようとするけど、腕が一本しかない彼を上手く運ぶ事が出来なくてその場で尻もちを付いてしまう。
その姿を見たケイスニルが面白そうに顔を歪ませると……
「俺はよぉ、強ぇヤツと戦うのは好きだけどよぉ、それと同じ位に戦う意志を無くした雑魚を食い散らかすのも好きなんだわ……、あぁ、けど残念だ、マスカレイドの事は正直いつでも殺せるからどうでもいいが、飼い主にてめぇ等を連れてくるように言われてるからな、一時とは言え命拾いしたなぁっ!ハハハ……、んぉ?」
「こ、氷?」
私達とケイスニルの間に氷の壁が出来たかと思うと一瞬で彼の周囲を覆い中が炎に包まれる。
そして一部の壁が溶けたかと思うと炎が酸素を求めて外へと飛び出し……、中に捕らわれていたケイスニルを吹き飛ばす。
「……ごほっ!かはっ!、て、てめぇ等止めを刺して筈なのに何で生きていやがるっ!」
「あの程度で私が死ぬわけないだろう……」
「の割には俺に泣き言を言いながら傷を治すように懇願してたのは誰だろうな?」
「……知らん」
「そういう事にしとこうか」
両腕に籠手を装着した傷だらけの金髪碧眼の男性と赤い髪を後ろで三つ編みにした男性が現れると、三つ編みの人が私達の所へ歩いてくると、レースの側に座って傷口に触れて何かをし始める。
「……ちぃっ!この傷でこれ以上は戦えねぇな、てめぇ等もそうだろ?最低限傷を治しただけで戦えるレベルじゃねぇんじゃねぇか?」
「そんな事は無い、私は今すぐにでも戦え――」
「その通りだ、だからここは取引と行かないか?、俺達はお前等を今回は見逃してやる……、お互いにここで戦闘を続行して必要以上の犠牲を出す必要は無いだろうし、負傷者を抱えている以上優先すべきは人命だ、そうだろ?」
「何を勝手に話を進め――」
「……分かった、今回は退いてやる、けどなぁ次会ったら今度こそ確実に仕留めてやるからなぁっ!」
……ケイスニルがゆっくりと後ろに下がりながらルードを肩に担ぐとそのまま後ろを向いて森の中へと消えていく。
それと同時にアキラさんがメイメイちゃんの所へ行き、金髪碧眼の人が魔力切れで動けなくなっているカエデちゃんと未だに身体が麻痺して動けなくなっていくダリアの所へ歩いて行く。
もう一人の三つ編みの人はと言うと……何らかの器具を取り出してそれを指先から出した炎で熱すると『……わりぃな、あんたの旦那は治癒術師だから後で傷跡を治せるとは思うけど、移動する為に一回焼くぞ?』それをレースの傷口へと押し付けるのだった。
白くなった肌に大量の汗、そして意識を失い呼びかけても返事が返って来ない現状に焦りを覚えるけど、今の私には出来る事が無くて……、こういう時に彼から直接治癒術を教わっていたカエデちゃんがいたら何か出来る事があったんじゃないかと思うと無力な自分が嫌になりそう。
折角暗示の魔術をまた使えるようになってまともに戦えるようになったのに、これじゃあレースのお荷物で対等な関係じゃない気がする。
「がぁっ!、てめぇ死ぬ覚悟は出来てんだろうなぁっ!」
「くふふ、こんな幼子を殺そうとするなぞ、この獣人は怖いのじゃっ!」
「……おちょくるのもたいがいにしろ」
ケイスニルが小脇に抱えてるルードを地面に優しく降ろして寝かせると、数歩前に出て両腕を地面に付け全身を紅い毛並みに覆われ獅子の姿へと変えて行く。
そして背中に大きな蝙蝠のような羽が生え、尻尾に当たる所からは蠍の尾が飛び出した。
その姿はあの時私達が戦ったのと同じで今ならこの姿がマンティコアと呼ばれた伝説のモンスタ―である事を理解出来る。
この世界の事について知らない事が多すぎると思って、アンさんとヒジリさんに修行をつけて貰ってる間にお伽噺の事とか気になる事を色々と聞いたけど……、その毛皮は如何なる鎧よりも硬くしなやかで、翼が起こす風の刃はどんな刃物よりも鋭く、尾の持つ毒は一度でも受ければたちまち身が腐り落ちると伝えられており、そんな化物をどうやってお伽噺の英雄達である【天魔】シャルネ・ヘイルーン、【斬鬼】ゼン・キリサキ、【死絶】カーティス・ハルサーの三人は倒したのか疑問に思う。
けどそれに対して返って来た返事は……『……三人で囲んで一方的に殴り倒したそうよ』という何の参考にならない答えだった。
「ついに正体を現したようじゃけど……、この身体の今の身体能力ではまずいかもしれんのぅ」
「……さっきからごちゃごちゃとうるせぇんだよっ!一撃で仕留めてやる」
「おぬしっ!その体系で二本脚で立つじゃとっ!?」
四足歩行になっていたケイスニルの前脚が人の腕に変わり、後ろの脚だけで器用に立ち上がると目で追う事が出来ない速度で動いたのか、姿がブレたかと思うと
「俺の前で生きているてめぇが悪い」
「あぁ、これ死んだかも知れんのじゃ……」
そこから紅い一筋の線だけを残して消えて、一瞬でメイメイちゃんの前に拳を突き出した状態で現れたかと思うと、凄まじい轟音と共に後ろへと吹き飛ばされたメイメイちゃんの全身が樹へと叩きつけられると、意識を失ったのか力無くその場に横たわる。
「うっそだろ、俺の切り札を喰らって体が残ってるとか化物かよ、まぁいいとりあえず邪魔物はいなくなったしな……、それに小僧を連れて逃げる予定だったが、あいつの頑張りのおかげで飼い主に良い土産が出来そうだ」
「え……、あっ」
マンティコアの姿から人に戻った化物が歩きながらこっちに近づいて来る。
レースを引きずって逃げようとするけど、腕が一本しかない彼を上手く運ぶ事が出来なくてその場で尻もちを付いてしまう。
その姿を見たケイスニルが面白そうに顔を歪ませると……
「俺はよぉ、強ぇヤツと戦うのは好きだけどよぉ、それと同じ位に戦う意志を無くした雑魚を食い散らかすのも好きなんだわ……、あぁ、けど残念だ、マスカレイドの事は正直いつでも殺せるからどうでもいいが、飼い主にてめぇ等を連れてくるように言われてるからな、一時とは言え命拾いしたなぁっ!ハハハ……、んぉ?」
「こ、氷?」
私達とケイスニルの間に氷の壁が出来たかと思うと一瞬で彼の周囲を覆い中が炎に包まれる。
そして一部の壁が溶けたかと思うと炎が酸素を求めて外へと飛び出し……、中に捕らわれていたケイスニルを吹き飛ばす。
「……ごほっ!かはっ!、て、てめぇ等止めを刺して筈なのに何で生きていやがるっ!」
「あの程度で私が死ぬわけないだろう……」
「の割には俺に泣き言を言いながら傷を治すように懇願してたのは誰だろうな?」
「……知らん」
「そういう事にしとこうか」
両腕に籠手を装着した傷だらけの金髪碧眼の男性と赤い髪を後ろで三つ編みにした男性が現れると、三つ編みの人が私達の所へ歩いてくると、レースの側に座って傷口に触れて何かをし始める。
「……ちぃっ!この傷でこれ以上は戦えねぇな、てめぇ等もそうだろ?最低限傷を治しただけで戦えるレベルじゃねぇんじゃねぇか?」
「そんな事は無い、私は今すぐにでも戦え――」
「その通りだ、だからここは取引と行かないか?、俺達はお前等を今回は見逃してやる……、お互いにここで戦闘を続行して必要以上の犠牲を出す必要は無いだろうし、負傷者を抱えている以上優先すべきは人命だ、そうだろ?」
「何を勝手に話を進め――」
「……分かった、今回は退いてやる、けどなぁ次会ったら今度こそ確実に仕留めてやるからなぁっ!」
……ケイスニルがゆっくりと後ろに下がりながらルードを肩に担ぐとそのまま後ろを向いて森の中へと消えていく。
それと同時にアキラさんがメイメイちゃんの所へ行き、金髪碧眼の人が魔力切れで動けなくなっているカエデちゃんと未だに身体が麻痺して動けなくなっていくダリアの所へ歩いて行く。
もう一人の三つ編みの人はと言うと……何らかの器具を取り出してそれを指先から出した炎で熱すると『……わりぃな、あんたの旦那は治癒術師だから後で傷跡を治せるとは思うけど、移動する為に一回焼くぞ?』それをレースの傷口へと押し付けるのだった。
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